著者
金子 竹男 小林 憲正 矢守 章
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.69-69, 2003

炭素質隕石からアミノ酸、核酸塩基を含む生体有機化合物が検出されていることから原始地球への有機物質の多くが地球圏外起源であったとする可能性が示唆されている。しかし、地球外有機物の地球への持ち込み時の安定性が問題である。これまで彗星や隕石による有機物の地球への持ち込み時の反応を調べる為に衝突実験(_から_2km/s)、アミノ酸の加熱分解実験およびシリカを共存させたアミノ酸の昇華実験が行なわれてきた。しかし、より速い速度での衝突実験は余り行なわれていない。我々は世界最速である宇宙研の電磁加速装置「レールガン」を用い高速衝突実験を行なっている。今回はグリシン水溶液および彗星を模擬したメタノール、アンモニア、水の混合物に高速衝突させた生成物について検討した。<BR>10mM グリシン溶液はステンレス製ホルダーに、また彗星を模擬したアンモニア、メタノール、水の混合物は金メッキしたステンレス製ホルダーに封入し、ドライアイスで冷却後、液体窒素で冷却しながらこれにポリカーボネート製の飛翔体を衝突させた。衝突速度は2.5_-_6.4 km/sであった。生成物の一部を6 M HCl, 110℃で24時間加水分解し、陽イオン交換樹脂で脱塩後、アミノ酸をN-アセチル-L-システインとo-フタルアルデヒドでポストカラム誘導体化する島津LC-6Aアミノ酸分析計で同定・定量した。またアミノ酸の重合物は加水分解前の試料を0.45μmのメンブランフィルターでろ過後、イオンペアクロマトグフィーおよびMALDI_-_TOF MSにより分析した。<BR>グリシンを用いた実験では、加水分解前にはグリシン重合物のピークは観測されなかったが、ジケトピペラジンの生成が示唆された。衝突速度の違いによる生成物の差は見られなかった。海底熱水系を模擬したフローリアクター実験から、グリシンの重合物およびジケトピペラジンの生成が報告されている。イオンペアHPLCの結果から、衝突による高温・高圧状態では、フローリアクター実験で報告されている通常の重合物と異なる物が生成していると考えられる。MALDI-TOF MSの結果からは、2環アミジンの生成が示唆された。これは耐熱性があり、衝突でも残存し、加水分解することでアミノ酸になることが分かった。<SUP>1)</SUP><BR>メタノール、アンモニア、水の混合物を用いた衝突実験では、生成物を加水分解することにより、セリン、グリシンなど多種のアミノ酸が生成することが分かった。<BR>高速衝突でグリシンから海底熱水系模擬実験や昇華実験とは異なる2環状アミジンの生成が示唆され、アミノ酸の一部は重合物を生成することにより衝突による分解を免れることが示唆された。彗星を模擬したメタノール、アンモニア、水の混合物から種々のアミノ酸が生成したことから、彗星の高速衝突によりアミノ酸前駆体が生成する可能性も示された。今後、模擬星間物質を用いた衝突実験を行ない、原始地球への地球圏外起源有機物質の持ち込みについて考察していく予定である。<BR>1)金子竹男、小林憲正、矢守章、スペース・プラズマ研究会平成14年度、79-82 (2003).
著者
玄田 英典 生駒 大洋
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.77-77, 2005

地球の海の起源を解明する際に、D/Hが重要な制約として議論される。しかし、その議論では地球に水をもたらしたソースのD/Hが海の形成時やその後の進化の間に不変であることを前提としている。本講演では、水素に富む原始大気中で海が形成され、その後、大気中の水素が散逸した場合、海のD/Hが2~7倍程度高くなることを示す。初期地球には、相当量の水素分子が存在していたはずである。例えば、金属FeによるH2Oの還元で大量の水素が作られる。また、そもそも原始地球がネビュラ中で形成した場合、水素を多く含むネビュラガス(H2)を重力的に捕獲する。
著者
小野瀬 直美 藤原 顯
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.17-17, 2003

低密度の小惑星上における衝突によるレゴリス形成過程を考えるために、空隙率が63%の石膏ターゲットに直径7mmのナイロン球を4.3km/secで衝突させ、高速度カメラを用いて破片速度を測定した。速度が測定されたのは0.02g以上の全ての破片、および0.0003g以上の破片のうちの約半数である。また、本実験において測定可能な破片速度は0.1から200m/sであり、小惑星上のレゴリス形成を論じる上で必要かつ十分である。各破片がターゲット表面を離れた時刻が破片の軌跡から求められた。この放出時刻をもとに、全破片は早期放出破片群と後期放出破片群(以降早期群、後期群と呼ぶ)の2つのグループに分けることができる。早期群の破片のうち大きなものはSpall破片であることが回収破片との対照から確認された。また、その速度-質量分布はNakamura and Fujiwara (1991) で示された衝突破壊における表面破片の速度質量分布と似た分布を示す(図.1)。一方で、後期群は速度-質量分布のグラフのうち、遅くて小さい領域に集中する。これらの破片群は、ターゲット表面とほぼ垂直に、クレーターのボウル部分から放出されており、その数は観測した全破片のうちの9割に上る。この遅くて小さな後期群はクレーター形成でのみ見られるもので、クレーターの底が抜けてしまう完全破壊時には見られない。画面上で得られた破片面積から求めた破片の質量分布を0度の衝突に関して足し合わせたものを図.2に示す。早期群と後期群は-0.3および-1.6という、異なったべき係数を持つ。衝突クレーター形成時の破片質量分布に見られる『折れ曲がり点』は、これらの破片群の重なり合いで説明できる。
著者
森島 龍司 サロ ヘイッキ 大槻 圭史
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.43-43, 2006

本研究では、土星リングの熱輻射を古典的放射輸送に基づいてモデル化をした。モデルには、リング粒子の自転速度の鉛直方向依存性と、リング粒子の鉛直運動による熱輸送を考慮した。粒子はbimodal分布を仮定し、大きい粒子は自転は遅く、軌道傾斜角は小さいのに対し、小さい粒子は高速自転をして、軌道傾斜角は大きいとした。本モデルは、地上観測とカッシーニの観測結果の両方をうまく再現でき、小さい粒子が占める断面積の割合はA,B,Cリングにおいて、0.5,0.2,0.5であることが分かった。
著者
佐伯 和人 坪井 直 林 宏昭
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.126-135, 2001-09-25
参考文献数
7
被引用文献数
3
著者
永谷 圭司 大木 健 Britton Nathan 佐藤 毅一 野寄 敬博 高橋 悠輔 山内 元貴 秋山 健 吉田 和哉
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.121-129, 2012-06-25

火山噴火時には,その噴火の規模によって定められる危険区域に人が立ち入ることはできない。そのため,噴火予測や住民の避難計画の策定を目指した遠隔操作型の不整地移動探査ロボットによる火山定点観察,移動観察の実現が求められている。ただし,これを実現するためには,不整地環境における高い走行性能,高い位置推定精度,遠隔操作のための長距離通信,長時間活動を支えるための電源といった,様々な技術課題が存在する.これらの課題は,月・惑星における移動探査を行う探査ローバーの技術課題にオーバーラップする部分が少なくない.そこで,本研究では,不整地軟弱土壌における走行性能ならびに,不整地環境におけるロボットの高精度な自己位置推定の実現を目指し,車輪型/クローラ型不整地移動ロボット4台の走行試験を,伊豆大島裏砂漠ならびに,三原山で実施した.本稿では,各走行試験の概要ならびにロボットを紹介すると共に,火山観察ならびに月・惑星探査ロボットに今後必要となる技術課題について考察する.
著者
関根 康人 高野 淑識 矢野 創 船瀬 龍 高井 研 石原 盛男 渋谷 岳造 橘 省吾 倉本 圭 薮田 ひかる 木村 淳 古川 善博
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.229-238, 2012-09-25

エンセラダスの南極付近から噴出するプリュームの発見は,氷衛星の内部海の海水や海中の揮発性成分や固体成分の直接サンプリングの可能性を示した大きなブレイクスルーであるといえる.これまでカッシーニ探査によって,プリューム物質は岩石成分と相互作用する液体の内部海に由来していることが明らかになったが,サンプリング時の相対速度が大きいこと,質量分析装置の分解能が低いことなどの問題があり,内部海の化学組成や温度条件,海の存続時間など,生命存在の可能性を制約できる情報は乏しい.本論文では,エンセラダス・プリューム物質の高精度その場質量分析とサンプルリターンによる詳細な物質分析を行うことで,内部海の化学組成の解明,初期太陽系物質進化の制約,そして生命存在可能性を探ることを目的とする探査計画を提案する.本提案は,"宇宙に生命は存在するのか"という根源的な問いに対して,理・工学の様々な分野での次世代を担う若手研究者が惑星探査に参入し結集する点が画期的であり,我が国の科学・技術界全体に対しても極めて大きな波及効果をもつ.
著者
大谷 栄治 倉本 圭 今村 剛 寺田 直樹 渡部 重十 荒川 政彦 伊藤 孝士 圦本 尚義 渡部 潤一 木村 淳 高橋 幸弘 中島 健介 中本 泰史 三好 由純 小林 憲正 山岸 明彦 並木 則行 小林 直樹 出村 裕英 大槻 圭史
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.349-365, 2011-12-25
被引用文献数
1

「月惑星探査の来たる10年」検討では第一段階で5つのパネルの各分野に於ける第一級の科学について議論した.そのとりまとめを報告する.地球型惑星固体探査パネルでは,月惑星内部構造の解明,年代学・物質科学の展開による月惑星進化の解明,固体部分と結合した表層環境の変動性の解明,が挙げられた.地球型惑星大気・磁気圏探査パネルは複数学会に跨がる学際性を考慮して,提案内容に学会間で齟齬が生じないように現在も摺り合わせを進めている.本稿では主たる対象天体を火星にしぼって第一級の科学を論じる.小天体パネルでは始原的・より未分化な天体への段階的な探査と,発見段階から理解段階へ進むための同一小天体の再探査が提案された.木星型惑星・氷衛星・系外惑星パネルは広範な科学テーマの中から,木星の大気と磁気圏探査,氷衛星でのハビタブル環境の探査,系外惑星でも生命存在可能環境と生命兆候の発見について具体的な議論を行った.アストロバイオロジーパネルでは現実的な近未来の目標として火星生命探査を,長期的な目標として氷衛星・小天体生命探査を目指した観測装置開発が検討された.これらのまとめを元に「月惑星探査の来たる10年」検討は2011年7月より第二段階に移行し,ミッション提案・観測機器提案の応募を受け付けた.
著者
荻原 正博 井田 茂
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.34-34, 2007

M型星のまわりの地球型惑星形成領域での微惑星からの地球型惑星集積過程をN体シミュレーションによって調べた。特に原始惑星が形成されるごとに円盤ガスとの相互作用によって内側へ移動し、円盤内縁にたまり、そのことがハビタブル・ゾーンでの惑星集積過程に与える影響や、氷境界以遠から散乱されてくる氷微惑星の影響に着目し、太陽型恒星の場合との違いや生命居住可能惑星の形成確率を調べた。
著者
荻原 正博 井田 茂
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.89-97, 2009-06-25

観測技術の発展に伴い,低質量の系外惑星が発見され始めており,特にM型星での系外惑星探査が注目を集めてきている.M型星は低光度であるので,ハビタブルゾーンが中心星近傍に存在するが,そのような領域では円盤ガス面密度が大きく,半径方向の惑星移動が惑星形成に大きな影響を及ぼすと考えられる.そこで,本研究ではM型星周りでの地球型惑星形成を,円盤ガスを考慮に入れたN体シミュレーションで調べた.計算の結果,中心星近傍の地球型惑星の軌道構造は惑星移動速度に大きく依存することがわかった.また,これまで発見されている中心星近傍のスーパーアース(地球質量の数倍程度の惑星)は,惑星移動速度が遅い状況で形成したと解釈できる.更に,惑星移動によって多くの氷成分が内側領域に輸送され,惑星は概して水を多く含むことが示唆された.
著者
小嶋 稔
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.117-117, 2005

コンドライト、エコンドライト、SNC隕石、月、地球の酸素同位体比データのBootstrap法による統計的考察から、これらの試料の酸素同位体比のバラツキはは、大局的に見て共通の母集団(ネブラ)からのランダム・サンプリングによると結論される。したがって地球と太陽は同じ酸素同位体比を持つ事が推測される。
著者
橘 省吾 浦川 聖太郎 吉川 真 中村 良介 石黒 正晃
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.4-13, 2013-03-25

地球外始原物質(より古い情報を記憶する物質)の科学は私たちの太陽系の歴史を銀河の歴史と実証的につなげる唯一の手段である.「はやぶさ」「はやぶさ2」の探査天体よりさらに始原的な情報が残されている可能性が高く,また来る10年に往復探査が可能な天体である107P/Wilson-Harrington(彗星/小惑星遷移天体)へのサンプルリターン探査を提案する.本探査計画は惑星物質科学の進展のみならず,太陽系初期につくられる揮発性物質を多く含む小天体の物理的特性を明らかにできる探査であり,惑星形成論においても大きな貢献をなすものである.
著者
太田 宏 丸山 茂徳
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.133-143, 1996-09-25
参考文献数
11
被引用文献数
1