著者
北上 始 國藤 進 宮地 泰造 古川 康一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.26, no.11, pp.p1283-1295, 1985-11-15

人工知能の応用として知られているエキスパートシステムを作成するためには, 知識の表現, 獲得, 利用といった機能を支援する知識ベース管理システムが必要である. 本論文では, このシステムの構成法及び要素技術についての研究成果を報告している. 本知識ベース管理システムのインプリメンテーションは, 論理型プログラミング言語Prologで実施することを前提としている. 知識ベースの構造は, 著者らによって提案された次のような論理構成をとっている. 知識ベースを構成している各フレーム(知識の集合体)は, 主として次の五種の知識に分類されており, 知識ベースの拡張性を十分に反映できるように構成されている. 五種の知識としては, (1)構造化知識, (2)プログラム化知識, (3)制約型知識, (4)メソッド型知識, (5)辞書型知識がある. (1), (2)はオブジェクト知識, (3), (4), (5)はメタ知識とも呼ばれている. (1)の構造化知識は, 自然言語の分野で知られる概念階層関係を採用しており, (2)のプログラム化知識は, (1)で表現された知識を補うとともにそれを利用した種々のルールを表現している. (3)の制約型知識には, 動的に整合性を維持するためのtrigger型のメタ知識や, 矛盾検出用のinconsistencyの型のメタ知識があり, これらはメタ推論機能を使って容易に評価実行することができる. 特にtrigger型のメタ知識は, 自然言語処理の分野で知られる因果関係を表現するのに十分な機能をもっていることが述べられている. (4)のメソッド型知識は, 著者らが, 主に知識獲得と呼んでいる機能を提供するためのメタ知識である. ここでは, オブジェクト・レベルとメタ・レベルの二種類の知識獲得が存在することを述べている. また, 知識獲得時に, 制約型知識の評価実行を行うためのタイミングを制御するために, トランザクションという概念の導入が大切であることを述べている. (5)の辞書型知識は, データベースの分野のデータ辞書を拡張した知識であり, 知識ベース管理の処理効率向上及び種々のインタフェース向上のために利用される.
著者
青山 比呂志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.349-352, 1975-04-15

1970年に発表されたシステム/370の特徴の一つは,60年代の360に較べ,ロジック回路のハイブリッド(SLT)からモノリシック(MST)へ,メモリのコア・メモリから半導体メモリへの変換に伴う高性能化である.半導体メモリは,すでに1968年にシステム/360/85のキャッシュ・メモリとして採用されていたが,370に至って先ず,370/145のメイン・メモリとして発表され,メイン・メモリの主流としてコア・メモリをしのぐコスト/パフォーマンスをあげている.1972年8月,370のVS(仮想記憶装置)の発表と同時に,それまでのバイポーラ型メモリに加えて,新しくNチャネルMOSFETの半導体メモリを370/158および168に採用し,メモリのハード・ソフト両面にわたる進展を示した.半導体メモリはICの製造技術,回路設計の大きな進歩により,今や信頼性,価格,実装密度ともにすぐれたメモリ・システムを,コンピュータ客先に提供できる時代になっている以下にこの370のメイン・メモリの概略について述べる.
著者
河内谷清久仁 石川 浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1431-1439, 1998-05-15
被引用文献数
6

PDAに代表される超小型の携帯情報機器が数多く登場してきている.このような機器では,電車やバスの中で立ったまま,もしくは歩きながらでも簡単に情報にアクセスできるような操作性が重要である.しかし,携帯情報機器の操作では,画面が小さい,画面を注視できない,片手しか使えない場合もある等の様々な制約がある.そのため,このような環境で情報へのアクセスを快適に行うには,入力デバイスも含めた操作方式に対する工夫が必要となる.本論文ではまず,このような携帯環境での情報ブラウジングで求められる要件について述べ,従来の操作方式の比較検討を行う.次に,これらを考慮した新しい入力デバイスである「NaviPoint」を紹介する.NaviPointは,携帯情報ブラウジングに特化した入力デバイスで,「アナログ入力」「クリック入力」の3種類の入力操作を指1本で行うことができる.これにより,メニュー選択やハイパーメディア・ブラウジング等の操作が指1本で可能となる.本論文ではNaviPointの構造と定性的な評価に加え,試作したプロトタイプの構造についても述べる.プロトタイプを用いた評価実験の結果,従来のマウスとスクロールバーを用いた操作方式と比べても,1.5倍以内のオーバヘッドでハイパーメディア・ブラウジングが行えることが分かった.A mobile computing environment imposes various restrictions on users.For example,most mobile devices have a limited screen size,and it may be difficult to watch the screen closely.While the user is walking or standing in a bus or train,he or she may have only one hand free to manipulate the device.Therefore,some new operation method must be developed for comfortable information browsing in the mobile environment.In this paper,several existing methods are first introduced and compared from the viewpoint of their applicability in a mobile environment.A new input device for such an environment,named "NaviPoint,"is then introduced.The NaviPoint is a specialized device for mobile information browsing.By using this device,a user can perform three types of input-"analog input,""digital input," and "click input,"-with just one finger.After an explanation of the conceptual structure and a qualitative analysis of the NaviPoint,the structure of a prototype is described.Experiments using the prototype show that information browsing is possible with an overhead of less than 50% on the usual "mouse and scroll bar" method.
著者
山本 悠二 増山 繁
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.113, pp.15-22, 2007-11-19
被引用文献数
1 2

本稿では,係り先候補の相対的な距離を反映した統計的日本語係り受け解析手法を提案する.統計的係り受け解析手法は,文節間の係りやすさを訓練データから推定する.その際,従来手法では,文節間の距離はいくつかのカテゴリに分けられ,推定に用いられる素性として明示的に与えられる.しかし,複数の文節間候補が同一の距離カテゴリに属する場合,距離による弁別ができないため,最尤の係り先を決定することが困難である場合が多い.そこで提案モデルでは,文節候補集合中の二つの文節候補を逐次的に取り出し,どちらが係り元に近いかを明示させて係りやすさの推定を行う.京都大学コーパスを用いて実験を行った結果,係り受け正解率 91.60 %,文正解率 56.33 % となり,ベースライン手法と比べて有意に改善していることが確認された.We propose a novel method for statistical Japanese dependency analysis, which reflects relative distances among modifee candidates. Statistical Japanese dependency analizers estimate a dependency likelihood between a pair of bunsetsu chunks from training dataset. In conventional approaches, distances between pairs of bunsetsu chunks are divided into some feature categories, and the categories are embedded into training feature set explicitly. However, modifee candidates that belong to the same distance category, are possibly hard to be selected the most likely one, since they can not be distinguished by their distance categories. The proposed method selects two modifee candidates from all candidates sequentially. Each of the two modifee candidates and its modifier estimate the dependency likelihood after the modifee candidate appends extra information whether it is nearer from its modifier. The experimental results using Kyoto University Corpus achieved a dependency accuracy of 91.60% and a sentence accuracy of 56.33% respectively. We confirmed that the proposed method improved both dependency and sentence accuracy significantly, compared with the base-line method.
著者
井庭 崇 深見 嘉明 斉藤優
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.128-136, 2007-03-15
被引用文献数
4

本論文の目的は,商品の売れ行きの背後にある隠れた法則性を探ることにある.書籍販売市場は,すべての商品が同じように売れるわけではなく一部の商品が爆発的に売れるという「ウィナー・テイク・オール市場」になっている.本論文では,商品販売市場に潜む隠れた法則性を明らかにするために,日本全国における書籍販売の実データを用いて実証的に分析する.その結果,販売冊数と順位の関係がべき乗則に従っていることが明らかになった.また,ジャンル別の分析においては,基本的にはべき乗分布に従っているものの,最上位の販売冊数がべき乗分布の近似線よりも下方になるというようなジャンル別の特徴があることが分かった.In this paper, we explore the hidden law in the book sale market in Japan. The book sale market is known as "Winner-Take-All market" in which a very small number of the books are extremely sold although the rest of them are hardly sold. In this paper, we analyze the empirical data of bookstores across Japan, in order to show the hidden law. The results show that the relation between sale and rank are based on power law. In addition, we observe the alienation between the empirical distribution and power law in some category.
著者
橋口 博樹 西村 拓一 矢部 博明 赤坂 貴志 岡 隆一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.16, pp.57-62, 2001-02-22
被引用文献数
5

近年,多量の音楽ディジタルデータを個人が所有するようになり,楽曲の検索ニーズが高まっている.これに伴い,著者らは鼻歌から音程を抽出し,音楽音響信号からは主旋律の候補を選定し,主旋律推定のあいまいさを考慮に入れた検索システムを開発した.この検索は,mp-CDPと呼ばれるマッチング手法により実現されている.本稿では,主旋律の検索機能に加え,歌詞を歌った場合の鼻歌を想定し音素認識に基づく歌詞検索機能も導入する.この場合,通常行なわれている音声認識の技術を単に採用するだけでは,歌のようにピッチが激しく変化するという状況を想定していないことと,ボーカル以外のBGMの影響により,音素認識は困難であると考えられる.そこで,本稿では,比較的認識しやすい母音の音素認識を取り上げ,さらに,楽曲からは,mp-CDPがたどった主旋律情報を音素認識に利用する方法を検討する.The integration of rhythm and lyric recognition in a music retrieval system is the main purpose of this paper. In order to realize a music retrieval system based on rhythm extraction, we have already proposed a matching method called "Model driven path Continuous Dynamic Programming (mp-CDP)" to retrieve a part of music signal by a hamming query. This method detects several intervals in a music signal which are similar to a hamming query. This paper focuses on recognizing vowel categories in a song signal. Lyric recognition problem is out of scope of conventional speech recognition problems. Matching paths obtained by applying mp-CDP lead to enhance the features for recognizing vowel categories.
著者
浜田 亘曼 平沢 宏太郎 高藤 政雄 林 利弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-7, 1980-01-15

計算磯制御の分野では ソフトウェア生産性を向上させる有力な方法として高級言語化と問題向言語(POL:Problem Oriented Language)化の2つが考えられる.すなわち 汎用的な高級言語を用いて信頼度の高いプログラムを作成するか 特定応用分野の標準化された要求をプログラム仕様として記述させる機能を有する問題向言語を利用するかである.先に報告されている制御用計算機言語PCLの上位言語であるSPL(Software Production Language)は 上述の2つの側面を同時に満し得るように設計されている.本論文ではSPLのPOLへの応用について述べている.特にSPLの特徴的な機能である 手続きの構造化制御機能 手続きのインライン展開機能 豊富な手続き参照機能 PL/Iのそれを高信頼化の面で強化したコンパイル時機能等について論じている.また SPLの電力系統制御への応用例を用いて その効果を論じている.
著者
岸野 泰恵 柳沢 豊 松永 賢一 須山 敬之 納谷 太 坂田 伊織 北川 忠生
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.11, pp.1-7, 2014-07-21

希少魚の保護は生物多様性維持の観点から重要な課題であるが,生息環境が十分に明らかにはされておらず,経験的な知識をもとに保護されている場合も多い.無線センサネットワークを用いて希少魚の生育環境をモニタリングすることで,生息環境や繁殖の条件を明らかにできれば,生物多様性の保護に貢献できる.そこで本研究では,ニッポンバラタナゴ (絶滅危惧 IA 類) の保護池に無線センサネットワークを構築し,溶存酸素量,水温,温度,湿度,照度のモニタリングを行っている.本稿では,2013 年 3 月から開始したニッポンバラタナゴ生息環境モニタリングの実験について報告する.Conservation of biodiversity is important issue. However conservation of endangered fish is difficult problem, since some of their habitat environments are not clear. We are investigating habitat monitoring of endangered fish (Japanese rosy bitterling) with a wireless sensor network. We are measuring dissolved oxygen (DO), water temperature, air temperature, humidity, and illuminance. In this paper, we describe habitant monitoring experiment which was started in March 2013.
著者
宮崎 邦彦 岩村 充 松本 勉 佐々木 良一 吉浦 裕 松木 武 秦野 康生 手塚 悟 今井 秀樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.1871-1879, 2005-08-15
被引用文献数
1

電子署名技術の利用にあたっては,署名者は秘密鍵を安全に管理する必要がある.一般には,秘密鍵を安全に管理することは署名者自身にとって利益となると考えられているが,署名者の状況によっては,安全に管理することが利益とならないケースも生じうる.本稿では,署名者が債務超過に近い状態にある債務者である場合を例にあげて,署名鍵の自己暴露が債権者に対する攻撃となることを指摘する.さらに債務者が鍵自己暴露の可能性を持つことが,債権者?債務者間の債務縮減交渉に与える影響について分析を行い,この問題への対策の方針と例を示す.In application of digital signature technology, a signer needs to manage his/her private key safely. Keeping the private key safely is seemingly profit for the signer him/herself, but this may not true in certain situation. In this paper, the case where the signer is an obligor who is almost crushed by debt is mentioned as an example and we point out that self-compromising the signing private key by the obligor serves as an attack on a creditor. Furthermore, we analyze how it affects on the debt curtailment bargaining between a creditor and an obligor that the obligor has private key self-compromising, and show examples for countermeasure.
著者
藤井 治彦 塩野入 理
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.118, pp.23-30, 2001-11-30
被引用文献数
1

従来のコンテンツ流通方式は、CD→無著作権保護方式→P2Pというパターンには、全く対処ができなかった。また、コンテンツにどのような不正コピー対策をしても、いずれコピープロテクトが解かれP2Pで出回ってしまう。更に大きな問題は、無料の無著作権保護方式やP2Pは、非常に利便性が良いため、圧倒的なユーザの支持があることである。本方式では、コンテンツを一般道路や図書館のような共有財産とみなし、全て使い放題かつコピーフリーとする代わりに、ユーザは利用量に関係なく定額料金を支払う。管理サーバは再生ソフトから使用記録を集計して視聴率を作成し、これに応じて報酬を各クリエイタに分配する。本方式を用いれば、無著作権保護方式と同等の利便性が得られ、不正コピーはなくなる。また、P2Pとも共生も可能であり、不正コピーされたコンテンツのクリエイタに対しても、想定される利用量に応じた正当な報酬が分配できる。The conventional content distribution method cannot prevent illegal peer-to-peer (P2P) sharing of non-copy-protected data on compact disks (CDs). And any copy protection scheme will soon be analyzed, and the content data will be shared among many people by P2P. Almost all users like free non-copy-protection methods because of their convenience. Our method regards all contents as collective property. So users are free to make copies and are not metered for usage, but are charged a flat rate. The control server tracks usage and generates popularity figures from the player software on the user's computer, and distributes appropriate rewards based on the popularity of the content. This method gives users usability comparable to non-copy-protection methods, so if enough people use our method, the flat-rate fee become reasonably low and there will be no economical motivation for illegal copying. And it is compatible with any P2P scheme, and can distribute rewards corresponding to the estimated amount of usage to creators whose content has been illegally copied.
著者
白才恩 杉本 重雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告情報学基礎(FI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.109, pp.15-22, 2007-11-08

大量のディジタルリソースが蓄積,発信されている現在,持続的に増加するディジタルリソースを将来に向けて保存,管理することの重要性が広く認められている。一方,ディジタルリソースが将来的に利用可能であり続けさせることの難しさも広く認められている。そこで,本稿ではディジタルリソースを長期保存するため,ディジタルリソースを保存するためのガイドラインを作ることを目的として,保存のためのメタデータに関する検討,ディジタルリソースのタイプによる特徴を検討する。ここでは,完全な保存は困難であるとの前提に立ち,ガイドライン作成の基礎となる,リソースの「エッセンス」をのこすための基準を検討する。Preservation of digital resources has been widely recognized as an important but difficult issue in the networked information society. Many studies have been done on this issue, and basic issues such as emulation and migration have been raised for digital preservation. This paper is aimed at discussing issues to develop guidelines for digital preservation. It first describes metadata schemas for digital archives, and then describes the characteristics of digital resources. This paper discusses several factors to identify issues to build the guidelines for digital preservation.
著者
柴 玲子 根本 幾
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. MUS,[音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.139-142, 2004-11-05
参考文献数
3

和音の協和度の認知のメカニズムを調べるため、心理的協和度が異なる2音和音を聴いたときの脳磁図測定を行った。単音(A4:440Hz)と,440Hzから880Hz(A5)まで平均律で半音ずつ高くなっていく単音の2つを組み合わせて13種類の和音を合成し、測定を行った。その結果、実験に用いた和音の中で最も不協和とされる短2度(m2)の和音では、左右の聴覚誘発反応において、潜時200〜400msec付近の脳磁図の値が他の和音に比べて大きくなる傾向が見られた。この結果は、不協和音聴取時の潜時200〜400msec付近における複数の反応の存在を示唆する。
著者
渡辺 佳友 伊藤 貴康
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 記号処理研究会報告
巻号頁・発行日
vol.94, no.79, pp.7-14, 1994-09-16

SchemeはLispの方言であり,コンティニュエーションをファーストクラスのオブジェクトとして扱うcall/ccを備えた関数型プログラミング言語である.この論文では,SchemeのサブセットであるCore Schemeに対してcall/ccを用いた繰返し的Schemeプログラムに基づくコンパイル法を提案する.call/ccを用いた繰返し的Schemeプログラムとは,再帰的な関数呼出しをlet文とcall/ccを用いて末尾再帰風に記述したプログラムである.この論文では,call/ccを用いた繰返し的プログラムによるコンパイルとCPS法によるコンパイルが,Core Schemeプログラムに対して同じコードを生成することを示す.
著者
赤間 啓之 三宅 真紀 鄭在玲
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.78, pp.63-70, 2007-07-27
参考文献数
13

赤間ら(2007)は、フランス革命期の思想家、カパニスとメスメールの思想的類似性を論証するため、彼らのテキストをもとに、キーワード中心の意味ネットワークを作成し、グラフクラスタリングの技法であるMCLを適用した。本論考では、単語の共起データを取る際、単語インスタンスをすべて取り扱う漸進ウインドウ法(IAW)を使用すると、それに基づく意味ネットワークのクラスタリング結果が、キーワード中心のものと比べどう異なるものになるか分析する。By using the MCL (Markov Cluster Algorithm) known as a graph clustering method, Akama et al. (2001) measured the similarity of thinking between two contemporary thinkers, Cabanis and Mesmer. But the previous data under the form of semantic network were obtained by selecting beforehand the keywords as hubs around which the neighboring words were taken as dangling vertices. This study propose as an alternative to the keyword-based clustering a new windowing method called Incrementally Advancing Window (IAW) that generates co-occurring word pairs that can be used as inputs to the Incremental Routing Algorithm. Here we compare these two types of co-occurrence and/or adjacency data matrix by applying to each of them the indexes as weighted curvature, modularity Q and F measure.
著者
エバンズベンジャミンルカ 棟方 渚 小野 哲雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.11, pp.1-4, 2014-05-30

作曲者は何か意図をもって作曲する.その前提のもと,我々はリスナーが楽曲に対して抱く印象と,楽曲の作曲者が持つ意図とを比較し,それらの印象について調査してきた.リスナーは一般に作曲者の意図と似た印象を抱くものの,音楽の知識や経験などのリスナーの特性に応じて,異なる思考を持って楽曲を聴いていると考えられる.そこで本稿では,リスナーの音楽経験が楽曲印象に与える影響に着目し,リスナー特性ごとに,その楽曲印象を作曲者意図と比較した.作曲者とリスナーそれぞれが楽曲を聴いている際の生体信号(皮膚温,皮膚電気抵抗)計測データや,アンケート調査の結果を比べ,考察を行った.Composers composer with specific intentions in mind. Based on this assumption, we have conducted research, comparing the impressions listeners feel towards music they listen to and the intentions composers have behind those songs. We have seen, in general, listeners have similar impressions to the intentions of composers. However, we believe listeners listen to music in different ways based on their characteristics (e.g. musical experience,) which would result in a difference of impression within listener groups. In this paper, we have focused on the difference of listener impressions caused by difference in musical experience, and have compared those impressions with composer intentions. We discuss different findings we have made from the physiological data (skin conductance response, skin conductance level and fingertip temperature) and survey data obtained from our experiment.
著者
吉田 敏也 松村 敦 宇陀 則彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告情報学基礎(FI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.118, pp.1-4, 2006-11-06

本研究は、学習者の視点を考慮した非定型学習環境の構築を目指すものである。非定型学習とは、学習者が興味・関心に合わせて、主体的に学習活動を展開できる学習形態である。非定型学習環境の構築には、1)大学の教育・研究に関わる情報資源を統合的に利用できること、2)個人学習向けに情報資源の再構成を行うことが必要である。本稿では、非定型学習の枠組みの提案を行い、現在実装中のシステムについて報告する。The aim of this study is to construct an informal learning environment based on the learner's subjective viewpoint. Informal learning provides user support based on their interests. To construct the informal learning environment, it is necessary to integrate both educational and research resources, and reconstruct those information resources for self-learning. In this paper, we propose a framework for the informal learning environment and also present the prototype system that is being developed.
著者
須川 賢洋
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.5, pp.1-5, 2014-02-14

今後急速に普及することが見込まれる 3D プリンタにおいては、様々な問題が発生することが考えられる。例えば、銃火器のような危険物の製造、硬貨の偽造、知的財産の侵害、肖像権、その他の問題である。しかしながら、産業構造だけでなく日常生活をも劇的に変えうるこの技術の普及の影響に関してはほとんど考察されていない。そこで本稿では、それらに伴う法律問題にどのようなものがあるかをまず列挙し、いずれ本格的に施策を講じなければならい時のための予備的考察をし、対応策の提言として、印刷原料の規制を提言する。Future, 3D printer will develop rapidly. Therefore, at the same time, We can be considered that various problems occur. For example, it is a problem that the production of hazardous materials such as firearms, counterfeiting of coins, infringement of intellectual property, and, such as portrait rights. However, it has not been considered almost on the effects of diffusion of this technique that would change dramatically even everyday life as well as industrial structures. On this paper, first preliminary study what is available to those legal issues associated with them. In addition, it was a preliminary discussion for real-time measures. And, as of a workaround, to propose the regulation of print material.
著者
川田 一貴 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.16, pp.79-86, 2001-02-22
被引用文献数
3

我々の日常生活に最も密着した商業施設であるスーパーマーケットには様々な音が無秩序に存在しており、統括的な音環境デザインが施されている状況であるとは言い難い。そこで本論文ではスーパーの運営者と利用者に対してアンケートとインタビューによる意識調査を実施し、理想的な音環境像について検討した。売場において最も利用者に意識されている音はBGMである。利用者はBGMの音量が大きすぎたり、騒がしい曲であること、同じ曲を繰り返すことを嫌うことが分かった。またラジカセなどの販売促進ツールからの音はその音量の大きさや音楽・音声の繰り返しなどから不快に思われることが多く、売場の音環境を劣悪なものにする原因の1つであることが明らかになった。There are various sounds in supermarkets without systematic design. In order to describe the ideal sound environment of supermarket, the questionnaire survey to managers and customers and the interview with managers ware examined. Muzak are most noticeable for customers. Muzak are annoying when they are to loud or noisy. The sounds from promotion tools using public address systems are often felt noisy because they were usually reproduced by loud and low-quality sound reproduction systems. Generally, the repetitious sounds and voices are felt annoying.
著者
金谷健一 松永 力
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.7, pp.49-56, 2000-01-20
被引用文献数
18

2画像の点対応から計算した基礎行列をそれぞれの画像の焦点距離とカメラの運動パラメータとに代数的に閉じた形に分解するアルゴリズムを示す。これはスカラ不変量で表された基本行列の分解可能条件に基づくものである。また解が不定となる退化の条件をすべて解析する。さらに退化が生じた場合に2画像の焦点距離は等しいと仮定して解を求める方法を示し、その場合の退化の条件を調べる。最後にエピ極点を用いるBougnouxの公式を本論文の理論的枠組みから再導出する。We describe an algorithm for decomposing a fundamental matrix computed from point correspondences over two images into the focal lengths of the two images and the camera motion parameters in a closed-form expression in the fundamental matrix. Our algorithm is based on the decomposability condition of the essential matrix expressed in terms of its scalar invariants. We give a complete analysis for degenerate camera configurations. We also describe an algorithm for computing a single focal length in the degenerate case and analyze the indeterminacy condition. Finally, we recapitulate Bougnoux's formula, which describes the focal lengths using the epipoles, in our theoretical framework.
著者
峯松 信明 西村多寿子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.127, pp.211-216, 2005-12-22

音声コミュニケーションには,話者・環境・聴取者に起因する音響歪みが不可避的に混入する。これら静的な非言語的歪みを数学的にモデル化し,そのモデルの上で,音響歪みを表現する次元を完全に失った音声の物理表象を提案している[1]。個々の音声事象の絶対的な物理特性は一切捨象し,音声事象間の関係のみを,全ての二事象間差異(コントラスト)の集合,即ち,ある幾何学構造として抽出する。この新しい物理表象は,構造音韻論の物理的実装として解釈されている。事象間のコントラストのみを捉える処理は,音楽の相対音感に類似した処理と考えられるが,本稿ではその提案表象を,言語学,心理学,言語障害学,神経生理学,脳科学,及び音楽学の観点から再度考察,解釈する。その中で,音素を音響空間内で定位する従来の方法論の是非について検討する。In speech communication, acoustic distortions are inevitably involved by speakers, channels, and listeners. In our previous study, these distortions were mathematically modeled, and on that model, a novel speech representation was proposed where the distortions cannot be observed [1]. Absolute properties of speech events are completely discarded and only their interrelations are extracted as a full set of phonic differences or contrasts. The set is mathematically equal to a certain geometrical structure. This new representation is considered as physical implementation of structural phonology. Extraction of contrasts between two events is viewed as a process similar to hearing music, i.e., relative pitch. In this paper, the new representation is reconsidered from viewpoints of linguistics, psychology, language disabilities, neurophysiology, brain science, and musicology, Here, the conventional paradigm where a phoneme is localized absolutely at a certain point in an acoustic space is also reconsidered.