著者
亀井 文 高橋 遥
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 69回大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.146, 2017 (Released:2017-07-08)

目的:レジスタントスターチ(RS)は胃や小腸で消化されず大腸に達するでんぷんであり、大腸の健康に重要な役割を果たしている。しかし、でんぷん性食品の加熱調理条件や保存条件によるRS生成の違いを調べている研究、特にさつまいもについての研究は少ない。そこで本研究はさつまいもを試料とし、茹で、蒸し、焼きの調理方法の違いと調理後直ぐ(直後)、24時間冷蔵保存(冷蔵)、冷蔵保存後電子レンジ再加熱(再加熱)のRS量の変化について調べた。 方法:試料は徳島県産なると金時(平成24年11月)で、皮なし直径約4㎝で2㎝厚さのものを用いた。茹では沸騰15分間、蒸しは20分間、焼きはオーブン予熱無しでアルミホイルに包み160℃20分間加熱した。水分量とRS量は各調理方法の、直後、冷蔵、再加熱の3条件を測定した。RS量測定は脱水操作後、Megazyme社のRS測定キットを使用した。 結果:茹でのRS量は直後6.17%、冷蔵7.32%、再加熱7.16%、蒸しのRS量は直後5.45%、冷蔵6.27%、再加熱5.78%、焼きのRS量は直後3.06%、冷蔵3.51%、再加熱3.06%であった。茹でのRS量は、直後、冷蔵、再加熱後の3条件とも一番高く、次いで蒸し、焼きの順であった。また、茹でについては、直後より冷蔵および再加熱後のRS量が有意に高く、蒸しでは直後より冷蔵後のRS量が有意に高い値となった。
著者
島田 玲子 大迫 美穂子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

<目的>ベイクドチーズケーキには乾式焼きでしっかりとした口当たりのオールドファッションチーズケーキ(以下OLD)と,湯煎焼きでしっとりクリーミーなニューヨークチーズケーキ(以下NY)とがある。また,ケーキの型には様々な材質の型があるが,調理書でケーキ型の種類を指定しているものは少ない。そこで,乾式焼きと湯煎焼きという異なる焙焼法,ならびにケーキ型の材質の違いがチーズケーキの物性に与える影響を明らかにすることを目的として実験を行った。<br><方法>OLDとNYの2種類の焙焼法でフッ素樹脂加工スチール型,紙型,シリコーン型の3種類のケーキ型を用いて計6種類のチーズケーキを焙焼した。NYは予熱時から天板に湯をはり,湯煎焼きにした。測定はテクスチュロメータによる硬さ・付着性,測色色差計による色,またハンディロガーによりケーキ内部3ヶ所の温度変化を測定した。さらにスチールOLDとシリコーンOLDを試料として2点比較法の官能評価(n=110)を行った。<br><結果>OLDは焙焼後,中心部がへこんで低くなったのに対し,NYはほぼ一定の高さだった。材質別ではOLDの端の高さが紙,スチール,シリコーンの順に高かったが,OLDの中心部,NYには大きな差は認められなかった。重量はOLDよりNYの方が重く,材質別ではOLDはスチール,紙,シリコーンの順の重かった。NYでは顕著な差は認められなかった。硬さは重量と逆の結果となった。ケーキ内部の温度はNYよりOLDの方が温度上昇が速く,材質別ではOLDでスチール型の温度上昇が緩やかだった。OLD2種のケーキの官能評価では,見た目,硬さ,なめらかさに差があったが,総合評価ではほぼ同数で,好みが分かれた。
著者
千葉 桂子 永井 路子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.100, 2006

目的 近年,ローティーンを対象としたジュニア服の流行がアパレル市場で話題を呼んでいる。また,小学生を対象とした化粧品が販売されるようになり,おしゃれの領域は急激に低年齢化の方向へスライドしている状況にある。その要因の一つとして少子化による子どもひとりにかけるお金の増加が挙げられるが,さらにおしゃれを楽しんで来たとされる母親世代の影響もあると思われる。本研究では女子中学生とその母親のおしゃれに対する意識を,コミュニケーションや家族の状況も踏まえて捉えることを試みる。<BR> 方法 福島市内に在住する女子中学生(娘)とその母親を対象に,以下の要領で質問紙による意識調査を行った。調査期間:2005年6月から10月,調査方法:留置法,質問内容:回答者の属性,家族の状況(会話,外出,親子の仲,父親との関係等),おしゃれについて(金銭面,情報源,ファッションの趣味,お互いのおしゃれについて,「子どものおしゃれ」に対する意識等),回収率:娘43.8%,母親43.8%(配布数は各80部)娘と母親のおしゃれに対する意識の特性を把握するために,統計的手法を用いて検討した。<BR> 結果 娘と母親のそれぞれに対して,仲がよいと思うかという質問をしたところ,母親はとてもそう思うが58%で最も多かったが,娘はややそう思うが53%で最も多く,双方の認識に若干のすれ違いがみられた。子どものおしゃれに対して親子間で評価の程度に差が認められたものは,個性の発揮・自己表現,金銭感覚のまひ,物を大切にする,外見へのこだわり,身体への負担に関するものであった。おしゃれの意識について数量化3類で分析したところ,第1軸はブランド重視・実用性重視の分別軸と解釈することができた。
著者
小西 史子 舘岡 良枝 村上 知子 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.301-307, 2012-06-15 (Released:2013-10-10)
参考文献数
20
被引用文献数
1

We compared the antioxidative activity of roasted Adzuki bean flour and traditional boiled Adzuki beans, and evaluated the palatability of the roasted flour. The antioxidative activity of boiled Adzuki beans was significantly higher than that of the uncooked beans when determined by an ORAC assay, although itwas unchanged by a DPPH assay. More than 90% of the original antioxidative activity was retained in the roasted Adzuki bean flour when determined by both the DPPH and ORAC assays. Sixty-two elementary school pupils made roasted Adzuki bean flour and ate with rice cakes in a home economics class. Seventy nine percent of the pupils liked the roasted flour, and 87.1% showed their willingness to cook it again in their homes. These results indicate that roasted Adzuki bean flour could be quickly prepared without losing its antioxidative activity and that this flour was considered to be a favorable food among the pupils.
著者
関根 加納子 鷲見 亮 森 伸夫 吉本 博明 江口 文陽
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.3-11, 2011-01-15 (Released:2013-07-16)
参考文献数
30
被引用文献数
2

Developing new markets and uses for mushrooms are important to the mushroom growers and industry. We conducted an attitude and awareness survey among consumers towards mushrooms in order to identify their possible new uses. The initial results suggested that many consumers had high interest in using medicated cosmetics made from mushrooms. We therefore studied the effects of mushrooms on platelet aggregation and chemokine gene expression which are both indicators of the state of lifestyle diseases and rough skin. The results indicated that several species of mushroom had high inhibition effects on these indicators, and suggested that these species would have strong potential as raw materials in such medicated cosmetics products as those for whitening, and for treating skin against rough surfaces and wrinkles.
著者
小泉 昌子 徳田 愛華 佐藤 吉朗 峯木 眞知子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.416-424, 2019 (Released:2019-07-27)
参考文献数
16

本研究では, 牛乳添加時のコーヒーの温度の違いが, ミルク入りコーヒーのおいしさに与える影響を明らかにすることを目的とした. ミルク入りコーヒーの分析項目として, 物理的特性, 温度, 香り, 時系列官能評価 (TDS法), 嗜好型・分析型官能評価を行った. 1 . TDS法では, 90℃試料で口中と飲み込み後の20秒から50秒まで苦味が有意であり, 80℃試料は口中10秒間で特徴的な味はなく, 飲み込み後に苦味, 甘味, 再び苦味が有意であり, 70℃試料は口中では苦味,飲み込み後は牛乳味が有意に気になる感覚であった. 2 . 評点法による官能評価では, 90℃試料・80℃試料は同様のプロファイルを示し, 70℃試料は他の2試料に比べ, 甘味が強く, 苦味・後味が有意に弱かった. ミルクの好み, 総合評価で70℃試料は90℃試料よりも好まれた. 重回帰分析では, 総合評価に牛乳感の強さが影響を与えることがわかった. 3 . ブラックコーヒーが90℃の時点で牛乳を添加すると約15℃, 80℃・70℃の時点で添加すると約10℃温度が低下した. 室温では, 3試料間の粘度に有意差はなかった. 4 . GC-MSでは5種の香気成分が検出され, ブラックコーヒーと比べると, 2-methylfranは80℃・70℃試料で少なく, pyridineは90℃・80℃試料で多かった. 以上, 70℃で牛乳を添加した試料は検出された香気成分が他の2試料に比べ少ない傾向にあり, 甘味が強く, 苦味・後味が弱く, 飲み込み後に牛乳味が気になる感覚と評価された.
著者
手島 陽子 長谷川 智子 小西 史子 外山 紀子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.362-376, 2021 (Released:2021-07-02)
参考文献数
21

自立は青年期の重要な発達課題であり, 主体的自己, 協調的対人関係, 生活管理などの領域から成るといわれている. 子どもの頃に調理に関わることは青年期の自立に影響を及ぼすと仮説を立てた. 大学生178名 (男性53名, 女性125名) を対象に質問紙調査を行い, 学童期の家庭の食環境と調理への関わりをクラスタ分析で分類し, クラスタにより青年後期の自立に差がみられるか分散分析で検討した. 学童期の家庭の食環境と調理への関わりは5クラスタに分類され, 調理への関わりに関する得点が高い2クラスタは, 青年後期の「協調的対人関係」と「生活管理」の得点が高かった. この結果より, 学童期に調理に関わることは, 青年後期の自立の2つの領域へ肯定的な影響を及ぼす可能性が示唆され, 仮説は支持されたと考えられる.
著者
蒲池 香津代 杉田 洋子 渡辺 澄子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.193, 2004

目的 東京都内に通学する男子高校生の被服行動が、ライフスタイルや勉学、アルバイト、友人関係などとどのような関連性があるかを明らかにする。方法 東京都内男女高校生1093名のうち、男子高校生251名について一般的ライフスタイル項目26項目の5段階評定尺度値を因子分析した。得られた因子得点をもとにクラスター分析し、男子高校生を6グループに類型化した。次に各グループの特徴を把握したうえで、彼らの衣生活スタイル上の意識や行動との関わりをクロス集計で検討した。結果 ライフスタイル項目を因子分析した結果、「独自・新規性」、「友人関係」、「安易・快楽性」、「風潮同調性」、「男女平等意識」、「マニアック性」、「健全志向」の7因子が抽出された。因子得点をもとにしたタイプ分けでは、1「友人重視・流行追随・低モラルタイプ」(10.7%)、2「男女平等・堅実タイプ」(15.9%)、3「楽して一流願望タイプ」(22.7%)、4「人間関係協調タイプ」(34.3%)、5「ゴーイングマイウェイタイプ」(9.0%)、6「出世願望リーダー志向タイプ」(7.3%)の6つに分類された。被服行動との関連性をみると、ファションに興味や自信を持っている1のタイプは、友人関係には満足だが、校則を厳しいと感じ、勉強は卒業するため、小遣いの額には不満、アルバイトをしている。ファション行動が控えめな2のタイプは、モラルに厳しく、小遣いの額もまあ満足している。ファッションに興味関心が無い5のタイプは、学校生活や友人関係に不満を持ち、校則をゆるいとし、アルバイトの経験は少ない。ファッションへの関心はややあり、髪を染めたことも多い6のタイプは、勉学の目的は知識を増やすためとし、アルバイト経験も多かった。
著者
川上 美智子 小西 優子 日水 教子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.877-885, 2009-10-05 (Released:2012-07-19)
参考文献数
16

Cucumber and bitter gourd in the melon family are mostly salt-squeezed before cooking. Sensory tests have shown that a salt-free sample had a green note which was replaced by a mild note in a 1%-salt-squeezed sample. Aroma concentrates of salt-squeezed cucumber and bitter gourd prepared from brewed extracts were analyzed by GC-MS. Fifty-two compounds were identified as contributing to the cucumber aroma, the ratio of (E)-2,(Z)-6-nonadienal, the most important fresh cucumber aroma component, being most influenced by salt-squeezing. The salt-free sample contained higher levels of (Z)-6- nonenol and (E)-2,(Z)-6-nonadienol, while the 3%-salt-squeezed sample contained higher levels of (E)-2, (Z)-6-nonadienal, 8-nonenoic acid, and 8,11-heptadecadienal. Although the ratios of these three components and (E)-2,(Z)-6-nonadienol were lower, the ratios of (Z)-8-heptadecenal, (Z)-8,(Z)-11-heptadecadienal and (Z)-8,(Z)-11,(Z)-14-heptadecatrienal were higher in the strongly squeezed and homogenized samples. Twenty-six components containing (Z)-3-hexenol (50%) and myrtenol (16%) were identified as the characteristic aroma compounds of bitter gourd, their quantities being higher in the 1%- and 2%-saltsqueezed samples.
著者
荒木 裕子 山本 直子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.75, 2003

【目的】これまでに演者らは、極地冒険家の携帯食について設計・開発を行い実際に共用された携帯食の成分分析等を行い報告してきた。今回は、演者らが設計開発した携帯食が実際に極地冒険に供された際の利用状況を調査し、併せて日常生活とは異なる苛酷な環境下での食物摂取ついて検討したので報告する。【方法】冒険家大場満郎氏の1997年の北極海単独徒歩横断に際し、演者らが設計開発した携帯食の利用状況について調査した。調査方法は大場氏の冒険中の克明な記録をもとに調査し、併せて大場氏への聞き取り調査をおこなった。【結果】主食となる朝・夕食用A食、昼食用B食の2種とも冒険中の摂取量に変動が見られ、冒険開始直後から約2週間は予定摂取量の50~70%にとどまり、一日の摂取エネルギーも3200~4500Kcalと低かった。このことは環境の変化と高脂肪食が身体に順応していないためと心理的ストレスからの食欲不振と推測された。冒険の中盤からは食欲が増進し、予定摂取量の20~30%増の摂取がみられた。また、冒険終盤で外気温が高くなると食欲が減少するという気温と食欲との微妙な関係もみられた。現地での喫食方法はA食では微温湯を添加し5分ほど蒸らしてから喫食していたが凍結乾燥品の復元状態には問題はなかった。B食は予め凍結による硬化を防止するため油脂等を混入して調製したが、実際にはポケットに入れ体温で硬化を防止した。主食以外の食糧は乾燥肉や即席の汁粉、コーンスープなどであったが主食とこれらの食糧をうまく組み合わせることにより単調な食事に変化をもたせていた。また、不足しがちなビタミンを補給するためにサプリメントも利用されていた。
著者
河村 フジ子 松本 睦子 金 和子 小林 彰夫
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.1051-1056, 1989-12-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

辛味大根の味覚特性として, 辛味成分と辛味以外で味覚に関与する成分を他の大根と比覚し, 官能検査を行った結果を要約すると次のようになる.(1) 辛味大根中の辛味成分である (E) -4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアネートは, 73.7mg%で, 他品種の頭部の3.4~5.2倍, 尾部の2.0~2.6倍である.(2) 辛味大根は, 他品種の各部より, 水分, 還元糖量が少なく, カルシウム, マグネシウム量が多い.(3) 他品種のおろし大根の味を比較した場合, 尾部は頭部より, 辛味, 苦味が強く, うま味, 甘味が弱い。(4) おろし辛味大根の味は, 青首大根の尾部より, 辛味, 苦味が強く, うま味, 甘味が弱い.(5) おろし辛味大根を60分放置すると, 辛味は顕著に弱くなる.(6) おろし辛味大根に食塩, しょうゆ, 食塩+食酢, 天つゆ, 三杯酢を加えると辛味が弱くなる.
著者
久山 純子 藤井 淑子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.195-200, 1989

小麦粉48g, ショ糖28g, ショートニング 14g, 水10gを基本組成とするいわゆるシュガースナップクッキーを調製した.この配合中のショ糖の全量を乳糖や海砂におきかえたモデル組成のドウについて, ドウの性状とそれらの焼成過程における変化との関連性について研究した.乳糖を用いたドウ (B), 海砂を用いたドウ (C) は, それらのハードネスがショ糖を用いたドウ (A) のハードネスとほぼ同一の1,200gになるように水を調節した.<BR>1) B, Cのドウをミキソグラフによって測定すると, 一定の値を示す硬粘度が測定されたが, Aのドウは, ほとんどの値が低い値にとどまった.<BR>2) 焼成中のAのドウは焼成開始3分で最大膨脹したが, ドウ表面に生じたクラックより水蒸気がさかんに抜け出し収縮した.B, Cのドウは焼成開始4.5分間まで膨脹のみを続け, 内部に空洞を作りそのまま固定化した.<BR>3) 真空処理による膨脹率はAのドウでは, 焼成開始すぐに最大値 (250%) に達し, およそ60秒間その値を持続した.B, Cのドウは, 同様に最大値を示したがその値はすぐに低下した.<BR>以上のモデル実験により, クッキードウに用いられているショ糖は高い溶解度により, まずショ糖の溶解が先行し, これによって小麦粉の水和をさまたげ, シュガースナップクッキーの焼成のさいの特徴ある膨脹と収縮に関与し, 表面のクラックを支配することが明らかとなった.これに反し, Bのドウの乳糖は溶解性が低く, Cの海砂はまったく溶解しないために, 小麦粉の水和が先行すると考えられる.
著者
山崎 吉郎
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.93-97, 1987

納豆はその呈味において, 独特の苦味を有している.その苦味は, 納豆菌の作用によって生ずる, 大豆タンパク分解生成物のペプチドであることが明らかにされているが, 納豆中の苦味ペプチドの構造がどのようなものであるかを追究するため, 納豆より<I>n</I>-ブタノール抽出した試料について苦味ペプチドを分析した.<BR>セファデックスG-25カラムによるゲルろ過でFr.1~3の3画分を得たが, そのうちFr.1に強い苦味が認められた.さらにFr.1成分をCM-セファデックスでFr.a, b, cの3画分に分画したところ, Fr.bに最も強い苦味を認めた.Fr.aは弱い苦味, Fr.cはアミノ酸様のうま味を有していた.<BR>Fr.bより高圧ろ紙電気泳動によって純粋なペプチドを得, 塩酸加水分解後のアミノ酸分析の結果, 苦味ペプチドのアミノ酸組成は, アスパラギン酸 : スレオニン : グルタミン酸 : アラニン : プロリン : バリン : イソロイシン : ロイシン=1 : 1 : 1 : 1 : 2 : 3 : 3 : 5であることがわかった.またN末端アミノ酸はDNP法によってロイシンであり, C末端の構造はカルボキシペプチダーゼA法によって-Ala-Val-Ile-Leuであることがわかった.
著者
杉浦 愛子 森 俊夫 日下部 信幸
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, pp.58, 2008

<B>目的</B> 衣服はその色や柄,形などを媒介に着用者の様々な情報を発信しており,衣服に用いられる柄はその情報を左右する重要な要因のひとつである.従来,縞柄や水玉柄といった基本的な柄について様々な研究が行われてきたが,複雑な要素をもつ柄について研究されたものはあまりみられなかった.本研究では,近年,色々な服飾品に取り入れられているアニマルプリント柄に注目し,アニマルプリントに対する嗜好性とテクスチャ特徴との関係について検討した.<BR><B>方法</B> 試料はレオパード柄やゼブラ柄,ホルスタイン柄などのアニマルプリント10種類である.嗜好性の評価は,被験者43名(男性20名,女性23名)を対象に,アニマルプリント柄の布の外観をカラースキャナで読み込み印刷したものを用い、官能評価を行った.また,テクスチャ特徴は,アニマルプリントのカラー画像を256階調のグレイレベル画像に変換し,輝度平均(MIU),角二次モーメント(ASM),コントラスト(CON),相関(COR),エントロピー(ENT),フラクタル次元(D)を抽出した.<BR><B>結果</B> アニマルプリントの嗜好性はテクスチャ特徴のうち,CORやMIUと高い相関がみられた.このことから,アニマルプリントは柄の明るさや線状性が高いものほど嗜好性が高く評価されると推察された.
著者
佐藤 了子 佐藤 恵
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.39, 2007

<B>目的</B> 通学時及び学内で制服着用を義務付けられていた女子短大生が、制服の廃止により旧制服に持つイメージをどのように捉えていたかを中心に、ファッションスタイルの嗜好、およびファッションスタイルの受容についても明らかにすることを目的とした。<BR><B>方法</B> 質問紙法によるアンケート調査。調査対象者は女子短期大学生1年生99名。有効回答数は96であった。調査期間は平成15年11月。調査内容は出身高校、旧制服の所有状況、旧制服に持つイメージ(SD法、5段階評価)、ファッションスタイルの嗜好(20項、5段階評価)、及び着装の受容(20項、4段階評価)についてである。<BR><B>結果</B> 旧制服の着用状況は、着用しないが52%、いつも着用する17%、着用することが多い21%、時々着用する10%であった。着用する理由として私服を選ぶ面倒がないから61%が最も多く、毎日の通学に私服を選ぶ必要がないという理由から旧制服を着用しているようであった。旧制服に持つイメージで平均点の高かった項目は、清潔な、清純な、上品な、知的なイメージであり、低かった項目は、個性的な、派手な、活発な、人目を引くなどの項目であった。ファッションスタイルで好まれているものは、気軽で自由なスタイル、シンプルなスタイル、若々しいスタイルで、好まれないものは、ロマンティックなスタイル、アダルトなスタイルであった。着装の受容については、抵抗感が少ないものは、ミニスカート、パンツとスカートの重ね着、破れたジーパンなどであり、抵抗感のあるものはへそ出しルック、シースルーの服、胸の大きくい開いた服を着るなどであった。現在流行の着装は受容されているが、体がでる着装には抵抗感があることが示唆された。
著者
岡崎 貴世
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.274, 2009 (Released:2009-09-02)

【目的】冷蔵庫は毎日の食事で私たちが口にするものを保存している場所であるため、衛生には特に注意を払い清潔に保っておきたい。しかし、台所のシンクやガスコンロ周りなど汚れが目につきやすい箇所は掃除の頻度が高いが、冷蔵庫は温度が低く菌に汚染されにくいというイメージがあり、定期的に掃除を行う家庭は少ないのではないのかと考えられる。そこで一般家庭の冷蔵庫の細菌汚染状況及び掃除頻度を調査した。【方法】調査は本学学生86名を対象とし、2008年6月17日から7月16日に実施した。細菌検査は、生菌数用・標準寒天と大腸菌・大腸菌群用XM-G寒天(フードスタンプ「ニッスイ」)を使用し、冷蔵庫の棚とドアポケットの2ヶ所を検査した。冷蔵庫の掃除頻度は、自記式アンケートで調査を行った。【結果・考察】調査した全ての冷蔵庫から一般生菌が検出された。また、4割を超える冷蔵庫から大腸菌群が検出された。掃除頻度の低い冷蔵庫ほど検出される菌数は多い傾向にあったが、各冷蔵庫でばらつきがみられた。庫内の汚染状況は、ドアポケットより棚の方が菌の検出率が高かった。これは、棚に置いている他の食材からの汚染が原因のひとつと考えられた。冷蔵庫の掃除は、「年に1回程度している冷蔵庫」では年末やお盆前など決まった時期に行っていることが分かった。しかし、「年に2~3回している冷蔵庫」は『気が向いた時』や『汚れた時』など、不定期に掃除を行っているケースが多く、汚れた部分のみを掃除している可能性が考えられた。今回の結果より、各家庭の掃除頻度は予想以上に低く、また冷蔵庫は多くの細菌に汚染されていることが明らかとなった。
著者
福岡 恩 柴田 充代 小田 麻未
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的 </b>平成17年度乳幼児栄養調査の結果では、1歳以上の子どもを持つ親の食に関する悩みとして「偏食する」「よく噛まない」という項目を選択したものが平成7年~17年の10年で増加した。また、第2次食育推進基本計画に「よく噛んで味わって食べるなどの食べ方に関心のある国民の割合の増加」を現状値70.2%に対し目標値を80%以上としている。本研究は、自身で調理し食べることにより様々な食品を積極的に食べるきっかけに、また、献立の工夫で「噛む」ことを意識できるよう、地域の未就学の子どもを持つ親子を対象に料理教室を開催し、終了後アンケート調査を実施した。<br><br><b>方法 </b>対象は平成25年11月より平成28年3月まで「楽しい親子クッキング」へ参加したのべ220組の地域の親子。献立に咀嚼を意識できるようなものを組み込み、調理・試食してもらった。また、実習後、アンケートを実施した。作った料理の味、硬さ、こどもの日頃の咀嚼に関してどのように感じているかなどについて質問した。データ解析はクロス集計(Microsoft excel)等で行った。<br><br><b>結果</b> 日頃の咀嚼は「できている」23%、「どちらかといえばできている」23%、「ふつう」35%、「どちらかといえばできていない」15%、「できていない」0%だった。また、日頃の咀嚼の有無と実習で作った料理の硬さについての評価の相関を検定したところ、有意差はみられなかったが、日頃の咀嚼が「できていない」群には実習の料理の硬さを硬いと感じる傾向がみられた。
著者
西尾 幸一郎 西村 もえぎ 黒光 貴峰
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.266-273, 2019 (Released:2019-05-23)
参考文献数
19

本研究の目的は, 学習場所と家族の存在が子どもの学習動機づけに及ぼす効果を明らかにすることである. 主な結果は以下の通りである. (1) 男女ともに8割以上の児童が子ども部屋を保有しているが, 約半数の児童は家庭での学習場所としてリビングやダイニングを選択している. また, いずれの場所においても, 7割以上の児童が保護者やきょうだいなどの家族の存在を感じながら学習している. (2) リビングやダイニングでの学習については, 子どもが学習している時に家族の存在がいつもあることで自律的な学習動機づけは高くなり, 他律的な学習動機づけは低くなる. また, 女子のリビングやダイニングでの自律的な学習動機づけは男子と比べて低く, 子ども部屋での学習と比べても低い傾向がみられる. (3) 子ども部屋での学習については, 子どもが学習している時に家族の存在がいつもあることで自律的な学習動機づけは低くなり, 他律的な学習動機づけは高くなる傾向がみられる.
著者
小出 あつみ 間宮 貴代子 山内 知子 阪野 朋子 松本 貴志子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 愛知県岡崎市名産の八丁味噌は赤褐色で発酵臭があり,濃厚なうま味と渋みを持つ個性的な味噌である.本研究は八丁味噌を使用した新たな菓子とパンの商品開発を試み,その特性と嗜好性について検討した. <b>方法</b> 味噌は無添加豆味噌を使用した.菓子とパンは洋菓子類,和菓子類およびパン類に分類して,栄養価と原価を求めた.官能評価はパネリスト16人を対象に8項目ついて「八丁味噌の特性を生かせているか」を5点尺度の評点法で評価した.嗜好評価として好きな順番に1位~3位までを選んだ.データはTukey法による多重比較検定を行い,統計的有意水準を5%で示した.<b>結果</b> 官能評価の結果から,加熱しない味噌は酸味が強く,塩辛く感じることが示され,味噌を入れた生地では味噌の味と香りが減少した.調製時に砂糖との味のバランスに配慮する必要性を認めた.評点法(総合)と嗜好評価の上位5位の中に共通して芋プリン味噌カラメルかけ・味噌ダックワーズ・味噌シフォンケーキ・味噌鬼まんじゅうが入ったので,これらの菓子は味噌の特性を活かした好まれる菓子だと考えられた.以上の結果から,総体的に八丁味噌の使用は洋菓子類で評価が高く,薄力小麦粉,乳製品,砂糖,卵を使用することで味噌の塩辛さをまろやかにして八丁味噌の特性を活かした好まれる菓子となることが示され,今後の商品開発に向けて有用な資料を得た.<u></u>
著者
森内 安子 田中 智子 逵 牧子 森下 敏子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.154, 2004

<目的>前報では、レモン果汁を魚の酢じめに用いることで、食酢より魚肉の硬さが低下したと報告した。今回はレモン果汁の主成分であるクエン酸と食酢の主成分である酢酸および、それぞれにアスコルビン酸を添加した4種の溶液に魚を浸漬し、魚肉の硬さおよび浸漬液のpH、液量、たんぱく質量を比較検討した。<方法>試料は市販のサバを実験当日に購入して用いた。魚肉は、5%の塩をして冷蔵庫中で20時間放置した後、有機酸(酢酸4%、クエン酸6%)に5時間浸漬し魚肉の硬さを測定した。浸漬液はpH、液量、およびビュウレット法でたんぱく質量を測定した。浸漬液の測定のみ酢酸6%についても行った。また、塩をしない魚を5時間浸漬し、浸漬液中のたんぱく質量の経時変化についても測定した。<結果>有機酸に浸漬した魚肉の破断応力は酢酸4%よりクエン酸6%の方が低下していた。さらに酢酸4%およびクエン酸6%のいずれもアスコルビン酸を添加することで魚肉の軟化が見られた。魚肉の軟化に影響する浸漬液量は酢酸4%よりクエン酸6%の方が減少していることから、保水率に影響することが示唆された。浸漬液中のたんぱく質はレモン果汁、食酢ともに浸漬3時間後から増加した。5時間浸漬では、クエン酸6%より酢酸4%の方がたんぱく質は増加し、酢酸4%浸漬では魚肉の旨みの損失が考えられた。しかし酢酸6%浸漬液ではクエン酸6%との顕著な差はいずれも認められなかった。