著者
松嶋 藻乃
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

ヒトはたかだか4つの物体の情報にしか、一度に注意を向けたり、記憶したりすることが出来ない。さらに記憶や注意の容量は、視覚刺激が左右両視野に呈示されたとき(Across条件)、どちらか一方に呈示された場合(Within条件)にくらべ増大することが知られている。その神経基盤を探るため、サルに2つの認知課題ー複数記憶誘導性サッカード課題および複数物体追跡課題ーを訓練した。課題遂行中の前頭前野ニューロン活動を記録したところ、Across条件のとき、Within条件に比べ増大することを見出した。このことは、対側と同側視野の視覚情報が、解剖学的に分離されて処理されていることを反映していると考えられる。
著者
芋生 憲司 横山 伸也 海津 裕 岡本 嗣男
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

自律走行や,精密農法で必要となるナビゲーションシステムを低コストで実現するために,高精度の超音波速度計,光トランスポンダ方式による測距装置,およびオプティカルフローによる移動ベクトル検出の開発研究を行った。主な研究成果は以下の通りである。超音波速度計については、著者らが以前に開発した超音波ドップラー速度計を改良し,精度を向上させた。これによりコンクリート面のような滑らかな路面でも安定した測定が可能になった。屋外での車載試験でも良好な結果が得られた。また擬似植物を音波の反射対象とした実験を行い,測定が可能なことを確認した。しかし植栽の密度が低い場合は誤差が大きくなった。更に,横滑りも含めた速度ベクトルを測定する可能性を確認した。光トランスポンダによる位置測定については,一方向に限っての,拡散光による高精度の距離測定は可能であり,標準誤差は約3cmであった。しかし全周方向の測定器では方向による位相ずれが生じ,これを調節する必要があった。全周方向での測定では,日射量が少なければ,標準誤差は約5cmであった。日射量が多い時には,測定可能距離が短くなり,測定精度も低くかった。信号増幅等改良の必要がある。固定局2局と車載した移動局による位置測定は可能であったが,温度ドリフトの問題が残された。オプティカルフローによる移動ベクトル検出については、ハフ変換を用いることで計算時間を短縮した2つのプログラムを作成した。一回の計測のための計算に要する時間は,約0.3sであり,従来の二次元相関法に比べて大幅に短縮された。移動距離に対する移動ベクトルの測定誤差の割合の平均値は約5%であった。測定範囲は今回の設定では,DX,DY各±30mm以内であり、リアルタイム測定には更なる改良が必要である。
著者
丸山 陽子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

歌人兼好周辺の僧侶の歌壇活動に関する研究として、三井寺周辺の和歌活動の考察を進展させた。特に、僧侶の和歌史料に乏しい一三世紀中頃から一四世紀初頭の三井寺周辺の僧侶の和歌を中心に収め、三井寺僧とその周辺のネットワークを知る上で有益な資料となる『新三井和歌集』に着目し、成立と性格を具体的に考察した点に意義がある。昨年度までの研究成果を踏まえ、まずは官位記載や詞書等から成立時期の考証を行い、これを踏まえて人物考証を深め、明らかとなった人物の関係に修正を加えながら系図化した上で、収められた人物や詞書、及び和歌の内容を、より具体的に掘り下げた。その結果、聖護院門跡覚助法親王とその周辺の活発な和歌活動がクローズアップされ、特に覚助はこの時代の有力人物であり、歌人として幅広い活動を行ったことが明らかとなった。一方、三井寺周辺の僧侶の考察と共に、歌人兼好周辺の神官の歌壇活動に関する研究を行った。昨年度までに行ってきた『伊勢新名所絵歌合』の新名所設定の意図や法楽としての歌合の性格等の考察、即ちこれらをまとめた論文及び著書の研究成果を踏まえ、刊行予定の『伊勢新名所絵歌合』の注釈書の執筆を進めた。この歌合には絵と和歌があることから、和歌の注釈に終始せず、今年度は更にフィールドワークを重ねながら、『伊勢新名所絵歌合』の特徴である絵と歌合の関係を視野に入れた学際的な研究を目指した。この研究成果の一部は、「『伊勢新名所絵歌合』-絵と歌合の関係より-」として論文報告する予定である(校正中)。上記神官・僧侶の考察と並行して、『兼好法師』(コレクション日本歌人選・笠間書院)の執筆を行った。兼好の交流やネットワークといった研究成果を踏まえ、どういった歌人と交流し、どういった歌を多く詠んだか、という観点を盛り込み、兼好の和歌の特徴と面白さを引き出すことを目指した。校正中であり、2010年9月に刊行予定である。
著者
深田 吉孝
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

一日の中で食餌が得られる時刻を予知する「食餌予知行動リズム」は、摂餌時計と呼ばれる脳内の時計機構によって制御されている。しかしこれまで、この摂餌時計が存在する脳領域や分子メカニズムは不明であった。本研究ではまず、給餌のタイミングを自由に調節できる自動給餌装置を開発した。さらに、食餌に応答する脳領域としてMBHに焦点を絞り、そのマイクロアレイ解析を通して摂餌時計(予知行動リズム)と連関するであろう遺伝子群を網羅的に探索した。
著者
木原 諄二 長崎 千裕 相澤 龍彦
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

現在さらに近未来における鋼を中心とする成形、加工プロセスでは、その要素技術である溶解・鋳造・塑性加工が融合化、統合化して新しい視点の下で強力な生産技術となりつつある。溶融鍛造/半溶融鍛造などは鋳造と塑性加工が連成した技術であり、一方MA(メカニカル・アロイング)/爆発成形などが広義の溶解と塑性加工が結合した技術といえる本研究では、そのような要素技術の統合化・融合化を考える上で必要となる基本的な特性、発想/設計方法を理解し、新しい成形・加工方法を構築することを目的として、溶解・鋳造・塑性加工プロセスの最適化に関する考察、議論、検討を行った。溶解・鋳造プロセスの最適化では、溶融金属の流動、凝固現象を取り扱うための計算モデルに関して議論を行い、CADにおける幾何モデルとその演算と同様な機能を有する4分木ー修正4分木モデルとその集合演算を可能なシステムを試作し、直接差分法にベ-スをおいた解析と結合し、その有用性を示した。本システムは来年度以降新しい共同研究としてスタ-トする予定である。塑性加工の最適化においては、圧延プロセスを対像として、今後きわめて重要な問題となる被加工材料の3次元変形現象を圧延変形特性を考慮して解析する変形モ-ド法を提案し、平圧延における幅広がり、型圧延における形状変化を例にとり、その有用性を示した。さらに、本手法は熱伝導解析と結合して、実用圧延システムで問題となる圧延変形とロ-ルを含む系の伝熱現象との連成問題を十分な精度で扱えることも明らかにした。一方、鋼、Niをモデル材料として用い、その高温延性を実験的に調査することにより、中間温度脆性領域を含む温度域での金属材料の力学特性・応答特性を明らかにし、圧延メタラジ-の基礎となる種々のメカニズムを同呈することができた。以上、本研究を通じて、金属材料の新しい融合・統合プロセスを構築する基礎が与えられたと考えられる。
著者
増田 一夫 伊達 聖伸 網野 徹哉 杉田 英明 長沢 栄治 村松 真理子 矢口 祐人 安岡 治子 古矢 旬
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

「宗教的近代」を疑問に付す諸現象(宗教の再活性化、保守革命、イスラーム民衆運動)に対して西洋諸社会が警戒を示すなかで、寛容を創出すべき政教分離の制度が、かえってマイノリティ抑圧へと転化する状況が見られる。本研究では、民主主義的諸価値が特定の宗教に対して動員され、グローバル化に伴う社会問題を相対化、隠蔽する様子を分析した。フランスでは、国家が対話しやすいイスラーム教を制度化するという、政教分離に矛盾する動きも見られた。他方で、ナショナル・アイデンティティとしてのライシテ(脱宗教)が、イスラーム系市民を周縁化しつつ、差別、経済格差、植民地主義的な人種主義をめぐる問題提起をむずかしくしている。
著者
ボッレーガラ ダヌシカ
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

二つの対象物(エンティティ)間の関係Rを定義するためには2種類の方法がある。一つの方法はその関係にあるエンティティのペアを挙げることである(外延的定義,extensional definition)。もう一方の方法は関係Rを語彙パターンで表現することである(内包的定義,intensional definition)。本研究では、この双対となる関係の定義に基づくクラスタリング手法を提案し、それを用い関係抽出を行う。提案するクラスタリング手法の一つの特徴としては語彙パターンとentityペアを「同時に」クラスタリングすることであり、このように「お互い何らかの制約を満たしている二つの量を同時にクラスタリングする」クラスタリングアルゴリズムは統一的にco-clustering(共クラスタリング)アルゴリズムと呼ばれている。本研究もこのco-clusteringアルゴリズムの一種であり、関係の異なる定義の双対性という制約に基づいて実現する点に特徴がある。教師なし学習であるクラスタリングによるので、訓練用データを必要としない。co-clusteringによりentityペアの関係種別クラスタリングに使う特徴量となる語彙パターンも同時にクラスタリングするので、特徴次元を圧縮し安定的なクラスタリングを可能にする特徴をゆうする。Webのような膨大なテキストコーパスからエンティティ間の関係を抽出する際に、膨大な数のエンティティペアと語彙パターンを同時にco-clusteringする必要があるため計算量の小さいアルゴリズムが重要である。本研究ではオーダー0(nlogn)の計算量でco-clusteringできるsequential co-clusteringアルゴリズムを提案し評価した。
著者
友澤 悠季
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、「公害」および「環境」概念の歴史的な生成と展開のプロセスに働いた論理と力学を解明することである。これまで戦後日本の環境問題史は、〈「公害」から「環境」へ〉という概念の転換によって捉えられてきた。「環境」概念に対しては、「被害者」対「加害者」の対立構図をのりこえ、より複雑多様な問題を議論できるという点で積極的評価が与えられてきた一方、「公害」概念には、「企業対住民」といった素朴な二項対立でしか事件・問題を整理できないものといいう消極的な位置づけにとどまってきた。だが、本研究の結果、(1)「公害」「環境」概念の歴史的生成における、1970年および1989年という画期の存在、(2)「環境」概念は、国内外における政治経済社会的状況の流動の結果外挿された経緯をもち、その結果、地域社会固有の文脈で深められようとしていた「公害」概念をめぐる議論が強制的に閉じられたこと、(3)一方で、公害反対運動の当事者やそれを支えようとした研究者らの内面においては、「公害」概念を触媒とした思想的深化は連綿と続けられてきたことが明らかになった。本研究が考察の対象とした1960~70年代における各地の公害反対運動は、生業を脅かす企業や行政へ異議を申し立てるだけでなく、「公害」概念を自在に「再解釈」しながら、近代化出発時から社会が抱え込んだ差別的構造を根本から問い直そうとしていた。その背後には、単なる「公害(反対)」「環境(保全)」などの文言では語りつくせない、高度経済成長という嵐の中での個々人の生の選択という根本的な事柄が介在していたことが重要である。各分野における「環境」関連学が、この地平にこそ原点を持つことを踏まえ、「公害」概念を、単なる「環境」の部分概念とみなす思考をいったん捨て、現在への連続性の中で捉えなおすことが今後の課題である。
著者
神谷 和秀
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013

高効率かつ安価な酸素還元触媒の開発は燃料電池のさらなる普及拡大のために必要不可欠となっている。本研究では鉄と窒素をグラフェン面内に短時間熱処理によって導入した酸素還元触媒(Fe/N-graphene)のさらなる高活性化を目的としている。今年度は高活性化に向けて、Fe/N-grapheneの構造および酸素還元活性メカニズムを放射光を用いて明らかにした。まず広域X線吸収微細構造(EXAFS)によって鉄周りの配位構造を明らかにした。その結果、一般的な炭素触媒を作製するような30minを超えるような長時間の熱処理では容易に切断されてしまう鉄-窒素配位構造が、短時間熱処理によって作製する本触媒においては残存しており、その鉄-窒素配位構造が高密度にグラフェン面内にドープされていることが明らかになった。また、Fe/N-grapheneと窒素を加えずに作製したグラフェン(Fe-graphene)の鉄L端の軟X線吸収分光スペクトルを比較したところ、窒素から鉄への強い電子供与に基づき鉄の電子密度が向上していることが明らかとなった。これにより、鉄から酸素の反結合性π軌道に強いπ逆供与が生じ、その結果、酸素分子のO=O結合が活性化され、酸素還元反応が効率的に進行したと推察された。このように、短時間熱処理で作製した触媒は前駆体の触媒活性を決定する構造的本質(この場合は鉄-窒素配位結合)を残す形で炭素構造内に導入することが可能であることが示された。これは錯体触媒の活性と炭素材料の耐久性の両立した触媒の合成が可能であることを示している。
著者
荒木 尚志 池田 悠 富永 晃一 山川 隆一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

非正規雇用の中核を占める有期雇用に関して、まず、欧州の規制アプローチとアメリカの市場調整アプローチという対照的政策の存在を明らかにした。次に、欧州の規制アプローチを、締結事由規制、濫用規制、不利益取扱い禁止規制に整理し、締結事由規制から濫用規制へという規制比重の変化を明らかにし、ここから重要な教訓を得るべきことを主張した。2012年には、濫用規制を中心とする労働契約法改正が実現したため、新設条文および有期労働契約法理における基本概念について解釈論的検討も行った。有期労働・パート労働・派遣労働についての規制の相互関係や、雇用形態差別として議論されている課題についても検討を深めた。
著者
高梨 秀樹
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

イネ花粉管誘引物質を同定するためには, 遺伝子発現情報をもとに候補遺伝子の選抜を行う必要がある. そこでまず, 申請者らがこれまでに得たマイクロアレイ・RNA-seq解析によるイネ助細胞の遺伝子発現プロファイル (Ohnishi and Takanashi et al. 2011) の結果から, 助細胞で高発現し, かつ分泌性タンパク質をコードする複数の遺伝子を候補として多数選抜した.選抜した候補遺伝子についてはノックアウト株が存在しなかったため, それが花粉管誘引物質をコードしているか否かを判別するためには遺伝子ノックダウンによる機能解析が必須である. 本研究ではpANDAベクター (Miki et al. 2005) を用いてRNAiによる遺伝子ノックダウン系統の作出を計画している. 将来的にRNAiが機能している胚嚢をGUS染色により判別する必要があること等を考慮し, 後の実験をスムーズに行うため現在pANDAベクターの改変を行っている.花粉管誘引物質の同定には, 花粉管が胚珠からの誘引シグナルにどのように応答するかを生きた状態で観察できるsemi in vitro重複受精系を用いた, 候補物質の花粉管誘引活性解析が必須である. しかしながら, イネ花粉管は一般的に用いられる花粉管伸長培地上では伸長が芳しくないことが明らかになったため, イネ花粉管に最適化した花粉管伸長培地の作製を試みている. またイネ胚珠は組織が厚く内部構造の観察が困難であるため, より詳細な観察のためにイネ胚珠の透明化手法についても検討し, 複数の有効な透明化手法を見出した.
著者
坂本 雄三 前 真之 赤嶺 嘉彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「建物」と暖冷房「機器」の両者を踏まえ、快適性と省エネ性を統合的に評価する手法(以下、統合的評価手法と記す)を検討し、提案するに至った。検討にあたって、各種暖冷房方式による温熱環境の差異や実働効率などの機器の稼働状況などの実態を実験・実測により把握し、そのデータを整備した。また、通風による冷房負荷削減効果を予測する上で不可欠となる、建物に作用する風圧力に関するデータベースを風洞実験により整備した。なお、統合的評価手法については、今後も検討・改良を加えていく所存である。An integrated assessment method of comfort and energy saving were investigated, and proposed in this study. This method is based on both sides of "Building specifications" and "HVAC systems". In this investigation of the method, thermal environment by various HVAC systems and actual efficiency of equipments were arranged by experiments and actual survey. Moreover, the data base of wind pressure coefficients of buildings was maintained by the wind tunnel experiment.
著者
山口 勧 森尾 博昭 八木 保樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

自尊心の国際比較では、一部において、日本人およびアジア人の自尊心は低く、アジアにおいては自尊心は重要でないことが主張されていた。これに対して、本研究成果は、日本人にとっても自尊心は欧米と同じような意味をもっていて重要であることを示した。さらに、自尊心の表明の際に控えめに表明することが日本では適応的であることが示された。
著者
加納 信吾 児玉 文雄 角南 篤 中野 壮陛 林 裕子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

先端医療分野において、イノベーション発生後の後発事象としての「イノベーションを利用するためのルールが組成されない状態(=レギュレーション・ギャップ)」の発生現象を説明するために、レギュレーションを組成できる限界である「レギュレーション・フロンティア」概念を導入し、この概念を用いてレギュレーション・ギャップを分析する一般的な分析フレームワークを構築した。この分析フレームワークを用いてDNAチップ診断薬の日米の事例分析を実施し、日米における規制組成過程の違い及び規制組成において実質的に規制当局とメーカーを媒介している境界組織の違いを分析し、米国ではFDA主導による統合型の規制組成過程が存在し、規制組成のための研究活動を実施しているのに対して、日本側では規制当局の機能が経済産業省・厚生労働省に分散していること、規制組成のための研究活動が脆弱であることを明らかにした。
著者
野崎 久義
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

一次共生植物が単系統であると示した既存のデータの再検討による再解析並びに自由性生活の無色ミドリムシ類PeranemaのESTデータの構築と利用を実施した結果、一次共生植物が単系統と解析されている原因が遺伝子進化速度が高い細胞内寄生虫や繊毛虫等の影響である可能性が示せた。また、色素体二次共生植物のクロララクニオン藻とミドリムシ藻で、それぞれ緑藻の二次共生以前の隠された紅藻の2または3次共生が核ゲノムの解析で明らかになり、二次共生植物の概念も刷新しつつある。
著者
加藤 孝久 崔 ジュン豪 野坂 正隆 熊谷 知久 田浦 裕生 田中 健太郎 川口 雅弘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究ではDLC膜中にさまざまな元素を添加することで,DLC膜の構造・物性の制御を行った.また,構造制御により得られたDLC膜の機械的特性,物理的特性,吸着特性を明らかにした.DLC膜の作成は,プラズマCVD法,イオン化蒸着法,プラズマ利用イオン注入・成膜法などさまざまな手法と成膜因子を用いて行った.実験で作成したDLC膜の表面・バルク構造・機械的特性は,分子シミュレーションを用いて得られた結果と定性的によく一致することを示した.
著者
甲賀 かをり
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

子宮内膜症患者の腹腔内貯留液中の樹状細胞は貪食能が高いことをマンノースレセプターの発現頻度が高いことにより示した。また、樹状細胞が腹腔内の子宮内膜細胞を貪食し、TNFα、IL6などのサイトカインを分泌することを示した。これらのことより腹腔内貯留液中の樹状細胞は、逆流子宮内膜細胞を貪食し、T細胞のポピュレーションを変化させるなど、腹腔内の免疫環境を変化させ、子宮内膜症の進展に関与する可能性を示した。
著者
箱石 大 福岡 万里子 ペーター パンツァー 宮田 奈々
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戊辰戦争期の維新政府が、諸藩・国内民衆・外国人に対して行なった情報・宣伝活動を政治史的観点から分析し、その成果を公表した。とくに諸藩関係では、触頭制という情報伝達制度の重要性を指摘し、民衆関係では、画像史料も活用しながら、新政府軍の宣伝歌であるトコトンヤレ節の流布状況を解明した。外国人関係では、海外所在の未紹介史料を収集し、維新政府を悩ませたプロイセンの反政府的活動に関する新事実を明らかにした。
著者
矢後 勝也 上島 励
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

マレー半島上に位置するクラ地峡とKangar-Pattani線は、動物地理区でのインドシナ亜区―スンダ亜区間の境界線として知られる。そこで形態や生態、分子データに基づいて、この両亜区間の境界線で種や亜種に分化したと考えられる陸上無脊椎動物(昆虫類と陸産貝類)の形成過程を調査した。今回調査した陸上無脊椎動物の範囲では、インドシナ亜区―スンダ亜区間での共通祖先からの分化は、5.0-6.0百万年前と9.5-10.5百万年前の大きく2回の分岐年代が推定された。これらの年代は海水面が大きく上昇して両亜区間が隔てられた時期とほぼ完全に一致していた。また、いくつかのグループでは分類学的再検討も行った。
著者
山形 俊男 東塚 知己 升本 順夫 茅根 創
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

観測データ、モデル結果、サンゴ年輪解析の結果より、西インド洋の温暖化によって10年周期だったダイポールモード現象が2年前後に短周期化し、エルニーニョ/南方振動現象に代わってインド洋の気候を支配していることがわかった。また、大西洋南北ダイポールと亜熱帯ダイポールについては、新しいメカニズムを提唱することに成功した。さらに、インド洋熱帯域のセーシェルドームとその直上の海面水温の変動メカニズムを明らかにした。