著者
原田 浩二 小泉 昭夫 Steinhauser Georg 新添 多聞
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

福島第一原子力発電所におけるがれき撤去作業に伴う原子炉3号機建屋からの放射性物質放出量を基にした大気拡散シミュレーションを行い、2013年8月に南相馬市で実測された大気中濃度、降下量を再現した。粉じんが降下したとされる南相馬市原町区10地点で、撹乱されていない箇所での土壌試料21検体について放射性ストロンチウム、プルトニウム分析を実施し、放射性ストロンチウムは比較的高い地点が見られるなど挙動、拡散は異なる可能性が示唆された。これらの結果から、二次拡散における粗大粒子の拡散は降下物量に有意な影響を与え、コメをはじめとする農産物汚染を引き起こしうることが示された。
著者
北澤 直宏
出版者
京都大学
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.273-302, 2013-01-31

This paper aims at assessing the relationship between religion and politics in contemporary Vietnam, with a focus on Caodaism reorganization. After the Vietnam War, the socialist government regarded religion as a nuisance and carried out a retaliatory re-education program—to no effect. In the process of clamping down on anti-government movements by devotees, the Communist Party conducted in-depth analysis on Caodaism and decided to remove the religious dignitaries, in line with their policy of suppressing religious authorities. In 1979, with the cooperation of some dignitaries, the government promulgated the Caodai Decree 01, aimed at the dissolution all Caodaism organizations. The Caodai Holy See was placed under the control of the state and changes were imposed; however, many branch temples subsequently reverted to selfmanagement. There are three possible reasons for this: first, the Holy See had lost all authority and influence over the branch temples; second, branch temples ignored the modified Holy See as the latter had obeyed the socialist government and betrayed Caodaism Law; third, there was no consistent policy in each province. These phenomena rattled the Communist Party, which feared its own collapse, in an echo of events in the Soviet Union. It thus embarked on a plan in 1992 to reorganize Caodaism, with the aim of occupying and controlling branch temples through "educated" dignitaries. While it is certain that Caodaism was officially recognized in 1997, this did not signal the beginning of religious freedom. On the contrary, it only reflected the Communist Party's policy to control religious opponents by authorizing religions.
著者
福間 将文
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

量子重力理論の新しい定式化として、量子力学の起源をランダムネスに置き、「ランダムネスから時空の幾何が発現する機構」を構築した。具体的には、マルコフ確率過程における遷移の難しさを定量的に表す量として「配位間の距離」という概念を初めて導入し、様々な確率過程からどのような時空が得られるのかを調べた。とくに行列模型の確率過程については、固有値を時空の座標とみなしながら、結合定数を付加的力学変数とする焼き戻しを行うと、拡大された配位空間に、3次相転移点をホライズンとする漸近的反ド・ジッター・ブラックホールの幾何が現れることを示した。
著者
永井 和
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.85-201, 2002-03

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
正高 信男
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ヘビの写真をもちいた筆者自身がおこなった最近の視覚探索課題の研究成果を総括した。ヘビの写真をもちいた視覚探索実験はパラダイムとして、安定して再現性がたかい状態で、簡便に被験者の恐怖および不安の水準を計測できるものであることが明らかになった。発達障害のある子どもでは、定型発達の子どもと比べて恐怖の水準がはるかに高いことが明らかになった。
著者
新川 敏光 安 周永 林 成蔚
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、日本の民進党(旧民主党)を韓国の「ともに民主党」、台湾の「民主進歩党」と比較研究することによって、日本におけるリベラル勢力の低迷の理由と再生の可能性を明らかにすることである。欧米との比較の視点から、日韓台のリベラル政党の歴史と政権期の政策を比較検討する。それによって、三カ国のリベラル政党がおかれている共通点と相違点を明らかにする。具体的には、5月にヨーロッパの社会民主主義に関する研究者を招聘し、研究会を行う。その際に、研究メンバー間に今後の研究計画を再確認するとともに、本研究計画に対してヨーロッパ研究者から助言を得て、今後の課題と方針を一層明確にする。8月には韓国調査を行う予定であった。初年度は、当初の研究計画以上の成果を得ることができた。5月に研究代表と分担者が集まり、日韓台のそれぞれの政治状況を報告してもらい、本科研の計画を明確にした。また7月には、一橋大学の田中拓道教授を、2月には法政大学の山口二郎教授を招聘し、研究会を行った。欧米の社会民主主義の動向と日本の野党再編を把握することができた。計画当初は今年度に韓国の調査を行う予定であったが、去年の北朝鮮のミサイル実験等の情勢を踏まえ、韓国調査を中止し、2年目に行う予定の台湾調査を先に行った。訪問先は、台湾総統府のスポークスパーソンや次長、台湾日本関係協会の会長、民進党の幹事長、時代力量の創立メンバー等であった。こうしたインタビューから民進党政権の復権には、国民党の腐敗だけではなく、対中関係をうまく利用した民進党の戦略と市民運動の影響があった。東アジアにおいても政党の対立軸とリベラル政党の戦略が大きく異なっているが確認できた。
著者
高橋 義人
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

一般民衆のあいだで語り継がれてきたメルヘンのなかには、キリスト教が導入される以前の古代ゲルマンの古い神話や信仰の痕跡が残っている。『子どもと家庭のためのメルヘン集』を収集しながら、グリム兄弟はそのような考えに想到した。本研究は、グリム兄弟のそうした意図がどの程度まで正しかったかを確証し、キリスト教導入以前のヨーロッパ文化を復元することにある。本研究の結果、「灰かぶり」のようなメルヘンには、おそらくは太古にさかのぼるヨーロッパの民衆の農耕儀礼が反映していることが判明した。それを知る上で重要だったのは、ヨーロッパの辺境の地に残る古い祭りだった。祭りにおいて村人たちが動物や植物に変身して冬を追い払おうとするように、「灰かぶり」やその類話において女主人公は動物の毛皮や植物でできたマントを身にまとい、危機から脱出する。本研究は、両者の類似性を緻密に跡付けた。「いばら姫」に登場する塔の上の老婆を、グリム兄弟は古代ゲルマン神話の女神ホルダとして描いた。ホルダは古代ゲルマンの地母神であり、地上の生死、吉凶、豊作と不作を司っていた。その地母1神を誕生パーティに招待しなかった以上、いばら姫が長い眠りにつくのは当然のことだった。ホルダは「ホレおばさん」にも登場する。ホルダ(ホレ)は働き者にはほうびを、怠け者には罰を与えるという古代ゲルマンの信仰を、メルヘン「ホレおばさん」に明瞭に見て取ることができる。また「蛙の王さま」と日本民話の「鶴の恩返し」を比較検討することによって、大昔の人類は、人間から動物、動物から人間への変身は比較的普通に起きると考えていたことが判明した。そして前者のタイプが、魔女ののろいによって人間から動物に変身させられるというグリム童話のメルヘンに、そして後者のタイプが、自分を助けてくれた人間に恩返しをするために、人間(多くは若い女性)に変身し、人間の妻となって甲斐甲斐しく働くという日本民話になったと考えられる。本研究を通して、西欧文化と日本文化の根底に流れる共通のルーツを明らかにすることができた。
著者
山中 伸弥 青井 貴之 中川 誠人 高橋 和利 沖田 圭介 吉田 善紀 渡辺 亮 山本 拓也 KNUT Woltjen 小柳 三千代
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2007

4つの転写因子を体細胞に導入することで多分化能を持ったiPS細胞が樹立できる。c-Mycを含めた4因子を用いた場合にキメラマウスで腫瘍化が高頻度で認められ、レトロウイルス由来のc-Mycが原因の一つであることが分かった。樹立条件などを検討しMycを用いずにiPS細胞を作ることに成功したが、性質の点で不十分であった。c-Mycの代替因子の探索を行いL-Mycを同定した。L-Myc iPS細胞は腫瘍化リスクもほとんど認められず、性質の点でも十分であった。レトロウイルスを用いずにプラスミドを用いることでもiPS細胞の樹立に成功した。このことにより体細胞への初期化因子の挿入が起こらずより安全な作製方法の確立に成功した。神経細胞への分化誘導とそれらの移植実験により安全性を検討する方法の確立も行った。また、肝細胞、血液細胞、心筋細胞への分化誘導系も確立した。iPS細胞の性状解析をディープシークエンサーなどを用いて詳細に解析する技術の導入も完了し、網羅的な遺伝子発現、メチル化解析、スプライシング解析なども行った。
著者
丸山 善宏
出版者
京都大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

本プロジェクトのタイトルである「数学基礎論と量子基礎論の圏論的統合と機械学習における圏論的双対性へのその応用」はその研究成果の観点から言って主として三つの内容を含む。特に「数学基礎論と量子基礎論の圏論的統合」には二つの意味がある。一つにはそれは「数学基礎論的な空間概念と量子基礎論的な空間概念の統合」である。もう一つの意味は「数学基礎論的な双対性と量子基礎論的な双対性の統合」である。そしてまた最初の統合は「伝統的量子論理と圏論的量子力学のLawvere的統合」をも含んだものである。残る一つが「機械学習(のカーネル法)における圏論的双対性(或は人工知能の双対性)」である。以上が主な研究成果である。
著者
藤井 進也
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2010-03-23

新制・課程博士
著者
増原 善之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ラオス国フアパン県およびサワンナケート県内の16郡42村において村の歴史や土地の伝承等を採録するとともに、フランス植民地時代以前の地方文書および地方行政に関わる物品(文書筒、印章)について現地調査を行った。成果発表として、2010年12月、ラオス国立大学においてワークショップを開催するとともに、2011年3月、本研究により収集されたデータおよび上記ワークショップの発表原稿からなる報告書を刊行した。
著者
石田 毅 直井 誠 陳 友晴 奈良 禎太
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

地球温暖化の速効的対策であるCO2(二酸化炭素)地中貯留では,大量のCO2を地下深部に圧入するが, CO2は地下深部ではさらさらとして粘度が小さい超臨界状態となるため周辺地層に与える影響を検討して必要がある.本研究では,現場の岩盤に超臨界CO2の圧入しその際の微小な破壊音であるAEを測定した.その結果,超臨界CO2は水の圧入に比べてAEの震源が広く分布するが,圧入位置での亀裂造成後時間が経過すると亀裂閉合によると思われるAEが観測された.このようなAEは岩盤の破壊ではなくガス抜けよるものと思われ,例えAEの震源分布が広がっても周辺地層に安定性に与える影響は小さいと思われた.
著者
山室 信一 小関 隆 岡田 暁生 伊藤 順二 王寺 賢太 久保 昭博 藤原 辰史 早瀬 晋三 河本 真理 小田川 大典 服部 伸 片山 杜秀
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究においては、女性や子ども更には植民地における異民族までが熱狂をもって戦争に参与していった心理的メカニズムと行動様式を、各国との比較において明らかにすることを目的とした。そこでは活字や画像、音楽、博覧会などのメディアが複合的に構成され、しかも複製技術の使用によって反復される戦争宣伝の実態を明らかにすることができた。そして、このメディア・ミックスを活用する重要性が認識されたことによって、外務省情報部や陸軍省新聞班などが創設されることとなった。戦争ロマンの比較研究から出発した本研究は、戦争宣伝の手法が「行政広報」や「営利本位の商業主義」に適用されていく歴史過程を明らかにすることによって、総力戦という体験が現代の日常生活といかに直結しているのかを析出した点で重要な成果を生んだ。
著者
橋本 千絵 古市 剛史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ヒトに最も系統的に近いチンパンジーにみられる「妊娠しにくい」形質の進化の解明のため、ウガンダ共和国カリンズ森林保護区に生息する野生チンパンジーを対象に、直接観察によるメスの性行動のデータと、ヒト用妊娠検査キットを用いた妊娠時期の判定とをあわせて分析した。さらに、妊娠検査キットによる妊娠判定を一歩進め、2009年度より尿や糞試料によるホルモン分析の予備調査を行った。
著者
藤縄 謙三
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.65-"118-9", 1975-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。