著者
宜保 清一
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.183-272, 1979-12-11
被引用文献数
3

残留強度を求めるには, セン断破壊を生じた後の大変位に対するセン断抵抗を測定できる試験が必要とされる。この範ちゅうに入る試験方法や装置がSkemptonやBishop等によって提唱されているが, 結果の解釈や装置になお多くの問題がある。それゆえ, 著者は今までの研究を基礎にして次の二つの手法を考えた。(1)完全に形成されたすべり面に沿ってセン断移動がおこるのであれば, 平衡状態のもとで発揮される応力はヒズミの大きさにかかわらずある一定値を示すはずである。この条件を満足する試験方法として, 予想セン断角で切り離された上下供試体と, 上部供試体の側方移動を可能にする圧縮セン断機構(BBピストン, 3-2-1参照)を用いて三軸圧縮試験を行ない, その破壊面における応力解析から残留強度を求める。(2)過圧密粘土では, 応力履歴によってτ&acd;ε曲線が種々変化し, 特にピークの位置とその後の曲線の形状が残留強度の大きさを左右していることに着眼して, τ&acd;ε曲線を式化し, その利用を試みる。なお, (2)においてはτ&acd;ε曲線が重要となってくるので, 過圧密比が変化する場合τ&acd;ε曲線が如何なる特性を示すかについて実験研究を行うと同時にτ&acd;σ特性についても考察を加えた。また沖縄における農地保全上, 重要な課題となる第三紀の島尻層泥岩(過圧密粘土)斜面の安定問題には未解明な点が多いため, 安定解析に進行性破壊や完全軟化の概念の導入を考え, Skempton法を用いて軟化泥岩の残留強度を求めた。そして実際の地すべり事例の安定解析に適用して, 地すべり機構解明の一助にした。まず, 一般的なSkemptonの試験法を用いて島尻層軟化泥岩の残留強度定数を求めた(2-2)。島尻層泥岩でみられる破壊面には鏡肌が形成されており, 残留強度に達していることがうかがえる。しかし泥岩について鏡肌が認められるほどの変位を与えるセン断試験はいままで行なわれておらず, 残留強度に関する知見は皆無である。したがって, すべり面付近の新鮮軟化泥岩と完全軟化粘土, 自然分離面, および作成分離面についてSkempton法による長期繰返しセン断試験を行ない, 残留強度やブリトル指数を求めた。新鮮軟化泥岩のピーク強度定数はC_<df>=1.20&acd;1.55kg/cm^2,φ_<df>=19&acd;22°, 同一の事前セン断面における残留強度定数はC_dr=0,φ_<dr>=17&acd;19°の範囲にある。さらにセン断破壊面が十分発達した自然分離面ではC_<dr>=0,φ_<dr>=17°, 作成分離面ではC_<dr>=0,φ_<dr>=15°となる。完全軟化粘土の場合, C_<Nf>=C_<Nr>=0は言うまでもないが, φ_<Nf>=23°, φ_<Nr>=19°は新鮮軟化泥岩や分離面のφ_<dr>よりも大きい。軟化泥岩のブリトル指数(I_B)は, σ'_n=1&acd;5kg/cm^2の応力範囲でI_B=80&acd;50%となる。またφ'_r&acd;粘土分の関係から島尻層泥岩はOxford Clay, Jari Jakfield, London Clayの過圧密粘土と類似していることが明らかになった。つづいて, τ&acd;ε特性を用いて残留強度を求める著者の手法について述べた(2-3)。すなわち, 長期セン断試験結果を式化し, その最大値および最終値を, それぞれピーク強度, 残留強度とみなすものである。これには排水条件を満足する緩速なセン断強度が要求される。しかし, 急速セン断結果(非排水)から残留強度を推定する場合はτ&acd;ε曲線の最大値と最終値を時間効果で補正し求めることができる(2-3-3)これらの結果をSkempton法による試験と対比させた。すなわちτ&acd;ε曲線を利用する手法は, Skempton法よりσ=0.1&acd;0.7kg/cm^2の範囲において1&acd;17%程度大きめの残留強度が与えられるが, 作成分離面により求める場合と同様, 短時間に残留強度をえようとする場合有効な方法といえよう。一面セン断試験によるSkempton法に対し, 著者は三軸圧縮試験による残留強度決定法を提案した(3)。その試験における圧縮機構は, 圧縮時に上部供試体が作成セン断面に沿って滑動できるようにBBピストンを通じて負荷するものであり, 残留強度を計算するための式は破壊面の応力解析によって導びいた。すなわち[numerical formula](3-2-18)式のτ^^^-(η)は, BBピストンのもとで上下供試体が相対的なすべり変位を起こすときに軸圧が偏心荷重として作用することによって実際にすべり面に生じるセン断応力(3-2-12)平均値で与えられ, 有効セン断面積(3-2-21)とゴムスリーブの拘束による軸差応力の増分(3-2-31)が考慮されている。そして完全に形成されたすべり面, すなわち作成セン断面に沿うセン断移動において, 定常状態に入った後に発揮される応力はヒズミの大きさにかかわらず一定値を示すので, τ^^^-(η)&acd;ε関係においてdτ^^^-(η)/dε=0になったときのτ^^^-(η)値を残留強度τ_rと考えればよい。この手法を鳥栖試料に適用した結果, C'_f=0.569kg/cm^2,φ'_f=23°50
著者
Todoriki Hidemi Willcox D. Craig Willcox Bradley J.
出版者
琉球大学
雑誌
The Okinawan journal of American studies (ISSN:13491032)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.52-61, 2004
被引用文献数
2

Life expectancy for men in Okinawa has fallen sharply relative to other prefectures of Japan and although at present women still retain their lead in Okinawa, if present trends continue, they too will fall. The nutrition transition in Okinawa with regards to increased fat intake and increased bodyweight (i. e. schoolchildren population), may be related to socio-political, socio-economic and socio-cultural changes that were set in motion either directly or indirectly during U.S. administration beginning in 1945.
著者
小田 一幸 仲宗根 平男
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.343-353, 1980-11-29

樹冠の生長と木部形成の間には密接な関係があり, 樹幹での木部形成を理解するためには, シュートの生長と発達について知る必要がある。ここでは, 沖縄本島に生育しているリュウキュウマツを対象に, シュートおよび針葉の伸長パターンについて述べ, 芽の形成過程, シュート頂の形態, 伸長期の観察結果を報告した。1.シュートおよび針葉の伸長パターンをそれぞれFig.1とFig.2に示した。2.芽の形成は2月から始まり, 2月から6月にかけてはえき芽をつくらないりん片葉だけが形成された。えき芽をつくるりん片葉の形成は7月から始まり, 7月から12月にかけての期間に短枝の原基が, 翌1月に長枝の原基が形成された。したがって, 芽の形成期は2月から1月までで, 明らかな休止期は認められなかった。3.シュート頂の形態は芽の形成過程の各段階に応じて変化し, シュート頂は芽の形成の最盛期には突出したドーム状となり, 直径に対する高さの比は0.42&acd;0.45であるが, 緩慢な時期には平らなドーム状となり, その比は0.15&acd;0.18に減少した。4.シュートの伸長期は9月から10月と2月下旬から5月上旬の2回認められ, 9月から10月にかけての期間にはえき芽を持たないりん片葉の部分が伸長し, 2月下旬から5月上旬にかけての期間にはえき芽を持つりん片葉の部分が伸長した。
著者
仲宗根 洋子
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.51-55, 1984-11-19

登熟甘蔗茎には, パラニトロフェニルリン酸を加水分解する酸性ホスファターゼが存在することを確認した。蔗汁より, 硫安塩析したのちに酸処理した酵素タンパク画分を, ホスファターゼ酵素標品として用いその性質をしらべた。本酵素は至適pHを5.5にもつ酸性ホスファターゼであった。他の植物起源の酸性ホスファターゼとことなって, 本酵素は1mMのEDTAやカルシウムイオンによりほとんど活性を失なった。本酵素は1mMの水銀イオンおよびフッ素イオンの阻害をうけたが, 銅イオンによっては全く阻害されなかった。また, 至適反応温度は50℃にあって, 10分間保持の40℃までは安定であった。
著者
友利 知子 金城 須美子
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.493-503, 1970-12-01

1穀類の支出と収入要因との関係をみると穀類の支出(F)=6.992+0.0035I(収入)となり, 収入が$10.00増すごとに$0.035の割で支出し, 米, パン, 麺の順で増加する。これは, 野菜や蛋白質食品に比べるとはるかに小さい。2家族人数との関係をみると, 穀類の支出(F)=1.5324+1.26705N(家族数)となり, 家族人数が1人増えると$1.27の割で支出し, 収入要因より穀類に与える影響は大きく, なかでも米, 麺, パンの順に増える。3穀類の支出金額ならびに購入数量構成比についてみると, 1人1日当り, 穀類への支出金額は約$0.06でそのうち, 77%を米に9%をパン, 8%を麺に支出し, 小麦粉及び小麦加工品, 米の加工品, その他は僅かであった。又穀類の1人1日当り購入数量は265gでその構成は米が81%(216g)麺9%(24g), パン7%(18g)で小麦粉や, 小麦加工品, その他は少なく, 全体の3%(7g)程度であった。4主食の構成と調理法をみると, 米が多く, 1日平均の米食率は74%で, パン食が14%, 麺食率12%であった。朝, 昼, 晩を比較してみると, 米食は晩が最も多く, パン食は, 朝昼, 麺食は昼に多かった。調理法をみると, 米は米飯が多く, すし, 焼めしなどの調理法は少なかった。パンは朝食, 昼食とも, トーストが多く, サンドイッチは案外少ない。その他, 菓子パンが比較的多い。乾麺ではラーメンが最も多く, 沖縄でのインスタントラーメンの普及はかなり高いと思われ, 朝からラーメンを食している家庭もかなりある。そばも焼きそば, 汁そばの調理法が多く, これも意外と朝に多くみられた。その他, ソーメンは汁もの, マカロニーは夕食にサラダとして用いられている。茹めんの中では, 沖縄そばが多く, 調理法は汁そばが多く朝食にもみられる。昼食には焼そばが多く, うどんやスパゲッティーは大変少ない。これまで, 数回にわたって, 沖縄における主な食品(野菜, 蛋白質食品, 穀類)の消費構造を統計庁が行っている家計調査の原票をもとに, 1)各階級における支出金額と1人1日当り支出金額および支出構成比2)回帰線による支出の傾向的変動, 3)その支出弾力性より考察して下記のような結果を得た。[table]これより, 沖縄におけるそれらの収入弾力性は日本より遙かに小さく, 米国なみのところに来るのではないかと思われるが, 沖縄の場合は別の考察が必要となってくる。これは, 沖縄の住民栄養摂取状態や本研究における1人1日当り購入数量, ならびに金額からみてもうなづけることで, 決してアメリカのような満ち足りた食生活をした上での数字でなく, 沖縄の人々の生活意識や根強い食習慣が消費支出の伸びを停滞させ, 食生活の立ちおくれをもたらしているのではないかと考える。
著者
等々力 英美 大屋 祐輔 高倉 実 大角 玉樹 青木 一雄 佐々木 敏 勝亦 百合子
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

沖縄野菜を主体とした沖縄型食事介入による 1-2 年間の無作為割付比較試験を行った。 対象者は横浜東京在と沖縄在住の 40-60 歳代夫婦、合計 61 1 名であった。伝統的沖縄食事パターンによる短期の介入の後に、継続する情報介入を行うことで、血圧の減少が持続していた。薄味の食事摂取による集中的な教育効果と、情報介入による長期の働きかけの組み合わせは、減塩を含めた食事指導の有効なツールの1つになりうると考えられた。
著者
本郷 宙軌
出版者
琉球大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は次の3つの計画から構成されている.計画1:過去のサンゴ礁生態系の復元(最終氷期以降のサンゴ礁試料を用いて,過去のサンゴ礁生態系を復元する.とくに,サンゴ礁生態系の成立維持に関わった重要な生物(以下,鍵種)を発見する.).計画2:現在のサンゴ礁生態系の評価(過去100年間を対象に,地球温暖化と人為影響を受けたサンゴ礁生態系の現状評価を行う.).計画3:将来のサンゴ礁生態系の予測(将来の地球温暖化と人為影響下におけるサンゴ礁生態系の予測を行う.).・計画1の実施状況:南西太平洋におけるサンゴ礁生態系の鍵種発見についての成果を国際誌に公表した.また,西インド洋におけるサンゴ礁生態系の鍵種発見についての成果をまとめた.さらに,これまで進めてきた3つの海域(北西太平洋と南西太平洋,インド洋)の鍵種の生物地理が明らかとなったため,国際誌に投稿した.・計画2の実施状況:沖縄県石垣島のサンゴ礁生態系を対象に現状評価を行なった.過去15年間のサンゴの被度の低下が,高水温と頻繁に来襲した台風による影響であることが明らかとなった.また,人間活動に伴う陸域からの赤土流出も影響していることも明らかとなった.この成果は国際誌に公表した.・計画3の実施状況:琉球列島(沖縄本島と石垣島,久米島,奄美大島,徳之島)のサンゴ礁生態系を対象に将来予測をおこなった.石垣島を対象とした例では,将来の海面上昇と台風の強度の増大に注目したところ,鍵種が減少している西海岸では今後,サンゴ礁生態系の成立が困難になる可能性が高いことが明らかとなった.この成果は国際誌投稿に向けて準備中である.
著者
川上 麻世
出版者
琉球大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

【研究目的】健康な勤労者では、仕事による活動や緊張状態が続くことから、眠気の自覚が少なく、睡眠不足の蓄積によってもたらされる作業効率の低下を自覚していない可能性もある。本研究では勤労者を対象に、検査値から得られる“客観的な眠気”ならびに、質問票より得られた“主観的な眠気”も合わせて解析し、眠気が脳機能に及ぼす影響を解析することを目的とした。【研究方法】本研究参加の同意が得られた勤労者26名(男性10名、女性16名)を解析対象とした。昼間の眠気の調査には「エプワス眠気尺度日本語版」、検査時の眠気の調査には「カロリンスカ眠気尺度」を使用した。認知機能の調査には「注意機能スクリーニング検査 : D-CAT」を使用した。客観的な眠気の評価として短時間ポリソムノグラフィ検査を行って入眠までの睡眠潜時を測定し、また、「精神運動覚醒検査 : PVT」では反応時間の測定を行った。これらと認知機能との関連を評価し、勤務や睡眠習慣との関連を統計学的に解析した。【研究成果と考察】対象者の年齢、勤務時間、睡眠時間、エプワススコアはそれぞれ33.7±12.2歳、8.0±0.6時間、6.2±1.0時間、8.7±3.5点(平均±標準偏差)であった。睡眠潜時は3.5±2.0分(平均±標準偏差)で、すべての対象者が10分以内に入眠し、就寝時刻が遅い者ほど有意に睡眠潜時が短かった(β=-0.18, p<0.05)。認知機能との相関では、検査時のカロリンスカ眠気尺度が高いほどD-CATでの見落とし率が高かった(β=-2.63, p<0.05)。エプワススコアでの眠気がある群(11点以上)と眠気がない群(10点以下)との比較では、睡眠潜時もPVTも差を認めなかった。眠気の自覚がある、なしに関わらず入眠していることから、客観的な眠気と主観的な眠気が乖離していることが示された。本研究では解析症例数が充分でない事から、眠気と認知機能との相関について確定的なエビデンスは得られなかったが、今後、交代制勤務従事者や過重労働従事者を対象に含めた、より大規模な検討が必要と思われる。
著者
堀 勝彦 桑原 史郎 石澤 末三 土居 潤子 山田 克宣
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、経済環境の変化がもたらす技術革新(および経済成長)と企業退出への影響を分析することを目的として、企業の「市場への参入→生産活動と技術開発→市場からの退出」というライフサイクルを明示的に導入した経済成長モデルを構築した。この枠組みの下で、新技術を開発した企業の参入が直接既存企業の退出を意味する従来の見方では捉えることができない、より多様で複雑な技術開発と企業退出の関係を示すことができた。
著者
外間 ゆき 東盛 キヨ子 金城 須美子 桂 正子 宮城 節子 尚 弘子 福田 亘博 知念 功 玉那覇 直
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1985

1.研究目的 昭和60年ー63年度の4年間、沖縄の長寿者の食生活と生活状況について聞き取り調査を行ない、その利用食品の中から特徴のあるものの食品分析と動物実験による生理的効果を検証して、長寿と食生活との関係を考察することを目的とした。2.方法 (1)聞き取り調査は80歳又は85歳以上、総数168人、本部町・与那城村・知念村・那霸市・粟国村・伊江村・伊是名村の7地区で家族構成、日常生活、食生活、栄養素・食品摂取、身体状況について行った。(2)食品分析は豚肉、海藻、味噌の一般成分、微量成分について行った。(3)動物実験は豚肉料理、海藻、茶を飼料として脂質代謝への影響をみた。3.結果 沖縄の長寿者達は転居が殆んどなく、持ち家率が95%と高く三世代同居が多く、家族にも長寿者が多かった。日常生活においては睡眠を充分とり、軽労又は運動を積極的に継続し、精神的なゆとりを持つよう心がけ、食事は一日三食、腹八分を心がけ、過度の飲酒、喫煙をつつしんでいた。栄養素摂取率では所要量に対し、エネルギーは80ー86%、たんぱく質は73ー81%でビタミンAとビタミンCは100%を超えて摂取していた。食品群別摂取量は穀類、野菜類、大豆製品、魚介類の順に多かった。穀類エネルギー比は50ー53%で脂肪エネルギー比は25ー26%であった。豚肉料理志向は強い。ゆでこぼし、あく取りを行う長時間加熱調理によって豚肉の脂質、コレステロール量は減少した。脂肪酸組成はパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸が主であった。動物実験により"アシティビチ","中身の吸物"には脂質代謝改善効果のあることがわかった。ひとえぐさはβーカロチン、ビタミンCを含み抗酸化性が期待され、おごのりには脂質代謝改善効果が期待される。そら豆及びそてつ味噌のアミノ酸組成は普通味噌に比べて劣らなかった。香片茶にも脂質代謝改善効果が期待される結果を得た。
著者
瀬名波 出 小西 照子 平良 東紀 玉城 史郎 藤村 弘行 石川 正明 若井 謙介 大城 尚紀 小田 拓也 平岡 雅規 原田 周作
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では火力発電所や下水処理施設などから排出される二酸化炭素(CO2)を海藻を育てるための資源として再利用した。高濃度の CO2を海水に人工的に溶かし、それを海藻に与えることで藻類の光合成(成長速度)を飛躍的に高めた。通常の海水に比べて約 1.9 倍以上に成長が高まる結果を得た。また海藻を原料としたバイオエタノールの試作を成功させた。このようにCO2を減らし,また CO2を新たな資源として再利用する「炭素回生システム」研究開発を行った。
著者
垣花 シゲ 眞榮城 千夏子 太田 光紀
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

前回の研究課題(基盤(C) 2006-2008)で開発した「途上国を対象とした感染看護教育プログラム」を実践に応用して効果を見た。プログラムの内容は、感染源別院内感染調査と標準予防策の実践である。まず、院内感染調査結果の共有を目的にラオスの協力3施設でセミナーを開催した。今研究の重点教育は、滅菌物品の清潔な保管、手術創の清潔、カテーテル挿入の際の滅菌操作等であった。プログラム評価として実施した質問紙調査および感染兆候を示す患者の減少から感染看護教育プログラムの効果が示唆された。
著者
具志堅 美智子 オムラー 由起子 宇都宮 典子 呉屋 秀憲 糸数 ちえみ 益崎 裕章 辻野 久美子 砂川 博司 与儀 洋和 比嘉 盛丈 喜瀬 道子
出版者
琉球大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究(1)では2型糖尿病者6名を対象としてCGMS装着者にインタビュを行い、グラウンテッド・セオリー・アプローチにて分析した。CGMS装着体験は自らの病と真摯に対峙する機会となり、偏った食行動の気づきを得ていた。気づきは食行動改善のモチベーションを高めていた。研究(2)では20名を対象としてCGMS前後の糖尿病負担感情調査(PAID)の測定にて検証した。PAID総点数の平均はCGMS前25.62±16.2後21.8±14.9で有意差は認められないものの負担感情は軽減傾向にあった。患者背景因子との関連では有職群において「糖尿病の治療」の負担感情が有意に軽減していた(p<0.05)。
著者
宇座 美代子 田場 真由美 儀間 繼子 當山 裕子 小笹 美子 古謝 安子 平良 一彦 宮城 瑛利奈
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、保健師マインド育成プログラムを検討するために保健師・看護師・住民に沖縄の伝統文化に関連した支援内容等を調査した。保健師マインドを育成するためには、保健師のアイデンティティが確立され始める保健師経験3年目に焦点を当て、沖縄の伝統文化に関連した知識や対応技術等の内容を中心に、自らの「経験」を語ることによって「自信」に繋がるプログラム構築の必要性が示唆された。
著者
仲程 昌徳 前城 淳子
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ハワイへ移住した沖縄県人は数多くの琉歌を残している。また、那覇市、浦添市、恩納村等が主催する琉歌大会ではハワイの琉歌作者たちの詠歌が上位を占める。移民の表現を研究する上で、さらには現在の琉歌を研究する上で、ハワイ「琉歌」は見過ごすことの出来ないものである。ハワイで発行されている新聞『ハワイパシフィックプレス』(1977~2004年)、『ハワイ報知』(1980~2006年)に掲載されているハワイ「琉歌」の集成を行い、ハワイ琉歌の特質について明らかにした。
著者
石田 肇 弦本 敏行 分部 哲秋 増田 隆一 米田 穣 太田 博樹 深瀬 均
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

オホーツク文化人集団は 55 歳以上で亡くなる個体がかなり多い。オホーツク文化集団は、船上の活動などが腰椎の関節症性変化発症に関与した。久米島近世集団は、男女とも腰椎の関節症の頻度が高い。四肢では、オホーツク文化人骨では肘関節、膝関節で高い傾向を示した。沖縄縄文時代人は、目と目の間が平たいという特徴がある。成人男性の平均身長が約 153cm と、南低北高の傾向がみえる。北東アジア人の大腿骨骨体上部の形状が扁平形状であることを示した。四肢骨 Fst は頭蓋や歯の値より 2-3 倍大きい。SNP の解析により、アイヌ人と琉球人は一つのクラスターをなし、アイヌ・琉球同系説を支持した。
著者
土肥 直美 篠田 謙一 米田 穣 竹中 正巳 西銘 章 宮城 弘樹 片桐 千亜紀
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、南西諸島先史時代人の地域差の問題に、形質、遺伝子、年代、生業、考古などの側面から総合的な解明を目指した。南西諸島の先史時代人については、先島諸島の保存良好な人骨が未発見という課題が残されているが、本研究ではまず、沖縄諸島を中心に形態変異の解明に取り組んだ。沖縄先史時代人の基礎データ収集と整理が進んだことが成果である。また、石垣島では更新世人骨の他、縄文時代相当期(下田原期)、弥生~平安相当期(無土器期)の人骨が発見され、今後の分析によってさらに地域性の解明が進展する可能性が広がった点は大きな成果である。
著者
神園 幸郎
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

高機能広汎性発達障害児に見られるファンタジーの没入現象について、その特性を明らかにした。第一に、高機能広汎性発達障害児のファンタジーは、対象児に固有なこだわり行動に起源を持つことが明らかになった。第二に、彼らのファンタジーは実体験の再現もしくはそれを基に再構成されたものであり、想像上の存在や架空の物語展開といった虚構性は極めて薄く、その点で定型発達児のファンタジーとは大きく異なることがわかった。
著者
尚 弘子 新垣 博子 外間 ゆき 稲福 盛輝
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.214-232, 1968-10-01

1.1966年12月19日に完全給食実施後の那覇教育区立城西, 城南, 城北小学校の3校で満9才から11才までの4年, 5年生の学童256名(男133名, 女123名)について食餌調査と身体症候調査を併用した栄養調査を行った。2.食餌調査の結果からは, 先に報告した3報と同様, 総摂取食品量が非常に少ないため, 熱量素, 蛋白質等が所要量に較べ摂取%が低くなっていたが, 一方学校給食によるビタミンA, B_1,B_2,C等の強化, ミルクの供給, そして調査日の献立中の豆腐チャンプルーの食品の組合せへの考慮等によりミネラル及びビタミン類の摂取率が高かった。3.栄養比率は比較的よい結果が得られたが, 今後の学童の発育および体位の向上を考慮に入れ, 動蛋比50%, 脂質カロリー20%を目標とした場合, やはり改善の必要がある。4.平均蛋白価は城西, 城南, 城北小学校ともそれぞれ74,72,76で第1制限アミノ酸は含硫アミノ酸となっている。5.学校給食摂取状況では, 3校中, 城西小学校の摂取%が低く, 特にパンの場合は43&acd;45%となっている。3校平均で, パンの摂取%が男子70%女子66%, 豆腐チャンプルーが男子63%女子65%, ミルクが男女とも75%となっている。学童の発育にとって最も大切な動物性蛋白質や, ミネラル, ビタミン類が学童の1日総摂取栄養量に対し, 学校給食から42&acd;66%も供給されているという結果から, 家庭では児童の食事を考慮すると同時に, 今後もっと学校給食への理解を深め, その目的と特徴を充分に生かすよう協力すべきだと思う。一方学校でも学童の学校給食摂取%がもっと高くなるよう工夫と指導が必要であろう。6.体位においては身長では男女及び各年令共, 城西小学校が最もすぐれ, 体重では一部の年令を除いては, 城西小学校が最もよい。又胸囲では男子は城南小学校がすぐれているが女子では各年令によって夫々差異がある。有症者の発現率は城西小学校が最も少く次いで城南, 城北の順となっている。個々の症候別では毛孔性角化症が3校とも顕著な高率を示しているが, その他の症候群の発現率は学校によって差異があるが, 貧血, 口角炎は僅少を示していた。性別では女子は城西小学校に多く発現し, 男子は城南, 城北小学校に発現率が高い傾向がみられた。
著者
守田 昌哉
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

カワスズメ科魚類(以下ミクリッド)の精液中には精しょう糖タンパク質SPP120が存在し、このタンパク質はミクリッドに特徴的な口内受精行動において受精成功に寄与えるタンパク質と考える。一方で、タンガニイカ湖に生息するミクリッドには口内受精行動を示さない種が多くいる。本研究課題では、受精行動の変化とSPP120の分子進化率の関係性を検討した。その結果、数ある口内受精行動を示さない種の多くでは、複数のコドンの正の選択が明らかとなった。以上の結果は、行動の変化が受精成功に関わる遺伝子の進化に影響を及ぼしたことを示すものである。