著者
朴 一 永野 慎一郎 高 龍秀 裴 光雄 朴 昌明 梁 京姫 藤森 梓
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究グループでは、3年間に渡って、日本におけるエスニック・マーケットの形成プロセスや経済効果について研究してきた。 東京の新大久保と大阪の生野・鶴橋を中心に韓人マーケットの生成・発展プロセスについて度重なるフィールドワークを行い、 同地域で起業活動を展開する在日韓人起業家へのアンケート・インタビュー調査を実施してきた。 研究最終年(2013年)には、韓国・済州大学で開催した国際シンポジウムでこれまでの研究成果を発表し、ワーキング・ペーパーを出版した。
著者
田中 礼二 SEHGAL Pankaj
出版者
大阪市立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

タンパク質はいくつかの中間状態、Molten Globule(MG)を経て変性し、MG状態がタンパク質の機能に深く関わっていることが明らかになるにつれ、盛んに研究されるようになった。本研究では、代表的な球状タンパク質BovineSerum Albumin(BSA)と・-Lactalbumin(α-LA)の、界面活性剤による変性過程を詳細に調べた。近紫外、遠紫外領域の円偏光2色性(CD)スペクトル、トリプトファン蛍光光度測定や8-anilino-1-naphtahlene sulfonic acid(ANS)蛍光光度測定などを行った結果、界面活性剤濃度が小さい領域でいくつかのMG状態の存在を確認した。また、多くの界面活性剤が、それらの臨界ミセル濃度(CMC)付近で、タンパク質の変性を完了することが解った。イオン性界面活性剤を用いた系では、それぞれの界面活性剤イオンに応答するイオン選択性電極を作成し、電位差滴定法によりタンパク質に結合した界面活性剤分子の数を決定した。それによると、MG状態では、タンパク質に界面活性剤が数個結合していることが分かった。また、いくつかの試行の結果、複数の界面活性剤混合系におけるタンパク質の挙動が非常に興味深いことが分かった。界面活性剤の混合は混合ミセルを形成し、興味深い挙動をとる。タンパク質を加える前に、いくつかの混合ミセルの性質について研究した。混合ミセル系はそれぞれ特徴的な性質を持っているが、なかでも陰イオン性のsodium dodecylsulfate(SDS)とsodium N-dodecanolysarcosinate(SLAS)の混合系は興味深い結果を示した。この系の性質は、SLASの性質が支配的で、SLASを僅かに加えるだけで、特に水溶液表面の性質が大きく変化した。CMC付近で表面張力の値が大きく低下し、ある濃度を超えて界面活性剤濃度が増えると表面張力は増加に転じ、CMCに達した。現在、この現象は、表面でヘミミセルが生成することによって現れると考え、表面張力が増加に転じる濃度を臨界ヘミミセル濃度(CHC)と名付けたが、更なる研究が必要である。
著者
西岡 利晃 大倉 良司
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

変動圧、特にパルス状加圧を用いた建物外皮の気密性測定法開発のため以下の理論的および実験的研究を行った。理論的には、容器の質量保存の式に、空気の状態方程式を適用して、隙間特性値をパラメータとした容器の圧力変動の式を導いた。この式は非線形微分方程式となり、一般解は求まらず、容器内で空気の発生が無い場合で圧力減衰過程は解析的に解けることを示した。圧力減衰の測定値を解析解に適用することによって、パラメータである隙間特性値を同定する計算法を導いた。実験的には、気密容器と流量測定装置を制作し、面積形状の判明した隙間を対象に定圧法と変圧法(圧力減衰過程)により気密性=隙間特性値を測定した。変圧法では、送風機で給気し一定圧力差を形成してから送風を停止してその後の圧力の減衰過程を用いる方法と、高圧空気ボンベから一気に空気を放出し放出停止後のそれを利用する方法を行った。測定した隙間特性値を相当隙間面積に換算し、実際の隙間面積と比較した。定圧法は、隙間面積の広い範囲で実際の隙間面積とよく一致したが、変圧法(減衰過程)では、隙間面積が大きくなると一致しなくなり、隙間面積の大きさにかかわらずほぼ一定値になる。変圧法(減衰過程)では、気密性が悪くなるとすなわち隙間面積の大きさがある一定値より大きくなると、圧力減衰が急激になり、正確な数値近似が困難になると思われる。高圧空気ボンベの放出を用いるパルス法(パルス状加圧を用いる方法)は、送風機や送風用のダクトが不要で、建物外皮に特別な養生を施さずに行える利点がある。実在建物の気密性能を評価する優れた方法であるが、気密性の高い建物すなわち一定以上の気密性のあるそれにしか適用できない。隙間面積を小さくしたパルス実験で、適用限界を求めた。
著者
森 一彦 伊藤 三千代
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

(目的)本研究はその公的環境の中で駅ターミナル施設に着目し、情報(視覚・聴覚)障害者の探索行動の特徴を明らかにすることを目的とした。(方法)具体的には、視覚障害者・聴覚障害者および比較のための健常者の探索行動実験を行い、情報(視覚・聴覚)障害者の探索行動の特徴を分析した。特に探索行動時の探索方法の内容および情報入手の状況を整理し、そのデータを基に被験者相互の迷い行動を比較分析した。(結論)結果として、以下の点が整理された。(1)情報障害者は、入手情報が制限されるものの、適切に情報が提供されれば、迷うことなく目的のプラットホームに到達する事ができる。(2)むしろ、健常者の方が複数の情報が入手可能なため、色々な行動が誘発されやすく、結果的に「迷い」が大きくなるケースが多くあった。(3)聴覚障害者は健常者に類似した傾向があるものの、補足データとしての聴覚的な情報が乏しく、迷いやすく、状況判断しにくく慎重な行動になる傾向がある。(4)視覚障害者は点字などのサインよりも、その場所に置かれたもの・機器を手がかりとし、場所・方向を認知して行動する傾向がある分かった。(5)視覚・聴覚共に情報障害者は、探索途中で適切な情報入手ができずに迷いが生じた場合に大きな問題が生じ、どのように迷いからブレイクスルーするかが重要な要件となる。
著者
大仁田 義裕 加藤 信 小森 洋平 酒井 高司 橋本 義武 小池 直之 田中 真紀子 入江 博 宇田川 誠一 谷口 哲也 GUEST Martin 田丸 博士 江尻 典雄 安藤 直也
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

微分幾何学における部分多様体論は,ガウス以来の歴史の長い学問分野で,常に他の諸分野と関わりながら発展してきた.本研究課題は,有限次元および無限次元リー理論,幾何学的変分問題,可積分系理論,幾何解析等の分野と関わり,伝統的な方法を踏まえ無限次元的手法まで視点を広げて,部分多様体論の研究を広範かつ集中的に組織・推進した.有限次元および無限次元等径部分多様体,ラグランジュ部分多様体のハミルトン変分問題,調和写像と可積分系等を研究推進,新しい方法と結果を与えた.また,この研究領域における国際的な協力体制を整備し,若手研究者たちの活動も大いに促進した.
著者
河内 明夫 岸本 健吾 清水 理佳 金信 泰造 田山 育男 森内 博正
出版者
大阪市立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

「領域選択ゲーム」の応用研究として、スイッチシステム「量子スイッチ」の試作品を作った。「領域選択ゲーム」は図形ゲームである。その幼児版のゲームにより数字をよく知らない幼児がどの程度数学アルゴリズムを獲得できるかを研究するためのデータを取得し、その解析を行った。この図形ゲームの効能を説明するために、数学を思考する際の脳の働きを研究し、雑誌論文や図書として発表した。大阪市立大学医学部老年内科の医師の意見を取り入れて高齢者の視空間認識機能のリハビリテーションのための高齢者向け「領域選択ゲーム」を開発し、共同研究を締結した高齢者のケア施設に、それを搭載したiPadを貸与して、検証試験を行っている。
著者
篠田 哲史
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

希土類イオンと遷移金属イオンからなる複核錯体を合成し、両種の金属イオンの特性を活かしたアニオン認識や、希土類イオンからの増感型近赤外発光を実現した。また、希土類錯体ライブラリーやタンパク質-希土類錯体など、様々な金属錯体系において溶液中での近赤外発光やアニオン性基質に対する応答性を明らかにした。これらの分子は優れた近赤外発光プローブとして生体イメージングの高感度化に向けた応用が見込まれる。
著者
光藤 景皎 浅田 和茂 鈴木 茂嗣 大出 良知 田宮 裕 松尾 浩也
出版者
大阪市立大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

刑事訴訟のおいて誤った事実認定に基づく有罪判決があったならば、その被告人または有罪判決を受けた者を救済する制度(方法)が用意されていなければならない。また、これらの方法が有効に機能していなければならない。われわれは、比較法的研究・歴史的研究を踏まえながら上訴・再審という現行の制度の意義を探り、「誤った裁判からの被告人の救済」に、その主たる意義を見出した。ついで、事実誤認がどのようにして起こるのかの研究を行った。これは、理論的な面と実際的・具体的な面との双方からなされなければならない。後者の面ではとくに誤判であることが明らかになった具体的事例の研究が重要である。その裁判に関係した弁護人などのヒアリングを行ったのはそのためである。また具体的事例につき訴訟記録に基づいて、何故にその事件において誤判が生じたのかを研究した。とくに控訴と再審の各論的研究がそれに当る。以上の研究をテ-マ別に掲げると大略次のとおりとなる。A.総論I、訴訟手続における上訴・再審の意義と役割、判決確定前の救済方法と確定後の救済方法、英米法型の救済方法と大陸法型の救済方法、日本における救済の実情など。B.総論II、自由心証主義の運用と問題点、適正手続の事実認定における意義、鑑定の評価、情況証拠による認定など。C.各論I、控訴審の構造と事実誤認の救済、控訴審における新証拠・新事実の取調べ、上告審における事実誤認の救済、再審理由、再審の手続など。D.各論II、個別事件を通しての事実誤認及びそれからの救済の研究。(1)弘前事件(2)島田事件(3)鹿児島事件(4)大森勧銀事件以上の構成による成果の出版作業が進行中であるが、既に各研究分担者が公表済みの諸論文をここに研究成果報告として添付する。
著者
林 知里
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

①テキストデータの分析には、R3.0.3を用いた。RパッケージのRMeCabを用い、頻度分析および共起語分析を行った。「ゲノム/遺伝子」と共起する語の関係性を可視化するために、Rパーケージigraphを用いてネットワーク分析を実施し可視化した。②双生児およびその家族、計20名にインタビュー調査を実施し、データを逐語録におこして分析した。結果、父親および兄弟は、自らの遺伝観を他の家族や他者と共有する経験が少なく、「独特な」遺伝観を有していることが明らかとなった。一方、母親は、多胎サークルに参加する機会などを通して、他の母親と「ふたごの不思議」なエピソードについて共有する機会をもっていた。
著者
仁木 宏 中井 均 本多 博之 山村 亜希 秋山 伸隆 津野 倫明 堀 新 玉井 哲雄 小野 正敏 坂井 秀弥 大澤 研一
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

研究集会を合計13回開催した。各集会では、レジメ集冊子を刊行し、現地見学会を催した。毎回、10名前後の報告者に登壇いただき、それぞれの地域の特徴、全国的な視野からする最新の研究発表などがなされた。研究代表者、研究分担者だけでなく、多くの研究者の学問的な相互交流が実現し、比較研究の実をあげることができた。16世紀から17世紀初頭の城下町には地域ごとの違いが大きいことが明らかになった。先行する港町・宿、宗教都市のあり方、大名権力の性格、地形、流通・経済の発展度合いなどが城下町の空間構造や社会構造を規定した。いわゆる「豊臣大名マニュアル」の限界性にも注目することが必要である。
著者
根本 到
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

労働法における公法的規制と私法的規制の関係について研究を行った。高年齢者雇用安定法や労働者派遣法のように、その規範に違反した場合の効果について公法的特質のみを強調する法規が現れている。こうした法分野に考察を加えた結果、私法的規制と認定される場合の判断基準とともに、採用の自由論の限界などが明らかになった。労働法においては、古くから妥当する公法私法二元論が大きな影響力を有しているが、これよりも公法私法相互依存論の方が適切であると結論づけた。
著者
石田 佐恵子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

当研究は、グローバル化時代においてメディア環境に生じた新しい研究課題を明確にしつつ、同時に、映像データの会析手法のいくつかの流れを統合する手法を確立することを目的とするものであった。具体的には、データ収集とアーカイブ構築、映像データの分析を実施しつつ、従来の映像分析手法の再検討を行い、統合的な手法を模索した。【1】本調査の実施特定期問の地上波6局、全放送時間の番組を記録し、DVD化・データベース化していく方法を模索した。また。1980年代から保管されてき番組録画全資料のデータベース化作業を行った。これは、家庭用ビデオデッキの普及が個人のテレビ視聴にもたらした影響を考えるための資料であると同時に、国内外のテレビ番組サンプルの資料としても活用可能である。【2】調査結果の分析、及び、研究のまとめ映像データ分析についての統合的方法を確立するための考察作業を実施した。【3】研究成果の発表、刊行明らかにされた発見と結果は、論文やミニレポート、研究会報告や報告書などの形式で報告・発表した。本報告書は、それらの資料のうち、映像資料のDVD化・データベース化の方法についての考察、国内外の番組録画資料のデータベースを中心としている。
著者
伊達 ちぐさ 田中 平三
出版者
大阪市立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

健康な成人男子6名(年齢21〜26歳、身長160〜176cm、体重57〜63.5kg)をバランス・スタディーの対象者とした。食塩以外の栄養素は、すべて対象者の栄養所要量を満足させており、摂取食品群の構成も片寄りのないように工夫された基本食を作成した。この基本食を用いて食塩の摂取量が4レベル(1日当たり10g、7g、4g、1.5g)となるように使用する調味料の量を調整して、4種の実験食とした。6名の対象者を2群に分け、一方には10g食塩食を4日間、7g食塩食を7日間、4g食塩食を7日間、1.5g食塩食を10日間、最後に7g食塩食を4日間、合計32日間連続摂取させた。他方には10g食塩食を4日間、7g食塩食を11日間、4g食塩食を10日間、最後に7g食塩食を4日間、合計29日間摂取させた。実験食摂取期間中は、連日蓄尿した。また、7g食塩食と4g食塩食摂取時の最後の2日間には、バランス・スタディーを実施した。すなわち、体外へ排泄されたナトリウムを求めるため、尿へ排泄されたものと共に、この48時間に皮膚と便から排泄されたナトリウムを含むミネラルを全て収集した。実験食摂取中は3〜4日間隔で採血し、一般生化学検査と共に血中ミネラル類、レニン活性、アンギオテンシン、アルドステロン、抗利尿ホルモン等を測定した。ナトリウム出納は、7g食塩食、4g食塩食摂取時はほぼ零平衡を示したが、1.5g食塩食ではやや負出納を示した。血中成分の中では、アルドステロンは4g食塩食摂取時までは大きい変化は認められなかったが、1.5g食塩食摂取時には200%近くにまで上昇した。また、カルシウム摂取量は全実験食で一定であったにもかかわらず、尿中カルシウム排泄量は食塩摂取量が低いほど低下し、日本人にとって不足しやすいといわれているカルシウム摂取の面からは、食塩摂取量は低いほど望ましいことが示された。これらを総合すれば、わが国における成人1日当たり食塩最適摂取量は、4g付近にあるのではないかと推察された。
著者
伊藤 正人 佐伯 大輔 山口 哲生
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ハトを対象に、遅延割引、社会割引、社会的ジレンマ場面における共有選択を測定し、価値割引率や選択率の間の相関関係を調べた。その結果、遅延割引率と、社会割引率や共有選択率との間に有意な相関は見られなかった。また、社会割引率と、チキンゲーム・サクラあり・ランダム条件で得られた共有選択率の間には、有意な負の相関が見られた。これらの結果は、衝動性-利己性の関係がハトとヒトにおいて異なる可能性を示している。