著者
石川 博行
出版者
大阪市立大学
雑誌
経営研究 (ISSN:04515986)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.151-168, 2004-07
著者
鄭 栄鎭
出版者
大阪市立大学
雑誌
人権問題研究 (ISSN:1346454X)
巻号頁・発行日
no.12, pp.127-145, 2013

1. はじめに : 本論が題材とするのは、鄭大均(てい・たいきん)と鄭香均(チヨン・ヒャンギュン)である。後述するが、大学教員の鄭大均は日本国籍取得論を積極的に展開する在日朝鮮人であり、一方の鄭香均は、外国籍を理由とした拒否にあい、外国籍を維持しつつ訴訟を起こした在日朝鮮人である。そして、この二人はきょうだいでもある。1970年代以降、公営住宅入居、児童手当支給、公務員採用試験の国籍条項撤廃運動などの在日朝鮮人の権利獲得運動が行われた。日本人とともに行われたこれらの運動は、在日朝鮮人が韓国籍、朝鮮籍を維持しつつ、日本国籍者と同等の権利の獲得を志向していた。鄭大均は、これら在日朝鮮人運動の中でも、特に国籍条項撤廃運動、地方参政権獲得運動を批判する。……
著者
三上 雅子
出版者
大阪市立大学
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.149-160, 2001

I 1901年, 英国で『スクルージ, 副題マーレーの幽霊』(Scrooge; or, Marley's Ghost)と題された映画が公開される。ディケンズ(Charles Dickens)の『クリスマスキャロル』(以下『キャロル』と略)(A Christmas Carol)の最初の映画化作品である。1900年パリの万国博覧会で華々しく脚光をあびた新世紀の娯楽・映画は, 1902年早くも見世物の域を脱した『月世界旅行』を世に送り出すことになるわけだが, それよりも1年早くすでに映画がこのクリスマスストーリーの映像化に取り組んだ事実は意外に知られていない。1848年に公刊されるや僅か一週間の内に6000部の売上を記録した「守銭奴スクルージのクリスマスイブの体験と改心」の物語は, 映画の誕生後すぐにスクリーンに登場したわけである。1901年の映画は短編のトリック映画である。……
著者
小田中 章浩
出版者
大阪市立大学
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.196-211, 2007

サミュエル・ベケット(1906~1989)の戯曲が興味深いのは、それらが優れた作品であると見なされているだけでなく、上演を前提として書かれる「戯曲」と、文学的(あるいは芸術的)に完成された「作品」との間の埋めがたい溝に、「作者」がどの程度まで介入できるかという問題を提起しているからでもある。ここでは文学「作品」と「テクスト」の関係をめぐる、ポスト構造主義以降のさまざまな議論を検討する余裕はないが、少なくとも文学「作品」と、演劇における「作品」の違いとして言えることは、前者が物質的なレベルにおいて紙に書かれた(印刷された)インクの染み、あるいは電子的な記号の配列として存在するのに対して、後者は一定の時間の流れの中にしか存在せず、「作品」を同定することは本質的に不可能だと言うことである。その意味において、演劇における戯曲は、上演を実現するための他のさまざまな媒体(俳優の身体表現、舞台美術、演出プラン等)と同様に、まさにロラン・バルトのいう「テクスト」(さまざまな解釈に向かって開かれた表現)を構成すると言ってよい。ところがベケットは、そのいくつかの作品の上演において、自らの戯曲がこの種の「テクスト」として自由に解釈されることに強い抵抗を示した、その典型的な例が『勝負の終わり』である。ではわれわれはこの戯曲を、彼が構想した通りにしか解釈できないのであろうか。この小論では、ベケットが自らの作品において見落としていた要素に注目し、この「テクスト」の拡大解釈を試みてみたい。
著者
林 雄二 植村 元一
出版者
大阪市立大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

生物間相互作用物貭の研究は最近数多く行われており,植物・動物間の相互作用のうち,植物成分と昆虫の間では極めて興味深い作用物貭が種々報告されて来た。しかし,更に高等な草食哺乳動物と植物成分との相互作用に関与する物貭が見出された報告は殆んど見当らない。私達は奈良公園で鹿が食べない植物の代表として知られるナギとイワヒメワラビの成分をこれまでに検索し,興味ある新しい化合物を見出して来たが,これらが鹿の摂食忌避と結びつく知見を見出せずにいた。そこで,小形の草食動物としてモルモットを用い,定性的な摂食忌避試験を指標としてナギの葉の成分をしらべた。酢酸エチル可溶部に忌避活性がある事が判ったので分画を繰返し,最終的にはアセチル化後,三種の化合物をアセタ-トとして單離,構造決定し,これらがナギラクトンC,ナギラクトンA,1ーデオキシー2,3ーエポキシナギラクトンAの各々のアセタ-トである事を知った。これらの化合物のもとのアルコ-ル体は,これ迄にナギから得た既知化合物であるので,標品を用いて作用を調べたところ,忌避活性を示すことが明らかになった。ナギ葉の抽出物に対するモルモットの摂食忌避は致命的なものであり,粗抽出物を添加した人工飼料だけで飼育すると,摂食量ゼロのまゝ体重は減少し続け,約三週間後に餓死する。これはナギラクトン類の忌避が,單純な動物の嗜好等に基づくものではなく強い毒性によるものと推定される。今までに知られているナギラクトン類の生物活性,たとえば,昆虫の幼虫や白アリに対する毒性,がん細胞に対する細胞毒性などが高等動物に対しても作用をもつ事を示している。現在,他の鹿に対して摂食忌避性をもつ植物の活性成分の探索と,より定量的な信頼のおける結果を与える生物試験法の開発を検討中である。
著者
要田 洋江 前田 均
出版者
大阪市立大学
雑誌
人権問題研究 (ISSN:1346454X)
巻号頁・発行日
no.2, pp.123-132, 2002

1. はじめに : 今や、近代科学における新技術研究開発の主たるターゲットの1つは医療分野にあり、そこでの医療技術開発は、臓器置換・補填や遺伝子治療などに示されるように"人体改造"を指向している。しかも、結果としてもたらされたバイオテクノロジーや医療技術の先鋭化ともいうべき医学・医療の加速度的進歩は、社会に大きな期待を生み出すとともに大きな不安を巻き起こしている。……
著者
鶴田 滋
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、民事訴訟において、第三者が、係属中の民事訴訟の当事者の一方にどのような場合に補助参加をすることができるのか(これを補助参加の利益という)についての判断基準を再検討することを目的とする。本研究では、補助参加の利益の判断基準は、参加的効力(これは、第三者が補助参加した訴訟の判決効であり、その訴訟の当事者と補助参加人〔補助参加した第三者〕の間に生じる)と関連があるとの仮説を立て、これを母法ドイツ民事訴訟法における議論を参照しながら論証することを試みる。
著者
金子 明 五十棲 理恵 脇村 孝平 皆川 昇 平山 謙二 金子 修 平塚 真弘
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は研究期間を通じた横断的マラリア調査により、ケニア・ビクトリア湖周辺地域でのマラリア感染の非均一性を明らかにした。さらに感染の多くは無症候性でかつ顕微鏡検出限界以下であることを示した。これは、集団投薬とともに地域特性に基づいた対策の必要性を裏付けるものである。さらにNgodhe島における集団投薬の介入試験から、中~高度流行地に囲まれた低度流行地における持続的なマラリア撲滅のためには、外からの原虫移入および媒介蚊への対策強化による伝播抑制が必要であることを明らかにした。本研究により、不均一に高度マラリア流行地が残存するサハラ以南アフリカでのマラリア対策を進めるうえで鍵となる知見が提示された。
著者
幸田 正典
出版者
大阪市立大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本課題研究は、社会性魚類における共感性を調べることで脊椎動物の共感性の起源を探索ろうとしれいる。期間内に1、推移的推察、2、顔認知に基づく個体認識などの社会的認知、3、しっぺ返し戦略に基づくなわばりの親敵関係、4、ペア繁殖種における正および負の共感性の予備的検証実験などで成果を上げることができた。今回の研究から社会性魚類の認知能力は従来思われてきた以上に発達していること、その中には自己鏡像認知も含まれ、自己認識をしている可能性が非常に高いこと、ペア繁殖魚の間では相手を助けるあるいは相手に利する共感的な行動が認められることが強く示唆された。魚類における共感性を調べた研究はこれまでほとんどなく、今回の研究成果は画期的と言える。共感性実験では、具体的には負の共感として相手への電気負荷に対する救済行動、正の共感として相手個体への給餌を指標として用い、比較的短期間に救済や給餌による援助や救済行動が認められた。魚類では情動伝染はあっても特定個体へ向社会的行動ははじめての発見であり、この研究成果の意義は高い。以上のように、社会的認知能力だけではなく共感性においても相手個体を正確に認識した上でなされており、魚類でもおそらく自分の行為の持つ意味を「理解」した上で、共感行動を行っている訳である。我々の研究成果は共感に必要な高い認知能力、それにともなう多様な情動がすでに脊椎動物の進化の初期段階ですでに生じている可能性を示している。これらは、同時に実施しているホンソメワケベラなどの社会性魚類における自己鏡像認知と大きく符合するものであり、これらを合わせ、社会性魚類の共感性や社会認知能力の抜本的な見直しが必要かつ画期的な成果が期待できるでことを示唆する成果と言える。これらは、脳神経科学の最近の知見とも、その方向性はおおむね合致し、相補的な展開が今後期待される成果と言える。
著者
中村 健吾
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2018年度は、本件とは別に私が研究代表者となり3年間にわたって進めてきた科研費による研究(「EUの多次元的な福祉レジーム改革とシティズンシップの変容に関する研究」、課題番号:16H05730)の最終年度にあたるため、年に2回の研究会を通じて共有された研究分担者たちによるEU加盟各国での福祉レジーム改革に関する調査結果をも参照しながら、「社会的に排除された人びと」の実態とその支援策の展開について知見の整理を進めた。その際、EUによる移民統合政策と共通庇護制度の分析を担当した私自身は、欧州委員会が2000年代に入ってから提唱した定住移民のためのcivic citizenshipという構想の行方、ならびにEU加盟各国において施行されている移民への「市民統合(civic integration)」政策の展開に着目して、2003年に採択されたEUの「家族再結合指令」および「長期居住者指令」が、(EU加盟国の国籍を有する市民のみが享受することのできる)EUシティズンシップとは異なる広義の欧州シティズンシップの形成にとって有する意味を考察した。上記の調査作業を整理するための理論的枠組みとして、フランスの政治哲学者であるJ.ランシエールのいう「政治」と「人権」の独特な概念、ならびにイギリスの政治学者であるE.アイシンが提唱する「遂行的シティズンシップ」の概念を援用し、得られた知見への分析を行なった。以上の研究の成果は、私が2019年9月に公刊した論文「EUは越境する人の権利をどこまで認めているか?」において発表した。また、上記の共同研究の成果をまとめた編著を出版する計画を研究分担者とともに立案した。
著者
中川 眞 平田 オリザ 藤野 一夫 岩澤 孝子 梅田 英春 雨森 信
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、アートを媒介として社会的課題を解決・克服しながらコミュニティを再構築あるいは再生する試みに焦点を当て、アジア特に東南アジアをフィールドとして社会包摂型アーツマネジメントの手法、思想を明らかにするものである。本研究においては、共助・互恵といった集団福利志向型の社会関係資本〔共助組織〕、検閲を熟知したダブルバインド的手法〔パワーバランス〕、プロセス途次での大胆で即興的な変更〔遂行モデル〕などに大きな特徴が看取できた。
著者
中村 太郎
出版者
大阪市立大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2010

spo4^+が胞子形成にどのような役割を果たすか調べるために、Spo4の調節サブユニットであるspo6変異株の形質を多コピーで相補する遺伝子をいくつか取得した。そのうちの1つのAce2についてさらなる解析を進めた。Ace2は細胞分裂に重要なはたらきをする転写因子であることが知られている。また、Ace2は栄養増殖時にはM期に核に局在することが知られている。胞子形成時のAce2の局在を調べたところ、間期には局在が見られなかったが、減数分裂時に核に局在することがわかった。興味深いことに、第二減数分裂前期から中期にかけては核内でも特にSPB(紡錘極体)付近に多く局在がみられた。この時期にはSpo4もSPB付近に来ることが示唆されている。また、Spo4欠損株では、栄養増殖時にはM期に核局在が見られたものの、減数分裂時には核やSPBに局在が見られないことがわかった。ウエスタン解析により、この時期にAce2のタンパク質量の減少はみられなかった。Ace2欠損株では、前胞子膜形成には大きな欠損は見られなかったが、胞子壁の形成の遅れがみられた。実際に、胞子壁の合成に関係すると思われるいくつかの遺伝子の発現が、Ace2欠損株でほとんど見られなかった。以上のことから、Spo4がAce2の有性生殖特異的な局在制御を通して胞子壁形成に関わっている可能性が示唆された。これまで、Spo4は減数分裂の開始と前胞子膜形成に関与していることが知られていたが、今回の解析により、Spo4が転写因子Ace2を介して胞子壁形成に関わっている可能性が示唆された。
著者
藤田 勝久
出版者
大阪市立大学
巻号頁・発行日
1998

博士論文
著者
安井 幸則 橋本 義武 坂口 真
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

コンパクトなEinstein多様体および特殊ホロノミー群を持つRiemann多様体の幾何学をブラックホールの視点から研究することを目標とした.このような幾何学は物理的には,高次元のゲージインスタントンそして重力インスタントンと捕らえられるものであり,超弦理論やM理論の最近の進展から予想される幾何学の新しい方向を探ろうとする問題意識と深く関わっている.特に,コンパクトなSasaki-Einstein多様体に関しては,重力理論/ゲージ理論対応を使って超対称ゲージ理論の強結合領域を調べることができるため,最近大きな注目を集めている.主な研究成果は以下のとおりである.1.Lorentz解を正定置Einstein計量に解析接続する方法と,ある種の極限操作を組み合わせて5次元de SitterKerrブラックホールから球面東上に無限個の非等質な新しいEinstein計量を構成した.2,トーリックSasaki-Einstein多様体上のラプラシアンのスペクトラムを解析した.特に,基底状態のスペクトラムはゲージ理論側のカイラル・プライマリー演算子を再現することを示した,この結果は,重力理論/ゲージ理論対応の1つの検証を与えるものである.3.4次元Tod-Hitchinオービフォルド空間を底空間とするSU(2)束に3-Sasakian計量を構成した.底空間のオービフォルド特異点は全空間では解消されスムーズな7次元Einstein多様体を得ることができた.4.6次元de Sitter NUTブラックホールのBPS極限から新しいCalabi-Yau計量を複素線東上に構成した.この計量は4次元の重力インスタントンの自然な高次元拡張とみなすことができる.5.Sasaki-Einstein計量を持つ5次元多様体が与えられると,ブレーンタイリングと呼ばれる手法を用いて双対な超対称ゲージ理論を構成することができる,我々はこの手法を使って,新しい無限シリーズのクイバー・ゲージ理論を構成した.
著者
瀧川 裕英
出版者
大阪市立大学
雑誌
法学雑誌 (ISSN:04410351)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.1-29, 2002-08