著者
藤田 博曉 潮見 泰藏
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.319-324, 2007 (Released:2007-08-18)
参考文献数
15
被引用文献数
6 3

本稿では,理学療法モデルの変遷を述べ,新たな理学療法介入として「課題指向型アプローチ」,「Motor Relearning Program」について論じた。脳卒中を中心とする中枢神経系の理学療法介入は,単に麻痺の改善を目的とするだけでなく,生活を見据えた実践的な治療が求められている。
著者
藤高 紘平 藤竹 俊輔 来田 晃幸 橋本 雅至 大槻 伸吾 大久保 衞
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.263-267, 2012 (Released:2012-08-01)
参考文献数
25
被引用文献数
3 1

〔目的〕足部アーチ保持筋力トレーニング効果が大学サッカー選手の足関節と足部のスポーツ傷害に及ぼす影響を検討した.〔対象〕大学サッカー選手30名とした.〔方法〕対象を2群に分け,足趾把持筋力,アーチ高率,最大1歩幅,片脚立位保持時間などを測定し,経過観察中に発生したスポーツ傷害を調査した.トレーニング群には,1年間の足部アーチ保持筋力トレーニングを実施し,2群間で測定・調査項目を比較した.〔結果〕トレーニング群では足趾把持筋力,最大一歩幅,片脚立位保持時間が有意に増加し,足関節捻挫発生数が有意に少なかった(χ2=4.66).〔結論〕足部アーチ保持筋力トレーニングにより,足趾把持筋力の向上や姿勢制御能の改善が導かれ,足関節捻挫の発生数低下に影響を与えたと推察された.
著者
加辺 憲人 黒澤 和生 西田 裕介 岸田 あゆみ 小林 聖美 田中 淑子 牧迫 飛雄馬 増田 幸泰 渡辺 観世子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.199-204, 2002 (Released:2002-08-21)
参考文献数
15
被引用文献数
30 20

本研究の目的は,健常若年男性を対象に,水平面・垂直面での足趾が動的姿勢制御能に果たす役割と足趾把持筋力との関係を明らかにすることである。母趾,第2~5趾,全趾をそれぞれ免荷する足底板および足趾を免荷しない足底板を4種類作成し,前方Functional Reach時の足圧中心移動距離を測定した。また,垂直面における動的姿勢制御能の指標として,しゃがみ・立ちあがり動作時の重心動揺を測定した。その結果,水平面・垂直面ともに,母趾は偏位した体重心を支持する「支持作用」,第2~5趾は偏位した体重心を中心に戻す「中心に戻す作用」があり,水平面・垂直面での動的姿勢制御能において母趾・第2~5趾の役割を示唆する結果となった。足趾把持筋力は握力測定用の握力計を足趾用に改良し,母趾と第2~5趾とを分けて測定した。動的姿勢制御能と足趾把持筋力との関係を分析した結果,足趾把持筋力が動揺面積を減少させることも示唆され,足趾把持筋力の強弱が垂直面での動的姿勢制御能に関与し,足趾把持筋力強化により転倒の危険性を減少させる可能性があると考えられる。
著者
杉本 諭 古山 つや子 関根 直哉
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.237-243, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
19

〔目的〕Short Physical Performance Battery(SPPB)が要介護高齢者に対するパフォーマンステストとして利用 できるかを検討すること.〔対象と方法〕要介護高齢者90名の身体能力をSPPBとBerg Balance Scale(BBS)で評価し, BBS得点により対象を高身体能力群と低身体能力群に分け,両項目間の相関分析を行った.〔結果〕高身体能力群では, SPPBとBBSの間に相関係数ρ=0.793の強い相関を認めたが,低身体能力群では,相関係数ρ=0.625と中等度の 相関にとどまった.〔結語〕身体能力が比較的良好な場合には,要介護高齢者のパフォーマンステストとしてSPPB が利用できることが推察された.
著者
佐藤 博志
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.331-339, 2007 (Released:2007-08-18)
参考文献数
6
被引用文献数
1

神経学的障害を持つ患者が機能的活動を再獲得するための過程において,患者が持つ潜在能力を適正に捉え,その顕在化を阻害している因子を改善することは,その評価と治療的アプローチにおける課題である。これらの患者の多くは姿勢制御不全を来たし,機能的活動の阻害因子となっている。随意運動としての行動の発現には姿勢制御が先行すること,姿勢制御のためには異なる種類の多くの感覚入力が必要である事などを考慮すると,姿勢制御を獲得する過程が適応行動の神経基盤として重要であると考える。本稿では臨床的な視点での姿勢制御の構成要素に注目し,神経学的障害を持つ患者の評価と治療的アプローチについて述べる。
著者
川端 悠士 日浦 雅則
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.441-445, 2008 (Released:2008-07-28)
参考文献数
22
被引用文献数
4 13

〔目的〕下肢の筋力低下は高齢者の転倒のリスク要因の1つに挙げられる。CS-30(30-seconds chair-stand test)は簡便な下肢筋力評価法として近年広く使用されているが,CS-30と転倒との関係についての報告は少ない。本調査では転倒予測テストとしてのCS-30の有用性を検討することを目的とした。〔対象と方法〕地域在住高齢者135例を対象にCS-30を行い,転倒歴との関連を調査した。〔結果〕CS-30のROC曲線を作成した結果,最も統計学的に有効なcut-off値は14.5回であった。また転倒歴を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析により,算出したcut-off値の妥当性が確認された。得られたcut-off値14.5回における転倒予測の感度は88%,特異度は70%を示し, AUCも85.2%と高値を示した。〔結語〕これらの結果からCS-30の転倒予測テストとしての有用性が示唆された。
著者
藤原 愛作 小野 秀幸 山野 薫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.13-18, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
20

〔目的〕妊娠期から育児期における女性のセラピストの健康管理や労務管理に関する諸問題を明らかにすることである.〔対象と方法〕次世代育成支援対策推進法に基づいて子育てサポート企業の認定を受けた医療・介護施設の中で,リハビリテーション科を標榜している九州圏域の24施設を対象に,郵送による質問紙法を実施した.〔結果〕調査票の回収率は62.5%であり,妊娠期のトラブルは約半数の施設で発生していた.また,妊娠期のマイナートラブルなどの諸問題について職員教育が不足していた.〔結語〕今後,心身の不調に対応できる多様な勤務体制の整備と職員教育を行うことは,妊娠期から育児期における女性療法士が勤務しやすい風土を作るために重要といえる.
著者
高田 雄一 矢崎 香苗 岩本 浩二 飯島 光博 又村 貴大 山本 可奈子 宮本 重範
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.893-896, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
11

〔目的〕足部形状に変形のない健常足と内側縦アーチが低下した扁平足では地面へ接する部位は異なる.扁平足は足底感覚閾値にどのような影響を与えるのか検討することであった.〔対象と方法〕対象は健常群22名,および内側縦アーチが低下している扁平足群21名とした.モノフィラメント圧痛計を用いて9つの足底部位(母趾中央,示趾中央,中趾中央,環趾中央,小趾中央,母趾球,小趾球,内側縦アーチ中央,踵中央)において足底感覚閾値をそれぞれ測定した.測定した閾値を部位ごとに群間比較した.〔結果〕小趾球でのみ扁平足群で有意に閾値が低かった.〔結語〕扁平足群では健常群に比べ荷重量の少ないと考えられる小趾球の感覚閾値が低いことがわかった.
著者
芹田 透 工藤 宏幸 坂井 建雄
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.675-681, 2017 (Released:2017-10-23)
参考文献数
41

〔目的〕肩関節の臨床症状評価の一助とするため,肉眼解剖手法により棘下筋に分布する動脈を観察した.〔対象と方法〕解剖実習遺体17体19側の棘下筋に分布する動脈の走行および分布領域を調査した.〔結果〕棘下筋に分布する主な動脈は肩甲上動脈と肩甲回旋動脈で,どちらも筋の内面を走行していた.肩甲上動脈が,上肩甲横靱帯と肩甲切痕で形成されるトンネル内を走行して棘下筋に達する例もあった.2動脈の分布領域は標本により異なった.〔結語〕棘下筋に分布する動脈には,深層を走行し,トンネル内を通過するなど,圧迫を受けやすい特徴がみられた.また,動脈分布形態は多様であり,臨床症状の個人差への影響が示唆された.
著者
島谷 康司 田中 美吏 金井 秀作 大塚 彰 沖 貞明 関矢 寛史
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.721-725, 2008 (Released:2009-01-28)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

[目的]本研究の目的は,くぐり動作を用いて,発達障害児と健常児の障害物への身体接触を比較検証することであった。[対象]5~6歳の健常児と発達障害児,各9名を対象とした。[方法]課題は7種類の遊具と高さの異なる6つのバーを交互に設置したコースを通り抜けることであった。障害物との接触回避に関する注意喚起を与えない条件,接触回避を与える条件,そして接触回避および早く移動することを促す条件の3条件を設け,それぞれ1試行ずつ行わせた。[結果]発達障害児は健常児に比べて,条件に関わらず接触頻度が高かった。また,発達障害児は腰部の接触頻度が高かった。[結語]発達障害児の接触の多さは,注意の欠陥が原因ではないと考えられる。また,視覚フィードバックを随時利用して,接触しないようにくぐり動作を行うことが困難な状況において身体接触が多いことから,身体特性情報に基づく行為の見積もりの不正確さが,発達障害児の身体接触の多さの原因であることを示唆した。
著者
対馬 栄輝
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.181-187, 2002 (Released:2002-08-21)
参考文献数
15
被引用文献数
15 6

最近,理学療法における研究報告では,検査・測定に対する信頼性を検討する機会が増えてきた。それと同時に適用上の問題も出てきたと考える。信頼性係数として級内相関係数(ICC),クロンバックのα係数,Cohenの一致係数(κ係数),Kendallの一致係数(W係数)を挙げ,これら信頼性係数の特徴を個別に検討し,シミュレーションも行って正しい適用を見出すことが目的である。 ICCは適用範囲の広い信頼性係数であるが,検者または繰り返し測定間と被検者・測定のばらつきの比によって値が決まるため,SEMの併記が必要となる。κ係数は,3人以上の検者の場合はFleissによるκ係数が適用となるが,それと比較するときは検者が2人であってもFleissのκ係数を使う方が妥当である。また,W係数とκ係数を同時に用いて両者の欠点を補うような使用が望ましい。理学療法では順序・名義尺度のデータを扱う機会が多く,ICCよりもκ係数やKendallの一致係数が適用となるケースの方が多い。しかしどの係数も利点欠点があるため,いくつかの注意点を勘案して適用する必要がある。なによりも重要なのは,データをよく観察することであり,また係数やその有意性のみに固執しないことが挙げられる。
著者
原 幹周 吉田 英樹 片石 悠介 谷脇 雄次 花田 真澄 前田 貴哉 照井 駿明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.63-68, 2015 (Released:2015-03-18)
参考文献数
17
被引用文献数
2

〔目的〕生理学的指標に基づいたTENSの疼痛軽減効果の検討に加えて,TENSの刺激強度の違いによる疼痛軽減効果への影響を明らかにする.〔対象〕健常者16人とした.〔方法〕人為的な疼痛に対して周波数100 Hzでの高強度(運動域値以上)TENSと低強度(感覚閾値レベル)TENS,およびTENSを一切実施しない条件(コントロール)を実施した.各条件間での疼痛軽減効果を主観的指標であるNRSと,生理学的指標である前頭前皮質の脳血流量および自律神経活動を用いて各条件間を比較した.〔結果〕交感神経活動には明らかな違いが認められなかったが,NRSと前頭前皮質の脳血流量の結果では高強度TENSの疼痛軽減効果が最も高かった.〔結語〕高強度TENSが,主観的にも生理学的にも優れた疼痛軽減効果を示した.
著者
稲田 竜太 藤井 裕一 井上 裕貴 谷 綾花 佐藤 望 花城 健太 安浦 優佳 荒明 拓 森川 裕喜 出水 精次
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.899-903, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
26

〔目的〕膝前十字靱帯(ACL)再建術後1年のHop test回復状況を調査し,回復基準に至りにくいHop testを明らかにすること.〔対象と方法〕ACL再建術を施行した218症例を対象とし,術後1年のVertical Hop(VH),Single Leg Hop(SLH),Triple Hop(TH)が健患比90%以上に回復した割合と3種のHop test全項目が健患比90%以上に回復した割合を調査した.〔結果〕Hop testの回復割合はVH 67.9%,SLH 78.4%,TH 78.9%であり,VHの回復割合が最も低かった.Hop test全項目が健患比90%以上に回復した割合は59.2%であった.〔結語〕約4割の症例においてHop testが健患比90%未満であり,特にVHの回復率が低かった.
著者
木下 恵美 浦辺 幸夫 前田 慶明 藤井 絵里 笹代 純平 岩田 昌 河原 大陸 沼野 崇平
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.227-231, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
15
被引用文献数
2

〔目的〕本研究の目的は,片脚着地動作時の前・後足部運動と膝関節外反運動の関係を明らかにすることである.〔対象〕対象は健常成人女性13名とした.〔方法〕課題動作は高さ30 cm台からの非利き脚での片脚着地動作とし,台より30cm前方に着地させ,片脚立位を保持させた.課題動作中の膝関節外反角度,前足部回内角度,後足部外反角度,アーチ高を算出し,膝関節外反角度と各足部角度,アーチ高との相関関係を調べた.〔結果〕片脚着地動作時の前足部回内運動と膝関節外反運動に有意な相関関係は認められなかった.一方,後足部外反運動と膝関節外反運動には有意な正の相関が認められた.〔結語〕片脚着地動作での膝関節外反運動を予防するためには,後足部外反運動を少なくすることが重要であることが示唆された.
著者
吉田 啓志 近藤 駿 増田 裕里 嶋尾 悟 浜岡 克伺 成冨 博章
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.323-326, 2018 (Released:2018-04-27)
参考文献数
16
被引用文献数
2

〔目的〕本研究は,リハビリ後自宅退院した脳卒中患者の活動範囲を屋内群と屋外群に分類し,屋外活動の可否を最も予測可能な退院時身体的因子のカットオフ値を明らかにすることとした.〔対象と方法〕自立歩行可能で自宅退院した脳卒中患者31名を対象とした.退院3ヵ月後の活動範囲をLife Space Assessment(LSA)を用いて調査した.退院時評価項目のうちLSA合計点と有意に相関する指標を抽出し,屋外活動判別に最も適したカットオフ値を求めた.〔結果〕6分間歩行距離(6MD)のカットオフ値が最も高い判別能を示し,その値は358.5 mであった.〔結語〕脳卒中患者の自宅退院後の屋外活動を維持・向上させるためには入院中の6MDにおいて350 m以上を目指す必要があることが示唆された.
著者
弓永 久哲
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.567-570, 2011 (Released:2011-11-25)
参考文献数
17
被引用文献数
2

〔目的〕脳卒中患者の連合反応の出現機序を検証するための基礎的研究として,健常者を対象に歩行中の上肢筋に対応する脊髄レベルの興奮性をF波を用いて検討した.〔対象〕対象は健常成人男性30名とした.〔方法〕歩行前,歩行中,歩行終了直後,終了1分後,2分後における右上肢筋のF波を記録した.〔結果〕出現頻度は歩行中に有意に変化したが,振幅F/M比と潜時は有意な変化を示さなかった.〔結語〕以上より健常者の歩行では上肢筋レベルの脊髄の興奮性は増加する傾向を示した.このことから脳卒中患者においても歩行中に上肢筋レベルの脊髄の興奮性は増加することが考えられ,治療プログラムを立案する際考慮する必要があると考える.
著者
吉田 一也 江尻 廣樹 磯谷 隆介 原 和彦 藤縄 理
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.277-282, 2014 (Released:2014-05-22)
参考文献数
17
被引用文献数
3

〔目的〕自然立位の脊柱アライメントと肩甲骨位置と肩甲上腕関節外転可動域の関係について検証した.〔対象〕運動器障害のない成人男性40名(25±5歳)とした.〔方法〕測定肢位は自然立位とし,頸部屈曲角,円背指数,骨盤傾斜角,胸郭周径,肩甲骨位置,肩甲上腕関節外転可動域を測定した.統計解析として,重回帰分析で脊柱アライメント,肩甲骨位置,肩甲上腕関節外転可動域の関連性を検討した.〔結果〕胸椎後弯と胸郭周径,肩甲骨位置に特に高い関連性があった.〔結論〕骨盤前傾,腰椎前弯・胸椎後弯・胸郭周径の増大による肩甲骨の外転・上方回旋が示唆された.肩甲骨は胸郭上にあるため,胸椎弯曲・胸郭形状から大きな影響を受けると考えられる.
著者
渡邉 五郎 藤平 知佳音 星 賢治 蒲田 和芳
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.593-599, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
31

〔目的〕ハイヒール着用での歩行は,しばしば歩容の変化や足部・足関節の疼痛,捻挫などの外傷を引き起こす.本研究の目的を,ハイヒール用インソール(IHS)が,ハイヒール着用中の立位バランス能力向上に及ぼす効果を明らかにすることとした.〔対象と方法〕対象者は若年健常女性20名で,ハイヒール着用下で,①開眼片脚立位,②開眼片脚スクワット,③開眼足踏み動作の3試技を重心動揺計上で行った.各試技での総軌跡長,単位軌跡長,外周面積,前後・左右の位置ベクトルを記録し,IHSの有無で比較した.〔結果〕IHSの使用により,開眼片脚スクワットと開眼足踏み動作で重心動揺が有意に減少した.〔結語〕IHSの使用はハイヒール着用下での階段降段,歩行の安定性向上につながる可能性が示唆された.
著者
田坂 厚志 沖 貞明 田中 聡 島谷 康司 長谷川 正哉 金井 秀作 小野 武也 大塚 彰 坂口 顕
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.577-580, 2009 (Released:2009-09-24)
参考文献数
19
被引用文献数
1

〔目的〕超音波療法の客観的な有効性を明らかにするために,動物実験を行った。〔対象〕実験には10週齢の雌Wistar系ラットを16匹用いた。〔方法〕右足関節をギプス固定し,1日1回固定を除去して超音波照射後にトレッドミルで走行を行わせる超音波群(8匹)と1日1回固定を除去し超音波を照射せずにトレッドミル走行を行わせる対照群(8匹)の2群に分けた。〔結果〕個々のラットにおける実験開始前と実験開始1週間後の足関節背屈角度の変化をもって2群を比較したところ,超音波群では42.5±6.0度,対照群では51.2±11.7度となり,超音波群は角度変化が有意に少なかった。〔結語〕関節拘縮発生抑制効果に関する超音波の有効性が確認できた。
著者
清水 陽介
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.723-727, 2016 (Released:2016-10-27)
参考文献数
18
被引用文献数
1

〔目的〕股関節外転筋力と10 m最大歩行速度(以下10MWS),歩行自立度の関連性,歩行自立のためのカットオフ値を算出することとした.〔対象と方法〕対象は,片麻痺患者31例とした.方法は,10MWSと歩行自立度を算出し,Hand-Held Dynamometerを使用し,股関節外転筋力を測定した.〔結果〕10MWSと麻痺側股関節外転筋力(r=0.74)には有意な相関が認められた.歩行自立度に影響のある因子として,麻痺側股関節外転筋力のみが抽出され(オッズ比11.917,オッズ比95%信頼区間2.18971-65.146),歩行自立のためのカットオフ値は,0.230 kgf/kgであった.〔結語〕麻痺側股関節外転筋力は,歩行速度,歩行自立度に対する重要な因子である可能性が高い.