著者
安斎 勇樹 東南 裕美
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.155-174, 2020-10-10 (Released:2020-10-15)
参考文献数
26

本研究の目的は,ワークショップ熟達者のファシリテーションの実践知を構造的に明らかにすることである.本研究では,3名の熟達者を対象とした観察調査とインタビュー調査を行った.分析の結果,熟達者はファシリテーションの場面において知覚した情報を,個人の心理や集団の性質・関係性に関する概念的知識に照らし合わせ,参加者の観察・プログラムの調整・情報伝達の調整・関係性の調整・リアクションの調整に関する手続的知識を用いて具体的な行為を決定していることが明らかになった.また,これらの背後には,ワークショップが権威や規範から解放された民主的な手法であることに価値を置くメタ認知的知識が共通して存在していること,またそれらのメタ認知的知識同士には葛藤関係があり,それによる熟達者固有のファシリテーションの困難さが存在していることも示唆された.分析結果から,実践者育成に関するいくつかの示唆が得られた.
著者
松河 秀哉 大山 牧子 根岸 千悠 新居 佳子 岩﨑 千晶 堀田 博史
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.233-244, 2018-01-31 (Released:2018-02-05)
参考文献数
13
被引用文献数
3

本研究では,様々な制約から活用が難しかった授業評価アンケートの自由記述の分析に関し,ある大学で実施された9年分,約6万件のデータに対して,潜在ディリクレ分配モデル(LDA)に基づいたトピックモデルによる分析を行い,170のトピックを抽出した.抽出したトピックに対しては,一定の手順に従ってラベルを付与し,ラベルの妥当性を検証した.その結果,ラベルには十分な妥当性が確認され,トピックモデルによる分類が全体的には人間の感覚に適合したものであることが示された.本研究ではさらに,自由記述を科目群の情報と紐付けて分析を行い,各科目群に存在するトピックの割合や,全体の傾向と比較した各科目群のトピック分布の特徴について,クロス表による情報の可視化を行った.こうした分析手法は今後Institutional Research (IR),Learning Analytics (LA)等での応用が期待される.
著者
木村 充 舘野 泰一 松井 彩子 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.105-115, 2019

<p>本研究は,大学の経験学習型リーダーシップ教育における学生のリーダーシップ行動尺度を開発し,尺度の信頼性・妥当性を検討することを目的とする.経験学習型リーダーシップ教育とは,経験学習を理論的基盤として行われるリーダーシップ教育のことを指す.先行研究や予備調査に基づいて54の項目案を作成し,リーダーシップ教育を国内で大規模に実施しているA 大学の学生156名(Time1)および110名(Time2)を対象に調査を実施した.因子分析の結果,リーダーシップ行動は,「率先垂範」「挑戦」「目標共有」「目標管理」「成果志向支援」「対人志向支援」の6因子によって構成された.さらに,項目を精選し,30項目からなる尺度を作成した.開発した尺度の信頼性及び妥当性の検討を行った結果,概ね良好な値が得られた.</p>
著者
田中 光 上山 瑠津子 山根 嵩史 中條 和光
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.49-58, 2020-07-10 (Released:2020-07-10)
参考文献数
20

本研究では,小学校5,6年児童を対象とする意見文産出方略使用の程度を測定する尺度を開発した.研究1では,5,6年児童426名に対して意見文産出時の方略使用に関する質問紙調査を行った.探索的因子分析を行い,読み手意識,反対意見の考慮,文章の構成,自分の意見の表明,校正・校閲の5因子からなる意見文産出方略が見出された.尺度の妥当性を検討するため,意見文産出の自己効力感,意見文を書く主観的頻度の高群と低群間で方略使用を比較した.その結果,全因子で高群の評定値が低群の児童の評定値よりも高く,尺度の内容的妥当性が支持された.研究2では意見文に対する評価と方略使用との関連を調べた.その結果,評価が高い意見文の書き手は低い書き手に比べて読み手意識,文章の構成,自分の意見の表明の3因子の評定値が高いことが見いだされた.今後の課題として,尺度の使用によって意見文の質が高まるかどうかを検証することが必要である.
著者
望月 俊男 佐々木 博史 脇本 健弘 平山 涼也 久保田 善彦 鈴木 栄幸
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.319-331, 2013-11-20 (Released:2016-08-10)

ロールプレイはさまざまな分野の学習において,学習者の視点の拡大や転換を促進する強力な学習方法として知られている.本稿では,とくに複雑で非構造的な(ill-structured)問題状況下におけるコミュニケーションや意思決定についてロールプレイする上で,対面協調学習の中で人形劇を使うことで,これまでにない多様な視点からの洞察を促す可能性について議論する.複数の人形を操作して人形劇をすることで,演者である参加者と,直接演じている人形との間の心理的距離を作り出すとともに,多様な役割で演技をしやすくすることができる.本稿ではこれを理論的に示した後,人形劇のロールプレイによって演者がより現実的な状況を再現するように様々な役割を演じることを事例研究から示した.そして,そうした人形劇をロールプレイの媒介として利用する上で,学習支援テクノロジの可能性について議論した.
著者
古田 貴久 楜澤 秀樹
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.57-60, 2008

テレビアニメにおける力学的に間違ったシーンを題材に,力学的な問題の解決能力と,特に領域を限らず批判的に物事を見る態度のどちらが,シーンの力学的な正誤を指摘する上で役に立つのかを検討した.実験の結果,批判的思考態度が高いだけでは,正誤をあまり正しく指摘できないことが示された.与えられた情報を批判的に理解する上では,情報を鵜呑みにしない一般的な批判的思考態度よりも,特定の領域に関する知識や問題解決能力の果たす役割が大きいようである.
著者
舘野 泰一 大川内 隆朗 平野 智紀 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.241-254, 2013

本研究では,正課課程外におけるアカデミック・ライティングの指導を想定し,チューターによる学生の「執筆プロセスの理解」を支援するために,レポートの執筆プロセスを可視化することのできるシステム「レポレコ」を開発した.「執筆プロセスの理解」とは,チューターが,学生の文章生成過程を把握することである.開発したシステムの特徴は執筆プロセスの記録・可視化である.学生がレポートを執筆する過程を一字一句自動で記録し,可視化することができる.このシステムを使うことで,チューターの「執筆プロセスの理解」を促すことができる.実験の結果,システムを使用することで,チューターの「執筆プロセスの理解」につながることが示唆された.
著者
舘野 泰一 中原 淳 木村 充 保田 江美 吉村 春美 田中 聡 浜屋 祐子 高崎 美佐 溝上 慎一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-11, 2016-06-20 (Released:2016-06-17)
参考文献数
27

本研究では,大学での学び・生活が就職後のプロアクティブ行動にどのような影響を与えているかを検証するために質問紙調査を行った.本研究の特徴は2点ある.1点目は縦断調査という点である.近年,大学教育において「学校から仕事への移行」に関する調査研究は増えてきているが,その多くは振り返り調査という限界があった.2点目は,就職後のプロアクティブ行動に着目した点である.プロアクティブ行動とは,個人の主体的な行動のことであり,近年大学教育で議論されてきた「主体的な学び」の成果に関連が深い.しかし,これまでその影響について検証されてこなかった. 共分散構造分析を行った結果,1.授業外のコミュニティを持っている学生,2.大学生活が充実している学生ほど,就職後にプロアクティブ行動を行っていることが明らかになった.
著者
小山 義徳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.351-358, 2009
被引用文献数
1 1

英文速読指導が大学生の英語リスニング能力の伸長に効果があるか検討を行った.まず,予備実験を行い,英語リスニング得点高群と低群の英文読解時の読み戻り数を比較した.その結果,高群は低群と比較して読み戻り数が少ないことが明らかになった.本実験では速読訓練を行うことで読み戻り数が減少し,入力情報を継時的に処理するスキルが向上することで英語リスニング能力の伸長につながるのか,ディクテーション訓練との比較検討を行った.8週間の間,速読群(24名)には週1回10分間の英文速読訓練を行い,ディクテーション群(18名)には8週間の間,週1回10分間のディクテーション訓練を行った.その結果,ディクテーション群のリスニング能力は伸びなかったが,速読群のリスニング成績が向上し,英文速読訓練を行うことで読む速さが向上するだけでなく,副次的に英語リスニング能力も伸長する可能性があることが明らかになった.
著者
野上 俊一 生田 淳一 丸野 俊一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.173-176, 2005
参考文献数
3
被引用文献数
1

学生が定期試験のためにどのような学習計画を立てるのか, その学習計画が失敗する要因をどのように認識しているのかを質問紙を用いて検討した(n=254).その結果, 学習計画の立案率は約70%であった.そして, 立案した被験者の約70%が実際のテスト勉強では計画通りに進まないと認識していた.計画通りに進まない原因として「無理な学習計画の立案」「誘惑や欲求に負ける」などが被験者によって挙げられた.また, 学習過程に対するメタ認知的制御で学習計画の内容を比較すると, メタ認知的制御の高い被験者は目標設定が具体的であるために無理のない学習計画を立てており, 計画通りにテスト勉強を行えることが示唆された.
著者
菅原 真悟 鷲林 潤壱 新井 紀子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.135-146, 2012

児童がサイバー犯罪の加害者となるケースの増加にともない,「情報倫理」や「法の理解や遵守」を習得させるための情報モラル教育の必要性が増している.しかし,著作権のような抽象度が高く日常生活とも関わりが少ない概念を,児童が理解することは難しい.本研究では,このような抽象的な概念を教えるための,効果的・効率的な教授法について分析を行った.情報モラル教育の教授法を(1)教材中心の「教材」型授業,(2)体験中心の「体験」型授業,(3)その両方を行う「両方」型授業の3つに定義・分類し,埼玉県K小学校5・6年生を対象に,3つの教授法による学習効果を比較する実践授業を行った.その結果「両方」型授業は,児童が体験したことを,教材を用いて言語化して理解できるため,抽象的概念を理解させるのに効果的であり,かつ他の教授法と比べて情報化社会に参画しようとする意欲を育む効果があることが示された.
著者
松河 秀哉 北村 智 永盛 祐介 久松 慎一 山内 祐平 中野 真依 金森 保智 宮下 直子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.307-316, 2007
被引用文献数
4

本研究では,高校生から得られたデータに基づいて,データマイニングを活用した学習方略フィードバックシステム「学習ナビ」を開発した.システムの試験運用をふまえ,(a)モデルの妥当性(b)学習ナビで利用したメタファの有効性(c)ユーザからの主観的評価の観点から評価を行い,以下の結果を得た.(a)モデルが仮定する学力差が評価モニタにもみられ,モデルの妥当性が示唆された.(b)学習方略の達成度を表す信号機メタファについて,解説画面の閲覧時間の差から有効性が確認された.学習方略の順序性を表す一本道メタファは,評価モニタの約半数の理解を得た.(c)一部のユーザからアニメーションの長さを指摘された以外は,システム全体として好意的な評価を得た.
著者
登本 洋子 高橋 純 堀田 龍也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S44015, (Released:2020-10-06)
参考文献数
11

平成27~28年に行われた情報活用能力調査では,高校2年生の1分間あたりの文字入力数は平均24.7文字,1分間に40字程度の文字入力ができるのは6%という結果が示され,高校生の文字入力の速さは十分ではない.本研究では高校生の文字入力の速さの向上を目的とし,高校生のPCとスマートフォンにおける文字入力の実態を調査した.結果,1分間あたりの文字入力数の平均はPC のキーボード33.4文字,スマートフォン59.2文字,1分間に40字以上入力できた生徒はスマートフォンのほうが多く,PC のキーボードにおいてもスマートフォンにおいても濁音・半濁音,清拗音,濁拗音・半濁拗音の入力を苦手としていることが示された.
著者
槇 誠司 佐藤 和紀 板垣 翔大 齋藤 玲 堀田 龍也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.045-048, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
7

情報化社会に向かう今日において,統計的リテラシーを身につけることがより重視されている.本研究では,グラフの傾向を読み取り,考察し,それを根拠にして示された事象について批判する能力(以下,グラフ解釈能力と呼ぶ)を短時間で児童に身につけさせるための学習を授業時間内で実施した.この学習は,児童がグラフ解釈を行った結果を100字以内でまとめ,それらの内容を隣同士で互いに話し合い,最後に全体に向けて発表するまでを10分間でおこなう学習活動である.グラフ解釈に関する短時間学習を14回実施した場合,クラス全体のグラフ解釈能力は7回目頃から向上する傾向にあることが示唆された.さらに,グラフ解釈に関する短時間学習を経験した児童は,これを経験しない児童と比較して,グラフ解釈に関するテストの得点が高いことが明らかとなり,本学習の効果が示唆された.
著者
野上 俊一 生田 淳一 丸野 俊一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.suppl, pp.173-176, 2005-03-20 (Released:2016-08-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

学生が定期試験のためにどのような学習計画を立てるのか, その学習計画が失敗する要因をどのように認識しているのかを質問紙を用いて検討した(n=254).その結果, 学習計画の立案率は約70%であった.そして, 立案した被験者の約70%が実際のテスト勉強では計画通りに進まないと認識していた.計画通りに進まない原因として「無理な学習計画の立案」「誘惑や欲求に負ける」などが被験者によって挙げられた.また, 学習過程に対するメタ認知的制御で学習計画の内容を比較すると, メタ認知的制御の高い被験者は目標設定が具体的であるために無理のない学習計画を立てており, 計画通りにテスト勉強を行えることが示唆された.
著者
池田 めぐみ 伏木田 稚子 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Suppl., pp.113-116, 2021-02-20 (Released:2021-03-08)
参考文献数
11

本研究の目的は,準正課プロジェクトにおける組織風土が学生の関与に与える影響について,学年,リーダー経験の有無といった個人要因を統制した上で明らかにすることである.質問紙調査で得られた314名(プロジェクト数35)の有効回答について,階層線形モデルを用い,分析を行った.その結果,(1)ICC は6.5%であり,学生の関与の度合いは,プロジェクトごとに高い類似性があるわけではないこと,(2)イノベーションの受け入れ風土,自由なコミュニケーション風土はリーダー経験や学年を統制した上でも学生の関与に正の影響を与えること,準正課プロジェクト中心の統制風土は学生の関与に統計的に有意な影響を与えないことが確認された.
著者
魚崎 祐子 伊藤 秀子 野嶋 栄一郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.349-359, 2003
参考文献数
14
被引用文献数
20

テキストを読みながら学習者が自発的に下線をひく行為が文章理解に及ぼす影響について,文章の難易度と読解時間という2要因に着目し,テキストに予めつけておいた下線強調との比較という点から実験的に検討した.自分で下線をひくことのできるアンダーライン群,キーワードなどを下線で強調したテキストを与えられるプロンプト群,統制群の3群に被験者を分け,テキスト読解の後に自由記述形式の再生テストを行った.その結果,テキストの下線強調は文章の難易度や読解時間の長さに関わらず,強調部分の再生を高める効果を持つことが示された.一方,学習者の下線ひき行為が有効であるのは,難解なテキストの読解において十分な読解時間を与えられた時に限定された.また,テキストにつけられた下線,自分でひいた下線ともに下線部以外の再生は促進しないということ,下線の有無に関わらずテキスト中の重要な概念ほど再生されやすいということも明らかになった.
著者
田中 優子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.63-70, 2009
被引用文献数
3

本研究では,批判的思考に影響を及ぼす要因について検討することを目的とし,大学生138名を対象に,複数の論理的に正しいとは言えない論法のタイプを含む文章を3題提示した.参加者は,自由に感想を書いてよいフェーズ,任意で批判を要求されるフェーズ,強制的に批判を要求されるフェーズにおいて文章に対する記述を求められた.その際,参加者の半数には専門家が,残りの半数には匿名の大学生が書いたと説明することによって情報ソースの信憑性を操作した.論理的に正しいとは言えない論法を指摘できているかといった観点から批判的思考得点を算出した結果,論法のタイプが批判的思考の抑制に影響を及ぼすこと,批判の要求が明示的になるに従い批判的思考は促進されることが明らかになった.また,情報ソースの信憑性の高さが批判的思考を抑制する傾向があるものの,その影響は外的要求の程度や論法のタイプによって異なることが示された.
著者
近藤 伸彦 畠中 利治
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.271-281, 2018-01-31 (Released:2018-02-05)
参考文献数
33

ラーニングアナリティクスをはじめとした教育データ分析の関連分野が急速な発展を遂げる一方,大学における教育の質保証の観点から教学IR の重要性が認識されてきている.これらの分野が互いに統合され,個に応じた分析と支援が組織的に行われることは今後ますます重要性を増すものと考えられる.本論文ではこの観点から,ラーニングアナリティクス的手法を教学IR や修学支援に活用するフレームワークのひとつとして,学士課程における学生の修学状態の推移プロセスをベイジアンネットワークによりモデル化する手法についてまとめる.さらに,現実的な活用場面において実際の改善アクションへつなげることを想定した本手法の活用例を示し,ある大学の教学データによる数値実験の結果から本手法の適用可能性を検討する.