著者
鷲家 勇紀 西川 友章 藤野 槌美
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.433-438, 2014-09-15 (Released:2014-10-31)
参考文献数
10
被引用文献数
4

市販のコーヒー焙煎豆は,通常エージング処理が施されている.エージング処理によってコーヒー抽出液中の多くの揮発性成分が減少する.エージング処理をしていないコーヒー焙煎豆は,血中のIgG,およびIgAの産生増強効果を誘導する.関与する成分は2,5-dimethylpyrazine,2,6-dimethylpyrazineであった.血中IgGの産生増強効果には2-methylpyrazineも関与した.これらの成分は何れもエージング処理時間の経過と共に減少する成分であった.以上の結果から,エージング処理をしていないコーヒー焙煎豆抽出液は,血中のIgG,およびIgAの産生増強効果を有することが分かった.エージング処理は焙煎豆中の有効成分の減少を招き,血中のIgG,およびIgAの産生増強効果を弱めることが分かった.
著者
吉村 美香 長野 宏子 辻 福美 Anh To Kim 大森 正司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.603-610, 1998-10-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

(1) 酸肉にはいずれの試料においても,LBSもしくはTATACのどちらか,または両方の培地に生育が見られた.また,ポテトデキストロース寒天培地においては全ての試料で生育が普遍的に見られた.層そして,DHL寒天培地において多くの試料で生育が見られた.(2) 一般成分を分析した結果,豚肉のpHは5.61で,酸肉(ネムチュア)のpHは3.81と低かった.また,乳酸の生成が顕著に見られた.(3) 遊離アミノ酸は,酸肉(ネムチュア)の方が多く含まれ,特に旨味成分のグルタミン酸が多く,次いでアラーン,ロイシンなどが多く含まれていた.これは,豚肉のタンパク質の自己消化による変化とほぼ一致した.(4) SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動及びペプチドパターンの分析の結果,発酵によって肉タンパク質が分解し,低分子タンパク質やペプチドの生成が認められた.
著者
松井 崇晃 石崎 和彦 中村 澄子 大坪 研一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.204-211, 2013-05-15 (Released:2013-06-30)
参考文献数
28
被引用文献数
5

イネにおいてLgc1遺伝子を用いて胚乳貯蔵タンパク質中のグルテリンを低下させた低グルテリン品種が開発されている.本報告ではLgc1座に関する準同質遺伝子系統対を2組用いてLgc1遺伝子による米の低グルテリン化が米粉の特性や米飯の食味に与える影響を検討した.今回用いた準同質遺伝子系統対では低グルテリン系統で味度値の低下が見られ,米飯の食味低下が示唆された.また,低グルテリン系統のアミロース含有率は通常のタンパク質組成の系統を約1ポイント上回った.ラピッド·ビスコ·アナライザーを用いた糊化物理特性において低グルテリン型の系統では最終粘度が有意に上昇し,コンシステンシーが増加した.テンシプレッサーを用いた米飯の物性測定においては米飯表層の粘りが低グルテリン型の系統で有意に低下し,硬さと粘りのバランス度においても有意な低下が認められた.15°Cにおける白米粒の吸水においては低グルテリン化による有意な差は認められなかった.一般に低グルテリン品種は通常のタンパク質組成の品種に比べて米飯の食味が不十分であることがこれまでにも指摘されている.今回の測定において低グルテリン系統と通常のタンパク質組成を持つ系統との間に見られた差がタンパク質組成の変化だけによるものとは限定できなかったが,低グルテリン品種の米飯の食味や加工特性の違いの一因と考えられた.
著者
久永 絢美 阪中 達幸 吉岡 照高 杉浦 実
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.83-89, 2019-03-15 (Released:2019-03-19)
参考文献数
15
被引用文献数
2

ウンシュウミカンは日本国内で最も消費量の多い国産果樹の一つであり,近年,ウンシュウミカンに多く含まれる β-クリプトキサンチンが骨の健康維持に有効であることが示されている.本研究において,可視・近赤外分光法による非破壊光センサーと最近新たに開発された β-クリプトキサンチンの簡易測定法を組み合わせることで,果実中の β-クリプトキサンチン含有量を非破壊で推定できるか検証を行った.2016年度に入手した340個のウンシュウミカン果実について,非破壊光センサーによる吸収スペクトルと簡易測定器による含有量データとの関連についてPLS回帰分析を行った.これらの回帰分析から得られた検量線の妥当性を評価したところ,決定係数(R2)は0.897,RMSEP値は0.169,RPD値は3.01であった.これらの結果から,β-クリプトキサンチン簡易測定器と非破壊光センサーを組み合わせることで,ウンシュウミカン果実中のβ-クリプトキサンチン含有量を精度高く非破壊で推定できることが判明した.
著者
稲荷 妙子 竹内 徳男
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.319-324, 1997-04-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
17
被引用文献数
7 12

イチゴ(宝交早生)を熟度別(未熟果,緑白果,成熟果)に分別採取して,ペクチン質とイチゴ果実の成熟との関係を把握しようと試みた.ペクチン質は,イチゴ可食部の熱エタノール不溶性成分(AIS)を収得し,さらに溶媒によりWP,PP,HP,KPに抽出分画し,次いで,それらを構成するガラクチュロン酸,全糖,中性糖,メトキシル基,無機成分含量及び分子量分布形態を比較解析した.(1) イチゴ100g当たりのAISの収量は,未熟4.06g,緑白1.87g,成熟1.45gと成熟に伴い減少した.同様にペクチンの主な構成糖であるガラクチュロン酸の総量は未熟736mgに対し,緑白359mg,成熟279mgと明らかに減少した.(2) 未熟段階におけるイチゴペクチンはヘミセルロース等と結合した水不溶性ペクチンHPが主体をなすが,完熟時では水溶性ペクチンWPとほぼ同濃度まで減少した.一方,WPは未熟16.7%,緑白28.1%,成熟34.8%と成熟するに伴って増大した.このことから,イチゴの成熟に伴う多汁化と軟化にはHPの減少とWPの増加が寄与すると考察した.(3) ガラクチュロン酸と中性糖量の比較で,いずれの成熟段階でもガラクチュロン酸量が多いペクチンはWP,PP,HPであり,逆にKPは中性糖が高かった.また,前3者はメトキシル含量が7%以上で高メトキシルペクチンと考えられた.(4) 未熟時のイチゴペクチンの分子量は,他の果実のペクチンより大きく,WP,PPは約100万,HPは30万,KPは1万と推定され,HP,WP,PPは成熟に伴って低分子化の傾向があり,特にHPは緑白時では約15万,成熟時では10万と推定され,イチゴの成熟に従って明らかに低くなった.(5) イチゴ果実,AIS,各抽出画分ペクチン中には無機成分(K,Na,Mg,Ca,Fe)が測定されたが,いずれも成熟するにつれてやや減少の傾向にあった.特に一般に金属イオンと結合して水に不溶といわれるPPにはMg,Caの含有量が高かった.
著者
広瀬 直人 小野 裕嗣 前田 剛希 和田 浩二
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.27-31, 2019
被引用文献数
2

<p>試験用黒糖製造において,仕上加熱工程と冷却撹拌工程を連続して実施できる,卓上型の黒糖試験製造装置を開発した.この装置は,PC制御されたマイクロヒーターと水道水利用の冷却管を備えた加熱冷却容器,および撹拌トルクを検出できる撹拌装置から構成される.この試験製造装置を用いて黒糖を試作する過程で,冷却撹拌工程の終了時に品温が上昇する現象を見出した.この品温上昇は,温度上昇幅と糖蜜の推定比熱からショ糖の結晶熱が要因と推測された.</p>
著者
中川 禎人 奥田 弘枝
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.727-730, 1996-06-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

水,乳酸,NaClおよびSuc溶液中で加熱した昆布の軟化機構を明らかにするため,これらのモデル調味液中で浸漬加熱した昆布の細胞壁構成物質の組織形態を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した.TEM観察の結果,水透析のみ行った試料は,組織の表面にわずかに浮き出た不規則に分布する微小繊維がアモルファスな細胞壁基質の中に半ば埋まった状態,水区は微小繊維が浮き出た状態,乳酸区は,水区と同様アモルファスな細胞壁基質が除去されていたが,水区と比べて繊維の丸みが取れ偏平で押しつぶしたような様相,NaCl区は,アモルファスな細胞壁基質が除去されており,繊維は水区と同様丸みがあって長く伸びた状態,Suc区は,微小繊維間を埋めるアモルファスな細胞壁基質がわずかに観察され,水区に近い形態であった.
著者
植野 壽夫 増田 秀樹 武藤 亜矢 横越 英彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.435-441, 2012-09-15 (Released:2012-10-31)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

本研究では,ストレス性疾患として代表的なうつ病と胃潰瘍に対するラベンダー熱水抽出物(Lavender aqueous extract, LAE)の効果を,それぞれの疾患モデルマウスを用いて検討した.抗うつ試験では,うつ病の動物モデルとして汎用さている強制水泳試験(FST)を用いてLAEの長期投与による効果を検証した.1日当たり500-2500mg/kgのLAEを15日間マウスへ反復経口投与することにより,自発運動量に影響することなくFSTにおける無動時間が有意に短縮した.さらに,抗うつ薬であるイミプラミン30mg/kgを15日間反復投与した場合も同様の挙動を示した.これらの結果から,LAEはマウスへの長期投与において抗うつ様作用を有することが示唆された.抗ストレス潰瘍試験では,マウスに強制水泳を負荷することにより発生させた実験的ストレス潰瘍に対して,予め500-2000mg/kgのLAEを単回経口投与することにより,マウスの潰瘍面積が対照群と比べて有意に減少した.以上の結果から,LAEの摂取がストレスに起因するうつ病や胃潰瘍の予防・軽減に有効である可能性が示唆された.
著者
石井 靖子 中原 久恵 服部 滋 川端 晶子 中村 道徳
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.32-37, 1995-01-15
参考文献数
13
被引用文献数
1

熱帯産澱粉,すなわち,ショクヨウカンナ,アロールート,キャッサバ,サゴの澱粉と対照としてバレイショとトウモロコシの澱粉を選び,それらより分離したアミロペクチンにつき枝切り酵素であるイソアミラーゼを作用させて,その変化を検討した.すなわち光散乱法により重量平均分子量M<SUB>W</SUB>と分子の広がりを示す慣性半径<I>R</I><SUB>G</SUB>の測定,粘度測定により固有粘度〔η〕を算出し,枝切り過程の変化を測定した.<BR>その結果M<SUB>W</SUB>と<I>R</I><SUB>G</SUB>の関係は,M<SUB>W</SUB>が(4-5)×10<SUP>6</SUP>近辺に減少する過程では,M<SUB>W</SUB>に対して<I>R</I><SUB>G</SUB>がやや大きいもの(キャッサバ,トウモロコシ),小さいもの(サゴ),両者の中間のもの(バレイショ,ショクヨウカンナ,アロールート)が認められた.しかし6種とも近接し同じ様な勾配で減少していることから,6種ともM<SUB>W</SUB>の減少に対する<I>R</I><SUB>G</SUB>の減少の割合は大きな差はみられず,従って同じような分解過程を経ていくものと思われる.<BR>更に分解が進むと,ばらつきが起こり差が見られた.またM<SUB>W</SUB>や「η」の減少速度には,種類により差があり,イソアミラーゼが作用しやすいものと,しにくいものがあるようである.
著者
大島 誠 杉浦 実 上田 佳代
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.114-120, 2010-03-15 (Released:2010-05-01)
参考文献数
22
被引用文献数
1 6

軽度脂質代謝異常を有する肥満男性26名に対し,β-クリプトキサンチンを強化させたウンシュウミカン果汁(強化果汁介入群)と通常量のβ-クリプトキサンチンを含有するウンシュウミカン果汁(対照果汁介入群)を1日160g,8週間連続摂取させ,介入前と介入4週間および8週間後の血清β-クリプトキサンチン濃度,脂質代謝および肝機能指標値の変化について検討した.果汁投与後の血清β-クリプトキサンチン濃度はいずれの群においても介入前に比べて有意に上昇し,この上昇は強化果汁投与群においてより顕著であった.強化果汁介入群における8週後の血中ALT値およびγ-GTP値は4週後に対して有意に低下していた.血清β-クリプトキサンチンと肝機能指標値との関連について横断的な解析を行ったところ,いずれの肝機能指標値も介入前には血清β-クリプトキサンチン濃度と有意な相関は認められなかったが,介入4週および8週後ではそれぞれ有意な負の相関が認められ,これらの負の相関は8週後においてより顕著であった.一方,強化果汁介入群では,投与8週後のHDLコレステロール値およびLDLコレステロール値の低下がみられたが,対照果汁介入群とは有意な差は認められなかった.これらの結果から,β-クリプトキサンチンを豊富に含むウンシュウミカン果汁の摂取は肝機能障害の改善に有効である可能性が示唆された.
著者
奚 印慈 山口 敏康 佐藤 實 竹内 昌昭
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.310-316, 1998-05-15
参考文献数
12
被引用文献数
16

ステビア茎粗抽出物は強い抗酸化活性を示した.その活性は抗酸化指数で葉に比べ5倍程度高く,現在ほとんど利用されていない茎の新たな利用価値を提示した.ステビア抽出末はマイワシ油およびリノール酸に対して100ppmの添加で抗酸化効果を発現した.その効果は同濃度のBHT,α-Tocに匹敵する強さを示した.ステビア抽出末はα-Tocおよびクエン酸を併用することにより抗酸化効果が増強された.<BR>ステビア抽出末の抗酸化有効成分は主として透析外液(分画分子量500)に存在した.外液濃縮物を逆相カラムクロマトグラフィー.薄層クロマトグラフィーで分画し,複数の有効画分を認めた.その多くは,ポリフェノール化合物であったが,最も強い効果を示した成分にはカリウムが高濃度で存在した.
著者
奚 印慈 山口 敏康 佐藤 実 竹内 昌昭
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.310-316, 1998-05-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
12
被引用文献数
8 16

ステビア茎粗抽出物は強い抗酸化活性を示した.その活性は抗酸化指数で葉に比べ5倍程度高く,現在ほとんど利用されていない茎の新たな利用価値を提示した.ステビア抽出末はマイワシ油およびリノール酸に対して100ppmの添加で抗酸化効果を発現した.その効果は同濃度のBHT,α-Tocに匹敵する強さを示した.ステビア抽出末はα-Tocおよびクエン酸を併用することにより抗酸化効果が増強された.ステビア抽出末の抗酸化有効成分は主として透析外液(分画分子量500)に存在した.外液濃縮物を逆相カラムクロマトグラフィー.薄層クロマトグラフィーで分画し,複数の有効画分を認めた.その多くは,ポリフェノール化合物であったが,最も強い効果を示した成分にはカリウムが高濃度で存在した.
著者
上﨑(堀越) 菜穂子 鮫島 隆 大森 康雄 府中 英孝 三明 清隆 森岡 豊 小谷 健二 小齊 喜一 後藤 清太郎 渡辺 至 中島 誠人 猪口 由美 西坂 嘉代子 五十君 靜信 新村 裕 服部 昭仁
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.347-356, 2013-07-15 (Released:2013-08-31)
参考文献数
34
被引用文献数
1

非加熱食肉製品である生ハムにおけるaWおよび乳酸ナトリウムによるL. monocytogenesの制御について5試験機関で検討した.(1) 血清型の異なるL. monocytogenesの増殖に対する乳酸ナトリウムの影響試験から,供試した菌株の乳酸ナトリウムに対する感受性は,4種の菌株間で差がないことが明らかとなった.(2) 試験用生ハムで,いずれの試験機関でもaW 0.93(0.930≤aW<0.940) では,L. monocytogenes (血清型4b,Scott A株) は,10℃で56日間保管した場合に増殖しなかった.このことから,生ハムではaW0.93であれば,原料肉のpHや食塩濃度,亜硝酸塩および低温保管(10℃) などの条件が相加,相乗的に作用して,L. monocytogenesの増殖が抑制されるものと推測された.(3) 今回の試験では,aW 0.94(0.940≤aW<0.950) であれば,2%の乳酸ナトリウムを添加することによってL. monocytogenesの増殖が抑制されることが示唆された.
著者
斉藤 絵里 岩附 聡 小出 醇 矢嶋 瑞夫 小島 靖
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.454-459, 2011-09-15 (Released:2011-10-12)
参考文献数
10

ペポカボ茶種子水抽出物の夜間頻尿改善作用を検討するため,脱脂ペポカボチャ種子粉末をティーバッグに入れ抽出したお茶を用いてヒト試験を行った.その結果,夜間排尿回数が摂取前期間と比較してペポカボ茶摂取1週目から有意に減少した.摂取前期間で平均2.23±0.77回であったのに対し,ペポカボ茶摂取3週目では1.30±0.51回と有意に減少した.また排尿時の排尿スピード,尿切れ,残尿感についても摂取前期間と比較して改善が認められた.さらに,睡眠についても改善が認められた.以上のことから,ペポカボ茶は夜間頻尿改善作用を有し,睡眠改善作用を持つ可能性が示唆された.我々のこの研究結果は,種子中の脂溶性成分以外の水抽出物に,排尿障害改善作用があることを明らかとした新しい知見である.
著者
蔦 瑞樹 杉山 純一 相良 泰行
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.73-80, 2011-03-15 (Released:2011-04-21)
参考文献数
25
被引用文献数
3

A NIR spectral imaging apparatus was developed to obtain information on spectrally discriminated images and the location of material to be measured. The apparatus consisted mainly of a CCD camera, a liquid crystal tunable filter and a spectral illuminator, which consisted of a xenon lump as well as a grating spectrometer. The sample surface image could be captured at any wavelength from 400nm to 1100nm. To investigate the performance of the apparatus, it was employed in the measurement of sugar content distribution at the surface of a fresh green melon cut in half and in the detection of foreign materials among blueberries. The absorbance at 676nm was found to be highly correlated with the sugar content in fresh green melons. Next, the intensity of each pixel of the images was converted into sugar content. By assigning the sugar content to a linear color scale, the sugar distribution of the melon was visualized. The plant organs could be detected by the second derivative absorbance image at 680nm, which is an absorption band of chlorophyll. The second derivative absorbances for blueberries and plant organs were determined in the image. The positions of pixels judged as plant organs in the detection image were in good agreement with the actual locations where plant organs had been placed. The apparatus demonstrated that plant organs contaminating the raw blueberry materials could be detected using the proposed methodologies.
著者
中村 善行 高田 明子 藏之内 利和 増田 亮一 片山 健二
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.62-69, 2014-02-15 (Released:2014-03-18)
参考文献数
24
被引用文献数
4 6

糊化温度が通常のサツマイモ品種・系統より著しく低いデンプンを含有する品種「クイックスイート」における加熱に伴うマルトース生成の機序を通常のサツマイモ品種「ベニアズマ」と比較検討した.50°Cから100°Cまで10°C毎に変えた温度で加熱した塊根から組織液を採取し,その糖度ならびにマルトースおよびスクロース含量を測定するとともに,同じ塊根から調製した粗酵素液の β-アミラーゼ活性を可溶性デンプンを基質として定量した.また,塊根組織細胞内のデンプン粒の形態を走査型電子顕微鏡で観察し,糊化度を β-アミラーゼ-プルラナーゼ法で調べた.「クイックスイート」では β-アミラーゼが高い活性を示す60°Cから塊根細胞内のデンプンが糊化した.また,デンプンが完全に糊化する80°Cにおいても β-アミラーゼの活性は維持されていた.他方,「ベニアズマ」では加熱温度が80°C以上からデンプン糊化が確認されたが,この温度域では β-アミラーゼ活性は大きく低下していた.両品種の β-アミラーゼに対する温度の直接的影響はほぼ同じであったことから,80°Cで加熱された「クイックスイート」塊根で β-アミラーゼ活性が未加熱塊根なみに維持されたことは当品種のデンプンが温度の低い加熱早期から糊化することと密接に関連すると推察される.すなわち,「クイックスイート」では「ベニアズマ」に比べ,より低い温度約60°Cから80°Cを超える高温に至るまでの広い温度域でマルトース生成が持続するため,「ベニアズマ」より糖度が高くなると考えられた.
著者
奥西 智哉 中村 健治 宮本 守 宮下 香苗
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.409-413, 2012-08-15 (Released:2012-09-30)
参考文献数
14
被引用文献数
6 3

加水量を変えたドウを作成し,ドウの評価を3つの機関において行った.これらの機関では,ドウミキシングのための機器が相互に異なり,ミキシング条件も異なるが,品質の良いドウを作成するための加水量は同じであった.このことから,米粉パンにおいて適正加水量はその組成に応じて固有の値があることが明らかになった.材料組成の異なる各種米粉パンを用いた試験により,適正加水量の決定手段はファリノグラフが適しており,400BUの最高粘度を与える加水量が適正であることが明らかになった.

1 0 0 0 ヒスタミン

著者
里見 正隆
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, 2010-08-15
参考文献数
2
被引用文献数
2

ヒスタミンは分子式C<SUB>5</SUB>H<SUB>9</SUB>N<SUB>3</SUB>,分子量111.14の活性アミンで,アミノ酸であるヒスチジンの脱炭酸反応で誘導される.無色,無臭で一般的な加熱調理では分解しない.人体では肥満細胞のほか,好塩基球やECL細胞(enterochromaffin-like cell)がヒスタミン産生細胞として知られている.血圧降下,血管透過性亢進,平滑筋収縮,血管拡張,腺分泌促進などの薬理作用があり,アレルギー反応や炎症の発現に介在物質として働く.生体内で普段は細胞内の顆粒に貯蔵されており,細胞表面の抗体に抗原が結合するなどの外部刺激により細胞外へ一過的に放出される.また,マクロファージ等の細胞ではヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)により産生されたヒスタミンを顆粒に貯蔵せず,持続的に放出することが知られている.食品中に蓄積されたヒスタミンを摂取すると,アレルギー様症状を呈するためアレルギー様食中毒と呼ばれている.<BR><B>1. アレルギー様食中毒</B><BR>アレルギー様食中毒の原因となるヒスタミンは,食品中のヒスチジンが,微生物により変換されて生じるもので,食品のなかでもサバやマグロなど,ヒスチジンを大量に含む赤身魚は原因食品となることが多い.原因物質を許容量以上食べると症状が出る食物アレルギーと異なり,アレルギー様食中毒は,魚介類が新鮮でヒスタミンが大量に含まれていなければ食中毒は起こらない.水産物のヒスタミン生成の原因となるのは主に腸内細菌,海洋細菌および乳酸菌で,鮮魚の場合は主に腸内細菌および海洋細菌,発酵食品の場合は乳酸菌による蓄積事例が報告されている.水産物のヒスタミン量についてCODEXをはじめ各機関で規制値を設けているが,我国では規制値を設定していない.毎年,学校給食等で20件程度の食中毒事例が報告され,患者数は500名程度,死亡例は報告されていない.原因食品として赤身魚加工品が多いとされている<SUP>1) </SUP>.<BR><B>2. ヒスタミン生成菌</B><BR>ヒスタミン生成菌はヒスチジン脱炭酸酵素(EC.4.1.1.22)を有し,低pHストレスに応答してヒスタミンを生成すると考えられている.2種類のアイソザイムが知られており,補酵素にピリドキサル五リン酸(PLP)を要求するPLP依存型酵素と,活性中心がピルボイル基であるピルボイル酵素に分けられる.PLP依存型HDCはグラム陰性菌の他,哺乳類の肝臓等に存在し,ピルボイル型HDCはグラム陽性細菌にのみ存在する.<BR>(1) PLP依存型HDC<BR>分子量約170kDa,四量体で,補酵素としてPLPを要求する.<I>Morganella morganii</I>を含む腸内細菌群や海洋性の<I>Photobacterium damselae</I>および<I>P. phosphoreum</I>等のグラム陰性菌が保有する<SUP>2) </SUP>.本酵素を有する細菌は鮮魚や加工水産物のヒスタミン蓄積の原因菌と考えられている.海洋由来のヒスタミン生成菌には好冷性のものも存在するため,冷蔵保存中でもヒスタミンが蓄積することがあり,注意が必要である.酵素および細菌ともに加熱により失活または,死滅する.<BR>(2) ピルボイル型HDC<BR>分子量約200kDa, &alpha;, &beta;サブユニットで構成されるヘテロ六量体で,翻訳後一本のペプチド鎖が&alpha;, &beta;サブユニットに切断され,&alpha;サブユニットにピルビン酸から誘導されるピルボイル基を修飾後,成熟酵素として機能すると考えられている.本酵素は<I>Lactobacillus</I>属や<I>Oenococcus oenii</I>等の乳酸菌,<I>Staphylococcus</I> sp., および<I>Clostridium perfringens</I>のようなグラム陽性菌に存在し,チーズ,ワイン等の農産発酵食品の製造において問題となる.水産発酵食品では好塩性乳酸菌<I>Tetragenococcus</I> spp. がヒスタミン生成菌として分離されている.<BR>鮮魚では温度管理が悪いと筋肉組織が速やかに崩壊し,体表や腸内の細菌が侵入する.通常は腐敗菌もヒスタミン生成菌とともに侵入して腐敗臭を発するため,ヒスタミンの蓄積が起こるより早く食用に適さないと判断できるが,ヒスタミン生成菌のみが増殖できる特殊な環境が揃うと,官能的に可食と判断できてもヒスタミンを大量に蓄積している状態になり,食中毒を引き起こすと考えられている.ヒスタミン蓄積の予防は通常の食中毒防止の3原則と同様,「つけない」,「増やさない」「やっつける」を実践することが大事である.
著者
植村 邦彦 高橋 千栄子 金房 純代 小林 功
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.516-519, 2016-11-15 (Released:2016-12-23)
参考文献数
6
被引用文献数
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0.75MPaの圧力下で4秒間の連続通電加熱することにより98℃まで味噌を昇温させた結果,味噌に添加した枯草菌を2.7対数減少させることが分かった.一方,100℃60分の通常加熱では,枯草菌芽胞は1.6対数しか減少しなかった.このとき,通電加熱前後では味噌の色変化が認められなかったのに対し,温浴加熱では褐変が認められ,明度が20ポイント低下した.したがって,連続通電加熱は,味噌を褐変することなく,味噌の中の枯草菌芽胞のような耐熱性細菌を失活可能なことが分かった.本研究で用いたモーノポンプは吐出圧の制限のため内圧を0.75MPa以上とすることができなかったが,吐出圧のさらに大きなポンプを利用することにより,味噌の温度を100℃以上に安定的に昇温できれば,さらに耐熱細菌の殺菌効果を高めることが可能になると考えられる.本研究で用いた連続通電加熱装置と同等の装置は既にフロンティアエンジニアリングから市販されており,実用規模のスケールアップは実現可能である.