著者
後藤 雅史 川村 孝
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

感冒の前駆症状を呈する時期における葛根湯の投与が、症状顕在化の抑制や治癒期間の短縮に効果があるか、一般用医薬品の総合感冒薬と比較し検討した。葛根湯群 168 人、パブロン群 172 人が最終的な解析対象となった。重症化した人数(割合)は、葛根湯群で 38 人(22.6%)、パブロン群で 43 人(25.0%)であり、群間で有意な差は認めなかった(P=0.66)。
著者
水野 直樹 藤永 壮 宮本 正明 河 かおる 松田 利彦 LEE Sung Yup 庵逧 由香 洪 宗郁 金 慶南
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

日中戦争・アジア太平洋戦争期の植民地朝鮮の政治や社会・文化を理解するために必要な資料を国内外の図書館・文書館で調査・収集し、そのうち重要と認められる資料を選んでWEB上の資料集を作成した。これらのほとんどは、文書資料として残されているだけで、印刷されることがなかったため、一般市民のみならず研究者も閲覧・利用に不便をきたしていたものである。WEB上の資料集は、今後の歴史研究に利用でき、また広く歴史認識の共有にも役立つものとなっている。また植民地期とその直後に朝鮮に在住していた日本人の回想記・手記類についても、目次・著者略歴などのデータを整理してWEB上で提供することとした。
著者
外山 文子
出版者
京都大学
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.109-138, 2013-07-31

Thailand made great progress toward institutional democratization through the amendment of the 1991 Constitution, which stipulated that only elected MPs were eligible for the position of prime minister in 1992. This amendment was followed by the 1997 Constitution. However, Thailand experienced a coup in 2006, and the coup group drafted the 2007 Constitution. Since the coup, the judiciary has been pivotal in changing governments. Democratically elected governments have been toppled by the judiciary. Furthermore, people in large cities such as Bangkok, who protested against the military's extended rule in 1992, approved of the 2006 coup and the unusual methods employed in changing governments, an abnormal phenomenon in a parliamentary democracy. The common objective that links the coup, the two constitutional amendments (1997 and 2007), and the decisions of the judiciary is resolving corruption among the country's politicians. Even though several coups have occurred and constitutional amendments have been made for this purpose, the problem of corruption appears to be continually exacerbating. To understand this issue, it is important to recognize what kinds of behavior in politicians have been codified as corruption. Therefore, this paper examines the legal definitions of corruption. A close scrutiny of Thailand's constitutions and laws reveals that the legal definition of corruption has widened owing to the former's consecutive amendments since the 1990s, from apparent corruption (such as bribes or kickbacks) to vague or gray corruption (such as conflicts of interest and false statements of property and debt). Although in other countries these new legal definitions of corruption are used to control the spread of corruption among politicians by pre-empting potential corruption, in Thailand such forms of corruption are stipulated as grave crimes that could end an individual's political career--and they have broader definitions, including forms of corruption that are not serious. This suggests that constitutional amend- ments have resulted in increased corruption among politicians. This has caused people to distrust politicians and a democratic form of government, leading to the possible destruction of democracy either by coup or by the judiciary. In fact, constitutional amendments may themselves have been excuses for dismantling democracy.
著者
川本 純
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では、細菌による機能性金属ナノ粒子合成系の開発を目指し、基盤技術となる金属ナノ粒子合成性細菌の獲得を試みた。その結果、中国内モンゴル自治区より採取された Pseudomonas 属細菌が、粒径約 20 nm の銀ナノ粒子を形成することを見いだした。また、南極海水由来の好冷性細菌 Shewanella livingstonensis Ac10 の多様な異化的金属還元能を有することから、本菌株は微生物による金属ナノ粒子合成の宿主となりえると期待された。本研究では、本菌が三価鉄存在下でリン酸選択的チャンネルタンパク質を誘導生産し、可溶性三価鉄の輸送に関与していることを明らかにした。
著者
笠嶋 善憲
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1993-01-23

本文データは平成22年度国立国会図書館の学位論文(博士)のデジタル化実施により作成された画像ファイルを基にpdf変換したものである
著者
宮下 英明 神川 龍馬
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

「天狗の麦飯」と総称される土壌様微生物塊について,既報産地の再調査・解析をおこない,異なる山系のものが類似の微生物群集構造をもつも一方で,全く異なる微生物群集構造をもつものがあること,「天狗の麦飯」の弾力のある粒状微生物塊の形成には,細胞外粘質物質をもつγ-proteobacteria及びAcidobacteriaが寄与していること,既報産地の「天狗の麦飯」の消滅に,植物による被覆や土壌化,人為的攪乱が深く関わっている可能性があること,が明らかになった。
著者
神戸 大朋 片山 高嶺 高橋 正和
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)は、過去40 年にわたり急激に増加した疾患として知られる。IBDの発症や憎悪化のメカニズムの一つとして、「亜鉛欠乏」が「腸型アルカリフォスファターゼ(IAP)の活性消失」を引き起こすことがあげられることを、細胞及び動物レベルで証明し、IBDの予防と治療に亜鉛の活用が実践的であることを示す。さらに、亜鉛の吸収効率を上昇させる食品因子を探索し、本因子が実際にIBDの予防や治療に有効に作用することを実証する。亜鉛を充足させる食の提案は、医薬や食品など幅広い分野の応用に新しい展開をもたらすものと期待される。
著者
木村 美恵子 横井 克彦 糸川 嘉則 増田 徹 平池 秀和
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

近年、免疫能の低下が問題である癌や感染症も栄養状態が大きく関与している可能性が指摘されるようになってきた。他方、必須微量栄養素の1つであるマグネシウムを欠乏させた動物では、著明な脾臓や胸線の肥大、リンパ球こ増加、カテコールアミンやセロトニンの代謝異常が認められることを明らかにしてきた。これまでのこれらの研究成果に注目し、今回は、マグネシウム栄養と免疫能の関連を明かにするため、免疫応答能に及ぼすマグネシウム欠乏の影響について検討した。マグネシウム欠乏飼料で1または2週間飼育したラット及び正常飼料で飼育した対照群ラットの脾細胞および腹くうマクロファージ(MΦ)を無菌的に採取し、脾細胞はマイトジェン(ConA,LPS)刺激による幼若化反応及びサイトカイン(IL-2,IL-3)活性、腹くうMΦはIL-1,IL-6活性を測定した。また、脾細胞からT細胞を分離して、MΦと混合培養して、それぞれの機能をさらに詳細に検討した。マグネシウム欠乏飼料で飼育したラットの脾細胞のConAにたいする幼若化能は正常飼料摂取群に比較して、著しく低下していた。LPSにたいする反応性はConAのような大きな変化は認められなかった。脾細胞のサイトカイン産生能は、ConA反応性の低下が認められたに関わらず、マグネシウム欠乏群のIL-2値がやや高値であった。MΦのサイトカイン産生能はIL-2,IL-6ともにマグネシウム欠乏群で高値の傾向があった。脾T細胞とMΦの相互作用では、T細胞自体はマグネシウム欠乏と対照群の間で差が認められなかったが、マグネシウム欠乏群のMΦはConAにたいする反応性を補助する能力が低下していた。以上、マグネシウム欠乏による免疫応答能低下の影響が確認された。
著者
中瀬 悠太
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

ネジレバネの中で最も多様化しており宿主の情報も揃っているグループであるハナバチネジレバネについて、日本産種を中心に、ヒメハナバチに寄生するStylops属のネジレバネとコハナバチに寄生するHalictoxenos属とEustylops属のネジレバネについて分子系統解析を行った。その結果、liハナバチネジレバネ属とヒメハナバチネジレバネ属それぞれの単系統性が強く支持され、それぞれの系統上で多様化が独立に進行したことが明らかになった。また、分子と形態双方の情報よりネジレバネの新しい種の概念を提示し、コハナバチネジレパネ属は単独性コハナバチよりも真社会性コハナバチをより高い確率で宿主としており、しかも宿主特異性がきわめて高いことを示した。また、ネジレバネによる宿主の訪花行動の操作を検出するために、本研究では寄生されたハナバチの変化と訪花植物の送粉者への報酬に注目し、調査を行った。ネジレバネに寄生されたハナバチは生殖能力を失い営巣しなくなるため、幼虫の餌として花粉を集める必要がなくなり花粉に対する需要が変化する。またエゾアジサイはハナバチを中心に様々な昆虫が訪花するが、花粉のみを送粉者への報酬として提供しており、蜜を出さない。花蜜と花粉を出すトリアシショウマと、花粉のみを出すエゾアジサイが同時期に同所的に開花している場所で、どちらの花にも頻繁に訪花し、かつネジレバネの寄生がみられたニジイロコハナバチに特に注目し、7月に長野県小谷村周辺で調査を行った。ネジレバネに寄生されたハナバチは通常のハナバチと同様にエゾアジサイの花に訪花するが、花の上での行動は変化しており、寄生されたハチは花の上で採餌も集粉も行なわずネジレバネの1齢幼虫を放出するような行動を行なっていることを明らかにした。これらの研究成果は宿主とネジレバネの寄生系の実体の解明につながる重要なものである
著者
島田 信夫 河合 隆裕 斉藤 恭司 柏原 正樹 荒木 不二洋 中野 茂男
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究の目的とする多様体、特に複素多様体の幾何学と関連諸問題の研究に関して、複素空間、代数的多様体等の特異点の研究、偏微分方程式の解空間の構造、またそれに対する代数解析的研究、一般コホモロジー論、特に複素コボルディズム論の研究、代数的K-理論の研究、数理物理学的研究等様々の立場からの研究分担者による探求が進められ、多くの新たな成果と進展をみた。以下にその概要を述べる。1.島田はAdamsスペクトル系列の【E_1】-項を与えるラムダ代数の概念を、複素コボルディズム論におけるNovikovスペクトル系列の場合に拡張し、やはりその【E_1】-項を与えるMU-ラムダ代数を構成した。その幾何学的応用は今後の研究課題である。島川は多重圈の概念を活用して代数的K-理論における積構造について圈論的な存在証明を与えた、またそれらの同変理論も研究中である。2.斉藤恭司は正規ウェイト系に対応する孤立特異点をもつ超曲面に対して特異点解消、コンパクト化等の操作により、多くの重要かつ興味ある代数曲面の族を構成し、それらの分類および代数幾何学的特性について詳細な研究を行った。これは斉藤の従前からの一般ウェイト系、特異点、一般Weyl群と不変式論等の研究の進展継続を示す目ざましい成果である。成木は斉藤の仕事に関連して、或種の型の特異点解消に伴う楕円曲面系を簡明に構成した。3.中野,大沢は複素多様体上の或種の増大条件を満す正則函数の拡大に関する結果を得た。また大沢はK'dhler多様体と多変数函数論の研究を進めた。4.柏原,河合はD-が群の研究を進め多くの成果を挙げ、また三輪,神保は代数解析の方法を数理物理学へ適用し成果を得た。5.荒木は2次元Ising模型に対する相関函数の解析性に関する結果を得たまた中西,小嶋は場の理論の研究で成果を得た。その他、研究分担者による微分方程式、無限次元測度の研究がある。
著者
片山 一道
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

京都市の伏見区、かつての伏見城城下の西部にあたる場所で江戸時代の廃寺の墓地(伏見城跡遺跡)が調査でされ、約630人分におよぶ古人骨資料(伏見人骨資料)が発掘された。この資料を骨人類学や骨考古学的の方法で分析して、江戸時代人京都町民の顔立ちや体形などの身体特徴、平均寿命や人口曲線などに関する人口学的特徴、歯疾患や骨梅毒疾患などの罹患率を明らかにするとともに、主要なタンパク質摂取源を推定する食性分析、人骨の鉛濃度分析などを実施した。成人の平均身長は男性が158cmで女性が144cmほどと短躯であったこと、丸顔の人が多かったこと、出生児の平均余命は男性が40歳弱で女性が30歳弱ほどと短命であったこと、虫歯と梅毒の罹患が著しく高率であったこと、淡水産や海産の魚介類をタンパク質源として利用していたことなど、すくなからずの特記すべき研究成果を達成できた。
著者
吉田 聡 立花 義裕 小松 幸生 山本 雄平 藤田 実季子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

日本に豪雨をもたらす水蒸気は熱帯・亜熱帯の暖かい海から蒸発し、陸上へ流入する。しかし、極軌道衛星搭載マイクロ波放射計による鉛直積算水蒸気量(可降水量)の1日2回の観測では数時間で数kmの範囲に局所的な豪雨をもたらす降雨帯への水蒸気流入を把握することはできない。本研究では、船舶に搭載したGNSS受信機及び雲カメラ付きマイクロ波放射計と、新世代静止気象衛星ひまわり8号の多チャンネル熱赤外センサとの高頻度同時観測を元にした、海上可降水量の微細構造を水平解像度2kmかつ10分毎にリアルタイム推定する高解像度海上可降水量マップ作製手法を開発し、豪雨災害予測の定量化と早期警戒情報の高精度化に貢献する。
著者
五之治 昌比呂
出版者
京都大学
雑誌
西洋古典論集 (ISSN:02897113)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.39-59, 1999-08-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。A famous short story be Osamu Dazai, "Hashire Meros" and a nursery tale by Miekichi Suzuki are both based on the same Greek story known as 'Damon and Pythias, 'one of the anecdotes concerning a tyrant of Syracuse, Dionysius. This paper attempts to survey the Dionysius legends contained in Suzuki's work, especially the Damon-Pythias story, and to give a new point of view to Dazai's story. Suzuki's work is a collection of seven legends about Dionysius. It is unique in containing not only famous legends. like 'Damocles' sword, 'but also minor ones. His direct source is untraceable. But these anecdotes are extracted probably from Diodorus Siculus, Cicero, and Diogenes Laertius. A lot of classical authors recount the Damon-Phintias story. There are some differences among them. Remarkable differences are : 1. which is sentenced to death, and which becomes a hostage ; 2. the reason of the punishment ; 3 . the reason for requesting the release ; 4. the period of the release ; 5. whether the two accept the king as their third friend. Considering these points. Suzuki's version seems to be from Diodorus. The Damon story in Hyginus and that in Polyaenus are rather different from the other authors, in the protagonists' name and the reason and the period of the temporary release. In addition to that, there is a quite peculiar element in Hyginus that a torrent blocks the protagonist's way back to the tyrant. Authors of posterity used the Damon story for their literary works. The most famous is Schiller's ballad, "Die Burgschaft." He wrote this ballad from Hyginus' version. He took over its peculiarities and made his work more dramatic. Later he revised the ballad, changing the title to "Damon und Pythias" and the name, 'Moros, ' in the second verse to 'Damon.' Dazai wrote his short story using a Japanese translation of "Die Burgschaft" based on the text before revision and the annotation attached to it by the translator. Basically he followed Schiller faithfully, but he added a lot of new elements. The most remarkable is that he made the protagonist a shepherd living in a village. This setting suits the 'three days' release of Hyginus and Schiller. Besides, the characterization of the protagonist as a simple and honest person, significant to the plot and theme of this work, depends on this setting.
著者
卞 哲浩 三澤 毅 宇根崎 博信 代谷 誠治
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)において実施された加速器駆動未臨界炉(ADSR)の基礎実験から以下のような結論を得ることができた。1.ポリエチレン反射体領域に中性子ガイド(中性子遮蔽体およびビームダクトから成る)を導入し炉心内に設置した放射化箔の照射実験を行うことで、中性子ガイドの効果と妥当性を実験的に確認することができた。2.炉心中心およびターゲット領域において放射化箔法による中性子スペクトル測定を行った結果、放射化反応率およびアンフォールディング法によって中性子スペクトル情報を取得し、14MeV程度の中性子のスペクトルを把握するために最適な放射化箔を実験から選定することができた。また、放射化反応率をモンテカルロ計算コードMCNPによって求めることによって計算精度の確認を行うことができた。3.FFAG加速器から発生する100MeV程度のプロトンビームに照射したタングステンターゲットの放射化反応率測定から、100MeV付近の高エネルギー中性子のスペクトル情報に関する実験手法を確立することができた。同時に、FFAG加速器を角いたMCNPXによる解析では、アンフォールディング法によってスペクトル情報に関する解析が可能であることがわかった。今後の課題として、1.FFAG加速器の導入に伴い、プロトンのエネルギーが20〜150MeVでの反応度および反応率分布の静特性解析に加えて動特性解析をMCNPXを用いて行い、ADSR炉心の最適化設計を行う予定である。2.FFAG加速器の導入において、ターゲット付近での中性子の発生を従来よりも精度良く正確に把握するための測定手法の確立とモンテカルロ計算による計算精度の向上を検討する必要があると考えられる。