著者
谷川 広樹 大塚 圭 才藤 栄一 伊藤 慎英 山田 純也 村岡 慶裕 冨田 昌夫 橋本 修二
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.1175-1181, 2010-12-10

要旨:〔目的〕視診による異常歩行重症度スコアリングの評価者間信頼性を検討した.〔方法〕臨床経験6年以上の理学療法士10名を評価者とし,片麻痺患者13名のトレッドミル歩行ビデオ画像を観察させ,分回し歩行とトゥクリアランス低下の重症度を5段階評価させた結果の評価者間信頼性をCohenのκ係数を用いて検討した.また,評価者を経験年数と観察した部位・相で分け,κ係数を求めた.〔結果〕評価結果のκ係数は0.09~0.58であり,経験年数にかかわらず低かった.観察部位・相を揃えた群のκ係数も0.03~0.32と低かった.〔考察〕一致率の程度はslight~moderateにとどまり,評価者間信頼性は低かった.観察部位・相を揃えても信頼性は向上せず,評価者の主観的尺度と評価基準の相違が主な原因と思われた.視診による歩行分析の信頼性を高めるには,異常歩行を定義したうえで,明確な重症度基準を定める必要があると考えられた.
著者
矢部 はる奈
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.216-219, 2017-03-20

POINT ●咽喉頭異常感の要因は多岐にわたり,胃食道逆流の関与が半数程度とされる。 ●特に女性に生じやすい要因としては,唾液分泌量低下による口腔内乾燥がある。 ●悪性疾患を含めた器質的疾患を見逃してはならない。
著者
丸子 一夫 小野 常夫 石下 恭子 高谷 雄三 八島 祐子
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.17, no.7, pp.709-715, 1975-07-15

I.はじめに 誘発てんかんには複雑な精神神経活動がその発作誘発に関与しているものがあり,読書てんかんや音楽てんかんなどが有名である。その他,きわめて稀な例としてチェスやトランプあるいは将棋などの遊戯によって発作が誘発されるてんかんも報告されている1〜4)。われわれは麻雀をすることで発作の誘発されるてんかん症例について,その誘発機構や他の誘発てんかんとの関係などを検討する機会を得たので報告する。
著者
島村 めぐみ 黒岩 義之
出版者
医学書院
雑誌
medicina (ISSN:00257699)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.232-235, 2008-02-10

ポイント ●一般に,しびれ・痛みの客観的定量的評価は困難である. ●ニューロメーターを用いた神経電流知覚閾値の測定は簡便で非侵襲的でありながら高い再現性をもち,神経伝導検査で不可能な小径有髄線維や無髄線維の障害を検出することが可能である. ●同一神経束内の神経線維を選択的に評価することが可能である. ●初期の末梢神経障害で認められる知覚過敏を検出できることが,画期的である. ●知覚閾値を定量化することで,治療評価や患者間の比較が可能である.
著者
砂原 茂一
出版者
医学書院
雑誌
理学療法と作業療法 (ISSN:03869849)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.186, 1988-03-15

これは著者がリハビリテーション(リハと略す)の理念を扱った二番目の著書である.前著『リハを考える』ではいささか肩肘を張っていたし,理論が理論として扱われていた趣があったが,本書では理論がいちいち具体的な事実,事例によって豊富かつ適切に裏打ちされているから,たいへん理解しやすいだけでなく,直ちに日常診療の指針として役だつと思われる.理論を扱いながら同時に実用書としても有効に機能するというのは著者の腕前であろう.油の乗り切った,臨床の修羅(しゅら)場で縦横に活躍を続けている実践家の著書には理論を説いてもそれだけの臨場感があふれるものである.
著者
當山 冨士子
出版者
医学書院
雑誌
保健婦雑誌 (ISSN:00471844)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.474, 2003-05-01

本書は,私が琉球大学精神衛生学教室で助手をしていたときの主任教授であった佐々木雄司先生が,「メンタルヘルス実践36年間」の集大成として,ようやく世に出した力作であり,地域活動のハンドブックとして活用してほしい一冊である。 二十数年前,保健師活動に行き詰まりを感じていた私は,地域活動における最も基本的な姿勢や考え方を“佐々木メンタルヘルス”に学び,保健師活動の奥深さを認識させられた。迷いに迷った挙げ句の,現場から助手への転職であったが,これまでの疑問が面白いように解かれていくなかで,その迷いは一時で吹っ飛んでしまった。あれから二十年あまり,待ちに待ったこの書は,地域で悪戦苦闘している保健師の疑問にこたえ,ニーズを満たしてくれるものと信じている。
著者
伊澤 紘生 堀 喜久子
出版者
医学書院
雑誌
看護教育 (ISSN:00471895)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.126-131, 2005-02-01

競争の弊害をなくすには「競争の裏側」の論理をもってきて対処すればいい。 伊澤 私たちの文化や文明がまさに同じでしょう。これだけ競争に明け暮れして,さまざまな素晴らしいものを生み出してきた。しかし,同時に,戦争とか,虐待とかいじめとか,あらゆるえげつなさも生んできた。私たちは,競争の論理のもっているいい面と悪い面をいかに認識するか。それには,競争の裏側の論理がちゃんとわかっていなかったらどうしようもないということです。そういうことを徹底的に教えてくれたのがサルなのです。 たとえば,面白い例だけど,10年ほど前,いじめや虐待,不登校,校内暴力など,小学校で激化しつつあるさまざまな問題への対処として,当時の文部省は「競争をあおるようなカリキュラムをなくすように」と通達を出したのです。

1 0 0 0 シアル酸

著者
菅原 和行
出版者
医学書院
雑誌
検査と技術 (ISSN:03012611)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.180-181, 1989-02-01

[1]代表的測定法と原理 シアル酸(N-acetyl neuraminic acid;NANA)は,血漿中ではオロソムコイド,α1-アンチトリプシンなどの急反応性物質と呼ばれる糖蛋白質,あるいは他の多くのシアロ蛋白質の主要な構成成分として,主に糖鎖の末端に位置し,生体内には比較的多量に存在している. シアル酸の測定法には,化学的比色法,酵素学的測定法および機器分析法などがあり,化学的比色法としては,ジフェニラミン反応,ρ-ジメチルアミノベンツアルデヒド(Ehrlich試薬)との反応,オルシノール法,レゾルシノール法,過ヨード酸・ベンチジン法および過ヨード酸・チオバルビツール酸法などがある.また,臨床検査法として用いられている酵素的測定法には,Comb & Roseman1),Brunettiら2)が,近年では谷内ら3)がそれぞれ報告している,ノイラミニダーゼ・NANA-アルドラーゼ系を用い,生じたピルビン酸をLDH反応系で検出する方法と,ピルビン酸をピルビン酸オキシダーゼで定量する方法4),および本反応系にホモバニリン酸を加えた蛍光法などがある.
著者
伊波 茂雄
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.265, 1977-04-15

11月24日那覇市内で,琉大保健学部宮城一郎教授を学会長とする第29回日木寄生虫学会南日本支部大会で,沖縄県公害・衛生研究所の安里龍二氏は,アフリカマイマイやナメクジなどに宿る広東住血線虫の感染経路等について発表した. その発表によると,昭和45年以降,これまでに見つかった広東住血線虫症患者は11人で,内訳は,経口感染6例,経皮感染1例,不明4例となっている.経口感染した6例はいずれも「ナメクジを食べたら喘息が治る」「アフリカマイマイは腎臓病に効く」などの言い伝えを信じて,生で食べたケースであり,このうちアシヒダナメクジを食べたのが3人,アフリカマイマイ1人,カエルを食べたのが2人いた.感染ルート不明4例があるのに注目し,従来の感染ルート以外のルートについて研究したところ,アフリカマイマイの場合,それ自身を傷つけない限り広東住血線虫がわき出すにとはないが,ナメクジでは死後数時間以内に同虫がわき始め,24時間後には感染幼虫の半数以上がわき出すことがわかった.このことから,野菜に付着したままナメクジが死ぬと,わき出した同虫が生野菜に付着し,それを生で食べることによって,人間に感染する可能性があると考えられる.また,広東住血線虫は水中でも9日間は生存し,生水を飲んでも感染することがありうると発表した.
著者
田村 了以 小野 武年
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.532-542, 1997-08-10

OldsとMilnerが脳内自己刺激(ICSS)行動を発見して以来45年近く経過したが,これまでの研究により,脳内には動物が電気刺激を好んで求める(快情動を誘起する)報酬系と,電気刺激を回避しようとする(不快情動を誘起する)嫌悪または罰系のあることが実証された。 解剖学的に,報酬系は内側前脳束を中心とした領域に,嫌悪系はSchützの背側縦束を中心とした間脳や中脳の内側部を占める室周囲系にある。ICSS行動発現の脳内機構に関する代表的な仮説として,ICSSは脳内の動因と強化の両機構を同時に賦活するという恒常説と,ICSSは強化機構だけを直接賦活するという快楽説がある。ICSS行動発現と摂食,飲水,性行動などの動機づけ行動との間には密接な関係があり,ある動機づけ行動の動因が高まると,その動機づけ行動に関与する脳領域でのICSSの効果が増強する。また,ICSS行動発現には様々な脳内物質が関与し,とくに,ノルアドレナリン(NA),ドーパミン(DA),およびオピオイドは報酬系での報酬刺激関連物質,また,アセチルコリン(ACh)は嫌悪系での嫌悪刺激関連物質である可能性が示唆されている。
著者
宮森 正
出版者
医学書院
雑誌
病院 (ISSN:03852377)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.452, 1988-05-01

西日本を中心とした「新日本医療サービス」によるモグリ医療金融,病院乗っ取り事件はテレビなどで詳細な報道がなされているが,寒心なくして見られるものではなかった.この事件の直接の違法行為は,病院経営コンサルタント会社が,経営難に陥った医療機関の経営相談に応じて診療報酬を担保としてモグリ金融を行った貸金業規制法違反,出資法違反であるという. しかし,問題はこうした違法行為だけにとどまらない.戦慄すべきは,融資した病院に対し病院経営援助と称して事務長を派遣し,会社に対して手形を乱発させて更に負債を増加させ,ついには病院を乗っ取るという図式で,多くの病院が被害にあったことである.経営難に苦しむ病院長たちはやすやすとモグリ金融を受け入れ,事務長派遣をしてもらい彼らのくい物になっていたという.更に,身ぐるみ奪われ借金づけになった元院長を,医師不足にも悩む他のこうした経営難の病院に斡旋して働かせていたというのであるから恐れ入る.こうした徹底した乗っ取り工作により,十数か所の病院が経営権を握られていたという.借金の取り立てに悩んで自殺した院長もいたらしい.三面記事的で陳腐な事件かもしれないが,病院のおかれている状況の象徴のようで見過ごすことができなかった.
著者
丸山 哲弘
出版者
医学書院
雑誌
総合診療 (ISSN:21888051)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.232-238, 2016-03-15

21世紀は「脳の世紀」といわれて久しく,現在多数の科学者により脳機能の解明に全力が注がれている.脳機能の解明とともに神経疾患の病態などの研究が進歩しており,最近の神経疾患の治療は目覚ましいものがある.“不治の病”といわれたParkinson病やAlzheimer病などの神経変性疾患においても病態解明が進み,症状緩和である対症療法から疾患そのものをターゲットにした根治治療に,大きな期待がかかっている.さらに将来的には,遺伝子操作のできる創薬が開発され,疾患撲滅につながることが期待される. しかしながら,現実に目を向ければ,現在悩んでいる患者をどのように治療してあげればよいのか目の当たりにし奮闘されているのは,現場の医療を支えているプライマリ・ケア医である.神経疾患を診療するなかで,現在使用可能な現代医療をもってしても治療困難を極める愁訴や症状がまだまだたくさんある.しかしたとえ神経難病であっても,プライマリ・ケア医は患者と向き合って,少しでもQOLを高めるために治療しなければならない.

1 0 0 0 抗痙縮剤

著者
安藤 一也
出版者
医学書院
雑誌
神経研究の進歩 (ISSN:00018724)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.142-147, 1982-01-10

抗痙縮剤は痙縮(spasticity)の軽減を目的として使用される薬剤で,薬理学的には筋弛緩剤(muscle relaxants)に属するものである。 1946年,Bergerらによりmephenesinが合成され,以後,methocarbamol,carisoprodol,phenprobamate,chlorzoxazone,chlormezanone,styramate,pridinolmethane sulfonateなどの薬剤が中枢性筋弛緩剤として開発され使用されてきた。しかし,これらの薬剤は臨床上,肩こり,腰背痛,頸腕症候群などの一時的な反射性の筋トーヌス異常には多少の効果はあっても,痙縮にはほとんど効果はなく,アメリカでは"unestablisheddrugs"として取り扱われている。
著者
博田 節夫
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.163, 1985-03-10

リハビリテーション医学が紹介されて以来,リハビリテーションは治療法の一つであるとの誤解が医療スタッフの間にさえも存在する.わが国においては,リハビリテーションは機能訓練を意味するとの考えが支配的で,機能障害を治す手段として期待されて来た.ここでいう機能障害はimpairmentおよびdisabilityであるが,治療医学的立場からimpairmentのみを指していることも多く,第2次世界大戦以前の機能再建という考え方に逆行するものである.一方,作業療法および理学療法の専門書にリハビリテーチブ・アプローチという治療法が見られる.これはdisabilityに対するアプローチを意味している.このリハビリテーチブ・アプローチはdisabilityに注目するあまり治療法放棄につながるとの非難であり,これは警鐘として受け入れるとしても,リハビリテーションが作業療法あるいは理学療法の中の一治療手段であるという妄想にまで発展するに至っては,リハビリテーションという言葉に対しても嫌悪の念を抱かざるをえない. リハビリテーション医学の治療対象は,主として運動機能障害とそれによりもたらされる能力障害である.運動機能障害は神経系および末梢運動器系の異常を反映し,その治療手段として運動療法があり,能力障害に対しては広義のADL訓練がある.ADL訓練は能力障害に対する直接的アプローチであり,治療効果の判定は比較的容易といえる.運動療法は筋・腱,骨・関節に対しては直接的な治療手段であるが,神経系に対しては末梢運動器系を介した間接的治療法であるため,治療効果の判定は困難を窮める.そのため,中枢神経疾患においては適応を考慮することなく,有効性の不明な治療法を狂信する者が増加しつつある.
著者
佐藤 正之
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.615-627, 2017-06-01

失音楽症(amusia)の報告はこれまでに100例足らずで,障害半球として左,右,両側が報告されており,言語機能のように側性化は明確でない。そのうち,音楽能力の選択的障害を生じた純粋失音楽症(pure amusia)は9例で,共通する責任病巣として右上・中側頭回が含まれる。症状との対比から同部位は,メロディの受容と表出に関与していると考えられる。脳の後天的障害により音楽の情動経験のみが障害された病態が存在し,2011年に筆者により音楽無感症(musical anhedonia)と命名された。音楽無感症は自験2例を含めこれまでに4例が報告されており,右側頭葉から頭頂葉にかけての皮質下が共通して障害されていた。音楽無感症の病態機序として,右側の聴覚連合野と島との離断が考えられた。音楽心理学の研究者から,健常者への検査結果に基づいた先天性失音楽症(congenital amusia)や先天性音楽無感症の報告が相次いでいる。用語や疾患としての妥当性を含め,さらなる検討が必要である。
著者
津田 篤太郎
出版者
医学書院
雑誌
medicina (ISSN:00257699)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1916-1918, 2015-10-10

ポイント●抗原回避が困難で,薬物療法が効果不十分あるいは拒否される場合に,漢方治療が検討される.●アトピーは炎症軽減とバリア機能回復という2つの目標に,それぞれ異なった生薬を配する.●鼻炎では小(ショウ)青(セイ)竜(リュウ)湯(トウ)が代表的処方であるが,含有する麻黄の副作用に留意する.●気管支喘息では,心因性の要素が関与する咳嗽に漢方薬がしばしば用いられる.