著者
人見 英里 廣島 愛
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.196, 2009 (Released:2009-09-02)

【目的】グルタチオンs-トランスフェラーゼ(GST)は第二相解毒代謝酵素の一種であり、生体の解毒代謝において重要な役割を果たしている。このGSTを誘導する食品としては、ブロッコリーを代表とするアブラナ科野菜が知られているが、調理操作を行なった場合の野菜の解毒酵素誘導能については未知の部分が多い。そこで、本研究では、日本でよく食されるアブラナ科野菜であるブロッコリーとダイコンについて、加熱あるいはすりおろしを行なった場合のGST誘導能について検討を行った。 【方法】試料として、山口市内の量販店で購入した青首ダイコン(山口県産)、辛味ダイコン(群馬県産)、ブロッコリー(広島県産、福島県産)を用いた。ブロッコリーでは、茹で加熱あるいは電子レンジ加熱を行なった後、エタノール抽出を行なった。青首ダイコンでは、茹で加熱、電子レンジ加熱、すりおろしを、辛味ダイコンではすりおろしを行ない、それぞれの搾汁液を試料液とした。これらの試料液をラット肝臓由来RL34細胞に投与し、24時間培養後の細胞のGST活性をCDNB法にて測定した。 【結果】非加熱の場合、青首ダイコン、辛味ダイコンの搾り汁には高いGST誘導活性が認められた。ダイコンを茹で加熱した場合、短時間の加熱によって活性は失われたが、電子レンジによる短時間の加熱では、活性は保たれた。ブロッコリーでは非加熱では活性はみられなかったが、短時間の茹で加熱、電子レンジ加熱の後には弱いながら誘導活性が認められた。ダイコンをすりおろした場合、60分放置した場合にも活性は保たれた。 以上のことから、解毒酵素誘導能を最大限発揮させるためにはそれぞれの野菜に応じた調理方法を選択することが望まれる。
著者
藤野 淳子 北浦 かほる
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.251, 2009

<B>研究の目的</B> 絵本には、作者が幼いころから慣れ親しんだ国の住文化が表現の根底にある。本研究では、住まいの絵本に表れた欧米の個室空間の扱われ方の特徴を捉える。<BR><B>分析の対象</B> 分析対象とした絵本は、前研究で用いた160冊に新たに収集した159冊を加えた合計319冊である。新たに収集した絵本は専門家によって書かれた絵本紹介の雑誌に掲載されていた中から、住まいについての何らかの思潮が読み取れるものを選んだ。<BR><B>結果</B> 欧米では子どもを幼いころから個室で一人で寝かせる就寝形態をとっているため、親が読み聞かせをするために、寝るときの様子を表現した絵本が多くみられる。ベッドタイムストーリーと呼ばれるもので、寝るまでの室内空間や街の様子の変化を描き、安らかな眠りを誘おうとするものが比較的古い絵本にみられる。また、寝る時間における親子の関係や就寝前の支度を通じた躾を描いたもの、ベッドに入ってから寝入るまでの時間を子どもの視点で表現したものがある。二つ目の特徴として、欧米では個室が定着しているため、個室が発想を想起する拠点として位置づけられている。日本の絵本では子どもを空想の世界に導く場所がお風呂やトイレ、おじいちゃんの家など日常の生活の中で親と離れてひとりになれる場所が多くみられる。それに対して欧米の絵本では自分の部屋からイメージの世界を広げており、親子関係の確認や物事を考える場所として扱われている。最後に、欧米の絵本には断面表現が多くみられ、部屋の機能の違いや他人の家どうしでの住まい方の違いを表現する手段にされている。個人が尊重される欧米では他人の暮らしは違うものだという考えが根本にあることがわかる。
著者
山村 明子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, pp.242, 2008

<B>目的</B> ファッション雑誌によるトレンド提案と、それらを支持する消費者像を分析し、現代ファッションの背景を探る。<B>方法</B> 雑誌モデル蛯原友里が提案するOLスタイルに着目し、そのファッションテイスト、モデル像、及び消費者の生活スタイルを検討する。主な資料にはファッション雑誌CanCamを利用する。<B>結果</B> CanCam誌上のファッションスタイルの変遷を追うと、2004年3月にロマンチックスタイルが提案され、翌月にはその提案は蛯原友里をメインにエビちゃんOLと名付けられた。そのスタイルは白、ピンクといった淡い色彩とフリルやリボンを取り入れたソフトでキュートなファッションイメージで、上司にも好印象を与える「愛され系スタイル」として位置づけられている。このような提案は多くの読者に支持され、「蛯原友里が着た服は店頭で即日完売」というエビちゃん現象を巻き起こす。この背景には「恋も仕事も頑張る」というモデル像の設定と、現代女性の価値観が合致し、ファッションイメージをモデル像によって増幅させた効果が反映されていると考える。
著者
渡辺 澄子 村田 温子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.193, 2003

【目的】中学・高校生の衣生活に対する意識や実態は、彼らのライフスタイルの中の一要因であり、服装単独で存在するものではない。本研究は、昨年報告した三重県下の中学・高校生の生活構造の結果をもとに、衣生活の実態が他の生活領域とどのように関連しているかを明らかにするものである。【方法】調査は第1報と同様である。調査内容は、制服に対する賛否とその理由、服装に対する興味関心(服装のセンス、ブランド服の好き嫌い、服の好み他)と他の生活領域項目(生活時間、生活空間、生活意識、人間関係、食生活、住生活、学校生活、経済状態、生活習慣・規範・態度)である。分析方法は、単純集計、クロス集計、重回帰分析、共分散構造分析による解析を行った。【結果】服装への興味関心は、中学生・高校生のライフスタイル全般からみたところ、その影響を強く受ける順に、友人関係、自分の将来への関心度、校則に対する態度、世界の動きや政治への関心度、お小遣いの額、生き方に対する態度、生活全般に対する満足度などとの関わりが強いことが明らかとなった。 一方、あまり影響がみられない項目として明らかになったものは、テレビ視聴時間の長さ、先生と会話をするかどうか、制服への賛否、勉強の目的、アルバイトの有無、タバコを吸っているか否か、ボランティア意識があるか否かなどであった。また衣生活の中でも、自分の衣服を洗濯するかどうかという基準では、お年よりのためのボランティア志向があるか否か等との関連がみられた。中高生の衣生活の有り様を考える場合は、個別のファッションを指摘することよりも、彼らのライフスタイルとの関わりで考える必要があることが明らかとなった。
著者
内田 惠美子 筏 義人
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.197-202, 2007 (Released:2008-12-19)
参考文献数
16
被引用文献数
1

It is important to assess the safety of clothes that are used in contact with human skin. In this study the level of primary skin irritation against various surfactants applied to clothes was evaluated using a cultured skin model. The irritation of anionic surfactants depended on the number of carbons in the alkyl substituent. When the number of carbons was in the range from 9 to 12, the surfactants showed positive in the irritation at concentrations higher than 0.5 wt%. However, the anionic surfactants with carbon numbers lower than 9 or higher than 12 showed negative even at concentrations as large as 1 wt%. The cell viability of nonionic surfactants containing poly(ethylene oxide) chains was dependent on the number of chains. The surfactants containing few chains or many carbons showed negative in the irritation assay, while those containing a certain number of chains and the carbon numbers around 10 showed highly positive at concentrations higher than 0.1 wt%. The irritation of quaternary ammonium salts, which are cationic surfactants, showed positive even at low concentrations, regardless of the number of carbons in the alkyl group.
著者
濱口 郁枝 吉田 有里 森 由紀 大森 敏江 中野 加都子 松村 俊和 山本 存 藤堂 俊宏 宮田 倫好 上島 一泰
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 69回大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.143, 2017 (Released:2017-07-08)

目的 女子大生のコーヒーの嗜好について調査し、好まれるコーヒーを検討した。 方法 兵庫県内の一大学の女子学生を対象とし、コーヒーを飲む頻度や嗜好に関する質問紙調査と、2回の官能評価を実施した。1回目は、普段コーヒーを飲まない24名に円卓法で検討した。試料は、H:数種のブレンド・焙煎標準、J:ミャンマー産をブレンドに追加・焙煎軽め、P:オリジンごとに分けて焙煎、の3種とし、ブラックとミルクや砂糖を入れて評価した。2回目は64名に、1回目の結果をもとに改良したものと、エチオピア産のシングルオリジンをブラックで味わい、2点嗜好試験法で比較した。 結果 ドリップコーヒーを飲む者は23%と少なく、カフェラテなど甘めのコーヒーを飲む者が70%と多かった。官能評価1回目の結果、Hは、香ばしくて美味しく飲みやすいが酸味がある、Jは、ブラックでも飲みやすくミルクと砂糖を入れると一番美味しい、Pは、酸味が強く美味しさは他より劣る、との評価が得られた。そこで、評価の高いJの焙煎度を上げてコクを出し、ミャンマー産の豆をインドネシア産マンデリンG-1にかえて改良した。2回目の結果、酸味、総合評価ともにJの改良が好まれた(各p<0.01)。Jの改良を飲んだ後は、コーヒーの好みの程度が上昇した(p<0.01)。したがって、穏やかな酸味とバランスのとれた味わいのブレンドコーヒーは、ブラックでも女子大生に好まれることが示唆された。
著者
水上 戴子 堀川 蘭子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.617-627, 1992-07-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
22

妊娠時のタンパク質源を植物性タンパク質のみとした場合に, 母体及び出生子の発育に及ぼす影響を検討するために, 妊娠ラットに米をベースにした食餌を投与した.タンパク質5%レベルで妊娠維持, 分娩が可能か否か, さらに出生子の発育について生後49日まで観察した.また米の1/2量を分離大豆タンパク質, 卵白アルブミン, ミルクカゼインに置き換えた場合に, 妊娠時のタンパク質栄養効果の改善がなされるか否かを検討した.精製全卵タンパク質18%食を対照群とした。結果は次の通りである.(1) 米 (R), 米+分離大豆タンパク質 (RS), 米+卵白アルブミン (RA), 米+ミルクカゼイン (RC) 群のいずれの5%タンパク質食群も, 妊娠維持, 分娩が可能であったが, R群とRS群には出生日に子が死亡する例が見られた.授乳期間中に子が死亡する割合はR群では約17%に対し, RS群では約73%と最も高く, 米の1/2量を分離大豆タンパク質に置き換えることにより, 授乳期間中の子の生存率が低下した.RA群, RC群では出生日における子の死亡はみられず, 哺育はほぼ可能であり, 米の1/2量を動物性タンパク質に置き換えることにより栄養効果の改善が認められた.(2) 出生子の発育については, 5%タンパク質食群のいずれも出生日において, 体重, 臓器重量が対照群に比べて減少した.授乳中の母体に正常食を与えることにより, 日齢がすすむにつれて対照群との差は縮小したが, 体重は生後49日まで対照群より軽量であった.(3) 5%タンパク質食群の子はいずれも出生日において, 肝臓と屠体の総DNA量, 総RNA量, 総タンパク質量が対照群より減少した.生後49日においては肝臓の総DNA量, 総タンパク質量が, RS群を除いて, 対照群より低い値を示した.
著者
庄司 一郎 倉沢 文夫 浜野 真理子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.415-419, 1986

電気自動圧力鍋を用いて精白米を炊飯した際の炊飯特性について検討し, 次の結果を得た.<BR>1) 圧力鍋炊飯は, 常圧釜炊飯に比して温度上昇が早く, 内部温度が高く, 炊飯時問が短い.<BR>2) 圧力鍋による飯は, 粘りが強く, 黄色味をおび, 老化速度がおそい傾向を示した.<BR>3) 圧力鍋炊飯が常圧釜炊飯より粘りが強いのは, 高温加熱により, 飯粒の組織が崩壊し, そのため飯粒の周囲部に付着するデンプン量が多く, これが粘りの原因と考えられる.<BR>4) 圧力鍋炊飯は, 粘りが強くなることが特徴であり, 粘りの少ない米での食味改善が期待できる.
著者
樋口 幸永 近藤 隆二郎
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.859-868, 2009-10-15 (Released:2012-07-19)
参考文献数
21

The purpose of this study is to clarify the feature of the movement of recording the household account as promoted by the Zenkoku Tomo-no-kai, a readers'club of Fujin-no-tomo magazine. This study also aims to reexamine the role of the movement by tracing the transition of the readers'lifestyle as well as what they sought in life. We examined (1) the contents of the magazine as well as the feature of the house-keeping book, (2) how the house-keeping book was promoted as well as what resulted in favor of improved household budget, and (3) readers'comments included some special feature articles on the house-keeping book. The examination found that the initial plan was to assist the club members in forming their household budget by offering the mean value and quantity of their housekeeping items. It was also found that the movement was meant to help its members draw up an ideal budget in the hope that a sound household would eventually contribute to forming a sound society. Then, the movement gradually shifted its stand and tried to assist its members to consider that their households were part of the entire social system. In other words, keeping household account helped its members deepen their understanding of social affairs. This understanding has led up to less dependence on outsourcing of various nature, which would help alleviate environmental disruption. In conclusion, it is safe to state that the act or habit of keeping household account as promoted by the Zenkoku Tomo-nokai of the magazine Fujin-no-tomo has helped the club members incorporate the social concept in themselves.
著者
渋川 祥子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.92-99, 1976

圧力鍋による白米の炊飯について検討し次の点が明かになった.<BR>1) 予備浸水した米に126%の水を加え, 内鍋を使用し外鍋に180ccの水を加え, ノズルから蒸気が出はじめるまで強火, それ以後弱火で5分程度加熱し, むらし時間15分程度で炊飯できる.<BR>2) 圧力鍋炊飯は, ガス自動炊飯器による場合と比較しガス消費量, 所要時間とも, 特に利点はなかったが, 電気釜炊飯に比較し所要時間は短い.<BR>3) 圧力鍋による飯は, 粘りが強く黄味をおびている.圧力鍋は高温加熱のため, でんぷんのα化が十分に進み老化も起りにくい. また, 飯粒周囲部の組織が崩壊し付着するでんぷん量も多いため, これらが粘りの原因と考えられる.<BR>4) 内鍋を使用しない場合は, より粘りの強い, 飯粒中の水分のより不均一な飯になり炊飯方法として適当でない.<BR>5) 圧力鍋による炊飯の特長は, 硬質米よりも軟質米でより現れる. 粘りの強い米の圧力鍋炊飯は, ねばりが強すぎて好まれないため, 圧力鍋炊飯はねばりの少ない古米や硬質米の炊飯に適する.
著者
福井 典代 岩川 真澄
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.123, 2011 (Released:2011-09-03)

目的 JISにより既製服のサイズが標準化され明確になっている.その一方でファッションの多様化により,一つのブランドでの販売対象が狭くなり,JIS以外のサイズ表示も増えている.特にフリーサイズはJISに記載がなく,具体的な大きさがわからないという問題性をもつ.本研究では,衣類の実態調査を行い,フリーサイズの大きさを明らかにすることを目的とする.方法 (1)通信販売会社のホームページからフリーサイズの女性用衣類を抽出した.本研究では,女性用衣類の上半身用と全身用を対象とした.(2)服種ごとに整理し,さらに編物(ニット、カットソー)と織物に分類した.(3)サイズを調節する仕組みの有無を調べた.(4)フリーサイズの衣類のサイズ表記の種類,バストのヌード寸法,仕上げ寸法を明らかにした.(5)フリーサイズのバストの仕上げ寸法を服種ごとにグラフ化し,Mサイズや9号サイズと比較分析した.結果 フリーサイズの衣類では,表記の方法として大きさの基準があるものとないものの2つに大別された.本研究で抽出された衣類は,9ARやMサイズを基準としたフリーサイズが大部分を占め、337点中301点であった.バストのヌード寸法は,Mサイズの範囲(79~87cm)が最も多く,181点中164点であった.バストの仕上げ寸法の平均値は,ワンピースでは2.2cm,カーディガンでは15.1cm,プルオーバーでは4.2cm,ブラウスでは0.3cm,9ARやMサイズよりフリーサイズの方が大きく,コートのみフリーサイズの方が4.6cm小さい結果となった.フリーサイズの衣類は,伸縮性のあるニットで作られていたり,ウエストにゴムが入っていたりして,サイズを調節できる仕組みがあるものも見られた.
著者
渡邊 敬子 中井 梨恵 岡村 政明 大村 知子 矢井田 修
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.111-121, 2009-02-15
参考文献数
17
被引用文献数
2

本研究では,健康な高齢女性の衣服の着脱時の困難について,その原因を分析することとその手法を開発することを目的とした.高齢女性が構造の異なる3種類の上衣を着脱する動作を3次元動作分析で捉え,動作時間の分析を行い,官能評価の結果と合わせて検討を行った.今回の研究で得られた結果は次のようである.(1)官能評価の結果から,高齢女性では38.5%が原型に近い上衣Aを着にくいと評価しており,健常者であっても困難を感じていることが明らかとなった.これに対して,背幅を広くすることや袖下に菱形のゆとりを入れることで上衣Aの着にくさが改善されると考えられた.(2)着衣の所要時間を算出すると,上衣Cがもっとも短く,次いでB,Aの順であった.この順序は官能評価の結果と一致した.また,着衣動作の所要時間は動作が複雑かどうかを示す上肢の軌跡長とも相関がみられた.動作の所要時間は動作時間分析として作業効率などを示す指標などに用いられているが,着脱の容易さを示す指標としても利用できると考えられた.さらに,内容ごとに区切って所要時間を算出し,構造の異なる衣服間で比較することによって,どのような動作で着衣の問題が生じるのかを明らかにすることができた.これは動作全体の時間の比較ではあいまいであった着脱の問題点を明らかにする新しい手法となるといえる.(3)着衣時のどのような動作で問題が生じているのかを明らかにするため,着衣動作を内容で区切り,所要時間を算出した.その結果,上衣Bの'フェーズ3:後の腕を通すための準備時間'がAに比べて有意に短かった.さらに腕の軌跡の観察から,原型に近い上衣Aではフェーズ3の軌跡が複雑になっているのに対し,背幅の広がるBではスムースな動きであることが分かった.このことから,Bでは背中のプリーツが広がるため,後に通す袖ぐりを前方に引っ張ることができて手首が袖ぐりに届きやすい.これに対して,Aは背幅の寸法が比較的狭く一定であるため,後から通す袖ぐりに手首が届きにくいと考えられた.背幅が狭い場合に手首を袖ぐりに入れることが困難であることが高齢女性の着衣の問題を生じているのではないかと推察された.(4)高齢女性では上衣Cの'フェーズ4:後の袖に腕を通す時間'が,A,Bに比べ有意に短かった.通常の袖幅では上腕最大囲付近で引っかかりが生じるが,袖下にマチのようなゆとりを入れることで単に袖幅が広くなり腕を袖に通しやすくなると推察された.A,Bともに高齢者や障害者に有効な構造であるといわれているが,その構造がもたらす効果に差があることが明らかになった.一方,高齢女性の中でも上衣間の着衣動作の所要時間に差がない被験者もいる他,年齢と着衣の所要時間にも相関がみられなかったことから着衣のためのゆとりの必要性には個人差があるといえた.このことに関しては,被験者の身体能力との関連から検討する.
著者
大竹 美登利 中山 節子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.148, 2011

目的:世界経済の急速な悪化によって、日本では、派遣、パートなどの低賃金で不安定な労働市場が拡大し、生活費の最低限を確保するために、長時間労働や複数の仕事を掛け持ちするダブルワークが増えているといわれている。そこで、2010年の家政学会では、収入階層が時間配分に与える影響について分析した。その結果、収入階層と時間量には一定の関係があったが、必ずしも収入が高いほど労働時間が長くならず、土日では収入階層が高いほど労働時間が短く家事時間や自由時間が長くなる傾向にあった。そこで今回は同様のデータを使用し、生活の質を規定すると考えられる余暇活動の内容が収入階層によって相違するかどうかを明らかにすることを本研究の目的とした。<BR>方法:一橋大学経済研究所附属社会科学統計情報研究センターでは、学術研究目的使用する研究者に、秘匿処理を施したミクロデータを試行的に提供している。この募集に応募し承認を受けた(2007年12月官報4969号)、1991、1996、2001年の社会生活基本調査のミクロデータを使用し、収入階層による相違を分析した。<BR>結果:収入階層による時間量の相違が明らかになった夫妻と子どもの世帯で、収入階層別に、夫妻のインターネットの利用、学習研究活動、スポーツ、趣味、ボランティア、旅行の余暇活動の頻度を分析したところ、どの活動においても、収入階層が高いほど頻度が高くなる傾向にあり、特に妻パート世帯ではその傾向が明らかとなった。そこで、夫婦と子どもの妻パート世帯の高校生を同様に分析した結果、親と同様に、収入階層が高いほど様々な余暇活動が活発に行われていた。逆に言えば、親世代の社会的文化的貧困さが、子ども世代にも再生産されていることが明らかとなった。
著者
森 理恵
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.197-212, 2015 (Released:2015-05-14)
参考文献数
21

The purpose of this study was to clarify how the term kimono became popular as a way of referring to Japanese traditional clothing.   We collected articles from the Yomiuri and Asahi newspapers in which the term kimono in kanji, katakana, and hiragana were used by searching those words on their online databases, and analyzed them in order to find out the meaning of the word, as well as the sex and the nationality of the people who wore or possessed kimono in the articles.   We found the following: Firstly, kimono once referred to clothing in general or nagagi (long garment), regardless of which sex it was meant for. Secondly, kimono came to mean Japanese traditional clothing in the 1900s after the word “kimono” was established in Western languages. Thirdly, the word “kimono” tended to be used for women while wafuku and nihonfuku were gender-neutral words. In addition, it became increasingly common to write kimono in hiragana in the 1960s, during which time the main consumers of kimono were women, who preferred that it be written that way.
著者
前川 昌子 梁 善美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.387-392, 2008 (Released:2010-07-29)
参考文献数
15

3種の市販ブリーチ剤を用いて毛髪の脱色処理を行ったところ,酸化剤,アルカリ,過炭酸ナトリウムなどブリーチ剤の含有成分の違いにより脱色効果に大きな差があることがわかった.そこで, 主要な酸化剤成分である過酸化水素を用いて処理液のpHを変化させて漂白実験を行い,脱色効果と強伸度, 表面形状の変化に対するpHの影響を検討した.その結果,pHが9以上で大きくなるにつれて脱色効果は大きくなるが,一方で高いpHでは毛髪の強度低下と表面の損傷が起こることがわかった.また,過炭酸ナトリウムは過酸化水素にアルカリを加えて行った結果よりすぐれた脱色効果を示し,毛髪の損傷も幾分抑えられることが示唆された.