著者
岡田 涼 石井 僚
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Suppl., pp.17-20, 2021-02-20 (Released:2021-03-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究では,小学校の算数と理科の授業場面における教師の指導スタイルの特徴を自律性支援の枠組みから分析した.7つの授業を観察し,そこでの教師の発話データを自律性支援の概念的定義にもとづくカテゴリに分類した.複数の教師に共通していたものとして,【視点の代弁】と【挑戦の喚起】がみられた.一方で,【聞き合いの促し】【意味の説明】【選択の受容】は少なかった.また,【興味の喚起】【がんばりや否定的な気持ちの受容】については,一部の教師に多くみられた.本研究の結果は,教師の指導スタイルについて,教師の間で共通する部分と個々の教師で異なる部分を明らかにするものであり,同時に指導の改善に資する知見を提供するものである.
著者
荒木 淳子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.131-142, 2009-10-10 (Released:2016-08-06)
参考文献数
26
被引用文献数
7

職場での学習や知識創造の分野では,実践共同体の重要性が着目されている.しかし,企業において実践共同体をどのようにデザインするかに関する実証的研究は少ない.本研究では,社会人の職業アイデンティティ獲得やキャリア形成への意欲向上(キャリア確立)を促す実践共同体のあり方について明らかにすることを目的に,10の実践共同体に参加するメンバー30名に半構造化インタビューを行った.その結果,キャリアの確立を促す実践共同体のあり方として,(1)職場を越える実践共同体と職場との行き来を踏まえたデザイン,(2)メンバーの多様性を活かした活動,(3)コーディネーターの配慮型リーダーシップ,の重要性が明らかとなった.今後は,これらを踏まえた実践共同体のデザインが必要であると考えられる.
著者
森田 淳子 向後 千春
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.2, pp.32-39, 2022-06-27 (Released:2022-06-27)

学士課程のオンデマンド授業に関して,先行研究の2種類の対話型ビデオを発展した形式での収録(講師,聞き手のTAと受講生の参加)を試みた.講師単独のビデオと比較しどちらが好まれるかについてアンケート調査を実施したところ(N=168,回収率70%),「講師単独によるビデオ」が5%に対して,「受講生とTAを交えたビデオ(今回の形式)」を好む回答が86%であった.また,講師がレクチャーで画面共有する資料について,スライドとマップのどちらかを好むかについての回答は「スライドの提示」が19%対して,「マップの提示(今回の形式)」が64%であった.
著者
石野 未架
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.13-22, 2016-06-20 (Released:2016-06-17)
参考文献数
31
被引用文献数
7

本研究の目的は,生徒との相互行為の中で立ち現れる教師の実践知を会話分析の手法を応用して記述することである.データは関西圏の公立中学校1年生の教室で撮影した英語の授業20時間分であり,そのうち観察された1件の臨界事象に焦点をあてて分析を行った.その結果,教師はあるIRF連鎖の中で一人の生徒から予想外の誤答があった場合,1)生徒の反応に応じていくつかの質問の定式化手続きを用いることで,その生徒の質問に対する理解度を検証すること,2)他の生徒と別のIRF連鎖を構築することでその生徒のアフォーダンスとなる応答方法を示し,最終的にその生徒から正しい応答を引き出すことが明らかになった.このように記述された教師の実践知は,授業を生徒との相互行為と捉えるなかで明らかになったものである.結語では,このような会話分析を用いた教師の実践知記述の試みが今後の授業研究にどのように貢献し得るかを述べる.
著者
正司 豪 尾澤 重知
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46075, (Released:2022-08-26)
参考文献数
11

本研究は,卒業研究が必須の大学生を対象とし,研究内容の変容の契機となったゼミナール内外の実践共同体との関わりのプロセスを明らかにすることが目的である.半構造化インタビューを実施し,質的な分析をした結果,研究内容の変容の契機は,①指導教員からの助言,②ゼミの先輩からの助言,③同じ関心を持つ学外の他者との対話,の3つに類型化できた.ゼミ内の実践共同体として「班制度」の有無に着目した結果,研究内容の変容に関して,班がある学生は『他者によるゆさぶり』,班がない学生は『他者との対話』が契機となった.また,班の有無により,異なる実践共同体に関与し,異なる研究プロセスをたどる可能性が示唆された.
著者
島田 英昭
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.Suppl., pp.21-24, 2020-02-20 (Released:2020-03-23)
参考文献数
9

本研究は,教材の読解初期の短時間情報処理プロセスを対象に,挿絵を含む教材の版面率が動機づけに及ぼす影響を検討した.大学生20名を対象に,版面率と挿絵の有無を操作した6条件の防災教材を作成し,1種ずつ2秒間提示し,それぞれ動機づけと主観的わかりやすさの評価を求めた.その後,同じ教材を1種ずつ時間制限なく提示し,主観的情報量と主観的効率性の評価を求めた.その結果,挿絵があり,版面率が小さい教材において,動機づけ効果が大きく,主観的わかりやすさも大きいことが明らかになった.また,挿絵は文字に比べて主観的情報量の増分が小さく,挿絵がある教材では主観的効率性が高いことが明らかになった.
著者
堀田 龍也 高橋 純
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.329-338, 2006-02-20 (Released:2016-08-02)
参考文献数
24
被引用文献数
3

小学生を対象とした日本語キーボード入力学習システム「キーボー島アドベンチャー」を開発した.小学生の日本語キーボード入力の速さと正確さを向上させるための学習システムの設計原理として検定機能を実装した.2003年5月から2ヶ月間,19校の小学生1,897名によるモニター評価によって正式運用前に検定級の見直しと大量アクセスへの対応等の調整が行われた.2003年9月に全国の小学生に無料で公開され,2004年3月までの正式運用において52,326名の児童が本サイトで学習をした.登録者数の多かった3年生から6年生を対象として学習履歴を分析したところ,本システムが小学生の日本語キーボード入力の速さと正確さを向上させており,その向上には検定機能が有効にはたらいていることが確認された.
著者
佐久間 大 高石 哲巳 今井 智貴 長谷川 勝久 室田 真男
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.91-103, 2019-09-30 (Released:2019-09-30)
参考文献数
26

本研究の目的は,模擬授業内の出来事や状況を,実際の授業の状況に近似させることである.上記の目的を達成するため,児童生徒役である大学生の演技を補助する児童生徒のイメージカードを用いた模擬授業をデザインした.(1)これを教職志望者が参加する授業に取り入れて実践し,臨場感に対する主観的評価を得た.(2)さらに本研究でデザインした模擬授業で起こる模擬状況が,実際の授業の状況とどの程度近似していたかについて現職教員8名の評価を得た.分析の結果,本研究でデザインした模擬授業で得られる臨場感が,中位校を想定した模擬授業においては,従来型の模擬授業のそれよりも高く,実際の授業に近いものであることがわかった.また,教師役,児童役の両者にイメージカードを配布する模擬授業デザインの臨場感が,中位校を想定した模擬授業においては,児童役のみにイメージカードを配布する模擬授業デザインのそれよりも実際の授業に近いことが明らかになった.
著者
小清水 貴子 大石 智里 藤木 卓 寺嶋 浩介 室田 真男
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Suppl., pp.69-72, 2012-12-20 (Released:2016-08-09)
参考文献数
5
被引用文献数
7

教員のICT活用指導力の向上が求められ,将来,教員を志望する学生のICT活用指導力の育成も課題の一つである.そこで,中・高等学校を対象とした家庭科教育法の授業で,授業改善の観点からICT機器を活用した模擬授業を実践し,学生のICT活用に対する意識の変容を探った.その結果,ICT活用に関する講義や実物投影機の操作の実習により,授業におけるICT活用に対する意識が向上し,模擬授業後も維持されていた.また,ICT活用に対して,機器操作から指導に応じた活用に視点が変化した.ICT機器を活用した模擬授業を通して,機器を使えばよいのではなく,教師が教材や学習活動を工夫する必要があることに気づいた.
著者
中尾 教子 三輪 眞木子 青木 久美子 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.49-60, 2014-05-20 (Released:2016-08-11)
被引用文献数
5

本研究では,日常的に実物投影機とコンピュータが活用されている小学校の事例の分析を通じて,ICT活用に関する教員間コミュニケーションの特徴を明らかにすることを目的とする.教員へのインタビューの結果を元に,情報や助言を求める相手,求められる相手について,矢印を用いた「コミュニケーションフロー」として図示した.その結果,多くは,教職経験の短い教員から長い教員へ,また実物投影機やコンピュータの活用開始時期の遅い教員から早い教員へ情報を求める傾向があった.さらに,矢印が集中する2名の教員の存在が明らかになった.調査対象校では,ほぼ全ての教員が,この2名を中核とする全校的なコミュニケーションのネットワークに組み込まれており,教科指導におけるICT活用についてだけでなく実物投影機やコンピュータに関する技術的な内容についても情報や助言を得ることができる環境にあることが明らかになった.
著者
高橋 陸斗
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.Suppl., pp.73-76, 2023-02-13 (Released:2023-03-07)
参考文献数
3

本研究の目的は,小学校の掲示実態から,学年による掲示量の違いおよび掲示内容別の変化の要因を明らかにすることである.そのために,教室内掲示物の実態調査から得たデータを内容に基づき整理・分類するとともに,学年別に掲示物を検討することで,掲示物の内容に学年差があるのかを検討した.その結果,①小学校の掲示物は生活面の掲示物が約7割,学習面の掲示が約2割,その他の掲示が約1割という内訳であること,②生活面の掲示量は,高学年の方が低学年よりも掲示量が増えていること,③生活面の掲示の中でも特に,役割分担に関わる掲示が中学年で,主な発信元が学級外である掲示が高学年で,それぞれ低学年より多いことがわかった.
著者
佐藤 和紀 三井 一希 手塚 和佳奈 若月 陸央 高橋 純 中川 哲 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.353-364, 2021-12-20 (Released:2022-03-18)
参考文献数
24
被引用文献数
2

GIGA スクール構想の標準仕様にしたがってICT 環境が整備され,1人1台の端末を活用している学級へのICT 活用に関する児童と教師への調査から,導入初期の児童によるICT 活用と教師の指導の特徴を検討した.その結果,児童は1人1台の情報端末を日々の活動の中で,さまざまなアプリケーションを組み合わせて活用しながらクラウド上でコミュニケーションを取っていたこと,教師は学校内の情報端末の活用については指導できるが,家庭学習については自治体のルールや情報モラルの観点から指導できていないことが特徴として挙げられた.
著者
荒川 詠美 三井 一希 佐藤 和紀
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45066, (Released:2021-11-15)
参考文献数
10

本研究は,小学校高学年を対象に,複数の情報の読み取りが必要な調査問題を作成し,(1)正答率(2)問題や資料等を読む順序(3)新聞やフィクションを含む読書頻度について調査を行い,正答率と読む順序の関係性と,正答率と読書頻度の関係性の検討を行なった.その結果,(1)正答率と手順の比較では,正答の児童と誤答の児童の読む手順に大きな差はみられないこと,(2)出題した3問全てで正答の児童の方がフィクションを月に数回程度読んでおり,誤答の児童よりも読書頻度が有意に高かったことが示唆された.正誤による読む順序に大きな違いはないがフィクションの読書頻度が異なり,読み方に特徴があると示唆された.
著者
岩﨑 千晶
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.281-296, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
35

本研究の目的は,教員が「初年次教育で学習支援に従事する学生スタッフ」に対して求める能力・経験と彼らの育成方法を明示することである.教員5名にインタビューをし,分析考察をした結果「課題探究において考えるプロセスを深める」「活動を振り返るためにフィードバックをする」「受講生のロールモデルとなる」等,11の能力・経験が導出された.これらは「初年次生の課題と初年次生に培ってほしい能力」への密接な関わりや,「受講生に共感し,共に考える」「教員と受講生の架け橋になる」等,教員に担えない学生ならではの能力を含んでいた.また教員は能力別にレベル分けをする段階性の方法ではなく,複数の学生スタッフが足りない部分を補い合える学びあいや模倣学習を重視し,どの学生スタッフも活動できる場を提供し,活動にフィードバックをすること等による方法で学生スタッフを育成していることが示された.
著者
加藤 走 木村 充 田中 聡 中原 淳
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.46077, (Released:2023-06-07)
参考文献数
51

大学のリーダーシップ教育プログラムが増加することに伴い,大学生の個人的要因と大学生のリーダーシップ行動との関係についての検討が求められている.本研究の目的は,大学生のリーダーシップ行動とリーダー・アイデンティティの関連を定量的データに基づき明らかにすることである.本研究では,大学生291名を対象にwebによる質問紙調査を実施し,取得したデータに対してパス解析を行い仮説の検証を行った.分析の結果,大学生の関係水準のリーダー・アイデンティティならびに集団水準のリーダー・アイデンティティがリーダーシップ行動と正の関係があること,集団水準のリーダー・アイデンティティが関係水準のリーダー・アイデンティティよりも率先垂範,挑戦,目標共有,目標管理のリーダーシップ行動と強い正の関係があることが明らかになった.最後に,以上の結果から考えられる本研究の意義や教育実践への示唆,今後の課題について考察した.
著者
廣松 ちあき 尾澤 重知
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.43-65, 2021-06-10 (Released:2021-06-18)
参考文献数
39

組織業績と部下育成を両立するマネジャーを対象に,中堅社員の経験学習の促進と内省支援の把握を目的として半構造化インタビューを行い,M-GTA によって分析した.その結果,マネジャーは,仕事に関する展望と,部下育成に関する展望を統合した2~3年程度の中期的な計画にもとづき,PDCA サイクルに沿った業務マネジメントを進めていた.そして,そのマネジメントプロセスを通じて,中堅社員を組織が求める役割期待や当初の計画と,実際の行動や結果とのギャップに向き合わせていた.さらに,中堅社員の気づきが最も深まるタイミングを見逃さずに経験の意味づけを促す働きかけを行っていた.また,この働きかけは,マネジャー自身が能動的に内省し,自分のマネジメント行動の改善や育成の意味づけを深めることによって促進されていることがわかった.最後に,中堅社員の経験学習と内省支援を効果的に行うための効果的なマネジメントのあり方を考察した.
著者
新原 俊樹
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.46095, (Released:2023-04-01)
参考文献数
25

リテラシーレベルの数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(MDASH)に注目し,2021年8月までに認定された78校の教育プログラムを調査した結果,次の4点が明らかになった.(1)各校のカリキュラム編成は,あらかじめ指定した授業科目を履修させる形態のものが最も多かったが,多くは既存の特定の科目を履修させるものであった.(2)修了要件は,2~4単位が最も多かったが,1~24単位まで幅があった.同じ認定制度でありながら各校の修了要件に差があることは,公平性の観点で懸念すべきことである.(3)データ分析の学習手段は,大半の学校で表計算ソフトウェアを用いていることが判明した.この結果は高等学校での情報教育の実状を受けたものと考えられる.(4)先導的なプログラムに選定されるには,授業内容や学生への学習支援より,明確な枠組みの中で推進される地域連携や産業界連携の取組が評価される傾向があった.
著者
木村 明憲 黒上 晴夫
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46017, (Released:2022-08-12)
参考文献数
4

本研究では,児童が自己調整スキルを発揮しながら主体的に学びを進めることができる方策として,学習計画表であるレギュレイトフォームを開発した.レギュレイトフォームには,「本時の目標」と「振り返り」を記述する枠を設けている.これらの枠に記述された事柄を自己調整スキルの下位項目である「適用スキル」「目標設定スキル」「自己評価スキル」「帰属スキル」と対応付けて分析したところ,本フォームが児童の自己調整スキルの育成を促すことに一定の効果が確認されたとともに,本フォームを活用する際の指導・支援のあり方が明らかになった.
著者
永野 和男
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.157-162, 2006-12-20 (Released:2016-08-03)
参考文献数
18
被引用文献数
3

わが国の情報教育の目標は1997年に定められ,2002年からの学習指導要領では,情報に関する教科や科目,総合的な学習の時間で,正規のカリキュラムとして実施されるようになった.しかし,その理念や計画された内容に対して,必ずしも予定通りの実績を挙げているとはいいがたい.ここでは,わが国の情報教育は,どのような目標をもち,どのような展開が期待されてきたのか.また,問題点はどこにあり,どのように解決していかなければならないか,情報教育の創成期の理念から現状の問題点までを解説する.
著者
小野 和宏 松下 佳代 斎藤 有吾
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.27-46, 2023-01-20 (Released:2023-02-01)
参考文献数
40

本研究の目的は,専門教育で身につけた問題解決スキルが汎用性をもちうるかを明らかにすることである.PBL カリキュラムで口腔保健・福祉分野を学んでいるX 大学歯学部3年生を対象に,まず問題解決プロセスの習得度をパフォーマンス評価により直接評価した.ついで,そのうちの15名を対象に,専門教育で身につけた問題解決プロセスの理解度と日常場面への適用に関して学生インタビューを行った.その結果,専門教育で問題解決プロセスの理解度・習得度が高まると,そこで獲得した問題解決スキルは専門教育から遠い日常の場面へも転移しうることが示唆された.また,問題解決プロセスの理解度・習得度を高めるうえで,PBL での協調学習や学習課題の設定・情報探索が効果的である可能性が示された.これらの結果は,専門教育で身につけた能力が汎用性をもつ過程を例証している.