著者
真島 和志 PANDA Tarun Kanti
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

前周期遷移金属、および、希土類金属錯体によるエチレンなどのオレフィン類およびブタジエンなどのジエン類の重合反応、また、ヒドロアミノ化やヒドロシリル化といった分子変換反応が盛んに研究されており、その触媒分子の設計は非常に重要な研究対象である。本研究においては、独自に見出した前周期金属-アミド錯体の付加反応を利用してα-ジイミン配位子、また、カルボジイミド配位子との組み合わせにより、ワンステップでチタン・ジルコニウム・ハフニウムを中心金属とする種々のアミド錯体の合成が可能であることを見出した。得られる錯体には非常に電子供与性の高いグアニジン部位が存在することから塩基性の高い金属-アミド結合部位を有しており、そのために不飽和有機分子に対する求核付加のみならず、炭素一水素結合の活性化が可能であることを明らかにした。近年、炭素-水素結合の活性化を利用したヒドロアミノアルキル化反応が活発になっており、その素反応をより容易に進行させるために必要な配位子設計に対する新たな指針を見出すことができた。さらに、希土類錯体においては電子的に大きな柔軟性を持ち、金属中心周りの他の配位子に応じて形状を自由に変えうるα-ジイミン配位子の導入に成功し、新たな希土類金属錯体群の合成法を確立することに成功した。この性質はオレフィン類やブタジエンの重合において、モノマーの立体的・電子的要因に応じてより活性な触媒金属中心を発生させるための触媒デザインにつながる新たな知見である。
著者
玉井 昌宏
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究では,植生の幹の直径程度あるいは植生背後に生じる後流が認識できる程度の長さを最小のスケールとして,植生の運動,植生を起源とする乱れと水流の持つより大きなスケールの乱れとの相互干渉を明らかにすることを目的として,木理実験と数値計算を実施した.植生の縮尺を河道のそれと同一にすると,植生と流体間に生じる流体力に関する抵抗則が実物と模型との間で変化することになる.そこで,縮尺の異なる歪み模型により実験を行なうことにした.実験結果そのものに一般性がないことを補うために,植生と流体運動の間の相互作用をモデル化し,それを基礎とする数値計算を実施して,モデル化の妥当性を評価するための基礎データとして利用することとした.乱流計算における植生と乱流の相互作用のモデル化については,前年度において検討した固体粒子運動と流体運動の相互作用について開発した乱流モデルを発展させた.植生と乱流場との相互作用を表示する最も単純な流れ場として,河床に植生を有する等流場に関する鉛直一次元の数値解析を実行した.この数値計算においては,直径や高さといった植生固体の特性と植生密度による流動構造の変化,特に,植生と河床との流体抵抗力の分担,植生部と無植生部との流量分担等について検討した.実務上は,植生部の視覚的な特性によって,植生部と無植生部の基本的な流量分担が決定されている.これでは河道の疎通能力を過小に見積もったり,逆に過大に見積もる可能性があり,治水計画の精度上問題がある.今回の研究で,植生帯特性と流量分担との関係を明確にしたことによって,実務設計面においても有益な情報を提供するものと考えられる.
著者
床谷 文雄 村上 正直 伊達 規子 栗栖 薫子 高阪 章 大槻 恒裕 村上 正直 大久保 規子 長田 真里 内記 香子 栗栖 薫子 高阪 章 大槻 恒裕
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

EU(欧州連合)による経済的、政治的統合の過程が深化し、EU加盟国内の国家法、司法制度の運用に強い影響を及ぼしている。専門家を招聘し、研究会で検討を進めたところ、EU主導による統一的な私法制度の形成に向けた動きが、契約法のみならず、家族法、国際私法においても具体化しつつあることが明らかとなった。EUによる規範形成の効果は、スイス、ノルウェーといった非加盟欧州国へも実質的に及ぶうえ、豪州、ニュージーランドといったアジア・太平洋諸国にも影響し、東アジアでも共通経済圏、共通法形成への胎動がみられる。
著者
玉井 昌宏 竹見 哲也
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、近年の都市温暖化と降雨形態の変化傾向の相関の実態を地上気象観測のデータから把握し、実際に降雨形態がどのように変遷してきたかを解明した。その中でいくつかの典型的な事例を抽出し、気象モデルによる数値シミュレーションを実施し、異なった気候状態から計算を開始することで都市域での降雨形態がどのように変化するかの将来予測を行った。調査対象は大阪都市圏とした。本研究は大きく分けて次の3段階に分けて実施した。1)地上気象観測データによる近年の都市温暖化傾向と降雨形態の実態の把握2)高解像度雲モデルを用いた現象,特に過去に甚大な洪水被害をもたらした降雨現象の再現実験3)都市気候変化の降雨現象に及ぼす影響予測のための数値シミュレーション約30年間の地上気象データにより大阪都市圏における夏季の降雨形態の変遷過程の実態を都市温暖化との関連に注目して解析し、その結果に基づき、気象予報モデルにより大阪都市圏における夏季の局地循環の再現数値シミュレーションを行った。都市気候変化の降雨現象に及ぼす影響を検討するため、地上気象データの解析から明らかになったこれまでの気温上昇傾向を加味するとともに、現時点での降水時の特徴的な条件を付加することで仮想的な将来の都市大気環境を作成した。現在状態と将来状態との数値シミュレーションを行い、その差異から都市化が降雨に及ぼす影響を評価した。想定される都市化の度合いの様々なシナリオに基づき感度実験を行った。
著者
西村 博明
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

高速点火核融合プラズマを対象とし、爆縮コアプラズマの形成過程、密度半径積の計測、ならびに超短パルスレーザーによる追加熱過程の観測を目的として、超高速単色X線X線分光診断法の研究を実施した。爆縮コアプラズマの電子温度プロファイルを計測するため,塩素トレーサーガス封入ターゲットを開発し、爆縮実験に用いた。昨年開発した単色X線サンプリングストリークカメラで塩素の共鳴線であるHea線とLya線を単ショットベースで取得し、二次元電子温度の時間履歴が500~820eVの間で変化することなどが分かった。さらに,流体シミュレーションと比較した結果,爆縮過程の減速相でシェルと内部ガスの混合が発生し、その現象が電子温度を低下させていることを明らかにした。プラズマの初期密度を駆動レーザーに対する臨界密度より低い低密度ターゲットを使用すると、加熱膨張が起こるまでに速やかに一様加熱でき、固体平板と比べ一桁以上高いX線の変換効率を得ることを定量的に示した。爆縮コアプラズマの密度計測に最適なチタンのK殻X線(4.5-6.0keV)に着目し、チタンドープエアロジェル(密度3.2mg/cc,チタン含有量が3%原子数)をシリンダーに詰めたターゲットを用いて加熱波の観測実験を行った。実験結果と二次元放射流体シミュレーションとを比較し、シリンダー壁面からのプラズマ膨張がシリンダー軸上で衝突しプラズマ温度を上昇させていることが確認された。さらに,チタンの含有率を上げ、更なる変換効率の向上を目的に,新規ターゲット材料の二酸化チタンナノファイバーコットン(密度27mg/cc)を用いたX線発生実験を行い、従来のX線発生方式と比較して一桁以上高いX線変換効率の向上に成功した。
著者
湯之上 英雄
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、少子高齢時代を迎えたわが国の公共政策、特に公共政策の主要な担い手である地方財政に注目して分析を行った。また、高齢人口の増加に伴い、介護保険費の増加が予想されており、どのように介護保険を提供するのかを分析した。
著者
湯之上 英雄
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本年度に行った研究として,まず公共選択学会第10回全国大会の報告論文である"Aging Population and Regional Economic Growth with Political Business Cycle"があげられる.ここでは,growth regressionのフレームワークを用いて,人口高齢化が地域の経済成長に与える影響を考察した.『県民経済計算年報』の長期データを用いて,都道府県別の経済成長率についてパネル分析を行ったところ,人口高齢化率が高い地域において,経済成長率が低くなっていることが示された.また固定効果を比較したところ,東京都をはじめとする大都市部や地方部においてもIT産業の集積が進んでいる地域において高い経済成長率が観察された.さらに,国政選挙や都道府県知事選挙の時期に配慮して分析を行ったところ,国政選挙や地方選挙の時期に地域の経済成長率が高くなっていることも確認された.次に,"Cost Frontier Analysis for Elderly Welfare Expenses"では,人口高齢化が進むわが国において,財政再建をどのように達成していうかという関心のもとに,全国都市データを用いて,老人福祉費に関する費用フロンティア関数を推定した.推定の結果,より手厚い高齢者福祉サービスを行っている都市において,より多くの老人福祉費が支出されていることを確認した.さらに,依存財源である地方交付税額が増加すれば非効率性が増すのに対し,自主財源である地方税収の比率が高まれば効率性が高まっていることを示し,国から地方への税源移譲は,費用効率性の側面から見て,望ましいことを明らかにした.
著者
高橋 篤史
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

ミラー対称性と呼ばれる代数学と幾何学の役割を入れ替える対称性のアイデアにより,特異点に対して代数学・表現論・幾何学に付随した3種類の三角圏が定義される.これらの三角圏の性質に着目することにより,「アーノルドの奇妙な双対性」と呼ばれる特異点の双対性が,尖点付きリーマン面と群作用付きカスプ特異点の間に存在するミラー対称性として自然に説明され,無限個の特異点に一般化されることを示した.
著者
小林 敏男 金井 一頼 淺田 孝幸 高尾 裕二 竹内 惠行 椎葉 淳
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

1.定量的類型化作業「組織資本の測定」の観点から定量的類型化の基本仮説を構築した。本来この作業は,最終年度で実証に移るはずではあったが,基礎理論構築に手間取り,仮説構築にようやくこぎつけることできた。Lev and Radhakrishman(2003),蜂谷(2005)などの知見を参照しつつ,金融・保健を除く,日経225のサンプル企業のうち,条件に合致する企業数として86社,8年間のデータをもとに,仮説のフィットネスを確認しており,より頑健な理論にまで仕立てなければならない。(目標達成率60%)2.技術・知財戦略技術・知財戦略を聞き取り調査等から調べていけばいくほど,オープンさとクローズドさのバランス問題に横着することが確認される。ITの雄インテルにしても,PCIバスイニシアチブを充実させていた頃は,オープン路線で突き進み,バスやメディア等でデファクトの地位を取ると,今度はクローズドに振れ,それが結局,係争を引き起こし,会社としの業績に暗雲を漂わせ始めている。このバランスを決定づける要因分析の一般化を試みたが,個別ケース記述に留まった。(目標達成率70%)3.提携戦略次の「4」との兼ね合いから,ベンチャー企業における提携戦略について,聞き取り調査を中心に仮説を改良した。成長ステージ管理の重要性を認識するとともに,それぞれのステージにおける管理項目を洗い出した。具体的には,製品開発ステージにおいても,商流ステージであるB2BおよびB2Cを意識した開発管理とマーケティング管理が必要となり,ステージが進むに従い,パートナーシップの重要性が高まる。ただ闇雲なパートナーシップではなく,ビジネスモデルすなわち成長戦略に応じた提携が求められ,その機軸をなすのが,「時間切迫」と「資源の希少性」に他ならない。(目標達成率85%)4.地域産業集積「産業プラットフォームとしての大学」という観点から調査報告をまとめた。大学が有する国・地域としての研究所機能に加え,新産業の担い手としての大学発ベンチャービジネス創出の「場」,という観点を持つことによって,大学を観察することが,産業集積の実際を知る手がかりになる,ということが明らかになった。すなわち,日常的産学連携が活発でない地域では,大学発ベンチャービジネスも起こりにくく,また成功もしづらく,その「場」的取り組みが盛んな地域・大学が産業集積(新規事業創造)においてもリーダーシップを発揮している,ということである。理論的には「場」の概念の援用である。(目標達成率75%)
著者
栗原 麻子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

法廷弁論家であり、また前4世紀後半のアテナイ政治を主導する政治家の1人でもあったリュクルゴスに焦点をあて、ヘレニズムへの転換期における公と私の関係性について検討した。とりわけ、リュクルゴスの政策における公私の関係性を理解するために(1)エイサンゲリア(弾劾裁判)の多用、(2)私的復讐と公的刑罰の区別の2点について分析し、市民生活のなかの公共的要素をリュクルゴスが重視していたことを明らかにした。そのポリス共同体イメージは、アテナイ社会に伝統的な互酬的価値観のもとに、アプラグモシュネ(消極主義)的な市民像を取り込んだものとして理解できる。
著者
中山 英美
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染初期過程に関わる宿主因子の解析を行い、TRIM5・に加えてサイクロフィリンAもサル細胞内でHIVの増殖を阻害すること、TRIM5・の抗ウイルス作用にはプロテアソーム依存性経路と非依存性経路とが混在し、サルとウイルスの種の組み合わせによって使用される経路が決まること、広範な抗ウイルス作用を示すアカゲザルTRIM5・はウイルスカプシドの広範な領域を認識していることが明らかになった。
著者
藤本 利一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

過去数十年の間に,知的財産権は,世界経済において大きな役割を果たすようになった。今日においては,世界の名だたるトップメーカーの有する企業価値の多くが,それらの無形財産にあるといわれる。あるデータによれば,世界の主要企業に関して,その資産価値における知的財産権の占める割合は,1992年においては,6対4であったが,その10年後には,4対6の割合に変化したとされる。間違いなく,今日,ますます増大する世界的な企業間競争において,知的財産権は最も重要な資産である。このような状況のなかで、知的財産権およびそのライセンスに関して、重要な問題として認識されだしたものがある。すなわち、倒産処理手続における知的財産権の処遇である。たとえば、アメリカ法においても、各種知的財産権の処遇を規律するものとして、連邦レヴェルの法規制とともに、当該知的財産権を有する企業が、倒産した場合には、連邦倒産法の規律によることとなり、両者の相克が問題とされていた。すなわち、知的財産法においては、企業家および発明者の支配可能性を高めるため、知的財産権の譲渡可能性を制限しているのに対し、倒産法では、債権者にとって利用可能な資産価値を最大にするために、譲渡可能性を柔軟にしているという対立図式が明らかとなった。過去数十年にわたり、これらの対立をどのように処理するかが、企業再建という困難な局面で問われてきた。翻って、わが国の対応を見るならば、倒産法制はここ数年で大きく変革されたが、知的財産権への対応が必ずしも十分であるとはいいにくいようにも思われる。とくに,企業が倒産した際に,その知的財産権の価値をどのように評価し,またどのように売却等の処理をするかについては,まだ決め手がないということが明らかとなった。
著者
出口 一郎 竹原 幸生 荒木 進歩
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

毎年海水浴シーズンになると,100名を越える尊い人命が海水浴中の事故で失われており,その大部分は,いわゆる離岸流によって引き起こされているといわれている.予め離岸流の発生が予測できる場合は,警告などを出すことにより,事故の発生を未然に防ぐことが可能である.しかし,いくつかの離岸流は狭い範囲で発生し,その持続時間も必ずしも長くはない.この様な離岸流は,遊泳者にとって非常に危険なものとなる.一方,離岸流は沖への漂砂輸送流れとなることから,海岸侵食を議論する上でも重要な流れである.本研究では,飛行船に搭載したビデオカメラによるメソスケールリモートセンシング(100*100m〜400*400mの領域の流れ,波浪の計測)及び周辺海域の波浪情報(波向・波高・周期,平均水位,など)を同時に計測するシステムを構築し,このシステムを用いて継続した離岸流の現地実測を行うと同時に,波浪情報計測システムの有効性を検討するために,平面水槽内での実験を行った.離岸流に関する現地実測では,従来指摘されていたすべての地形性離岸流の計測を行うことができ,さらに突発性離岸流の流況の計測も行うことができた.また,K-GPS相対測位法による海底地形計測法も開発し,観測された離岸流発生地点周辺の海底地形の精測を行い,その上での波浪変形,海浜流の数値計算を行うことにより,海底地形と入射波浪条件が与えられれば十分な精度で離岸流の発生が予測できることを示した.さらに,リモートセンシングから得られる画像処理による海底地形の推定法,平面的な広がりを有する海面情報(特に波高分布)の取得方法などの構築を行い,その有効性について確認している.これらの成果は,今後の極浅海域流体運動の解析に非常に有効な手段を提供するものと考えられる.
著者
野瀬 宰 三木 和典 木村 三郎 小川 實
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

昭和55年濾紙血によるクレチン症のマススクリーニングが全国的に行なわれるようになって多数の新生児クレチン症が発見されている一方今までわからなかった新生児一過性甲状腺機能低下症や、乳児一過性高TST血症、先天性高TSH血症、などの周辺疾患も多数発見されるようになった。しかしこれらの疾患の原因や病態は、一部をのぞいて、現在の所まったくわかっていない。そこで我々は、まず一過性乳児高TSHB症患者16例についての長期臨床予後を追跡すると共に、その下垂体ー甲状腺軸のネガティブフィードバック機構について調べた。その結果この病態は、この機構の、下垂体、又は甲状腺における感受性の未熟性がその本態をなしているのではないかと考え新生児期、乳児期、学童期にわたって、TRH負荷テストを行い、TSHの反応性を調べた。その結果、幼若な時期ほどTSHは過剰遅延反応を示し加齢と共に正常化していく事がわかった。一方日本人はヨード摂取が多いと云われており、これが新生児一過性甲状腺機能低下症や、乳児一過性高TSH血症の病態発生に関係があると思われ新生児の、尿中ヨード排泄を調べた。その結果人工栄養児では平均8.6μmol/lのヨード排泄がみられたが、母乳栄養児では平均16.4±11.5μmol/lと、人工栄養児より高い値をました。次いでマススクリーニングで発見された新生児クレチン症の尿中ヨード排泄は正常児と差がなかった。今後一過性高TSH血症児の尿中ヨード排泄を測定してその発症との関連を調べていく予定である。
著者
杉万 俊夫 米谷 淳 佐古 秀一 三隅 二不二
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1987

災害時の避難誘導方法として, 指差誘導法, 吸着誘導法という2つの対照的な誘導法をとりあげ, それらの誘導法によって引き起こされる群集全体の行動パターンを解析した. 指差誘導法とは, 誘導者が, 大きな声と動作で避難方向を指示して誘導する方法で, 従来, 避難訓練の場で最も広く用いられてきた代表的誘導法である. 一方, 吸着誘導法とは, 各誘導者が, 自分のすぐ近辺にいる1名ないし2名の少数の避難者に対し, 自分についてくるよう働きかけ, それら少数の避難者を実際に引きつれて避難するという方法である. したがって, 吸着誘導法においては, 誘導者が出口の方向を具体的に指示したり, 多数の避難者に対して大声で働きかけるようなことはしない. 第1に, 現場実験により, 吸着誘導法の方が, より迅速な避難誘導を達成できる場合があることが見いだされた. しかし, いかなる場合にも, 吸着誘導法が有効であるわけではない. 特に, 誘導者と避難者の人数比を操作した実験を行なったところ, 誘導者対避難者の人数比が比較的小さいときには, 吸着誘導法がきわめて有効であるが, 人数比が大きくなりすぎると, 吸着誘導法では十分な避難誘導を実現できなくなり, むしろ, 指差誘導法の方が有効であった. 第2に, 2つの誘導法を比べると, 誘導によって生起する群集全体の行動パターンに著しい違いが見いだされた. すなわち, 吸着誘導法が成功する場合には, まず, 誘導者, および, その直接的働きかけを受けた1名ないし2名の避難者から成る即時的小集団が形成され, その即時的小集団が「雪だるま式」に周辺の避難者を巻き込むことによって, 出口に向かう一本の群集流が形成された. 一方, 指差誘導法においては, 吸着誘導法の即時的小集団に相当するような特定の核が形成されることなく, 個々の避難者が, ばらばらのまま, 均質的に出口方向に移動した.
著者
井上 豪 中村 努 石川 一彦 甲斐 泰 松村 浩由
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

超好熱始原菌Aeropyrum pernix K1株由来のペルオキシレドキシン(Prx)であるThioredoxin Peroxidase(ApTPx)は、チオール依存型のペルオキシダーゼであり、過酸化水素H_2O_2やalkylperoxideを水やアルコールに還元する働きを持つ。ApTPxは、子量20万の10量体蛋白質であり、プロトマー1分子中に3つのシステイン残基(C50,C207,及びC213)を持ち、たとえば、過酸化水素を水に還元する反応を行う。これまでの研究から、ApTPxのアミノ酸配列は1-CysのPrxと相同性が高いのに対し、その反応機構は2-CysのPrxと同様に2つのシステイン残基(C50及びC213)が反応に必須であることが報告されている。本研究課題では、変異体C50S,C20,7S,C213Sの結晶中で過酸化水素と反応させ、中間体構造を低温でトラップしてX線構造解析を行う方法で、ApTPxによるH_2O_2の還元機構の詳細の解明を目指した。その結果、C50SおよびC213SについてX線回折強度データの収集を行い構造精密化中で反応機構に関する知見はまだ得られていないが、C207S変異体からは、Cys50がCys-SHから、Cystein sulfenic acid (Cys-SOH)の状態へと酸化され、S-OH中間体を形成し、配位子数4の硫黄原子(10-S-4)を持つ超原子価構造をとることが判明した(Proceedings of the NattionalAcademy of Sciences USA(PNAS),in press)。
著者
ヨコタ村上 孝之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

平成16年度は15年度に続き、資料の収集を継続して行った。8月にロシア連邦ウラジオストク市に出張し、極東国立大学貴重書文庫、極東国立公文書館、アムール川流域研究協会図書館、アルセーニエフ名称博物館付属図書館、ウラジオストク公立図書館にて資料収集・閲覧・複写を行った。とくにウラジオストク公立図書館地方史研究部門主任調査員ニーナ・イヴァンツォーヴァ氏と意見交換、共同研究を行った。12月には米国ニューヨーク市に出張し、ニューヨークの公立図書館、コロンビア大学図書館にて、イヴァン・エラーギン(ザングヴィルト・マトヴェーエフ)および彼をめぐる米国亡命ロシア人文学資料(新聞『ノーヴォエ・ルースコエ・スローヴォ』、雑誌『ノーヴィ・ジュルナール』など)を閲覧、複写した。こうした収集・調査の蓄積を受けて、これらの資料の分析・研究に入った。極東ロシア人作家の筆名の使い方には、辺境の文学者の複合的アイデンティティーが表現されていること、マトヴェーエフ家の人々の生涯が現在の批評的言説の中で伝説化されつつあること(「日本で生まれた最初の白人」という説ほか)などの知見が得られた。研究発表のため、10月、日本ロシア文学会研究発表会(於稚内北星学園大学)に参加し、「マトヴェーエフ家文学の研究」という表題で報告した。研究の成果の一部を、雑誌『セーヴェル』第19号(2004年12月)に発表した。研究成果の全体は、科学研究費報告書としてまとめ、提出した。
著者
竹内 裕子
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

嗅細胞シリア上に発現している情報変換チャネルの局在を更に詳細に調査した結果、シリア上に発現している情報変換チャネル(CNGチャネル・Cl(Caチャネル))が一様に分布していることを明らかにし、局所的なUV刺激により、ケージドCaを誘起させたことによる、Cl(Ca)チャネルの分布を明らかにした。本結果は学会・論文で発表を行った。学会発表は、2006年度 : 国際学会2件、国内学会件、2007年度 : 国際学会2件、国内学会1件、2008年度 : 国際学会3件、国内学会2件を行った。論文は全て査読つき雑誌に受理され、2006年The Journal of General Physiology (Chen et al.,)2008年The Neuroscience(Takeuchi H & Kurahashi T)、アロマリサーチ(Sugahara et al.,)に掲載された。
著者
山田 雄三
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

イギリスのニューレフトと呼ばれる文化・政治運動が、実は1930年代に始まるモダニズムの理念や発想に基づいているという仮説を、これらの研究を通して提唱することができた。それにより、政治学や社会学で考えられてきたように、ニューレフトは冷戦構造と高学歴社会における一時的な現象であったのではなく、近代の産業構造の変化にともなう文化的な反応であったことが立証できた。とりわけ、ニューレフトが理性中心の西欧思想を批判する中で、感情の基づく新しい形式を文学やアートの制作を通して模索していた様態を明らかにすることができた。
著者
待鳥 聡史
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本年度は2年間にわたる科学研究費補助金の第2年度に当たる。前年度の成果を受けて、当初からの研究課題と今年度の研究計画に沿った成果を出すことが目指された。具体的には、政党再編期における参議院について、会派変動と議員行動の因果連関を解明するという観点から、計量データに依拠した実証分析を行うという試みであるこの試みは、2つの成果となってあらわれた。1つは研究論文「参議院自民党と政党再編」である。ここでは、従来ほとんど分析がなされていなかった自民党参議院議員の離党及び会派残留行動について、衆議院自民党の分裂を説明するための諸モデルよりも、参議院自民党において歴史的に形成された文脈を重視したモデルの方が、よりよく説明できることを明らかにした。すなわち、参議院自民党では長らく佐藤派-田中派-竹下派の圧倒的優位が続いていたが、それが少なくとも一時的に弱まったのが、1989年選挙による大幅な議席減から93年の分裂にかけての時期であった。他派閥の所属議員は、竹下派優位が弱まった状況の下では、以前に比べて党内昇進などで有利になっていたと考えられるが、分裂に際して、そのことが明らかに離党を抑止する要因として作用したのである。もう1つの成果としては、参議院議員の総合的データベース構築に着手できたことである。上に挙げた論文の中では1993年分のデータの一部しか利用しておらず、現時点でもデータベースとしては未完成の段階である。しかし、幸いにも衆議院に関して同様のデータベース構築を進めている研究者(建林正彦・関西大学助教授、エリス・クラウス・カリフォルニア大学サンディエゴ校教授)や国会の計量分析に実績のある研究者(川人貞史・東北大学教授、増山幹高・成蹊大学助教授、福元健太郎・学習院大学助教授)との共同研究にも見通しが立っているので、今後とも作業を継続する予定である。