著者
山本 珠美
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.465-473, 1996-12-20
被引用文献数
1

Public Museums, born in modern times, contain two dilemmas. One dilemma is "Who owns a museum?" Generally, a museum forms its collection according to academic elites'value system, so only parts of the public go there. Lately many museums attempt to have various communitiesjoin in planning exhibition for democratization of culture and equality of cultural opportunity. But ironically this causes the crisis of museum identities.The other dilemma is "Is a museum a temple or a forum?" Museological changes transfer "a museum as a temple" into "a museum as a forum" , where visitors analyze the displey while going through the hall. But the general public tend to consider a museum as a temple, where they celebrate the display without critical perspectives. The same dilemmas were seen in the U.S.National Air and Space Museum (NASM) . Froml993 to 1995, the planned Enola=Gay exhibition, commemorating the 50th anniversary of the end of the World War II , provoked rage around the country. "Which owns NASM, academic elites or retired soldiers?" "What is the goal of NASM, education or celebration?" The Enola=Gay controversy throws fundamental problems to American museum world.
著者
安冨 歩 若林 正丈 金 早雪 松重 充浩 深尾 葉子 長崎 暢子 長崎 暢子 福井 康太 若林 正丈 金 早雪 鄭 雅英 三谷 博 北田 暁大 深尾 葉子 久末 亮一 本條 晴一郎 與那覇 潤 千葉 泉
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「魂」という学問で取り扱うことを忌避されてきた概念に、正当な地位を与えることができた。それは人間の創発を支える暗黙の次元に属する身体の作動であり、本来的に解明しえぬ(する必要のない) ものである。学問はそれを喜びをもって受け入れ、尊重し、その作動を抑圧するものを解明し、除去する役割を果たせばよい。そのような学問は、抽象的空間で展開する論理や実証ではなく、「私」自身を含む具体的な歴史的時空のなかで展開される合理的思考である。このような生きるための思考を通じた「私」の成長のみが、学問的客観性を保証する。この観点に立つことで我々は、日本とその周辺諸国におけるポスト・コロニアル状況の打破のためには、人々の魂の叫び声に耳を傾け、それを苦しませている「悪魔」を如何に打破するか、という方向で考えるべきであることを理解した。謝罪も反論も、魂に響くものでなければ、意味がなく、逆に魂に響くものであれば、戦争と直接の関係がなくても構わない。たとえば四川大地震において日本の救助隊が「老百姓」の母子の遺体に捧げた黙祷や、「なでしこジャパン」がブーイングを繰り返す観衆に対して掲げた「ARIGATO 謝謝 CHINA」という横断幕などが、その例である。我々の協力者の大野のり子氏は、山西省の三光作戦の村に三年にわたって住み込み、老人のお葬式用の写真を撮ってあげる代わりに、当時の話の聞き取りをさせてもらうという活動を行い、それをまとめて『記憶にであう--中国黄土高原 紅棗(なつめ) がみのる村から』(未来社) という書物を出版したが、このような研究こそが、真に意味のある歴史学であるということになる。
著者
濱田 純一 右崎 正博 服部 孝章 山口 いつ子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

比較制度的な研究を通じて明らかになったのは、マスメディアによる人権侵害の救済システムがソフトロー的な性格をもち、それによって適切に機能している部分と限界が存在することである。また、ソフトローとしての機能する条件についてもいくつかの軸が見えてきた。すなわち、まず第一に、イギリスや韓国等において、苦情処理機関が行った仲裁や裁定の措置が、報道機関によって一般によく遵守されていることは注目に値する。この背景には、もし自主規制がうまくいかない場合の規制立法に対する警戒もあるが、報道機関が自己規律に対する意識が明確にあることの反映でもあり、それがこの分野でのソフトローを機能させる条件となっていると見ることが出来る。それと同時に、とくにイギリスで指摘される、和解的な感覚の社会的普及も、ソフトローを機能させる上で重要なファクターとなりうることが示唆されている。第二は、苦情処理機関において適用されるルールには、法規制と重なる内容と、法では規制されていない内容の双方が含まれていることである。この後者の観点から言えば、法規制よりも幅広い対象について、柔軟な調整をソフトローが行いうることを意味する。第三に、上記の前者の観点からすれば、ソフトローは法と同じ対象を規律するため一見リダンダントに見えるが、内容は同じであっても、例えば迅速な処理や軽微な費用など、執行のコストや効果において独自の意味をソフトローが持ちうることがあることを、メディアの救済制度の経験は示唆する。以上のような検討を通じ、マスメディアによる人権侵害の救済システムを素材として、ソフトローが成立・機能しうる条件、またソフトローが一般の法に比して有する固有の意義の一端が示され、人権侵害の救済システムの研究とともに、ソフトローの研究に資する成果が得られた。
著者
高木彰彦
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1997

博士論文
著者
吉田 邦夫
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

現生の日本産漆液資料については、前年度に測定した岩手県、兵庫県、岡山県に続き、北海道網走、福島県、茨城県、京都府、岡山県の漆液資料を入手し、一定条件で酸化重合により硬化させ、漆塗膜を作成した。必要量を処理して、ストロンチウム同位体比を測定した。北海道の値がやや低<、^<87>Sr/^<86>Sr=0.705を示したが、他の資料は、0.7065-0.709の範囲に収まり、日本の8産地から入手した日本産漆はすべて、中国産の値が分布する0.712〜-0.715の範囲とは、明確に分離できることを確認した。漆塗膜のストロンチウム濃度に関して、中国産4資料は、5〜6ppmの値で、ほぼまとまった値を示すのに対して、日本産は、2〜5ppmのグループと、11〜14ppmを示す比較的高濃度のグループに二分されている。二つのグループは、列島における地域的な特徴を示しているわけではない。いくつかの産地について、栽培土壌のストロンチウム濃度を分折中である。縄文漆についての試行的な分析を行った。新潟県胎内市の野地遺跡(縄文時代後期後葉〜晩期前葉)から出土した漆資料を用いた。漆容器と思われる土器に付着した黒色漆について、漆塗膜と同様な処理を行い、同位体比の測定を行った。ストロンチウム濃度は、1.9ppmと低い値であった。ストロンチウム同位体比の値は日本産漆の領域、0.710以下を示している。資料が土器に付着した漆であったため、土壌が混入している恐れがあり、資料調製の方法に課題が残っているが、残渣のストロンチウム濃度が僅少であることを確認している。この資料は約3000BPの年代を示す資料で、埋蔵中の続成作用による影響はそれ程大きくないことが推定される。縄文時代の漆が列島産であることを、初めて明らかにすることが出来た。同遺跡の漆資料についでは、年代測定、熱分解-ガスクロマトグラフィー-質量分析計、FT-IR、断面分析、EPMA分析など、多方面からの総合的な分析を行っている。
著者
KNELLER Robert 玉井 克哉 森口 尚史 隅蔵 康一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

産学連携の改善が日本の経済回復にとって極めて重要であることは、日本のトップ官僚やビジネスリーダーたちはよく理解しているし、その課題の1つとして、知的財産管理の問題が重要であることにも気付いているようである。しかしながら、日本の大学および政府系研究機関で行われた発明の帰属のあり方、またそれが産学問の研究協力と産業におけるイノベーションにどのように影響を与えてきたかに関しては、体系的な分析はほとんど行われてきていない。本章では、日米の産学連携のシステムの比較分析を通じて、この問題に取り組む。技術移転システムに関する民間企業の新しいアイディア、新しい製品、新しい発明はどこから来ているか?少なくとも欧米に関しては、バイオ分野に関する主な発明の源は大学とバイオベンチャーにある。欧米の経済において産学連携システムは重要である。日本の製薬産業では、大部分の新薬は社内の研究所で発生しており、他の産業でも同じことが言える。日本の大企業が自前主義的イノベーションにより世界競争力を維持できるのであれば、アメリカ的産学連携システムはいらないであろう。1998年以前の曖昧な産学連携システムで十分かもしれない。しかし、この曖昧な産学連携システムが日本の産業上の需要を満たしていないのであれば、精力的なベンチャー企業、または積極的に技術経営を行う大学が必要であろう。日本におけるイノベーションシステムと産学連携システムはお互いに関連しあっているため、この関連性について、アメリカにおけるイノベーションシステムと産学連携システムを比較しながら、この2つのシステムが日本経済に将来的にどのような影響を与えるかを分析する。
著者
横山 明彦 ATTAVIRIYANUPAP Pathom
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

欧米を中心とする世界各国において、電力自由化が進められており、その一環として競争的電力市場が創設されている。代表的な例としては、米国のPJM ISOやNY ISOのエネルギー市場。日本では2005年4月より電力自由化の一層の進展が始まり、日本卸電力取引所等が開設された。電力自由化においては、全国各地で新規参入が増えて地域間の電力取引が活発になると、これまでの電気の流れ(電力潮流)が大きく変化し、予測が難しくなる。地域によっては送電能力が不足して送電系統が混雑し、意図した電力取引ができなくなってしまう。電気料金が高くなる原因の一つと考えられる。現在NY ISO等がこのような問題で苦しんでいる。また、電力系統における設備に事故が起こった場合も停電が起こり易くなる。電力供給信頼性に影響を与えるものと懸念されている。「価格高騰」及び「供給信頼度」問題を解法するために、送電系統を拡充することが方法の一つと考えられる。しかしながら、送電線新設には多額のコストと時間がかかるため、投資者にはリスクがある。また場所がかかるため、重要な環境問題でもある。本研究では、「価格引き下げ」と「安定供給」を目指して、電力自由化における様々な送電系統拡充方法を分析し、最適な送電系統拡充方法を選択する。送電系統拡充方法としては、「送電線の新設」、「FACTS機器の投入」、「現在系統のまま」3つの方法がある。各方法においては様々な不確実性(需給計画、発電計画・運用、設備の事故等)の影響も考慮する。以上を検証するために、計算機シミュレーションのための数式モデルを作成し、シミュレーションを行い、結果分析を行った。
著者
針原 伸二 住 斉 井原 邦夫 伊藤 繁
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

日本人は先住の縄文人(狩猟採集民)と後入り渡来系弥生人(水田稲作民)の混血により成立した。渡来系弥生人は、今から3千~2千5百年前、大陸から朝鮮半島を経て、北九州近辺に入って来た。大陸の先進文化(稲作技術や金属器など)を携えていた。やがて彼らは縄文人を圧倒するようになり、更に日本列島上を東に進んで、3世紀末に畿内で大和朝廷を打ち立てた。それでは、縄文人の遺伝子は現代日本人の中にどれほど残っているんだろうか?また、山地や東北地方にはそれが多く残っているのではなかろうか?母方由来で伝わるミトコンドリアDNAの多型を使って、この質問に答えるための基礎理論を開拓し、その答を初めて明らかにした。
著者
佐々木 猛智 スティアマルガ デフィン 川島 武士 藤田 敏彦 西秋 良宏
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

本研究の目的は、実験的研究を通じて、博物館に収蔵された標本の新しい活用法を模索するものである。具体的には、(1)貝殻からDNAを抽出する実験、(2)次世代シーケンサを用いて博物館の標本からDNA抽出を効率的に行うための実験、(3)様々な年代、保存状態の標本を対象としたDNAの適正な保存条件の検討を行う。本研究では、微細構造、殻層ごとに実験を行う点が特に重要である。そして、以上の結果をもとに、標本を大規模に破壊することなく博物館の古い標本からDNA情報を取得するための技術を高める。
著者
木村 弘志
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2020

審査委員会委員 : (主査)東京大学准教授 両角 亜希子, 東京大学教授 福留 東土, 東京大学教授 牧野 篤, 東京大学准教授 小方 直幸, 東京大学准教授 中島 英博
著者
佐々木 毅 福元 健太郎 中北 浩爾 谷口 将紀 成田 憲彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1 1996年度に引き続き、政治改革に関する一次資料を収集・複写し、目録を作成した。本年度は、とくに国会審議関係の資料、第八次選挙制度審議会関係の資料、マスコミ関係の資料、および政治改革推進協議会(民間政治臨調)関係の資料を充実させることができた。その結果、昨年度以来収集した資料は約1000点に達した。これらの資料は、現在「政治改革ア-カイヴ」として東京大学法学部研究室内に暫定的に保管してある、今後、最終的な収納先および公開方法について検討する予定である。2 上記ア-カイヴを主たる素材として、政治改革に関する政治過程の分析を行うための「政治改革研究会」が、研究分担者・および8名の研究協力者(飯尾潤、岩井奉信、野中尚人、岩崎健久、濱口金也、内山融、岩崎正洋、川人貞史の各氏、順不同)を得て組織された。具体的な研究項目は、竹下〜海部内閣・宮澤内閣・細川内閣の時系列的部分と、自民党・野党・政治改革推進協議会・労働界・マスコミ・選挙制度・政治資金および腐敗防止などのテーマ別部分からなり、それぞれの項目について論文が提出されている。3 研究会の成果を社会化するため、『政治改革の記録(仮称)』編集委員会を断続的に開催し、1998年秋の公刊を目指して作業が進められている。現在は出版社との調整、提出済み論文の検討作業、および掲載資料の編集・インタビュー調査の準備を行っているところである。
著者
小澤 英実
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

アメリカ文化における「恐怖の表象」をフェミニズム理論から検証するという研究テーマに即し、本年度はバーミンガム大学で開催されたアメリカン・スタディーズ国際カンファレンスにて、ハリウッドのホラー映画に関する口頭発表を行い、同内容を論文として同学会ジャーナルに掲載した。本内容は、日本の恐怖映画のリメイク作品群を事例に、日米の文化的・地政学的な差異が諸作品と日米の観客に与えている影響を検証し、ホラー映画に登場する幽霊・モンスターの身体と、演劇・舞踊の身体との接合点を指摘したもので、身体を軸にジャンルを横断した表象研究の必然性を主張した。また本年度はとりわけ、身体がもっとも先鋭的に焦点化される舞台芸術の研究に力点を置き、サム・シェパードのゴシック演劇『埋められた子供』論を雑誌『アメリカ演劇』に、演劇における身体と映画や漫画における身体との比較・考察を雑誌『舞台芸術』に発表し、恐怖の表象研究の汎用可能性および文化研究の横断可能性を示したほか、東京国際演劇祭「アメリカ現代戯曲シリーズ」にて上演された女性の死とセクシュアリティをテーマとしたトリスタ・ボールドウィンの戯曲『DOE-雌鹿-』を翻訳し、現代アメリカ演劇ないしアメリカ社会の最新動向を紹介した。その他の口頭発表として、秋にバイセクシュアリティ研究の重要文献マジョリー・ガーバー『Vice Versa』の討論会に報告者のひとりとして出席し、フェミニズム/セクシュアリティ研究を巡る課題について討議を行った。

6 0 0 0 OA 大日本史料

著者
東京大学史料編纂所 編
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
vol.第11編之1, 1927
著者
山田 昌樹
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2017-08-25

本研究では,大規模カルデラ形成時の津波リスク評価に向けたモデルケースを確立することを目的として,7300年前の鬼界カルデラ噴火によって発生した津波規模の解明を試みる.本年度は,既に所持していたアカホヤ津波堆積物コアの分析を進めた.具体的には,イベント砂層が津波によって運搬されたものであることを識別するために,堆積プロセスを推定するための粒度分析,砂層の内部構造を観察するためのCT画像撮影,そして供給源を推定するための地球化学分析を行った.また,アカホヤ津波堆積物の空白域である九州地方西岸のデータを得るため,長崎県五島列島においてハンドオーガーを用いた掘削調査を行なった.しかしながら,五島列島の沿岸域は沈降量が大きく,アカホヤ火山灰層の層準まで掘削することができなかった.津波シミュレーションについては,東京大学地震研究所の計算機で「JAGURS」というプログラムを使用した.まずは,カルデラの大きさと崩壊時間を仮定して数値計算を行い,アカホヤ津波堆積物が見つかった地点に到達するのにかかる時間と津波の高さを推定した.その結果,60分かけて崩壊した場合には,カルデラ崩壊の約150~180分後に和歌山県や徳島県,別府湾沿岸地域に3 m以下の津波が到達し得ることが明らかになった.現在は,カルデラ崩壊のパラメーターを変えながら繰り返し数値計算を実施している.加えて,火砕流の流入による津波シミュレーションにも取り掛かり始めている.