著者
松木 玲子
出版者
医学書院
雑誌
助産婦雑誌 (ISSN:00471836)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.46-53, 1993-01-25

妊婦雑誌花ざかりの時代 妊婦さんのための雑誌,いわゆるマタニティ雑誌が今や絶好調である。現在出ているのは月刊の『バルーン』(主婦の友社)『ピー・アンド』(小学館)『マタニティ』(婦人生活社)の3誌が中心。創刊から7〜8年がたつ。この間も出産率は低下していったが,これらの雑誌の発行部数は逆にじわじわと増え続け,今では3誌の合計が60万部近くに達するというから驚く。現在,日本全国の妊婦さんは約120万人。単純に計算すると,妊婦さんの2人に1人はこういう雑誌を愛読しているわけである。 マタニティ誌が次々に創刊された当時は,松田聖子やアグネスチャン,竹下景子などの芸能人が表紙を飾り,「出産・育児のファッション化」と皮肉られたものだった。一時の熱は冷めたものの,これらの雑誌には今も相変わらずおしゃれな妊婦さんがにこやかに登場し,かわいい赤ちゃんグッズがあふれ,「ファッショナブルで楽しいお産」「明るい妊娠」のイメージを振りまいている。かつての苦しいお産はもうなくなってしまったのだろうか。それなら,こんなに喜ばしいことはないのだが──。
著者
永田 奈々恵 裏出 良博
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.621-628, 2012-06-01

はじめに 睡眠の目的の1つはエネルギーの消耗を防ぎ,脳機能を回復させることである。睡眠不足になると,仕事の効率が上がらず,ケアレスミスも多くなる。またわれわれは,日常生活の中で,徹夜が続くと日々眠気が強くなることを経験する。この現象は,覚醒中に脳内に蓄積する眠気誘発物質の存在を示唆する。現在までに約30種類もの睡眠物質が同定されてきた。その中でも,プロスタグランジン(prostaglandin:PG)D2とアデノシンは内因性睡眠物質の最も有力な候補である1-4)。 PGD2は,1982年に京都大学の早石 修(現,大阪バイオサイエンス研究所理事長)の研究室において,脳で産生する主要なPGがPGD2であることが明らかになり,その中枢作用の探索の中で,PGD2の睡眠誘発作用が発見された5)。一方,アデノシンは,1970年代にイヌの脳室内へのアデノシンの投与が睡眠を誘発することや,カフェインがアデノシン受容体の拮抗薬として覚醒作用を示すことが証明され,睡眠物質として認められるようになった。 本稿では液性の内因性睡眠物質としてのPGD2とアデノシンについて解説する。
著者
大平 健
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.26, no.10, pp.1077-1083, 1984-10-15

抄録 南米ペルーの首都リマの近郊に拡がる貧民街では,ヒステリー性格者(忍従型)によく出会う。著者は現地に13カ月滞在し貧民街の保健所,母の会などで数多くの同性格者の生活歴を聴取した。 その結果,彼女達に共通して,15〜16歳頃までに家を出る心の準備が出来ており,いわゆる青春期なしに結婚し母親になることに抵抗がないという特徴のあることが分った。ここに到達するまでの過程は,その母親の性格類型の差による2種類の家族内力動に従う。しかし,いずれの過程を経ても,過剰な母性性と乏しい女性性とが家出までの娘達のアイデンティティとして形成され,家出の時点では同じ性格の表現形をとるに至る。
著者
清田 隆之
出版者
医学書院
雑誌
精神看護 (ISSN:13432761)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.84-88, 2014-09-15

前回(5月号)は、我々の自己紹介をさせていただきました。桃山商事とは、女性の恋愛相談に複数の男子が無償で乗りつつ、そこで聞かせてもらったお話を書いたりしゃべったりする「恋バナ収集ユニット」です。恋愛相談に乗る際は「とにかく聞く」「彼氏を悪く言わない」「別れさせようとしない」を原則に、なんとか相談者さんに元気になってもらうよう努めるのが基本ルールです。 そんな活動紹介をさせていただいたところ、編集さんや読者さんから「ホンマかいな! 無償で話を聞くなんて……」「いろいろ危険な目にあっているのでは?」「下心とかないの?」「やっぱり恋愛に発展するでしょ?」など、さまざまな疑問が噴出。どうやら我々がやっている活動は、精神看護の仕事にかかわる方々からしたら、何かとあやしい活動に映るようなのです。
著者
大野 京介
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.293-295, 2013-03-15

はじめに 双極性障害の躁状態のときには,生気感情の亢進に伴い感情,意欲・行動,思考,身体面に症状が現れる。とりわけ意欲・行動面においては活動性が亢進し他人に干渉し,無作法で自己の正当性を頑固に主張する1,4)。今回,躁状態の経過中に,社会正義を唱え,いわゆるクレイマーのごとく好訴的な症例を2例経験したので報告し,共通する特徴などにつき考察する。なお,個人情報保護のため症例の細部には変更を加えた。
著者
小田 禄平 広瀬 源二郎 江守 巧
出版者
医学書院
雑誌
Brain and Nerve 脳と神経 (ISSN:00068969)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.155-160, 1985-02-01

抄録 種々の神経疾患患者の髄液中β—glucuronidase (β—GL)およびβ2—rnicroglobulin (β2—m)を測定し,各種神経疾患における測定値の検討と腫瘍マーカーとしての有用性,各種髄膜炎,特に感染性髄膜炎と癌性髄膜炎の鑑別における有用性等につき検討を加えた。対象は99例の神経疾患患者で,変性疾患群(6例),変形性頸椎症群(15例),ギランバレー症候群(8例),くも膜下出血群(6例),感染性髄膜炎群(21例),癌性髄膜炎群(9例),転移性硬膜外腫瘍群(10例),脳腫瘍群(24例)の8群に大別した。また13例の非神経疾患患者の髄液を正常対照としたがβ—GL,β2—m値はそれぞれ122.5±10.8μg/dl/hr (Mean±SEM),0.99±0.15mg/lであった。髄液中β—GL値が有意に増加した群は,感染性髄膜炎群(266.7±65.5,P<0.001),癌性髄膜炎群(249.0±54.5,P<0.001),脳腫瘍群(216.0±470,P<0.001)であった。しかし,感染性髄膜炎と癌性髄膜炎との間には有意差は認められず,腫瘍マーカーとしての有用性には乏しいと考えられた。ただし,髄膜浸潤を認める脳腫瘍例は著明に高値を示し,脳腫瘍の髄膜腔への拡がりを知る一つの手掛りとなりうると考えられた。髄液巾β2—mは種々の神経疾患で増加がみられたが,腫瘍マーカーとしての有用性には乏しかった。
著者
奥村 彪生
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.6-10, 2012-01-15

世界の中で魚を好んで食べている日本人 日本列島はユーラシア大陸の東端,太平洋北西部に位置する弧状列島で,気候は北は亜寒帯から南は亜熱帯にまで属する.この列島は暖流の黒潮とその分岐流である対馬海流,ならびに寒流の千島海流とリマン海流に囲まれている.そのために地域により気候風土が異なる.したがって地方により獲れる魚介の種類も異なり,豊富である. これらの魚介をいさり(漁(いさ)る:「磯刈る」の約転.または「あさる」の転.魚介をとる.あさる),すなどって(漁(すなど)って)食べ始めたのは,1万年ほど前のことだと言う.
著者
福井 小紀子 乙黒 千鶴 藤田 淳子 池崎 澄江 辻村 真由子
出版者
医学書院
雑誌
訪問看護と介護 (ISSN:13417045)
巻号頁・発行日
vol.20, no.12, pp.1021-1027, 2015-12-15

3つのツールを使って連携の強み・弱みを調査 連載第2回となる本稿では、第1回(2015年11月号p.936〜)にて紹介した3つのツールを用いて、段階的に多職種連携の状況をとらえた結果を報告する。
著者
林 和寛 池本 竜則 牛田 享宏
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.260-268, 2016-03-25

はじめに 痛みは不快な感覚・情動経験であり,侵害刺激に起因するだけではなく,認知・情動的側面が影響を及ぼすことが知られている.多様な要因がかかわる「痛み」を客観的にとらえるために,脳内神経活動を用いた評価の試みが行われている.本稿では,痛みにかかわる脳内神経活動の知見を紹介するとともに,痛みを遷延させる認知・情動的要因の評価と介入方策を概説し,患者の痛みにかかわる問題を解決するための一助としたい.
著者
杉尾 雄一郎
出版者
医学書院
雑誌
臨床検査 (ISSN:04851420)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.1092-1098, 2018-09-15

はじめに 聴覚に関する検査は“聴覚検査”と呼ぶべきであるが,その内容は膨大である.日常臨床の場で“聴力検査”といえば,一般的にはオージオメータを用いた純音聴力検査(以下,聴検)のことを指す.聴検は耳科診療において最も施行される頻度の高い聴覚検査であり,検査を行う者は手際よく施行しなければならない.その結果を検討し最終的に診断を下すのは医師の仕事であるが,検査を行う者には,検査が正しく施行されたか,得られた結果が妥当なものであるのかを,常に検討する姿勢が求められる. 本稿では聴検を行う際に念頭に置くべき事項について概説する.
著者
阿藤 大
出版者
医学書院
雑誌
臨床検査 (ISSN:04851420)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.760-766, 2018-06-15

当講座第2回目「判読の極意」編では,判断を誤りがちな事例や当検査におけるエンベロープに関する解説を中心に行います. 前回の当講座において,エンベロープの情報による血圧精度について解説しました.今回は四肢のバランスも踏まえて解説します.図1は前回提示した2番目の症例と同じで,エンベロープ・脈振幅レベルの部分を拡大しています.図に記す解説の通り,当症例の血圧測定精度は良好で,再測定の必要性はないと判断できます.
著者
高守 正治 岩佐 和夫 駒井 清暢 安川 善博
出版者
医学書院
雑誌
Brain and Nerve 脳と神経 (ISSN:00068969)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.1089-1100, 1997-12-01

I.節前性カルシウムチャンネルとLambert-Eaton筋無力症候群 1.疾患の概念 Lambert-Eaton筋無力症候群は,悪性腫瘍に合併あるいは腫瘍の発症に先行して遠隔・非転移性に発病する頻度の高い,傍腫瘍性神経症候群の一つである。骨格筋を支配する末梢神経終末の電位依存性Ca2+チャンネル(VGCC)機能を阻害する抗体が主役を演じ,神経からのアセチルコリン(ACh)遊離障害の結果,筋無力症状が惹起される。近年,腫瘍組織と神経終末の両面で,病的抗原決定基となるチャンネルとその周辺機構の分子病態が明らかにされつつある。
著者
高守 正治
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.635-640, 2011-07-01

序 神経筋接合部の正常な情報伝達は,神経側のアセチルコリン(acetylcholine:ACh)包含シナプス小胞がdocking,primingのあと融合(開口)するactive zoneと,筋肉側の後シナプス膜上で神経側からの情報を有効に受容すべく群落を形成するアセチルコリン受容体(ACh receptor:AChR)が約50nmのシナプス間げきをはさんでいかに対応するか,その遺伝子制御と分子生物学的構造・機能の様態にかかっている1,2)。この接合部の臨床病態には免疫疾患としての前シナプス病のLambert-Eaton筋無力症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndrome:LEMS)と後シナプス病の重症筋無力症(myasthenia gravis:MG),遺伝子疾患としての先天性筋無力症候群がある。 LEMSでは,神経終末P/Q型電位依存性カルシウムチャネル(そのlamininβ2との結合はactive zoneの前シナプス膜面固定に関与4))に対する抗体(特に分子構造上ドメインⅢ,Ⅳ S5~S6リンカー領域を認識,その人工抗原で動物モデル作出可能)が主役を演ずる5-8,10-12)。本病は肺小細胞癌合併頻度が高く13),癌発見より2~5年先行して発症をみることがあり,約10%には小脳失調症を合併する14)。SOX-1抗体は神経筋伝達に直接関係はないが癌合併を示唆する有力な指標となる15)。本病の脇役的病原抗体として,ACh遊離に必須なカルシウム・センサーで,上述のカルシウムチャネル蛋白同様肺癌にその発現が証明されているシナプトタグミン3)に対する抗体(シナプス小胞開口時膜外露呈N端53残基を認識,その人工抗原で動物モデル作出可能)がある8,9,12)。また,G-protein-coupled receptorとしてphospholipase Cシグナル系を介しACh遊離障害を補償する機構17-20)に関わるM1タイプのムスカリン性AChRに対する抗体も高率に検出される16,17)。これは補償障害とともに,本病にみられる自律神経障害16)の背因になっている可能性がある。
著者
金児 由美 保谷 卓男 海平 淳青 吉村 長久 福嶋 義光
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.1106-1108, 1997-06-15

(26C2-3) 異常な顔貌,心雑音,股関節脱臼,体重増加不良などで染色体異常が証明された生後3か月の女児が眼科に紹介された。前額部の隆起青後頭部扁平,球状鼻,耳介低位付着,小口症があり,生後1年の時点で,全身に発達遅延と肺動脈弁狭窄,両眼に眼瞼下垂,眼瞼狭小,眼球上転障害,小眼球,小角膜,虹彩低色素,片眼の虹彩角膜癒着などがあった。G染色法による染色体分析で,核型は[46,XX,6q+]であり,6p21を切断点とする6pトリソミーであった。本症としては眼所見が多彩であった。
著者
小川 正三 崎原 宏 宮下 直之
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.199-203, 1986-02-25

抄録:脛骨の疲労骨折は決して稀なものではなく,スポーツや軍隊における報告は少なくない.しかしクラシックバレエダンサーにおける本症の報告は本邦においては稀有である.われわれはダンサーにおける本症を5例経験した.症例は男1,女4例で年齢は19歳から30歳までで何れも跳躍時に下腿に疼痛を訴え安静により軽快す.X線像で脛骨中1/3の骨幹部の前面に跳躍型の疲労骨折を認めた.尚27歳の女性の反対側の脛骨に5条,第5例24歳女性の反対側の脛骨に3条の疲労骨折によると思われる横走する骨透過像が認められた.診断は本症の存在を知っておれば困難なことはないが屡々類骨骨腫と誤診され易い.治療は安静,骨穿孔術,骨移植術などを行ったが本症の治癒は遷延され易いので先ず骨穿孔術を行うことを奨める.バレエ人口が急増しつつある今日,今後本症も増加することと思われる.
著者
福田 正人 三國 雅彦 心の健康に光トポグラフィー検査を応用する会
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.231-243, 2007-03-15

近赤外線スペクトロスコピィNIRS 近赤外線スペクトロスコピィnear-infrared spectroscopy(NIRS)は,近赤外光が生体を通過する際にヘモグロビンにより吸収されることを利用して,生体の血液量を非侵襲的に測定する方法論である。日本語では,近赤外(線)スペクトロスコピィ・近赤外分光法などとも呼ばれる。 1. NIRSの原理6) 近赤外光のうち波長700~1,000nmのものは,骨を含む生体組織を0.1%程度というわずかではあるが測定可能な量が通過し,ヘモグロビンには吸収されやすいという特性を持つ。そこで,頭皮上に入射プローブと検出プローブを3cm程度の距離に設置すると,頭皮下2~3cmまでの生体内を散乱しながら通過した近赤外光をとらえることができる。酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)と脱酸素化ヘモグロビン(deoxy-Hb)による吸収は波長により異なるので,2波長以上で同時に計測するとoxy-Hb・deoxy-Hbそれぞれの濃度が算出できる。これがNIRSの原理である。微弱な光を用いているため生体への悪影響はない。工学的シミュレーションも進んできている36)。