著者
中本 幸一 高田 広章 八谷 祥一 朝倉 義晴 樫宿昌房
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.64-78, 2004-03-15
参考文献数
25

Java言語は組込みシステムで必須なリアルタイム処理には適さないといわれている.本論文では,リアルタイム処理を行う組込みシステムでJava言語を利用するためにリアルタイムOSとJavaプログラムの実行環境を共存させたハイブリッドアーキテクチャJTRON2.1の仕様策定を行い,これに基づいた試作の評価結果と実システムでの応用事例を述べている.JTRON2.1仕様では,Javaスレッドとリアルタイムタスクは通信機能により協調動作を行う.この通信機能には,リアルタイムOSの資源をJavaスレッドから利用するアタッチクラス,Javaオブジェクトをリアルタイムタスクから利用する共有オブジェクト,Java言語のストリーム機能を利用したストリーム通信の3種類がある.この通信機能はリアルタイムOS,Java実行環境上にライブラリとして実現される.このライブラリを利用して,リアルタイム処理はリアルタイムOS上のリアルタイムタスクで処理し,非リアルタイム処理はJava実行環境上のJava スレッドで実行させるような環境が実現される.There exist some problems in real-time processing essential in embedded systems when the Java language is applied to the embedded systems. This paper presents specification, evaluation results and applications of a hybrid architecture JTRON2.1, in which the Java runtime environment and a real-time OS coexist in order to utilize the Java language in the embedded systems requiring real-time processing. In JTRON2.1 specification, Java threads and realtime tasks cooperate through communication mechanisms. The communication mechanisms consist of attach classes, shared objects and stream communication. The first one provides methods by which Java threads can access to real-time resources. By the second one, realtime tasks can access to Java objects. The third one utilizes the Java stream to communicate with real-time tasks. The communication mechanisms are implemented by libraries on the real-time OS and the Java runtime environment. Using the libraries, the hybrid architecture is realized, where real-time processing is executed by real-time tasks on the real-time OS and non real-time processing is done by Java threads on the Java runtime environment.
著者
東条 敏 Stephen Wong 新田 克己 横田 一正
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.51-60, 1995-01-15
参考文献数
23
被引用文献数
6

法的推論の研究は、人工知能の研究者にとっても司法の現場からも魅力的な話題であるが、法令文の解釈は常に背後条件や周囲条件に依存するため、その形式化を困難にしている.。本稿の目的は、法的推論のしくみを状況理論の観点から整理し、形式化することである。状況理論は、述語論理のみによる記述系に対して、以下の点で有利である。第一に、状況はそれに対応するルールとファクトの集合を定義できるため、モジュールの概念を用いて計算機上に実装が可能であり、モジュール間の集合演算や継承などを実現できる。第二に、いろいろな状況依存に関わる現象が同じ状況推論のルールの形に書くことができるため、法の適用範囲、背後条件、判例などが、一様な記述系で表現できる。本稿では、ひとつの判例を状況と見立て、その中だけで局所的に成り立つ判例に依存したルール、判例を一般化した状況で成り立つルール、普遍的な状況で成り立つ法令文ルールを区別する。これらルールを薪事件に対応させるため、ルールの中の個体名や変数を新しい個体名に書き替え、ルールの連鎖により新たな法的判断を求めることができるモデルを示す。また、新事件と過去の判例との類似性判断についても、状況理論的に形式化する。この枠組は灼知識べ一スシステムQuixoteを用いて実験的に実装されており、実際の判例を用いて推論のしくみの例を紹介する。
著者
岡野 浩三 今城 広志 東野 輝夫 谷口健一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1290-1301, 1993-06-15
参考文献数
14
被引用文献数
4

分散システム全体の要求仕様から要求仕様通りに動作する各ノードの動作仕様(ざのようなタイミングでどのノードとどのような同期用メッセージやレジスタ値を交換しながら自ノードの動作を実行したり、自ノードのレジスタ値を更新していくべきかを記述したもの)を自動生成できることが望ましい。そこで、本論文ではレジスタを持つ拡張有限状態機械(EFSM)としてモデル化された分散システム全体の要求仕様から、要求仕様通りに動作する各ノードの動作仕様(EFSM)を自動生成するためのアルゴリズムを提案する。このモデルでは、非決定性の動作が記述できる。また、入カと状態だけでなくその時点のレジスタ値に依存して次の状態や次のレジスタ値を定めることができる。各レジスタは分散システムのリソースを表すと考える。どのノードに各リソースを配置するかは設計者が決める。同一リソースを複数ノードに分散配置してもよい。作成した自動生成アルゴリズムでは、与えられた要求仕様とゲートや、リソースの配置情報から各ノードの動作仕様を自動生成する。導出は要求仕様の各状態遷移を、選択動作の通知、レジスタ値の転送、レジスタ値の更新、更新終了の通知などの一連の動作の系列で置き換えることにより実現し、0?1線形計画問題の解法を用いて、その際のノード間のメッセージ交換の総数をできるだけ少なくしている。
著者
華山 宣胤 島倉 凡子 南 哲平
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.27, pp.71-78, 2000-03-07

本研究では、消費者のTVゲームに関する消費者動向の調査方法を提案し、実際の調査データに当てはめることよって、その有意性を確かめる。また、提案したモデルに基づく調査データから新商品のコンセプト作りに有用な結論を導出するための方法として、スライスド・インバース・レグレッションを用いた解析手順を提案する。A strategy for the analysis of data on trends in the market for TV-game is proposed, and it is applied to a trial investigation to show the effectiveness of the proposed strategy. Further, for the purpose of projecting factors which have things to do with total valuations, it is insisted that the sliced-inverse-regression is meaningful to apply to the data.
著者
川野 哲生 日下部 茂 谷口 倫一郎 雨宮 真人
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.1700-1708, 1995-07-15
参考文献数
11
被引用文献数
1

超並列計算機の設計において、もっとも大きな問題の1つにプロセッサ間通信やメモリアクセスに伴うレイテンシ問題がある。マルチスレッド処理によるレイテンシ隠蔽は本問題に対する有効な解決手段である。効果的なマルチスレッド処理を行うためにはプロセッサに高速なコンテクストスイッチ能力が必要とされる。しかしながら従来のRISC型のプロセッサでは、スレッドの切り替えに伴うレジスタの退避と回復のためのメモリアクセスがオーバヘッドとなり、細粒度マルチスレッド処理を効率的に実行することは困難である。本論文では細粒度マルチスレッド処理向きプロセッサDatarol?IIを提案する。本プロセッサはデータ駆動方式を最適化したDataro1にスレッド実行を導入し一般的なRISCプロセッサと同様のパイプライン処理および高速レジスタの利用を可能とした。また、自動レジスタロードストア機構によりコンテクストスイッチに伴うメモリアクセスを明示的なロードストア命令を用いずかつ通常の処理と並行して行うことにより細粒度処理におけるオーバヘッドを隠蔽する。さらに階層的なメモリシステムと負荷制御機構を導入し価格性能比に優れたメモリシステムを実現する。シミュレーションによる評価により、自動レジスタロードストア機構によるメモリアクセスオーバヘッドの隠蔽効果、優れた耐レイテンシ性能、負荷制御による効果的な階層メモリシステムの実現、が確認され、本プロセッサは超並列計算機用要素プロセッサとして有望であることが分かった。
著者
菊地 洋右
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.7, pp.1-4, 2010-09-15
参考文献数
2

単純グラフ G のすべての辺を含む路をオイラー路、オイラー路が閉路となっているものをオイラー回路という。オイラー路をもつグラフを semi-eulerian とよび、オイラー回路をもつグラフをオイラーグラフとよぶ。オイラーグラフの特徴付けはグラフ理論の教科書に必ず載っていると言っていいほどよく知られている。オイラーグラフが与えられたときに、オイラー回路の数え上げは #P-完全であることが知られている。本研究は、単純グラフ G がオイラー路をもつとき、重複も抜けもなく、そのオイラー路を列挙するアルゴリズムを提案する。本研究のアルゴリズムではまず Fleury's Algorithm を用いて単純グラフ G のオイラー路を求める。このオイラー路から順次、オイラー路を求めていくことで列挙を行う。提案するアルゴリズムは、Fleury's Algorithm を適用した後に、すべてのグラフ的列を 1 つあたり O(m) 時間で列挙する。For simple graph G, eulerian trail is a trail that has all edges in G. If eulerian trail is close circuit, it is called eulerian circuit. If G has a eulerian trail, G is called semi-eulerian and if G has a eulerian circuit, then G is eulerian graph. A characterization of eulerian graph is well-known and may appear in any graph theory. Given eulerian graph, counting eulerian circuits is #P¡complete. This paper will propose an algorithm to generate all eulerian trail for simple graph G, if such trail exists. At first, we obtain the minimum eulerian trail of G, applying Fleury's algorithm. Next, we generate all eulerian trails. Our algorithm generates all eulerian trails in O(m2) for each, after applying Fleury's algorithm, where m is the number of edge in G.
著者
平賀 瑠美 大島 千佳 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.48, pp.33-38, 2003-05-16
参考文献数
10
被引用文献数
1

演奏生成システムの評価方法の確立を目指すワークショップ ``Rencon'' (Performance Rendering Contest) が2002 年より始まった.演奏生成システムは楽譜や人間の演奏を参考に,生成すべき楽曲の楽譜情報やその構造についての情報を入力として,表情のある演奏を生成するソフトウェアシステムである.一般に演奏は主観により判断されてきたため,演奏生成システムの評価をその出力から行うことは困難である一方,論文のみでシステムを評価することは技術面での優秀さしか知ることができない.また,演奏生成システムの研究には情報科学のみならず,音楽学,心理学,認知科学といった幅広い分野の研究者の共同作業が必要となる.そこで,Rencon は,演奏生成システムの評価の確立とともに,多くの関連分野の研究者が意見を交換し合う場としての意味も持ち得る.本稿では,2002年のRenconに主催者,発表者,参加者として関わった3名がそれぞれの立場および異なる研究背景から2002年のRencon から得た教訓,感想,提案について述べる.``Rencon'' (Performance Rendering Contest) has started from 2002 as a workshop to establish evaluation methods for performance rendering systems. Expressive performance is rendered by a software system with the data of musical scores and corresponding performances and their musical structures as well, as input. Performance has been considered to include subjective matters so that it is not possible to evaluate such a system only from technical papers. Rencon also has the meaning as a forum for researchers of various areas --computer science, musicology, psychology, and perception-- to meet and discuss on their interests in musical performance. In this paper, three authors, who participated two Rencons in 2002 as a steering member, a paper speaker and music entrant, and a participant, describe each of their opinions from different relationships with Rencon and research backgrounds.
著者
本部 栄成 渡邊 幸聖 小田 雅洋 西垣 正勝
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.30, pp.1-8, 2011-03-03

近年,マジコンと呼ばれる機器の登場により,ゲームソフトの不正コピーの被害が増加している.ネットゲームであればサーバによる認証を用いて正規ユーザと不正ユーザを切り分けることが可能であるが,スタンドアロン型のゲームソフトに対しては不正コピーに対抗する有効な技術が存在しないというのが現状である.そこで本稿では,不正ユーザの心理に訴えかけるタイプのソーシャルな不正コピー対策を提案する.ゲームソフトが自身の真正性をコード署名を用いてセルフチェックし,その結果を携帯ゲーム機に搭載されているすれちがい通信を通じて他のゲーム機と共有することによって,不正者を一般ユーザの目にさらす.不正者は,罪悪感から不正コピー品の使用を躊躇するようになると期待される.本方式は,すれちがい通信によってイベントが発生する機能を含むコンテンツに適用可能である.本稿では本方式の有用性を統計的側面から評価する.In recent years, the damage from illegal copies of the game software increases due to the appearance of a device called "magic computer". If the game software is an online game which connects into the internet, we can distinguish between normal users and illegal users with account authentication performed on a game server. However there is no way to block illegal copy of the stand-alone type software which doesn't connect in the internet. In this paper, we propose a social countermeasure to illegal copies of a type that appeals to illegal user's psychology. Game software checks itself with code signature, and they send these results to the other by directly communicating with each other. By sharing the information among game machines, all game users can recognize illegal game users. We expect illegal users halt to use illegal copy because they feel a sense of guilt. This scheme can be applied to contents which contain game events which appear in the exchange process. In this paper, we evaluate this scheme with a multi agent simulation.
著者
林 明宏 和田 康孝 渡辺 岳志 関口 威 間瀬 正啓 白子 準 木村 啓二 笠原 博徳
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.68-79, 2012-01-27

汎用CPUコアに加え特定処理を高効率で実行可能なアクセラレータを搭載したヘテロジニアスマルチコアが広く普及している.しかしながら,ヘテロジニアスマルチコアでは様々な計算資源へのタスクスケジューリングやデータ転送コード挿入等多くをプログラマが記述する必要があるためプログラミングが困難である.そこで本論文では,逐次プログラムを入力とし自動並列化コンパイラを用いることで自動的に汎用コアとアクセラレータコアにタスクを配分し,高い性能および低消費電力を実現可能なソフトウェア開発フレームワークを提案する.本手法はアクセラレータコンパイラやアクセラレータライブラリ等既存のアクセラレータ開発環境を有効に利用可能である.本フレームワークを情報家電用ヘテロジニアスマルチコアプロセッサRP-Xをターゲットとして,アクセラレータライブラリを使用し,AACエンコーダおよびOptical Flow計算の自動並列化性能および消費電力を評価した.その結果,8つの汎用CPUコアおよび4つのアクセラレータコアを使用した場合,逐次実行時と比較してOptical Flow計算で最大32倍,AACエンコーダで最大80%の電力を削減可能であることを確認し,ヘテロジニアスマルチコアを対象とした汎用的なコンパイラフレームワークを実現した.There has been a growing interest in heterogeneous multicores because heterogeneous multicores achieve high performance keeping power consumption low. However, heterogeneous multicores force programmers very difficult programming. In order to overcome such a situation, this paper proposes a compilation framework which realizes high performance and low power. This paper also evaluates processing performance and the power reduction by the proposed framework on RP-X processor. The framework attains speedups up to 32x for an optical flow program with eight general purpose processor cores and four DRP (Dynamically Reconfigurable Processor) accelerator cores against sequential execution by a single processor core and 80% of power reduction for the real-time AAC encoding when we utilize an existing accelerator library.
著者
中山 泰一 角田 博保 Yasuichi Nakayama Hiroyasu Kakuda
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌. 教育とコンピュータ = IPSJ transactions. TCE
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.41-47, 2016-06-01

共通教科「情報」の高等学校学習指導要領では,「多くの情報が公開され流通している現状を認識させるとともに,情報を保護することの必要性とそのための法規及び個人の責任を理解させる」と規定されており,その内容の取扱いとして,「知的財産や個人情報の保護などについて扱い,情報の収集や発信などの取扱いに当たっては個人の適切な判断が重要であることについても扱うこと」と記されている.一方,国,地方自治体,独立行政法人などの行政機関から情報を収集する意義や手続きについてはあまり扱われていない.本稿では,行政機関の公文書という生の情報を収集することは重要であるとの観点から,大学の教職科目の情報科教育法への公文書公開手続きの活用について,実践例とともに議論する.
著者
原田 篤史 西垣 正勝 曽我 正和 田窪 昭夫 中村 逸一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.2093-2105, 2003-08-15
参考文献数
10
被引用文献数
1

様々な場面で使用されるようになってきた電子文書には,追記によってのみ更新が許されるライトワンス型の文書が含まれており,電子カルテなどはその好例である.ライトワンス文書では,たとえ文書中に誤りが発見されたとしてもすでに書かれている記述を削除することが許されず,修正内容を追記として付加するしかない.ライトワンス文書を電子文書として扱う際には,データの完全性と追記の順序性の保証が必要となる.本論文は,特別なハードウェアに頼ることなく,電子化されたライトワンス文書の安全な管理を実現する方式を提案する.本方式では,追記データ単位で当該データを作成したユーザのディジタル署名と文書を保存する文書管理システムのディジタル署名を2重に付加することにより,データの完全性を保証している.同時に,文書中の各追記データにおけるユーザとシステムのディジタル署名はそれらすべてをリンキングさせることにより,追記データの順序性を保証するとともに,文書改竄に対する耐性を強化している.タイムスタンプサーバなどに代表される従来のリンキング方式とは異なり,文書ごとに独立した「文書本位」の署名のリンキングをすべてのユーザと文書管理システムが積極的にリンキングに協力する方式によって行うことで,文書の改竄困難性が非常に高く,特にライトワンス文書の管理に優れたシステムを実現している.本方式は既存の標準的な署名アルゴリズムにより実装が可能で,かつ,異なった署名アルゴリズムを用いる複数のユーザが1つの文書に対して追記することもでき,運用上の柔軟性をあわせ持つ.There are documents which require to be stored in a write-once format, e.g., medical records. Such documents can be updated only by adding new records. Even when any erratum is found, a document is not allowed to be written over, instead, new record for errata is added to the document. Moreover, it is also required to keep the order of records in a document. This paper proposes a secure database management system for a ``write-once document''. In this system, two types of digital signatures are added to each record to maintain the integrity of a document. All those signatures are created with a linking scheme; the linkage between records and signatures makes it difficult for a cracker to alter/remove/insert any record or change the order of records. The system proposed here employs a ``document-oriented'' linking scheme with both of users' and system's digital signatures, whereby the system realizes a secure write-once data management system with no special hardware. In addition, this system does not depend on a particular signature algorithms. That is, a variety of users each of who uses different signature algorithms can add new records to any document in the system.
著者
角田 博保 石畑 清 中谷 多哉子 Hiroyasu Kakuda Kiyoshi Ishihata Takako Nakatani
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. コンピュータと教育 (CE) (ISSN:21888930)
巻号頁・発行日
vol.2015-CE-132, no.39, pp.1-12, 2015-11-27

2013 年 12 月,米国にて ACM/IEEE-CS によるコンピュータ科学カリキュラム標準 CS2013 が公表された.それまでの標準だった CC2001 の刊行後 10 年以上が経ち,その後継として作成されたものである.日本では,情報専門学科カリキュラム標準 「J07」 が 2008 年に公表されているが,現在,改訂への活動が始まりつつある.J07 は,CC2001 を元として作られたものであるので,CC2001 が CS2013 にどのように改訂されたかを知ることは重要である.本報告では,CS2013 と CC2001 を比べ,知識体系 (BOK) を中心に,どのように改訂されたのかを比較,考察する.
著者
西村 陽子 北本 朝展
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.9, pp.1-8, 2009-07-18
参考文献数
12

本論文は、北京という都市を対象として古地図と古写真を統合した Historical GIS を構築する試みを紹介する。約 250 年前の古地図『乾隆京城全図』と約 100 年前の古写真を「空間画像史料」として統合的に扱うためには、古写真の場所を同定する問題が本質的に重要である。そこで本論文では古地図等の複数の情報源を利用しながら古写真をマッピングする問題に取り組み、簡単な事例から困難な事例までに適用可能な一連のマッピング方法を提案する。また Historical GIS を実現するために Google Earth というツールを活用することの利点を示し、古写真を地理的な文脈で閲覧し解釈できるような環境を実現することが北京の都市景観の再現には必要であることを論じる。This paper introduces the construction of a historical GIS on the city of Beijing by integrating old maps and old photographs. We use the old map, Complete Map of Peking, Qianlong Period, made about 250 years ago, and old photographs, taken about 100 years ago, and defined them as "spatial visual sources." We claim that the mapping of old photographs is an essential step toward dealing with old maps and old photographs as spatial visual sources in an integrated manner. We therefore focus on the problem of mapping old photographs using information and hints from various sources, and propose a set of mapping methods that are applicable from simple cases to difficult ones. We also show that Google Earth is a useful tool for realizing a historical GIS, and discuss that, for reconstructing the historical space of Beijing, we need to realize an environment in which old photographs can be browsed and interpreted under geographical context.
著者
関 栄二 三輪 誠 鶴岡 慶雅 近山 隆
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2533-2543, 2012-11-15

モンテカルロ木探索(MCTS)の登場により,コンピュータ囲碁プレイヤの棋力は大幅に向上した.こうした成功を受け,静的評価関数とアルファベータ木探索による従来の手法が成功を収めてきた将棋においても,モンテカルロ法の適用が模索されている.MCTSの改良は,モンテカルロ木の扱いに関するものと,プレイアウトの方策に関するものに大別される.本稿では後者に着目し,モンテカルロ将棋の方策の学習に,囲碁で成功を収めているシミュレーション・バランシングを適用することを提案する.実際に,3,000局面でのバランシング方策の学習を行った.対戦実験による評価の結果,提案手法の特に序中盤での有用性を示すことができた.また,バランシングを適用するうえで,詰み付近の局面における将棋特有の課題を解析し,プレイアウトに詰み探索を導入することで一定の改善が行えることを示した.Since the advent of Monte-Carlo tree search (MCTS), strong computer players using Monte-Carlo methods have been built for the game of go. Following these successes, application of the methods has been explored to the game of shogi for which conventional methods have also been successful. Improvement efforts of MCTS can be roughly classified into two: the way to deal with Monte-Carlo tree and the simulation policy. In this paper, we propose to apply simulation balancing that has succeeded in go to learn the policy of Monte-Carlo shogi players. We use this learning method with 3,000 positions and evaluate the performance. The proposed method is found to be effective in opening and middle game. Then, we analyze a problem unique to shogi endgames and alleviate it by performing checkmate search in playout.
著者
和田 尭之 佐藤 直之 池田 心
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.5, pp.1-8, 2015-02-26

市販のコンピュータゲーム特に RPG と呼ばれるジャンルでは,ゲーム AI が操作するキャラクタとチームを組んで遊べるものも多いが,しばしば仲間 AI プレイヤは期待に反する行動を取り,プレイヤの不満に繋がる.これはこの種のゲームに "勝つ" 以外の副目的が複数あり,AI プレイヤは人間プレイヤの "どの目的をどの程度重視しているか" といった価値観を理解せずに行動していることが原因の一つである.本研究では,人間プレイヤが選択した行動から人間プレイヤの重視する目的を推定し,それを AI プレイヤの行動選択に活用することでその人間プレイヤにとって満足度が高い AI プレイヤを生成することを目指す.評価実験では,様々な価値観を持つ仮想人間プレイヤを人工的に構成し,提案手法を適用して価値観を推定した.全く同じ価値観に基づいて行動を選択した場合の行動一致率 (例えば 70.6%) に対し,推定した価値観に基づいて行動を選択した場合の行動一致率 (例えば 67.1%) は,最悪の場合でも 3.5% しか劣っていない結果を得ることができた.Some genres of commercial video games, especially RPG games, allow players to play the game with the AI players as the teammates. But the AI players as the teammates often take actions that the human player does not expect them to do. Such mismatches between the expectations of the human players and the actions taken by the AI players often cause dissatisfaction of the players. One of the reasons for such mismatches is that there are several types of sub-goals in these games and the AI players act without understanding which types of sub-goals are important for each human player. The purpose of this study is to propose a method to develop teammate AI players that estimate the sub-goal preference of the human players and act with causing less dissatisfaction of the players. In an evaluation experiment, we prepared some artificial players with various preferences for the sub-goals and tried to estimate their sub-goals by the proposed method. The selected actions based on the estimated sub-goal preferences were the same as the selected actions by the original artificial players at the rate of 67.1% in one setting. The upper bound of the rate is about 70.6% (in this setting), which is the rate at which the same actions are selected when the preference of sub-goals is the same. Thus the proposed method is only 3.5% inferior in performance in the worst case compared to an ideal estimation.
著者
長 篤志 原田 哲也 木下 武志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.255-266, 2005-01-15
参考文献数
13
被引用文献数
1

本論文では,3 次元コンピュータ・グラフィックスにおける逆遠近法を提案する.逆遠近法とは絵画における描画法の1 つであり,通常の透視投影法とは逆に遠くよりも近くの物体の方が画面上で小さく描かれることをいう.提案手法では,移動する視点から見た投影像をまとめることによって3 次元コンピュータ・グラフィックスにおける逆遠近法を実現している.また,逆遠近法で描かれた絵画によく見られるように,画面内に異なる投影法によって描かれた物体が混在する場合を想定している.そのため通常の透視投影法によって描画された画面内において,一部の物体のみを逆遠近法によって投影できる.しかも,対象物体に反射,透過・屈折による質感表現と影付けが可能であるという特徴を持つ.また,逆遠近法によって線遠近法による奥行き手がかりが崩れたとしても,投影像において有効な奥行き手がかりである物体の重なり,位置関係,大きさに関して,透視投影時の投影像の状態をほぼ保持することが可能である.We propose an algorithm of inverted perspective for 3-dimensional computer graphics. The inverted perspective is a technique for drawings and pictures. Objects near a viewpoint are drawn smaller than far objects. This characteristic is opposite to the ordinary perspective. The proposed algorithm draws 3-dimensional computer graphics using the inverted perspective by patching projected images from multi-viewpoints. The algorithm considers mixture of projective methods in an image plane. The mixture of projective methods is a popular usage of the inverted perspective on ordinary drawings and pictures. Therefore, the algorithm can draw only part of objects by the inverted perspective in an image projected by the ordinary perspective. Moreover, reflection, refraction for material representation, and shadowing can be used. In the inveted perspective, the liner perspective is broken, but the proposed algorithm can maintain three depth cues that are oclusions, positions, and size of objects in an image plane.
著者
金田 重郎
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.2, pp.1-9, 2009-11-24
参考文献数
20
被引用文献数
1

本稿では,MASP アソシエーションが提唱する 「概念データモデリング (CDM)」 を,C.S. パース (Charles Sanders Peirce) を創始者とするプラグラマティズム哲学の視点から分析し,CDM をブラグマティズム実践として再定義する.具体的には,1) CDM が採用している 「オブジェクト指向」 は,プラグマティズムの 「実在物」 の思想を背景に持つと考えるのが自然であり,2) オブジェクト指向を導入しつつ,動的モデルを通じて,データ状態が変化するオブジェクトに焦点を絞る CDM のアプローチは,中村善太郎の 「要 (かなめ) の 『もの』 『こと』」 を自動的に組み込んでいる.但し,パースの論文は 1870 年代に発表されたものである.その後も,クワイン,ローティなどの現代プラグマティズム哲学者によって研究は発展している.これらの理論的進展を CDM に準用することにより,CDM のあるべき姿を明確化できる.This paper analyzes theoretically the Conceptual Data Modeling (CDM) approach, proposed by the MASP association in Japan, from the philosophical view points of C.S.Peirce's Pragmatism. The analysis shows that CDM itself is equal to the investigation process of Peirce's Pragmatism. Also, the necessity of the object-oriented approach is described based on the "Real Thing" concept of Peirce's pragmatism. The object-oriented approach is an essential part of CDM to reveal a "To Be" model in the application domain. However, the major papers of the Peirce's pragmatism were published in 1878 and are not new. The some modern pragmatism philosophers, such as W. V. Quine, and R. Rorty, have already improved the Peirce's theory. Thus, this paper also shows that their theoretical improvements set up new aspects of the CDM approach.
著者
楠嶺 生宏 石原 進
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.7, pp.1-8, 2011-03-02

本稿では,VANET を用いて位置依存情報を,情報が生成された位置の周辺エリアを走行する車両に対して情報の有効期限の間配信し続ける手法について議論する.筆者らは,これまでに Push 型のエリア内位置依存情報配信手法として,ランダムネットワークコーディングと Opptunistic 型データ通信を組み合わせた RNC based Regional Data Distribution on VANETs(R2D2V) を提案している.R2D2V では,高車両密度時におけるデータの一斉配信によるパケット衝突や帯域浪費の問題に対して,ランダムネットワークコーディングの利用,車両速度に応じたビーコンパケットの送信間隔の動的変更,周辺車両密度によるデータの返信確率の動的変更の 3 つの技法を組み合わせることで,低トラフィックで確実なデータ配信を可能にする.R2D2V は,1) 情報有効領域にいる全車両に対して短時間で確実に情報を配信する,2) 情報生成後に情報有効領域に新たにやってくる車両に対しても短時間で情報を配信する,ことを目的に設計されている.しかし,これまでに 1) に対する評価は行われているが,2) に対する評価や各パラメータの詳細な評価は行われていない.そこで本論文では,A) 各車両の通信可能半径を大きくした場合のデータ配信に対する受信率の変化,B) 情報の生成された位置周辺 (有効領域) に情報生成後に新たに進入した車両が情報を低遅延で受信できるか,C) 返信確率の変更による配信の遅延・確実性とデータ配信トラフィックの間のトレードオフ,の 3 点に着目して詳細な評価を行った.シミュレーションの結果,通信可能半径が大きく,かつ車両密度が高いときでは R2D2V が単純な Opportunistic 型配信よりも有効領域内の全車両だけでなく,有効領域に新しく進入した車両に対して低遅延,低トラフィックでデータを配信できることを確認できた.In this paper, we discuss a method for continuously providing location-dependent information generated by a vehicle to other vehicles being driven in the surrounding areas of a location where the information was generated during the information effective period using Vehicular Ad hoc NETworks(VANETs). We have proposed a scheme called R2D2V which uses both random network coding and opportunistic data dissemination techniques. The main purposes of this scheme are i) disseminating location-dependent information rapidly and reliably to vehicles in the effective area of the information, and ii) providing the information to vehicles coming to the effective area of the information after the information was generated. In this paper, we focus on the following scenario and evaluate this scheme for the second purpose. A) Changes in data reception ratio in the data effective area when each vehicles' communication range is large, B) Whether vehicles newly coming to the data effective area after the information was generated can obtain a data item quickly, C) The trade-off between data distribution traffic and data reception ratio in the data effective area by changing the probability of replying to Hello messages. The simulation results showed that R2D2V can achieve high delivery ratio with low data distribution traffic and low delay when the vehicle density is high against all vehicles in the data effective area.
著者
小菅 徹 吉野 孝
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.10, pp.1-8, 2009-11-19
参考文献数
15
被引用文献数
2

Web メディアの発展は著しく,特にユーザにより情報発信されるメディアとして Weblog や SNS などのコミュニケーションツールがある.しかし,多くのユーザがその手間と見返りの少なさから利用継続が出来ない現象が発生している.最近では,Twitter などのユーザの行動を逐次投稿するライフストリームサービスが流行りつつある.そこで,小型 PC と周辺機器をウェアラブルコンピュータとして身につけ,日常の活動を行うことで自動的にブログ記事が生成されるシステム BlogWear を提案する.本稿では,BlogWear の開発,および使用実験の結果について報告する.実験の結果,下記のことが明らかになった.(1) 記事における地図と画像の組み合わせにより,記事内容の理解や発見がある.(2) 任意投稿を容易に行えるようにすることで,記事内容の充実が見込める.(3) 不明瞭な画像の記事や連続した類似記事は,閲覧者・記事作成者両方にとって必要ではない.(4) 過去の記事を閲覧する際,閲覧者にとって多くの記事が必要ではないものとなっている.The Web media has been developing remarkably. Weblog and SNS which are sent information by users are popular for communication tools. Life stream service, such as Twitter, to post the action of users is also popular. However, many Weblog users in Japan tend to stop the use of Weblog because of the time-consuming process and the fewness of the reward. Therefore, we propose BlogWear system that generates weblog entries automatically using a wearable computer. In this system, a user has only to wear a wearable computer which has a small PC and peripheral devices. This paper describes the development of the system and the result of the experiment. The results of the experiment are as follows: (1) By combination of a map and a poted image, there are entry contents understanding and discovery. (2) We believe that easy posting by freewill encourages the enhancement of the content. (3) The entries of a blurred image and a continued similar image are not necessary for both watchers and entries makers. (4) Many past articles are not necessary for watchers.