著者
元山厚 中谷多哉子
出版者
情報処理学会
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.239-248, 2014-07-15

ソフトウェアの品質を向上させるために開発の各工程で,欠陥を検出し修正する必要がある.我々の調査によると設計工程で見落とされていた設計書の欠陥のうち,テスト工程まで発見できなかったものは,設計書の設計項目間の不整合が多い傾向があった.このような設計書の欠陥の見落としを防止するための仕組みがあれば,設計レビューを通して設計項目間の不整合の検出が可能である.本論文では,設計項目間の不整合を自動的に検出する支援システムを提案する.支援システムは,設計書のテンプレートと整合チェックツールで構成する.設計書のテンプレートは,設計書に記述すべき事項と構造を定義し,設計項目間の対応関係を明確にしたものである.整合チェックツールは,設計項目間の内容を自動的に比較し,不整合を検出する.提案した支援システムをソフトウェア開発プロジェクトでの設計レビューに適用した.その結果,設計項目間の不整合の見落としを防止することができた.
著者
中村 洋 山本 景子 倉本 到 辻野 嘉宏 水口 充
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:18840930)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.2, pp.1-8, 2011-01-14

ユーザが携帯電話を所持していても,実際に相手と通話できるか否かは相手の物理的・社会的状況に依存する.そのため,相手の無事を知るために通話をしたいと感じても,相手が通話に応じてくれるかどうかわからないため,漠然とした不安が生じてしまう.そこで本研究では,相手の携帯電話に付与したセンサにより相手の状況を自動的に判別し,相手が通話できかつ電話に出てもよいと考えているかどうかという通話是非情報を通知する手法を提案する.それにより,「相手の無事による安心感」,「相手に自分を助けてもらえることによる安心感」,「相手の意思・意図」の 3 つの感覚が伝達でき,その結果として安心感の拡大や行動を決定する上での判断の助けとなる.アンケート評価の結果,安心感を拡大することができ,行動を決定する上での判断の助けとなることがわかった.さらに試作システムによる携帯電話所有者の通話是非状態の判別精度を評価し,高い精度で判別できることを確認した.Whether a person with mobile phone can receive someone's call is dependent on the physical and social situation of him/her. Therefore, when we want to communicate with our partner to know his/her safety, we feel insecure because we cannot know whether he/she can accept our call or not. To solve the problem of insecurity feeling, we propose a method which helps to emphasize our sense of security by notifying the partner's acceptability of receiving our call. The acceptability is estimated with several sensors attached to mobile phone. The method aims to transmit three senses ― "sense of security about the partner's safety", "relief by the partner's help", "intention of the partner". From the result of questionnaire about the proposed method, it is found that the method can enhance sense of security so that we can decide what to do. In addition, it is found that the prototype can estimate participants' acceptability with high accuracy.
著者
齋藤 祐典 佐藤 俊治 大村 純一 三好 健文 入江 英嗣 吉永 努
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.4, pp.1-8, 2011-03-08

人間の視覚機能を解明するために,その機能の線形モデルを計算機でシミュレーションする手法がある.しかし,計算負荷の問題から簡略化したモデルあるいは一部分だけのシミュレーションのみが行われている.そこで,シミュレーションを高速化するために,プログラムを並列化し,PCクラスタを用いて実行する.本稿では,シミュレーションのコアである畳み込み演算をMPIにより並列化することで,最大43%高速化を達成した.また,実装したシミュレータを用いて錯視画像のオプティカルフローを求めたところ, 錯視現象の要因が得られたことを示す.Numerical simulation for the linear model of visual neurons is the most important approach to understand our visual system from computational viewpoints. We attempt to parallelize the time-consuming simulation on a cluster computer system. We achieved 43% reduction in simulation time by MPI implementation of spatio-temporal convolution formulated in the linear model. Moreover, by analyzing the simulation results, unknown factors on visual illusion are unveiled.
著者
秋山 弘貴 宮下 芳明
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.22, pp.1-6, 2010-03-05
被引用文献数
1

本稿では,「光速に近い速度で動くオブジェクト」 における CG 表現について検討し,CG の代表的なレンダリング技法であるレイトレーシングのアルゴリズムを拡張し,光線追跡時に描画対象となる仮想世界の時間を逆向きに進行させることによって光の速度を鑑みた CG 描画ができるシステムを実装した.そして,このシステムで光速を実世界より遅く設定すると,オブジェクトの動きを誇張する映像効果 「Light Brake Effect」 が発現することを確認した.この特殊な世界では,高速に移動するオブジェクトに対して伸縮や遅延が起こり,その影にも影響が及ぼされるため,動きを誇張するエフェクトとして効果的であると考えられる.In this paper we discuss CG expression of objects moving close to the speed of light. We expanded a ray trace program with the light speed in mind, and developed a rendering system that turns back the clock during tracing calculation. When we slow down the parameter of the light speed in the system, we observed special effects in the rendered images; we called it Light Brake Effect. There fast moving objects and their shadows stretch and get delayed apparently, so we consider the effect as overdramatizing expression.
著者
塩塚 大 鵜林尚靖 亀井 靖高
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.631-643, 2012-02-15

プログラマはデバッグに多くの時間を費やす傾向がある.プログラマはエラーの現象をチェックしたり,様々なコード上の箇所を行き来したり,あるいはバグ修正履歴を探索したりして,コードを修正する.このような一連のデバッグ作業を自動化することができれば,他の生産的な作業に時間を割くことができる.本論文では,この問題に対処する方法として,デバッグ支援のための関心事指向推薦システムdcNavi(Debug Concern Navigator)を提案する.dcNaviでは,リポジトリに含まれるプログラム情報やテスト結果,および修正履歴を活用することで,デバッグの関心事に応じた適切なヒントを提供する.本論文では,Eclipseプラグインプロジェクトに関する9つのオープンソースリポジトリを対象に,再利用性の観点からバグ修正履歴に基づいた推薦の有効性についても評価する.Programmers tend to spend a lot of time debugging code. They check the erroneous phenomena, navigate the code, search the past bug fixes, and modify the code. If a sequence of these debug activities can be automated, programmers can use their time for more creative tasks. To deal with this problem, we propose dcNavi (Debug Concern Navigator), a concern-oriented recommendation system for debugging. The dcNavi provides appropriate hints to programmers according to their debug concerns by mining a repository containing not only program information but also test results and program modification history. In this paper, we evaluate the effectiveness of our approach in terms of the reusability of past bug fixes by using nine open source repositories created in the Eclipse plug-in projects.
著者
小松 綾花 相川 清明
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.2, pp.1-6, 2010-02-05

音楽におけるタイトルを一種のマルチモーダル情報と考え、タイトルの効果を分析した。効果音楽と効果音楽のタイトル、仮想タイトルを付加した 3 種類を聴いてもらいタイトルの効果実験を行なった。まず、音楽のみから連想される言葉とその強さを求めた。次に、タイトルを付与した場合の強度変化を求めた。その結果、タイトルの効果は音楽により想起されるイメージのあいまいさに依存することがわかった。This report analyzes the effect of titles for music from the view point of multimodal communication. Subjective tests were conducted for the combinations of music and titles. Associated words and their intensities were obtained on listening music. Then the changes of intensities by presenting their titles were analyzed. The results indicated that the effect of title depended on the intensity of the image evoked by the music.
著者
福島 祥郎 堀 良彰 櫻井 幸一
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.38, pp.1-8, 2011-03-03

近年,Web ブラウザなどの脆弱性を突いてユーザにマルウェアを感染させる悪性 Web サイトの脅威が深刻化してきている.悪性 Web サイト対策にはそれらの URL やドメインのブラックリスト化が重要となるが,攻撃者はその回避のために URL やドメインを短期的に変更するため,たとえ未知の悪性 Web サイトであっても対応可能なブラックリストが重要となる.そこで本研究では,悪性 Web サイトが属す IP アドレスブロックとドメイン登録に用いたレジストラの関連性に着目し,それらの信頼性評価に取り組む.そして,信頼性の低い要素の組み合わせを用いたブラックリスト方式を提案し,その手法の有効性について評価を行う.The threats of malware infection via malicious Web sites which exploit vulnerabilities of Web browser are increasing. It is important to blacklist URLs or domains of the malicious Web sites for filtering them. However, attackers attempt to frequently change the URLs or domains to avoid the blacklist. Thus, a blacklist which can filter even unknown malicious Web sites is significant. In this paper, we focus on simiralities of IP address blocks and registrars used by malicious Web sites, and evaluate reliability of them. Then, we propose a blacklisting scheme using combinations of the two data with low reliability as the candidates for filtering, and evaluate effectiveness of our proposal.
著者
岡谷 貴之
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.37, pp.1-16, 2009-06-02
被引用文献数
4

バンドルアジャストメントは,画像から幾何学的なモデルのパラメータを推定する問題において,高い推定精度の達成を目指して,非線形最適化を数値的に-それが大規模なものになっても避けることなく-実行する方法である.本稿では,このバンドルアジャストメントを解説する.具体的には,数値計算の基本的アルゴリズムと実装方法,統計的推測としての理論的背景,そして座標選択に関わるゲージの自由度についてそれぞれ述べる.また,時系列の観測に対するオンライン推定を実現するための再帰的計算方法についても述べる.Bundle adjustment is a general method for the problem of estimating parameters of a geometric model from images. It is characterized by that nonlinear optimization is numerically performed to attain high estimation accuracy, even if the size of the optimization is very large. In this article I present a tutorial on this method. Specifically, I describe basic numerical algorithms with their implementation techniques, theoretical grounds in terms of statistical inference, and gauge freedom associated with the choice of a coordinate system. Moreover, I present a method for recursive computation that realizes online estimation for time series observations.
著者
才記 駿平 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HCI, ヒューマンコンピュータインタラクション研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2016-HCI-167, no.1, pp.1-8, 2016-03-01

プレゼンテーションを行う上で重要な要素として,聴衆の興味を引くプレゼンテーションスライドを作成する,というものがある.近年ではスライド中に面白い画像を配置しておくことによって,聴衆の笑いを誘う方法が使用される.しかし,プレゼンテーションに関係のある面白い画像を探す際には,様々なキーワードを用いて,試行錯誤しながら画像検索を行わなければならず,非常に手間がかかる.本研究では,スライド作成者が手軽に面白い画像を探し出せるようにするため,画像検索を行う際のキーワードの発想支援として 「謎かけ」 をもとにした多段階単語連想法を検討し,これを用いたプレゼンテーション用おもしろ画像検索支援システムを提案する.評価実験の結果,謎かけを元にした単語連想を用いることで,通常スライド作成者が行うキーワードの変換を支援することができる可能性が示唆された.また,プレゼンテーション用おもしろ画像検索支援システムによって,通常の画像検索ではすぐに得られないような画像をユーザーに提示することが可能となった.この結果,システム使用者がプレゼンテーション用の画像を検索する手間を減らすことができる可能性が示唆された.: Making catchy presentation slides is one of the important points of giving a presentation. Recently people often use funny images in presentation slides for this purpose. However, it is very complicated to find suitable funny images because it requires a lot of try-and-errors using various keywords. In this paper, we propose a “Nazokake” based multistage word association tool that supports generating keywords to retrieve suitable funny images. We conducted user studies and obtained possibilities that the proposed tool is effective to retrieve funny images.
著者
峰野博史 肥田 一生 水谷 美穂 宮内 直人 楠 和浩 水野 忠則
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.31, pp.1-6, 2004-03-18
被引用文献数
6

ロケーショントラッキングはユビキタスコンピューティングを支えるための基礎技術としても重要である.しかし屋内環境では,位置検出可能範囲が専用設備の整備された範囲に限定され,その整備にコストと労力を要したり位置検出対象物に専用デバイスが必要であるといった理由から広く普及しているものはない.本研究では,実用的個人ユース向けロケーショントラッキングシステムの構築を目指し,トラッキング対象物に高価な専用デバイスを必要とせず安価にトラッキング可能範囲を拡張できる移動機器連携ロケーショントラッキング方式を提案する.本方式では,無線ICタグ等の添付された識別可能な対称物を位置検出可能な移動機器群の検知履歴を利用してトラッキングするという特徴を持ち,本方式に適する位置検出方法や位置推定方法について検討する.There is increasing interest in accurate location tracking techniques and it is especially important to provide ubiquitous computing environment for indoor areas. Although there are many techniques, the resolution of tracking depends on a grid of ceiling sensors with fixed locations and the object that is tracking must support a special device such as wireless LAN. In this paper, we present a new location tracking method with using mobile detectors' tracking record. The feature of this method are easy for expanding the tracking areas and the tracking object need not support a rich device. We also describe the suited location sensing techniques of mobile detectors and how to track the objects by analyzing the record.
著者
和泉 潔 後藤卓 松井 藤五郎
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.3309-3315, 2011-12-15
被引用文献数
1

本研究は,金融実務家から要望が高い,数週間以上の長期的でしかも個別銘柄より広範な市場分析に,テキストマイニング技術で挑戦した.長期市場分析に有効なテキスト情報として,経済の専門家や金融機関がWeb上に発行するマーケットリポートを分析対象とした.そのために,定期的に発行されるテキストデータから時間的な特徴の変化を抽出し,テキストに関連する外部の時系列データとの関係性を見つけるテキストマイニング技術を新たに開発した.本技術を用いて実際に経済市場分析を試み,実際の市場動向をどの程度説明しているのかについて検証を行った.日本国債の2年物,5年物,10年物で運用テストを行った結果,既存のサポートベクタ回帰や計量経済モデルと比べて,どの市場でも安定して,ほぼ最高水準の運用益をあげることができた.In this study, we proposed a new text-mining methods for long-term market analysis. Using our method, we perfomed out-of-sample test using monthly price data of financial markets; Japanese government bond 2-year, 5-year, and 10-year markets. First we extracted feature vectors from monthly reports of Bank of Japan. Then, trends of each market were estimated by regression analysis using the feature vectors. As a result of comparison with support vector regression and an econometric model, the proposal method could forecast in higher accuracy about both the level and direction of long-term market trends.
著者
峰松 美佳 後藤 真孝 川村 卓也 松澤 茂雄
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.551-560, 2013-02-15

同時により多くの情報を表示可能とするタイルドディスプレイシステムが注目を集めている.本論文では,ディスプレイの大型化に柔軟に対応することを目的とした,マルチコアレンダリングサーバの設計と実装について述べる.また,我々の特徴技術である,多段並列処理手法と背景補正ダブルフレームバッファ(FB)の効果を検証する.8CPUコアサーバを用いて性能評価した結果,フレームレートが,並列処理を行わない場合と比べて7.3倍,通常のダブルFBを利用する場合と比べて1.3倍向上することが確認できた.また,関連研究であるXvncと比較すると5倍のフレームレートが得られた.A tiled display system which enables to display large amount of data is gaining attention. In this paper, we propose multi-core rendering server architecture for a tiled display system which flexibly adapts to different display sizes. The proposed technology introduces multistage parallel processing method and background correction double FB (Frame Buffer). Evaluation using 8 CPU core server showed that the frame rate of the proposed technology increased by 7.3 times compared with single thread version, increased by 1.3 times compared with conventional double FB version, and increased by 5 times compared with Xvnc.
著者
嘉田 勝
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.4, pp.1-5, 2010-07-03

コンピュータサイエンスアンプラグド (Tim Bell et al.) は,子どもの情報科学への興味を引き出すとともに,大学で教えられるレベルの情報科学の本質的理解を促すためにも有効な教育手法である.本発表では,コンピュータサイエンスアンプラグドの 「情報科学の本質的理解を促すための教育手法」 という側面について,可能性と課題を検討し,再評価を試みる.また,スーパーサイエンスハイスクール指定校の高校生を対象とした実践事例を紹介し,効果を検証する.Computer Science Unplugged (Tim Bell et al.) is not just a method to attract children's interest toward computers, but also an effective approach to the education of the heart of computer science. We will reevaluate the potential of Computer Science Unplugged as an approach in higher education to introduce the essence of college-level theoretical computer science.
著者
今城 和宏 上坂 和也 柴田 征宏 芳賀 博英 金田 重郎
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.4, pp.1-8, 2009-05-08
被引用文献数
1 3

幼児は集団生活を通して社会性を身につけるため,保育者や友達との交友関係が成長に大きく影響を及ぼしていると考えられる.そのため,保育者がそれぞれの幼児に応じた保育を行うには,幼児一人ひとりの交友関係を把握しておかなければならない.しかし,1クラスに何十人もいる幼児一人ひとりの交友関係を日々観察するには,知識・技術だけでなく,豊富な経験が必要であり,経験の浅い保育者には困難である.そこで,著者らは保育者への支援として,幼児に活動量を記録する歩数計を装着し,そこから得られる活動量のクラスタリング結果から,幼児の交友関係を分析する手法を提案してきた.しかし,従来手法では,加速度情報のみであったため,位置情報を無視して分析していた.そのため,子ども同士が離れた場所で遊んでいても,同じ遊びをしていた場合に交友があると誤認識していた.そこで本稿では,RFID及び加速度センサを用いて,子どもの位置及び活動量を測定し,それらを基に子どもの交友関係を分析した.そして,幼稚園で実験をした結果,従来手法と比較して,精度向上が得られ有効性を検証できた.Children learn to fit into society through living in a group, and their sociability is greatly influenced by their friendship relations. Although preschool teachers need to observe them to assist in the growth of children's social progress and support the development of each child's personality, only experienced teachers can watch over children while providing high quality guidance. Therefore, the authors have been proposing the method that analyzes the children's friendship relation from accelerometer sensors. But, previous method has no location information because we use only accelerometer sensors. So if two groups do the same play in different locations, members of these groups have a friendship relation. In this paper, we get area information by active-RFID. So we propose an extraction method of children's friendship relation by acceleration data and located information. The result of experimentation by a kindergarten, we could inspect the validity of our method.
著者
由井薗 隆也 宗森 純
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2635-2648, 2012-11-15

年,Webでは集合知と呼ばれる多くの人々を活用した知性が注目されている.集合知を実現するための条件をSurowieckiは多様性,独立性,分散性,集約性の4つにまとめている.今回,複数グループによる分散協調型KJ法で出された意見を用いることによって,集合知を指向した会議を検討した.第1段階目は,十数人の人々が独立したグループに分かれて分散協調型KJ法を行う.第2段階目は,それら結果を集約または集合させて分散協調型KJ法を行う.実験結果より,(1)集約性の高い会議技法においてまとめ文章の結果が良いこと,(2)その会議技法の参加者は第1段階目と関係ない参加者でも良い結果を導き出せる可能性が分かった. : A collective intelligence with groupware technology has been expected to produce good results. J. Surowiecki proposed success of the intelligence to be endowed with the four conditions: diversity, independence, decentralization and aggregation. A conference technique is considered to support the four conditions. In this consideration, the cooperative KJ method is carried out with more ideas obtained from some ten conferences by some groups in the first step. The technique utilizes all ideas or good ideas selected from previous ordinary conference in the second step. The experimental results showed that (1) the conference with good ideas had good aggregation and produced good results, and (2) the meeting had good performance by another group, not participated in the previous conferences, too.
著者
三原 鉄也 杉本 重雄
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告情報学基礎(FI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.11, pp.1-8, 2009-11-12
被引用文献数
1

紙とペンによって作られてきたマンガの作成過程においても、パソコン上のツールが利用される等、作成環境や配信環境の電子化が進められている。しかし実際のマンガ制作は、これらを前提としない昔ながらの漫画家と編集者の協業によって進められており、ディジタル化を活用した業務サポートによりマンガの生産性を高めることが求められている。本研究では、これを実現するためのディジタル環境を利用したマンガの制作の過程と、制作過程に作り出されるマンガの内容や諸要素とそれらの関係を記述するモデルについて述べる。さらにそのモデルを基礎とするマンガ制作支援ツールを提案する。Manga is a Japanese term meaning comics, cartoons, and graphic novels. Production process of manga has been moving from traditional Pen-and-Paper based task to PC-based task in networked digital environment. However, the design process of manga, which is the first half of the whole production process, is mainly agreement process between a manga creator and a producer responsible for publishing and is carried out by a traditional paper-centric communication between them. The goal of this study is improve the productivity of the design process of manga using a design support tool in digital environment. In this paper, we first show a model of whole production process of manga and discuss requirements to support the design process. Then, we propose a model to support the design process and a support tool based on the model.
著者
大村 圭 田村 芳明 吉川 拓哉 フェルナンドバスケス 盛合 敏
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.20, pp.1-8, 2010-07-27
被引用文献数
2

本論文では,KVM を利用した仮想マシン同期技術の設計と実装,および実験について述べる.我々は,先行研究において,仮想マシンの同期による耐故障クラスタリング技術 Kemari を提案し,仮想マシンモニタ Xen に実装を行った.Kemari はアプリケーションや OS に依存しないで,障害発生時にサービスを停止することなく継続することができる.しかし,Xen は Linux カーネルに統合されていないため,Linux の最新ドライバなどを利用することができないという問題がある.そこで,本研究では,Linux 標準の仮想マシンモニタである KVM に,Kemari を実装した.実験の結果,模擬的なハードウェア障害発生時も,アプリケーションや OS を停止せずに継続できることを確認した.This paper describes the design and implementation of virtual machine synchronization using KVM, along with experimental results of the system. In the previous work, we proposed Kemari, a cluster system that synchronizes virtual machines for fault tolerance that does not require specific hardware or modifications to software. Although we implemented Kemari based on Xen, Xen itself does not provide device drivers, and Dom0 which is responsible hasn't been integrated to the mainline Linux kernel, meaning we cannot use the latest hardware. To overcome this shortage, we implemented a prototype based on KVM, a virtual machine monitor included in the mainline Linux kernel.
著者
岩田 聡 河野 健二
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.221-234, 2010-09-17

ウェブアプリケーションの性能異常が重要な問題となりつつあり,性能異常の発生をいち早く検出し,被害が致命的になるのを防ぐことが求められている.しかし,性能指標の1つとして用いられるリクエストの処理時間は,正常時でも揺らぎが大きいため,その微妙な変化から性能異常の兆候を検出することは難しい.そこで,本論文では管理図という統計的手法を利用して,リクエストの処理時間に表れる微妙な変化から性能異常兆候の検出を試みる.その際,検出の精度向上や検出後の原因究明に有益な情報を得るために2つの工夫を行っている.1つは,監視対象の値として個々のリクエストの処理時間ではなく,一定時間ごとのリクエストの処理時間に関する4種類の統計値を用いている点である.もう1つはウェブアプリケーション全体ではなく,リクエストの種類ごとに管理図を作成する点である.実際にRUBiSというウェブアプリケーションに管理図を適用した結果,性能異常の兆候をつかむことができた.管理図によって検出されたいくつかの性能異常の兆候を詳細に調査した結果,(1)データベースへのインデックスの追加および,(2)性能パラメータの調整などを行うことによって,検出された性能異常が解決できることを確認した.Performance anomaly is becoming a serious problem in web applications. To prevent performance anomaly, it is useful to detect a symptom of performance anomaly to proactively take action against it. Unfortunately, a symptom of performance anomaly is a slight change in processing time in a web application. Thus it is difficult to detect the symptoms without being confused by natural fluctuations in processing time. In this paper, we apply control charts, a statistical method to detect deviations from the standard quality of products, to detecting symptoms of performance anomaly. In applying control charts, we devise some means to improve detection accuracy and gain useful information for debugging performance anomaly. To demonstrate the usefulness of control charts, we conducted case studies with RUBiS, an auction site modeled after ebay.com. Control charts detected some symptoms of performance anomaly: (1) the increase in processing time due to inappropriate design of database index, and (2) the increase in processing time due to improper setting of performance parameters. We confirmed that the detected anomalies can be fixed by modifying database design and performance parameters.
著者
中村 祐司 上原 稔
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.8, pp.1-6, 2010-09-10

今日,ブログなどの CGM の普及や,写真ないし動画投稿サイトの流行により,ネットワーク上の情報が増大している.これらの情報は多量のディスクを用いた大規模ストレージの運用によりデータを保存しているが,ストレージのディスクが増えると信頼性が低下するという問題が発生する.ストレージの信頼性を向上させる技術として RAID があるが既存の RAID では 1 または 2 台の故障までしか修復できず信頼性が不十分で,階層型 RAID を用いれば十分な信頼性を得られるが容量効率が低くなるという問題点がある.我々は非階層で 3 耐故障を実現する NaryRAID を開発した.NaryRAID は基本 RAID より耐故障性に優れ,階層型 RAID より容量効率が優れている.本研究では NaryRAID のパフォーマンスを向上させる方法とその効果の評価について述べる.Today, CGM(Consumer Generated Media) such as blog is spread. In addition, photo and video sharing sites become popular. In this way, the amount of information in network increases drastically. Such information is usually stored into a large-scale storage which consists of many disks. In such a storage system, the larger the number of disks is, the lesser the reliability of the system. RAID is usually used to improve the reliability of a storage. However, it is not enough because conventional RAID repair only either one or two faults. Therefore, we require more than 2 fault tolerant RAID. If hierarchical RAID is employed, more than 2 fault tolerance can be realized but the capacity efficiency is decreased. We have proposed NaryRAID which realizes 3-fault tolerant without hierarchical organization. The capacity efficiency of NaryRAID is larger than that of hierarchical RAID. In this paper, we describe how to improve the performance of AAA and evaluate its effectiveness.