著者
与那覇 晶子 鈴木 雅恵 天野 文雄 當間 一郎 幸喜 良秀 高江洲 義寛 狩俣 恵一 板谷 徹 新城 亘 玉城 盛義 伊良波 さゆき 吉田 妙子 前田 舟子 伊野波 優美 MAZZARO Veronica
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

「組踊の系譜」のプロジェクトは、琉球・沖縄芸能の近世から現代に至る通史的な大きなテーマである。2004年に開場した「国立劇場おきなわ」の劇場の形態、そして21世紀以降に創作された20作に及ぶ大城立裕氏の新作組踊まで視野に入れた研究になった。本研究の成果の一つは二回開催されたシンポジウムである。第一回「組踊から沖縄芝居、そして≪人類館≫へ」(2012年2月8日)と第二回「≪劇場と社会≫-劇場に見る組踊の系譜」(2012年3月11日)の両シンポジウムは、組踊と能楽、其々に優れた研究者當間一郎氏と天野文雄氏に基調講演をしていただき、民俗芸能、琉球舞踊、琉球音楽、シェイクスピアなどの研究者、国立劇場おきなわ芸術監督、沖縄芝居実験劇場代表等をパネラーとして招聘し開催した。一方、大城氏の10作の新作組踊上演は、朝薫が初めて冊封使に披露した1719年から現在に至る「組踊」の系譜を逆照射することになり、本研究は当初の目的を超えた発見をもたらした。
著者
井川 浩輔 厨子 直之
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究課題の目的の1つは人事コンピテンシーと個人や組織の成果との関係について定量的に分析することである。本報告書で用いられているデータは140人の人事プロフェッショナルから得た質問票への回答から収集された。量的調査の結果は主に以下の2つの発見事実を明らかにした。まず,日本における人事コンピテンシーは9つの要素から構成された。次に,とりわけビジネスへの貢献というコンピテンシーは個人的パフォーマンスと組織的パフォーマンスの双方にポジティブな影響を与えた。
著者
永井 實 天久 和正 儀間 悟 長田 孝志
出版者
琉球大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

本研究は小型火力発電システムに,海水淡水化装置及び製塩プラントを組み合わせた「一石三鳥」システムの考案に基づき,そのフィージビリティースタディを行おうとするものである.従来は互いに独立であった発電,海水淡水化及び製塩システムを一体化することにより,トータルの熱効率が飛躍的に改善され,ほぼゼロエミッションを達成することは自明のように思われるが,ボイラタービンの材料選択など技術的に克服すべき課題が山積している.本年度は海水用蒸発ボイラの設計仕様の完成と製作に取り組んだ.そのためにまずボイラに見たてた容量3リットルの広口瓶と500W電熱ヒ-タを用いた海水蒸発予備実験を行った.その結果蒸留効率90%で塩濃度1ppm以下の蒸留水を得ることができ,広口瓶下部では飽和塩水(28.2%)から連続的に塩が析出、堆積することを確認できた.予備実験の結果と熱収支計算に基づき,研究室レベルで実験可能な小規模の海水濃縮用ボイラを設計・製作した.蒸気条件は10bar,240℃,流量21.7kg/hであり約1.5kWの蒸気タービンを駆動することができる.ボイラ形式は炉筒煙管型で,生成飽和蒸気を後部煙室で過熱する過熱器一体型である.同ボイラの特徴は,ボイラ胴の下部に塩を析出促進させる温度成層二重管を備えている事である.外観状部に新鮮海水をいったん貯溜し,内部管の濃縮海水を冷却する.使用燃料は灯油で,過熱器をふくめた設計ボイラ効率は80%とした.ボイラは外注により年度内に完成させ,実験室への搬入,設置を行った.なお上記海水濃縮用温度成層ボイラは新型ボイラとして大学へ発明届けと任意譲渡の申し出を行い,現在手続き中である.
著者
渡嘉敷 崇
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

地域在住の超高齢者における血管内皮前駆細胞数、ω-3脂肪酸及び脳画像的特徴と認知機能の相関性を評価する目的で研究を開始した。161名の80歳以上の地域住民を対象に歩行機能評価を含めた身体測定や血液検査、MRIを用いた脳画像評価、生活調査及び認知機能検査を行った。今回の研究では、特に血管機能と認知機能の相関について主眼を置き、血液検査においては血管内皮前駆細胞数をフローサイトメトリーで測定し、身体測定では血管機能の指標となり得る項目を各種機器を用いて測定した。頭部MRI検査では全脳容積評価に加え、機能的磁気共鳴法や拡散テンソル画像法も施行した。今後これらの項目の相関について解析を進める。
著者
波多野 想
出版者
琉球大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

日本統治期の台湾で開発された鉱山に関しては、従来、台湾内を中心に、地理学・地質学・建築史学など多方面から研究が行われてきた。特に、本課題の研究対象である金瓜石鉱山は、地形的・地質的特質や鉱山施設の建設過程など、鉱山の物質的側面を中心に研究成果が蓄積されてきた。しかし、これまで、植民者と被植民者が限られた空間に併存する植民地特有の現象を含め、植民地鉱山の空間的形成過程に焦点をあてた研究はみられない。そこで本研究は、植民地の社会政治的状況と地理空間の関係に着目し、差別や不平等を伴いつつ編成されたと推測される金瓜石鉱山の土地の利用と所有、および鉱山施設の建築的実態を考察し、植民地における鉱山景観の特質を明らかにすることを目的とする。特に本研究では、日本統治期に作成された地籍図や土地登記簿によって当時の土地利用と所有の状態を復原する一方で、図面類、文献資料、古写真などを用い、金瓜石鉱山に建設された鉱山施設の配置を考察する。
著者
國吉 幸男 新垣 勝也 宮城 和史 山城 聡 上江洲 徹
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

【目的】本研究は腹部内臓動脈急性閉塞において虚血・壊死に陥る腸管の範囲を術中に迅速に確定する方法を確立することを目的として遂行した。【方法】ビーグル成犬(n=3)を開腹し、空腸から回腸までの小腸全体を5等分して定点側定部位とした。各点で1)腸管内へラテックス製バルーン付き圧transducerを用いて、腸管運動に伴う腸管内圧変動を測定・観察した。2)小腸漿膜面腸管壁内へ白金電極を刺入し誘発電位検査装置(日本光電MEB-7202)を用いて腸管筋電図測定を行った。3)ニードルタイプ酸素電極を小腸漿膜面腸管壁内へ刺入し酸素分圧測定装置(Inter Medical PO_2-100)を用いて組織内酸素分圧を測定した。以上についてControlを測定後、Cranial mesenteric arteryを閉塞し一定時間(1時間、6時間、12時間)後、再灌流を行った後上記を測定した。【結果】1時間動脈閉塞では再灌流により速やかに腸管のcyanosisは消失し、10〜12回/分頻度の腸管収縮運動とそれに伴う腸管筋電図の現出を認めた。組織内酸素分圧はControl値(35〜40mmHg)に復した。6時間動脈閉塞後再灌流では腸管のcyanosisは全体的に消失したが、30〜40%程度の領域が壊死に陥った。壊死部以外では腸管運動、腸管電気的活動の回復を認めた。組織内酸素分圧も30〜35mmHgに復した。組織学的には絨毛の脱落を認めたが一部では陰窩は保たれていた。一方、12時間動脈閉塞では、再灌流後も腸管運動を示す所見は認められず、組織内酸素分圧は0mmHgのままであった。組織学的には腸管壁全体の出血性梗塞を認めた。【まとめ】1.12時間動脈閉塞では小腸全体が出血性壊死に陥り腸管運動は認められなかった。2.6時間動脈閉塞では一部は壊死に陥ったが、陰窩層が保たれている所見が認められた。3.腸管のviabilityを左右するturning pointは動脈閉塞時間6時間前後にあることが示唆された。4.動脈閉塞時間6時間においても斑状に壊死に陥った個体や小腸の中間点のみ壊死に陥った個体など所見に差があり部位に関しては一定の傾向を認めなかった。5.今回、測定した3項目に関しては組織所見との明らかな相関は見られなかった。今後、例数を増やし再実験するとともに、新たなモニター項目の追加や実験方法の検討が必要と思われた。
著者
金城 須美子
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.323-331, 1971-12-01

1 琉大の男子寮, 女子寮生を対象に食品の嗜好調査を行った。その結果, 肉料理, すし類, 果物, 野菜サラダの平均嗜好度は男女とも高く標準偏差も小さい。男子の肉料理に対する嗜好は女子より高い。特にビフテキは全食品中最も高い嗜好を示し偏差も1.04と非常に小さい。これは殆んどの男性が, 文句なしにビフテキを好んでいることが分る。これに対して女子は野菜サラダを最も好む食品としている。琉球料理のイリチーやチャンプルーはさ程好まれない。各食品に対する男女の嗜好の相違は顕著でないように思う。2 気候, 健康状態によって嗜好が異るかどうかを調査した。その結果, 夏と冬, それに疲れたときの食品に対する嗜好が異ることが分った。特に気候の影響が大きい。それ故, 食品の嗜好に及ぼす要因として性別よりも, むしろ季節, その他の要因が大きいと思われる。
著者
仲井 真治子 比嘉 美佐子
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.183-193, 1967-10-01

本研究は, 環境, 年代の違いによる着用色の傾向を検討することを目的に, 沖縄の北部, 中部, 南部, における20∿50代代の沖縄婦人の街着を調査対象に, ルイス・チェスキンの色円板, 及び日本色研式の色彩統計盤を使用して行なった。更に, 沖縄における5カ年の着用色の動向を把握するために, 沖縄の中心都市, 那覇における20∿30代の婦人の街着を調査対象として行った。X^2検定, 標準偏差, 及び偏差積法による資料の分析から次項の結果が得られた。1.沖縄本島の三地域(南部, 中部, 北部)と着用色の関係を, 色相, 明度, 彩度の面から検討した。1)着用率の高い五色相と三地域をX^2検定したが, 有意差がみられた。南部においては寒色が好まれ, 中部においては, 暖色が多く好まれ, 北部においては無彩色に偏っている。という傾向がみられた。2)三地域の明度, 彩度を1から9段階に分けてそれらの分布度を標準偏差で求めた。明度, 彩度ともにσの数値に顕著な差がみられた。中部においては明度, 彩度ともにσの数値が低く, 南部, 北部の順に高くなっている。即ち, 南部, 北部の分布は, 明度は中明度, 高明度に偏り, 彩度は中彩度, 低彩度に偏している。中部における明度・彩度の分布は, 他の二地域に比べてこの傾向が低く, 低明度, 高彩度にも広がっていることがわかった。2.5カ年の着用色の変動をみるために1)14色相, 及びそれの明度, 彩度の5カ年の分布度を標準偏差で求めた。その結果, σの数値は年々減少していく傾向を示している。この傾向は色相において最も顕著で, その次明度, 彩度の順位でσの数値が減少の傾向を示している。全般的にみたσの数値, 及びσ値変動の度合も, 色相, 明度, 彩度の順に高くなっている。沖縄の婦人が色の三属性で一番むつかしいとされているのが彩度であることがわかった。2)5カ年を通しての色の安定度は季節に左右されるもので, 夏季の服色においては, 青緑, 茶, 白が安定度が高く, 黄緑, 青紫, 黒は低い。冬季の服色では, 橙, 茶, 黒が安定度が高く, 赤, 黄緑, 白が低い。季節に関係なく安定度が高い色相は茶で, 季節に関係なく低いのは黄緑となっている。3.年代と着用色の関係は, 20∿30代と40∿50代の間隔から着用色に差がみられた。年代弁別色は, 青, 白, 赤, 赤紫, 黒, 茶, となっている。年代と明度との関係にも差がみられた。年代と彩度の関係が最も顕著であった。今回の服色研究は, 地域差と年代差を1963年夏の資料に限り, 5カ年の服色の動向を那覇における資料に限った。更に20代と30代のみを5カ年の変動の対象とした。今後はそれぞれの要因を全て包含させた調査を各季節ごとに, 毎年継続していくことによって, 沖縄における服色を体系づけたい。
著者
新城 長有
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-57, 1975-12-01
被引用文献数
6

筆者はインド型イネChinsurah Boro II品種が雄性不稔細胞質と稔性回復遺伝子をもつことを発見し, 連続戻交雑法を用いて両因子を日本型イネの台中65号へ導入した。育成された上記isogenic系統を主材料にして, 雄性不稔の遺伝, 他形質に対する細胞質と稔性回復遺伝子の効果, 稔性回復遺伝子の座位, 雄性不稔イネにおける花粉退化の時期, 雄性不稔細胞質と稔性回復遺伝子の地理的分布, および雑種イネ育種に必要な三系統の育成法を研究した。結論の要約は下記のとおりである。A雄性不稔の遺伝インド型イネChinsurah BoroIIに由来する雄性不稔細胞質を(ms-boro), その稔性回復遺伝子をRfと命名した。(ms-boro)Rf Rfの遺伝子型をもつ系統は完全雄性稔, (ms-boro)Rf rfは部分雄性稔(花粉稔性約50%)で, (ms-boro)rf rfは完全雄性不稔であった。一方上記3系統の雌性配偶子は健全であった。正常細胞質(n-boro)をもつ個体は核内遺伝子型に関係なく, すべて完全雄性稔になった。(ms-boro)rf rf×(n-boro)Rf rfのF_1世代においては, 部分雄性稔と完全雄性不稔個体が1 : 1の比に分離したが, (ms-boro)rf rf×(ms-boro)Rf rfのF_1では稔性の分離は観察されず, すべての個体が部分雄性稔(花粉稔性約50%)になった。(ms-boro)Rf rf系統の自殖次代には完全雄性稔および部分雄性稔個体が1 : 1の比に分離した。したがって(ms-boro)Rf rf個体においては, 花粉形成期のある時期にrf遺伝子をもつ花粉は雄性不稔細胞質との相互作用で死滅し, Rf花粉のみが正常に発育するといういわゆる雄性配偶体不稔性と結論した。(ms-boro)rf rf×Rf RfのF_1個体の花分稔性は50%を示すが, 種子稔性は90%以上になる。したがって本雄性不稔細胞質と稔性回復遺伝子は雑種イネの育成に利用できるものと考えられる。なお, 雑種イネ育成に必要な3系統, すなわち雄性不稔系統, 雄性不稔維持系統および稔性回復系統の育成方法についても理論的に示した。B量的形質に対する細胞質と核内遺伝子の効果作出可能な6 isogenic系統を育成し, 5反覆の乱魂法を用いて, 1970年の第1期作と第2期作で栽培し, 出穂日, 穂数, 主稈葉数, 稈長, 第1節間長, 第2節間長および第3節間長(節間は最上位から数えた。)を測定し, 系統間の比較を行った。雄性不稔系統の稈長は他の5系統に比較して約7cm短く, 1%水準で有意であった。雄性不稔系統の短稈性は, おもに第1∿第3節間長の短縮に起因する。他の5系統の稈長間には有意差はなかった。雄性不稔系統の示す出穂日, 穂数, 主稈葉数は他の系統と同程度であった。雄性不稔系統のこのような特性は交雑圃における受粉体制に好影響をもたらすものと考えられる。C Rf遺伝子の座位まず三染色体系統を用いて, Rf遺伝子の座乗染色体を確定し, つぎに既2標識遺伝子系統との交雑を行ない座位を明らかにした。三染色体分析では3系交雑法を適用した。まずTrisomics×(ms-boro)Rf Rfの交雑F_1から三染体個体を染色体数の観察によって迸抜し, つぎにF_1の三染色体植物を父本にして雄性不稔系統へ交雑し, 次代植物の種子稔性を調査した。その結果Rf遺伝子はTrisomic C系統の過剰染色体, つまり岩田らの第7染色体に座上することが判明した。Rf fl間の組換価は約0.4%で, pglとRf間のそれは約12%, pglとfl間は約20%であった。したがって第7染色体上における遺伝子の配列順序はpgl-Rf-flである。D花粉退化の細胞組識学的研究本雄性不稔系統における花粉の発育過程を観察した。滅数分列は正常に進行し, 花分四分子も正常に形成される。しかし花粉1核期でその発育を停止し, 2核期以後は観察されない。タペート細胞は正常である。出穂期の不稔花粉はヨード・ヨードカリ液で染色されない。不稔花粉は球形で発芽孔を有するが, 形は正常花粉よりも小さい。E雄性不稔細胞質と稔性回復遺伝子の分布(1)日本の水稲奨励品種について細胞質と核内遺伝子型の検定法を考案し, その検定法に基づいて1962年度の日本水稲奨励品種150品種を検定した。19品種(12.7%)の品種は弱稔性回復遺伝子をもち, 他の131品種は非回復遺伝子をもっていた。弱回復遺伝子をもつ品種のほとんどは京都以南に集中的に分布した。これらの品種のほとんどは在来品種から分離育種法によって育成された品種であった。供試日本稲品種には雄性不稔細胞質は発見されなかった。(2)外国品種について本研究に用いたイネ品種は15国から蒐集した153品種でった。細胞質検定親に遺伝子型(n-boro)rf rfの6系統を, 核内遺伝子検定親には遺伝子型(ms-boro)rf rfの6系統を用いた。これらの検定親と153品種との交雑を行なった。主としてF_1の花粉および種子稔性から, それぞれの品種の細胞質型と核内遺伝子型を推定した。雑種不稔性の併発によって, これらの推定が困難であった組合せについては, B_1F_1か自家受粉による後代系統の稔性から推定した。細胞質の検定を行なった146品種のうち, 4品種がChinsur
著者
波平 宜敬 HOSSAIN Md. Anwar HOSSAIN Md. Anwar
出版者
琉球大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

近年,医療用システムとして断層画像診断技術(OCT)が注目されている.OCT技術においての横分解能は,顕微鏡の開口数に依存するため,高開口数が必要とされている.OCTで使われる波長830 nm,1060 nm,1310 nm帯での高開口数用PCFの設計を,有限差分法(FDM)を用いた数値シミュレーションにより行った.本研究では,この数値解析モデルをOCTに応用することを提案している.OCTにおける画像明細度(分解能)は使われる光源とファイバスコープにより決められ,その光源がインコヒーレント,つまりスペクトルの広い光であればあるほど画像明細度(縦分解能)は上がり,そのファイバスコープが高開口数であればあるほど画像鮮明度(横分解能)は上がる.しかし,高開口数ファイバスコープをつくろうとしても,PCFは複雑な構造となり製造が難しいため大きな開口数を得られていないのが現状で,横分解能が不十分は状態であった.本研究では,眼科,消化器科,歯科に使われている波長830 nm,1060 nm,1310 nm帯における,OCTのため製造が容易な構造をもった高開口数ゼロ分散シングルモードPCFを推奨する.シミュレーション結果は推奨するPCF構造がOCTシステムの横分解能を向上させることを示している.なお,数値解析手法として有限差分法を用いた.波長830 nm,1060 nm,1310 nm帯における高開口数分散フラットPCFの数値シミュレーションを行った結果,高開口数を有するPCFであることが確認でき,このPCFをOCTに応用することによってOCTの横分解能を現在の20倍近く向上させることができた.
著者
波平 知之
出版者
琉球大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

合計141個体のウミヘビを採集し、胃内容物の有無を調査した結果、胃内容物をもつ個体はわずか5個体のみだった。胃内容物の大きさとウミヘビの餌生物の摂取量との関係について明らかにできなかったが、胃内容物の種類については、エラブウミヘビは主にベラ類やスズメダイ類を捕食し、アオマダラウミヘビとヒロオウミヘビはウツボ類を捕食する傾向にあった。これらの胃内容物に残存していた餌生物のCP含量はウツボ類が70-80%と高かったのに対し、ベラ類が52%と低かった。ウミヘビの種によって捕食する餌生物の違いならびに餌生物由来の栄養摂取量の違いが認められた。魚粉粉末の人工餌(CP60%)ならびに生餌(ヤマトミズンとヤエヤマギンポ)をin vivo消化試験に供した結果、人工餌と生餌のin vivo乾物消化率はそれぞれ64%と54%となった。エラブウミヘビの消化時間は餌の種類や乾物消化率の違いによる影響は認められず、強制給餌後2=3日以内に初回排泄が認められる傾向にあった。排泄糞尿中の尿酸含量は約5%となり、餌由来の見かけ上のカロリー利用率(見かけ上のカロリー内部保有率)は65%であった。絶食区(140日間絶食)と生餌給与区(45日間絶食、50日間生餌給与、45日間再絶食)におけるエラブウミヘビの体重の推移をモニタリングした結果、いずれの処理区ともに140日間で捕獲時体重から約20%単位まで体重が減少し続けた。しかし、生餌給餌区は2回の絶食時ともに体重が減少したものの、生餌給与によってその減少が止まり50日間体重を維持することができた。このことから、エラブウミヘビの維持に必要な一日当たりの乾物摂取量は0.6gDM(2.2gFW)であり、体重約400gのエラブウミヘビ(♂個体)における見かけ上の基礎代謝量は1.0(kcal/day)となった。エラブウミヘビの排泄糞中のバクテリア相について次世代シーケンサーを用いて16SrRNA領域における細菌相解析を実施した結果、Firmicutes, Proteobacteria,Actinobacteria, Fusobacteriaなどが検出され、中でもFimicutesが優占化する傾向にあった。
著者
上里 健次
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-7, 1993-12-01
被引用文献数
1

沖縄諸島におけるヒカンザクラの開花期が,北部地域から始まって南下するという現象について一考してみた。同植物の開花に対しては主として温度要因が考えられることから,八重岳の山道に植栽されているものについて開花,出葉の様相を調べて標高差との関係を検討し,また那覇,宜野湾地区の調査を加えて,地域差も比較した。開花,出葉の程度の調査については,個体毎にその程度をそれぞれ10レベルに分けて行った。得られた結果の概要は,次の通りである。1. 標高290m以上の所では開花は1月下旬にピークを示してきわめて早く,ついで開花が早いのは標高100m以下の低いところであった。標高の中位部の所では総じて開花は遅く,開花期の標高差による傾向も不明で,むしろ標高の高いところほど遅咲きであった。2. 八重岳の山道に連続して植栽されているものすべてをまとめて標高差を見ると,標高の高いほど早く開花するという傾向は,かろうじて有意であった。3. 沖縄北部と南部における開花期の地域差については,八重岳の低標高地のものと比較すると明かに北部に早かった。しかし中位部標高地のものと比較すると有意な差はみられなかった。4. 低温の地域ほど早く開花することの理由については,ヒカンザクラの開花に必要な低温度域が沖縄の最低温期の温度より高いところにあり,そのために12月前後に低温に遭遇する機会の多い地域ほど開花が早くなることがあげられ,結果的に山頂ないし北部において早い開花となるといえる。
著者
上里 健次 比嘉 美和子
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.1-8, 1995-12-01
被引用文献数
1

沖縄におけるヒカンザクラの開花期と地域差および標高差について, 1994年開花の同植物を対象に比較調査を行った。調査地域は八重岳山道の3ケ所の他, 那覇の2ケ所, 浦添, 宜野湾と名護, 今帰仁, 大宜味, 国頭の2ケ所である。調査は開花および出葉の程度を10レベルに分けて定期的に行い, それぞれのグループ毎の比較を行った。得られた調査結果の概要は次の通りである。1. 八重岳の低標高地と中南部における開花の地域差については, 中南部が遅い開花を示す中で嘉数区とは差がないが, 伊祖, 末吉とは差があり, 与儀とは大きな差が見られた。2. 北部地区内における地域差については, 喜如嘉では八重岳と同様の早い開花で, 他の地域についてはわずかな遅れが見られる程度であった。3. 八重岳の山道における標高差については, 山頂, 麓付近で開花が早く, 中腹付近は有意差のあるほどの遅れであった。4. 出葉は開花直後に始まって開花とほぼ同様の遅速の傾向を示すが, 八重岳の麓付近では開花終了前に出葉し始める個体が多く, 一般の発育の様相と異なる面も見られた。5. 名護, 那覇における最低温度は本調査年度の12月, 1月においてかなり大きく, 開花期の早晩における地域差, 標高差への関与が伺われた。
著者
仲間 勇栄
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

マングローブの方言名プシキはマングローブの方言の総称である。オヒルギは方言でビギプシ(古見)、マツァプシキ(祖納)、マダプシキ(星立)、ヤエヤマヒルギはミープシ(古見)、マヤプシキ(星立)、ビープシキ(星立)、ハマザクロはトゥ〓ダプシ(古見)、ヒルギモドキはカニャーキー(星立)などと呼ばれている。マングローブの利用一番多くは、オヒルギやヤエヤマヒルギの皮を煮詰めて帆船の木綿帆、魚網、ミンサー織物などの染料として利用していたことである。皮を剥いだマングローブは薪に、またメープシやビギプシを切ってきて自家用木炭を作った。ビギプシは家のタルキや桁や洗濯物の竿掛用などに使われる。マングローブ林と食生活ガサミ(カニの一種)はゆでて身を取り、油で炒めたり、そのまま水炊きにする。また身を取ってメリケン粉と混ぜ、ダンゴ状にして油にあげカマボコを作る。ギジャグ(シレナシジミ)は身をオオタニワタリの新芽と混ぜ、油で炒める。アンサンガヤー(カニ)はおつゆに、サクラエビはゆがいて乾燥させ、野菜と炒めて食べる。そのほかに魚やウナギなどを取って料理して食べた。マングローブ林の管理利用伐採方法は小規模の皆伐や適度の抜き切りが基本だったようである。必要な利用可能なものだけを切って使う。老木や枯れ木を優先的に切り、適当に母樹を残して間引きをする。これといった利用上の取り決めがあったわけではなく、各人が長年の伝統的な生活の知恵にもとづいて、資源の再生する範囲内でうまく管理し利用していた。
著者
宮崎 哲次 井濱 容子
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では減圧障害の診断基準を確立することを目的とした.非肥満ラットと肥満ラットを用いて生前減圧群(AD)死後減圧群(PD)対照群の3群に分け,それぞれの群における血管内気泡と組織学的所見を比較した.特に肺の気腫性変化は画像処理ソフトを用いて定量評価した.血管内気泡はADとPD両方に確認された.AD群では,高圧負荷時間とともに血管内気泡と肺の気腫性変化が高度になり,死亡群ならびに肥満ラットにおいて変化がより著明となった.本研究では肺の気腫性変化の定量評価によって生前減圧と死後減圧を鑑別できる可能性を示した.本結果は,実際に減圧障害を含むダイビング関連死亡の剖検診断に役立つと考えている.
著者
篠原 武夫
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.309-322, 1971-12-01

1)森林資源 林型一気候条件からみた世界の林型は, 針葉樹林, 温帯広葉樹林, 熱帯広葉樹林の3つに分けられている。針葉樹林の95%は先進地域の北半球にあり, 温帯広葉樹林も北半球に偏在し, 熱帯広葉樹林は低開発地域の南アメリカと北アメリカに集中している。また別の分類によると亜寒帯針葉林, 温帯混交林, 温暖温帯湿林, 赤道雨林, 熱帯落樹湿林, 乾燥林の6つの林型がある。面積-世界の林地面積は約43億haで, 土地面積に対する森林率は30%である。森林割合を100%とすると, 先進地域に53%, 低開発地域に47%がある。個々の地域ごとにみると, 南アメリカ21%, ソ連19%, 北アメリカ18%, アフリカ18%, アジア13%,その他11%となっている。林相-世界の針・広葉樹の合計面積は約25億ha, そのうち針葉約9億ha, 広葉15億ha, 混交1億haとなり, 広葉樹が最も多い。推定による針・広葉樹面積は約37億haで, そのうち針葉樹は約12億ha, その主要分布地は北半球の温帯にあって, ソ連と北アメリカの先進地域で80%以上に達している。広葉樹は25億ha, その4分の3は低開発地域に散在し, 主に南アメリカとアフリカにある。蓄積-森林総蓄積は2,380億m^3,うち針葉1,141億m^3,広葉1,239億m^3となり, 広葉樹の蓄積が多い。蓄積の分布はソ連33%, 南アメリカ33%, 北アメリカ18%となり, これら3地域で84%にも達している。アジア, アフリカ, 南アメリカを合せても16%にしかならず, その原因は未調査・未報告の森林が多いためであるとされる。推定による世界の森林蓄積は3,400億m^3,うち針葉1,350億m^3,広葉2,050億m^3となっている。ha当りの蓄積は一般に針葉樹が高い。2)森林開発 採取-1960∿62年の年平均伐採量は約19億m^2,うち用材10億m^3,薪炭材9億m^3である。先進地域の伐採量は11億m^3で, その84%は針葉樹である。残余の8億m^3は低開発地域でなされ, その67%は広葉樹である。用材の75%が針葉樹からなり, 薪炭材81%は広葉樹で占められている。そして用材の83%が先進地域, 薪炭材の71%は低開発地域で生産されている。先進地域の用材粗見積は約9億m^3で, 低開発地域は1億m^3にすぎない。このように先進・低開発地域間の採取開発はきわめて不均等である。今日, 世界各地で人口増加に伴う木材需要の増大により森林資源不足の危機がさけばれつつある。そこでこの解決策としてすぐれた林業政策による更新計画や豊富な熱帯森林資源の高度利用などがとりあげられている。また近年では森林伐採の急激な進展から, 森林の保全的機能が強調され世界各地で自然保護の声が高まりつつある。つぎに各地域の採取的開発の状況をより詳しくみると, 先進地域のヨーロツパ, 北アメリカ, ソ連, 日本などの森林は今日まで経済的に開発され, 森林の利用は活発である。ヨーロツパでは針葉樹の成熟林はほとんど伐採され不良木が多いという。ソ連では広大な成熟林を有し政府の伐採計画にもとずいて伐出されている。米国の伐採量は増産の傾向にあり, 伐採木も原生林から第2次林に移行しつつある。カナダは現在未開発の森林が非常に多い。日本は年々の木材需要の増大で木材危機にある。ところが低開発地域の採取的開発はおくれている。南アメリカの豊富な森林は地理的原因で開発困難にあるのが多く, そのためユーカリ造林などが試みられている。西アフリカの伐採量の多い熱帯降雨林は, いずれ生産減少するといわれる。だがその他のアフリカ地域では保存林が多いので多量の生産が期待されている。ところによっては造林問題の発生しているところもある。東南アジアでは豊富な熱帯林が多く, 近年採取的開発が急速に活発化し, 最近では造林問題まで起っている。太平洋地域を除く地域では需要の増大で深刻な木材不足にある。終りに1961年の工業用材の過不足状況を述べると, たいていの先進・低開発地域が需要に対して供給不足にある。このことは日本のごときは一層深刻で最近ではパルプ用材確保のために南方地域での造林を計画している。育成-今日木材資源の減少問題は世界的傾向となり, それで世界の各地域では人工造林が着々と進められつつある。世界の人工林の大部分は北部温帯に属する先進地域の国々にある。公表国の人工林面積は約3,400万ha, 未公表国のを含めると約8,100万haとなっている。人工林の主要国面積を列記すると, 中国(本土)約3,000万ha, ソ連約1,100万ha, 米国約1,000万ha, 日本800万haとなり, これら国々の植栽樹種は, ほとんど針葉樹である。中国とソ連で世界の約半分を占めているが, その数字は推定による。公表国に広く植栽されている樹種は針葉樹であり, それは造林地の70%に達している。ヨーロツパの北部地方では広葉樹から針葉樹への林種転換をして森林の経済的価値を高める努力がはらわれている。南部地方では造林地が多く, 樹種はたいてい早成のポプラである。米国では早成のパインが植栽されている。日本では針葉樹の造林が推進され
著者
幸喜 善福
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.176-183, 1970-12-01

1)本調査は, 沖縄の海岸付近に生育している樹木はどの程度の塩分を付着するかを知る目的でおこなった。2)今回は, 南部一帯と久米島仲里村の海岸近くに生育しているモクマオウ(Casuarina equisetifolia J. et G. Forst)とリュウキュウマツ(Pinus luchuensis Mayr)について調査し, 1969年11月7日から12月30日までの間におこなった。3)付着塩分量の滴定はMohr法によって, 葉の直径は顕微鏡で測定した。4)細枝葉の単位表面積当り付着塩分量は, モクマオウが5.917×(10)^<-2>mg/(cm)^2で, リュウキュウマツが4.748×(10)^<-2>mg/(cm)^2であった。5)付着塩分量は, 主に風向, 風速および波高によって支配され, 地形や季節によっても差異を生じるものと考えられる。6)単位表面積当りの付着塩分量は, 同じ地域で, 同じ樹種ならば汀線から内陸へ進むにつれて減少する。
著者
石崎 博志
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

今年度はポーランドのクラクフ、フランスのパリにて中国の字書の欧州の所蔵状況などを調査し、京都、東京にて関連する漢語資料の調査を行った。そして、来華宣教師および在欧の中国学者がどのような中国の字書を参照していたのか、また中国の字書が欧人の編纂した辞書にどの程度反映されているのかを考察し、口頭発表を行ったのち、論文を発表した。この研究で扱った辞書は『西儒耳目資』、"海篇類"の字書、『字彙』、『正字通』、『諧聲品字箋』、『五方元音』で、以下の結果を得た。"海篇類"の字書については欧州各地に数多くの所蔵がみられ、宣教師やヨーロッパ人学者もそれらの書名を引用するものの、具体的にそれらをベースに編纂された辞書はみあたらない。『字彙』『正字通』も欧州各国に伝わっているが、殆どの場合字彙の筆画検字法の導入に止まり、字書本体を使用した事例は挫折に終わっている。『品字箋』については、Antonio Diazが1704年にVocabulario Hai xing phin tsu tsienを著すが、その序文に『品字箋』の韻分類を示すも、本体は宣教師による辞書を引き写したものとなっている。『五方元音』とラテン語による"Vocabularium Sinico-Latinum juxta. Ou Fang Iuen In."については、発音体系に若干の齟齬があるが、辞書本体の語釈部分については『五方元音』の反映はみられない。
著者
赤嶺 依子
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

沖縄の老人福祉施設における高齢者の性に関わる問題についての対応を検討するための基礎資料を作成する事を最終目的として4つの研究課題に取り組んだ。その結果、保健学科学生を対象にした第1の研究では、男子学生、年齢の高い学生、看護コース学生、性体験のある学生の方がそうでない学生に比べ、高齢者の性に関する知識が多く、より積極的態度を示した。特別養護老人ホームのケアスタッフを対象にした第2の研究では、看護師は准看護師や介護士に比べ、高齢者の性に関する学習経験があるケアスタッフはそうでないスタッフに比べ、高齢者の性に対して肯定的イメージをもっていることが明らかになった。また、ケアスタッフにおける高齢者の性に関する知識、態度、イメージおよびそれらの相互関連を検討した第3の研究では、高齢者の性に関する学習経験がある者はない者に比べ、それに関する知識量が有意に多く、それに対する積極的態度を示し、肯定的イメージをもっていた。高齢者の性に関する知識量と積極的態度、知識量と肯定的イメージ、積極的態度と肯定的イメージの間にそれぞれ有意な関連性を認めた。最後に、高齢者の性に対する沖縄県老人福祉施設の認識と対応の実態調査の結果は、全国調査とほぼ同様であり、高齢者の性は肯定的に認識されていた。充実した性はQOL向上に役立つとし、性に関わる問題には高齢者の意思を尊重するなど理解ある対応が示された。しかし、性に関わる問題の発生率が全国に比べ若干高くなっている中にあって、高齢者の性の問題に対する教育や相談システムはまだ十分に整備されておらず、高齢者の性の問題に対しどのように取り組むべきか、具体的な検討をする段階にはまだ至っていないのが現状である。以上の結果から、高齢者看護および介護の専門教育現場においては性教育内容の検討と高齢者福祉施設においては高齢者の性の問題に対する相談システムの整備等検討していく必要性が示唆された。
著者
徐 小牛 榎木 勉 渡嘉敷 義浩 平田 永二
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.195-208, 1998-12-01
被引用文献数
2

沖縄本島北部の琉球大学農学部附属与那演習林で, 天然生常緑広葉樹林のリターフォール量とそれによる養分還元量の季節変化を, 1996年5月から1998年2月までの2年間にわたって調べた結果, 以下のことが明らかになった。年間のリターフォール量は, 一年目には7328&acd;12700 kg ha^<-1>, 二年目に5577&acd;8073 kg ha^<-1>で, 年間の差が大きかった。これは, 台風の影響によるものと思われる。リターの内訳をみると, 落葉量, 落枝量, 生殖器官の落下量およびその他の平均割合が, それぞれ63.7%, 28.2%, 1.4%, 6.7%となった。リターフォールの年間量の平均値と林分構造との関係をみると, 平均直径, 平均樹高, ヘクタール当たり本数及び材積とは比較的高い相関が認められたが, ヘクタール当たり断面積との間には相関がなかった。リターフォールによる年間養分還元量は, 窒素61.3&acd;128.2 kg ha^<-1>, リン2.8&acd;6.0 kg ha^<-1>, カリウム20.8&acd;44.5 kg ha^<-1>, カルシウム40.0&acd;117.9 kg ha^<-1>, マグネシウム13.3&acd;28.3 kg ha^<-1>, いおう7.0&acd;14.6 kg ha^<-1>, ナトリウム8.4&acd;17.2 kg ha^<-1>, アルミニウム8.6&acd;16.6 kg ha^<-1>, マンガン2.6&acd;5.4 kg ha^<-1>, 鉄0.6&acd;1.4 kg ha^<-1>であった。しかし, 微量元素の銅, 亜鉛, モリブデン, コバルト及びホウ素の還元量は極めて少なかった。また, 養分還元量は8月に最も多く, 年間量の19.3%&acd;38.3%を占め, 1月には最も少なくて, 僅か年間量の1.2%&acd;2.0%であった。養分還元量は3月から8月までの間に集中し, この6か月間で年間総量の70%以上を占めた。リターフォールの養分含有率はプロット間に違いがみられたが, これは立地条件の違いのほかに樹種構成の変化とも関係しているものと思われる。