- 著者
-
塩崎 麻里子
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2005
本研究では、乳がん患者が配偶者との日常生活において、配偶者が良かれと思って行っているであろうサポート態度が、患者にとってサポートとならない場合について着目している。先に行った乳がん患者に対する半構造化面接で得られた、患者にとって「ありがた迷惑」、「大きなお世話」といった配偶者からのネガティブサポート態度に関する15項目を用いて、手術前と手術後においてどのような変化が見られるかを縦断的に明らかにした。手術前と術後1ヶ月に質問紙調査を行ったところ、ネガティブサポート態度に関して欠損値がなかった乳がん患者63名(平均年齢:49.3±8.9歳)を分析対象とした。半構造化面接で得られた15項目は、比較的頻度の高いもの(早く元通りになるようにとあなたを励ます・あなたの病気や治療のことは、全て医師にまかせるものとして関与しない・自分のことよりも、常にあなたのことを優先する)、比較的頻度の低いもの(あなたと病気についての話をすることを避ける・あなたを病人として、はれものに触るように大事にする)が含まれていた。また、これら15項目は探索的因子分析と検証的因子分析を経て、3下位因子によって説明された。その3つの下位因子は、「過剰関与」、「問題回避」、「過小評価」と命名されている。術前と術後に変化が見られるかどうかを繰り返しのある分散分析で検討したところ、「過剰関与(F(1,62)=6.19,p<0.05)」と「問題回避(F(1,62)=10.35,p<0.01)」において有意な差がみられた。このことから、配偶者からのネガティブサポート態度は、術前・術後といった治療経過の中で出現頻度の認知に変化がみられるものであることが示唆された。今後、この変化が、実際に変化しているものなのか、患者のサポートニードが変化したものなのか、患者の個人的特性や状況などの変数を加えて詳細に検討していく必要がある。