著者
山本 秀幸 仲嶺 三代美
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ErbB4はシナプス機能に重要な役割を演じている。以前に、我々は、視床下部の神経細胞(GT1-7細胞)を用いて、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)がErbB4をトランスに活性化することを見いだした。さらに、高濃度のGnRH処理ではErbB4が切断されることを見いだした。今回の検討で、ErbB4の活性化には、Gq/11タンパク質、PKC、PKD、FynおよびPYK2が関与することが明らかになった。これに対し、ErbB4の切断には、PKD、FynおよびPYK2は関与しないことが明らかになった。これらの結果は、二つの反応ではPKCの活性化後の分子機構が異なることを示唆している。
著者
外間 ゆき 稲福 盛輝 尚 弘子 新垣 博子
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.324-337, 1969-10-01

1.1967年11月に献立調査, 同年12月に食餌調査, 身体計測・身体症候調査を東風平小学校の満9才から満11才の男女学童について実施した。2.献立調査の結果, 朝食は飯と汁物とおかずの型が多く, 夕食は飯と汁物が多い傾向がみられた。又, 献立の内容では, 汁物では味噌汁がよく食され, 汁物の約85%を占めていた。おかずは炒めものが多く, おかずの52%も占めていた。おやつの内容は小麦粉製品なかでもパンがよくとられていた。3.食餌調査の結果, 栄養別摂状況は脂質とビタミンは充分摂取されていて100%を越すが, その他の, 熱量, 蛋白質, カルシウム, 鉄は不足していた。食品群別摂取状況では, 充分摂取された食品群は一つもない。50%以下の摂取率になっている食品群は, 果物類, 乳類, 豆類, 砂糖類, 卵類, 淡色野菜類である。女子では更に, 魚肉類, 獣鳥肉類, 緑黄色野菜も加わり, 食品総摂取量が男女とも, 摂取めやすに対し52%と低値であった。栄養比率では動蛋比が40%前後であった。栄養素比率では熱量源の第1位が穀類, 蛋白質源も穀類, 脂質源は肉類, カルシウム源は乳類, ビタミンA源はミルク(A強化), ビタミンB_1源は穀類(パンにB_1強化), ビタミンB_2は乳類, ビタミンC源は乳類(C強化)となっていた。蛋白価は男子が80,女子が77であった。又, 一日の栄養素摂取取に対する。学校給食からの栄養素摂取量を比率でみた場合, カルシウム, ビタミンA, ビタミンB_1,ビタミンB_2は50%以上を占めていた。学校給食の給与量に対する摂取率をみると, パンは70%前後, ミルクは84∿97%, おかずは89∿100%であった。4.身体計測・身体症候調査の結果, 体位においては男子の発育は良好で, 全琉の体位に比して優れているが, 女子は僅かならが劣っている。身体症候発現率の有症者は調査人員の約1/4を占め, 特に毛孔性角化症が著明に多く, 他の有症率は少い。性別では男子が有症者が多い傾向であった。準都市地域学童との体位身体症候発現率の差異をみると男子では身長, 体重ともにまさっているが女子ではやゝ劣った傾向がみられた。
著者
石原 昌英 HEINRICH Patrick
出版者
琉球大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

ハインリヒは与那国島における危機言語記録保存のためのフィールドワークを2回実施した。1回目は祖納集落において農業と祭に関する言語生態、2回目は同集落において自然に関する言語生態、久部良集落において漁業に関する言語生態を記録した。また、ハインリヒ・石原で記録されたビデオを分析し、それに基づいてハインリヒが祖納集落に於いて研究協力者(インフォーマント)と一緒に編集・注釈作業を行った。記録保存はほぼ終了し、マックスプランク研究所での公開に向けての編集・注釈作業を本格化させている。これらの作業と並行して、石原とハインリヒは、与那国島における言語の存続性と危機度に関するアンケート調査を実施した。調査データは、ユネスコの危機言語保護プログラムに関する専門家部会が2003年に提唱した評価基準を参考にハインリヒが分析し、2010年3月5日に東京外国語大学で開催された第2回琉球継承言語研究に関するワークショップでハインリヒが「与那国語の存続性と危機度」を発表した。なお、石原は「国頭譜の存続性と危機度」を発表した。ハインリヒと石原は言語生態、言語政策、危機言語に関する発表を複数の学会・研究会等で行った。ハインリヒが杉田優子と共著で『社会言語科学』第11巻第2号(2009年2月)に発表した「危機言語記録保存と言語復興の統合へ向けて」が社会言語科学会の徳川宗賢賞優秀賞を受賞し、2010年3月の同学会で受賞記念講演を行った。石原・ハインリヒはこれまでの研究成果を地域に還元する目的でワークショップ「しまくとぅばと経済」を企画し、言語生態を維持するために地域言語を積極的に活用する方策を議論する機会を提供した。
著者
眞鳥 繁隆
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)の腫瘍化機序を理解するために、PDGFリガンド、PDGF受容体の遺伝子異常を検索した。ほぼ全例でコラーゲン1A1-PDGFB融合が存在しコラーゲン1A2とPDGFBとの遺伝子融合は、我々が発見した1症例のみであった。受容体側の遺伝子異常は病理組織での解析で否定した。免疫染色でPDGF-Bの発現を高頻度で確認しPDGF-Bの発現の検索が他の間葉系腫瘍との鑑別の一助となることを確認できた。隆起性皮膚線維肉腫の腫瘍化機序としては全て、腫瘍細胞自身のPDGFの自己分泌により恒常的なオートクラインあるいはパラクラインにより、腫瘍性の増殖をきたすと結論した。
著者
松本 剛 中村 衛 新城 竜一
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

台湾はフィリピン海プレートの運動に伴い、ルソン弧が東方より衝突することによって、現在の造山運動が引き起こされている。このような、台湾の造山運動・衝突テクトニクスを考察する上で、南西琉球弧がこれに果たす役割を検証することは重要である。そのため、台湾の衝突テクトニクスを解明するための米・台共同研究TAIGER Project(2004-2009)に参加し、2009年に実施されたR/V Marcus G. Langsethで実施された地下構造探査に加えて、EM-122測深機による精密測深データを取得した。また、これまでJAMSTEC船等で1990年以降に実施されて来た精密海底地形調査の結果を集大成し、沖縄トラフから琉球島弧・前弧域・海溝域・西フィリピン海盆北部に至る最新の海底地形図を作成し、それをもとに、当該域のテクトニクスを考察した。南西琉球弧から琉球海溝に至る海域は、次に示す東西方向の4領域に分類することが可能である。最北端の領域は、南岸沖の南落ち斜面に沿って南北方向に発達した海底谷の分布によって特徴付けられる。その南側では、スランプ性地辷り痕が発達し、平坦な前弧海盆へと続いている。更にその南側では、複雑な起伏、急斜面、東西向きのhalf grabenなどの、不規則な地形によって特徴付けられる。海溝域は、幅約40kmにも達する6500-6600mの深さの平坦面である。海溝軸の位置を特定することは難しい。海溝域の平坦面上には4個の海山が見られる。しかし、このような海溝の地形的特徴は、Gagua海嶺の衝突の起こっている123°Eの西側では不明瞭となっている。宮古~八重山域に掛けては、「島弧胴切り」型の正断層が多く発達しており、これらは活断層と認定されている。そのうち、石垣島東方沖の断層については、沖縄トラフの伸張に伴って北方に伝播している(すなわち、活断層の長さが長くなっている)ことが明らかとなった。これらの地形的特徴は、沖縄トラフ西部の伸張と呼応して、123°Eの東側で、海溝が南方のフィリピン海プレート側へ後退していることを示唆している。Gagua海嶺のある123°Eの西側の花東海盆は、その東側の西フィリピン海盆の特徴とは大きく異なる。後者が、拡大痕に相当する地塁・地溝地形とそれを直角に横切る断裂帯が多く発達するのに対して、前者は地形の起伏に乏しい。また、花東海盆の沈み込みが起こっているか否かは明瞭ではない。花東海盆の西端に当たるルソン弧と併せて、同海盆が前弧・背弧域と一体化し、これらの3海域全体が台湾ブロックに衝突している可能性が示唆される。花東海盆の北側前弧域では、明瞭な深発地震面が観察される。しかし、これはユーラシアプレートに対して北西方向に西フィリピン海盆が斜め沈み込みを起こしていることによる深発地震面であると見られる。
著者
松田 祐一 城間 定夫
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.271-280, 1974-12-01

沖縄産フェザー・ミールをブロイラー・ヒナに給与してブロイラー飼料としての価値を調べた。供試した品種は, 白色コーニッシユ×白色ロックのF_1で, 3回に亘り飼育試験を行なった。その結果 : 1.第1回試験では, 標準区(日本飼養標準による配合)は, 動物蛋白質を魚粉のみとした区とフェザー・ミールを前期飼料2%, 後期4%配合した区について発育を調べたが, ヒナの発育はフェザー・ミール配合区が魚粉区よりも良い傾向がみられた。高エネルギー区でも魚粉区を対照区としフェザー・ミールを前期に2%, 後期に5%配合した飼料を試験区として発育を調べたが, 8週齢体重は魚粉区1,909.4g, フェザー・ミール区1,842.5gで魚粉区が67.2gで重かったが有意差はみられなかった。飼料要求率は, 標準区でも, 高エネルギー区でも, フェザー・ミール給与区がやや大きい傾向にあった。2.第2回試験は, 沖縄の最も暑い6月下旬から8月中旬の間に行ない魚粉区を対照区とし, フェザー・ミールを前期後期とも5%配合した区を試験区とし, 発育を比較したが, 餌付後3週間は魚粉区が良く有意差がみられた(P<.01)。4週後は有意差がなく, 8週後の試験終了時にはほとんど体重差がみられなかった。飼料要求率は, フェザー・ミール区がむしろ小さい傾向にあった。3.第3回試験は, フェザー・ミールを前期6.5%, 後期5%配合し飼料の全蛋白質に占めるフェザー・ミール蛋白質の割合を前期24.6%, 後期23.6%とした。4週齢時の発育は, 魚粉区652.9g, フェザー・ミール区583.8gで明らかに有意差がみられた(P<.01)。しかし前期魚粉区飼料を給与したヒナは後期に魚粉区飼料を給与しても, フェザー・ミール区飼料を給与しても両区間に発育の差はみられず, 同様に前期フェザー・ミール区飼料を給与したヒナについても, 後期に魚粉区飼料を給与しても, フェザー・ミール区飼料を給与しても発育に有意差はみられなかったが, 前期魚粉区飼料を給与したヒナと前後期ともフェザー・ミール区飼料を給与したヒナの間には, 8週齢においても有意差(P<.05)がみられ魚粉区が良かった。以上のことからフェザー・ミールは, ブロイラー飼料として前期に5%以下(全蛋白質に対するフェザー・ミール蛋白質20%以下)の配合が適当で, 後期5&acd;8週は, 5%のフェザー・ミールを配合し全蛋白質に対するフェザー・ミール蛋白質24&acd;25%としても良好な発育をなすものと考えられた。なお, ブロイラー・ヒナは, 幼雛時よりも日が経つにつれてフェザー・ミールを良く利用し得るものと考えられる。
著者
緒方 茂樹
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究ではまず、沖縄県教育委員会と連携してえいぶるノートの試作を行った。さらに、宮古圏域における「縦断型ネットワークシステム」への拡充を目指して、定期的な教育相談会と巡回による学校支援・保育所支援を進めた。一方で宮古島における地元の専門家育成を行った。2010年には宮古島市の予算で発達障害児(者)支援室「ゆい」が設置され、先の心理士が専門相談員として採用されたことで、外部からの支援に頼ることなく現地リソースによる支援体制が構築できた。いわゆる「入口」の充実を目的として、児童家庭課と連携した保育所支援を行ったことで支援対象児の早期発見・早期対応が可能となった。
著者
城間 理夫
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.443-457, 1970-12-01

1.この調査は, 沖縄における干ばつの一つの要因としての少雨が, 1年のうちでいつごろ, どの程度の強さで起っているかを統計的に調べたものである。少雨期間の長さは数日程度のものから90日程度のものまでを扱った。なお, この調査のための資料としては, 琉球気象庁が那覇において観測した1891-1968の降雨量の値を使用した。2.この調査によって次のことが明らかになった。(1)夏と秋には, 降水日数は特に著しく少ないわけではないが, 雨の降り方にムラがあり, 時間的配分がよくないために沖縄では特に渇水が起りやすい。(本文中の第1表ないし第3表, 第1図)(2)1週間程度の長さの干天の続く頻度が, 1年を通じてかなり詳しく明らかになった。このような干天の頻度も夏と秋に大きいが, 特に梅雨明けの7月の初めには大きい。しかし, 8月および9月の台風期には干天の頻度が小さくなる。したがって7月にはじまる渇水は中断されて, 8月までには解消されるものが多い。(第2図)(3)かなり長期間(30日ないし90日間)にわたる少雨の頻度は10月-11月に最も大きく, 7月がこれに次ぐ。このことは, 夏に台風が沖縄に接近しなければ, 夏から秋にかけてかなり長期間の干ばつになりやすいことを示す。(第3図)(4)2月から3月にかけては, かなり長期間にわたる少雨の頻度が小さく, 干ばつになるおそれは比較的に少ない。(第3図)(5)沖縄におけるかなり長期間(30日ないし90日間)の干ばつの示数として, 非超過確率雨量, リターンピリオド, および少雨期間との関係が数量的に求められた。(第5表, 第5図)
著者
緒方 茂樹 相川 直幸
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は障害児教育における「音楽を活用した取り組み」をより効果的に行うことを目的として計画されたものである。「音楽を活用した取り組み」を理論的に計画し、さらにその教育効果について科学的に評価するためには、音楽が人間に及ぼす効果や影響について客観的に知る事が不可欠である。初年度は琉球大学内にまず脳波計を軸とした生理学的な指標全般の計測システムを整備した。この琉球大学内に整備した計測機器を用いて今年度も引き続き実験的検討を進め、特に健常者を対象とした基礎実験を継続的に行った。この実験的検討から得られた所見として、音楽鑑賞時の脳波変動には、特に「心理的構え」の相違がきわめて大きな影響を与えていることが明らかとなった。次の段階としては障害児を直接的に対象とする前に「心理的構え」について重点的にデザインされた実験的検討を行うことの重要性を指摘した。そのことによって音楽鑑賞時に生じる意識変動の特異性について、今後さらに詳細な所見が得られるものと考えている。さらに昨年度には学校現場や臨床場面での計測を可能とするために小型の計測機器を導入し、その使用の可能性と有効性を検証した。今年度は解析のためのソフトウェアを導入しながら様々な状況での計測を試みた結果、将来的に学校現場やフィールドにおける有用性を実証することができた。一方、混入雑音が多くみられる障害児からの生理学的指標に関わるデータの分析には、デジタル信号処理を応用したフィルタリングの手法を用いた検討を進めてきた。これまでに265次のFIRデジタルフィルタを用いた広域遮断型の特性が有効であることが明らかとなっている。今年度は従来的なアナログフィルタと移動平均との方法論的な比較を行うことによって具体的な波形変化を示しながらその有効性を明らかとした。
著者
小賀 百樹
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

東シナ海の黒潮流入口における黒潮変動を調べるため,流入口直後に位置する海底電話線を、利用し黒潮流量変動を観測した。約9年分の観測資料に,衛星観測海面高度資料,漂流ブイによる表層流資料等を組み合わせ解析した結果,以下のことが明らかとなった。(1)流入直後の流量変動は,流入直前の台湾東岸沖の中規模渦の影響を強く受ける。暖水渦が存在すると流量が増加し,冷水渦が存在すると減少する。ただし,冷水渦の影響の方が強い。太平洋東方からの中規模渦の到来は不規則であるが,どちらのタイプの渦も年に数個到来し,年の半分くらいの期間は渦の影響を受けている。(2)不規則に到来する渦の効果をならすと季節変動が見られる。大きく「冬季モード」と「夏季モード」が認められる。冬季のルソン沖では黒潮流量が増加するが,ルソン海峡から南シナ海への流出があり,台湾東岸沖では減少傾向にある。さらに,東シナ海流入後の変動は小さくなり季節変動も明瞭でなく,東シナ海の中流以降は独自の変動も見られる。沖縄東方の黒潮への再循環もみられる。夏季は反対にルソン沖の流量は減少し南シナ海への流出もなく,沖縄東方の再循環も見られない。これらの流れの変動は,海上風の分布とも整合性がある。(3)付随して,琉球諸島と台湾を結ぶ定期フェリーによる海面水温の観測,東シナ海の吹送流の資料解析とモデル作成,東シナ海の黒潮影響下にある大気・海洋相互作用に関する資料解析にも取り組んだ。
著者
市井 雅哉
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

大学学部生625名に、現在に影響を与えている過去の出来事、IES-R(改訂版出来事インパクト尺度)、治療希望有無の質問紙を実施した。有効回答は453名(男子、181;女子、264名;不明8名;平均年齢20.2(SD=1.77))で、性被害、近親者の死、交通事故、いじめ等深刻な出来事を報告していた33名をトラウマ群(治療希望は6名)、軽い出来事を報告していた420名を健常群としてt検定を行った結果、合計点と回避・麻痺の因子でトラウマ群が有意に高く、合計点25点以上(184名)でも回避・麻痺の因子でトラウマ群が有意に高かった。性被害を受け複雑性PTSDが疑われる2名のクライエントに対して、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)を用いた治療を行い、治療中の左右の外耳道温、心拍数を継続測定した。IES-R45前後の21歳女子大学生は、幼少期に母親から暴力的なしつけ、兄から性虐待を受けた。EMDR30回でさまざまな記憶の再処理を行い、47回の治療により症状は大きく改善した。さらに、(1)右の温度が左より高い(.25〜.39℃)、(2)左右とも施行後にかけて上昇する(左:.17℃、右:.32℃)、(3)セッションの進行につれ終了時の左の温度が高い傾向がある、(4)認知の妥当性が左右の外耳道温度や心拍数と関連があることがわかった。IES-R43の35歳主婦は、阪神大震災後の不調として、子どもとの分離不安、頭痛、不眠等の症状を訴えた。治療への恐怖感が強く、17セッション目にようやく3回の性被害が語られ、性被害及び義父の実母への暴力の記憶などEMDR11セッションで治療したが、改善が見られないまま39セッションで治療中断となった。(1)右の外耳道温が左より0.25℃高い、(2)心拍数は施行前から後にかけて3拍低下し、(3)成功したセッションでは心拍数が低い(前:10.58;後:12.25の差)ことがわかった。
著者
小田切 忠人
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,数学的な着想が個の知的活動の中でどのように発現するのかということに関心を置きながら,学習活動において子どもはどのように数学的概念を獲得するのか,できるのかということを観察することをねらいとして始めた。ここでは,「答え」の出し方を機械的に覚え込むということでなく,分かること,分かり方が研究の対象になる。その研究の方法として,数と計算の学習に困難を抱える子どもたちに治療的な教育介入を行い,その学習の様子を観察することにした。したがって,ここでの学習活動は,学校のような場における教師の意図的な教育介入のある知的な活動であり,生活や遊びの中で行われる無意識的な学びのことではない。その結果として,本研究での観察は,教師の意図的な教育介入の,求められる有様を,結果として探ることになるものともなった。本研究の成果として,数と計算の学習につまずき,低達成のままであった,学習障害などの発達障害が疑われる子どもたちや知的障害がある子どもたちを含む,数学学習にスペシャル・ニーズのある子どもたちが,基礎的な数概念や計算技能を獲得する学習の過程を,生のデータで記録に残し,それをWEB上で検索可能なデータベースにすることができた(http://plaza4ts.edu.u-ryukyu.ac.jp)。このデータベースは,一冊の報告書に載せきれるものではないほどの大きなものとなった。そして,今なお,治療的な教育介入を継続し,データの蓄積を続けている。最終年度報告書には,データベースの概要と,そのデータベースに収められている学習記録に基づいて進めた研究成果の一部を掲載した。
著者
大城 稔
出版者
琉球大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

○研究目的と方法:リーシュマニア症は、10種類以上の病原性リーシュマニア原虫に起因し、感染原虫種の判別は治療方針の選択に重要である。国内では、沖縄県出身者の多い中南米を含む外国からの輸入感染症として問題となっている。最近我々は、患部組織から原虫cytochrome b遺伝子をPCR増幅し塩基配列を決定することで、原虫種を迅速に判別する方法を世界に先駆けて確立した。本研究では、(1)この方法を用いて中南米諸国の患者の病原原虫種を判別し、その地理分布を把握すること、(2)帰国・入国者が発症した際に病原原虫の種を判別して治療方針決定に役立て、地理的分布との整合性を検証することで中南米からの輸入感染症対策の一助とすることを目的とした。○研究成果:(1)これまでに、アルゼンチンおよびエクアドルでリーシュマニア症の症状を呈した患者のうち、それぞれ18例および14例について患部より原虫cytochrome b遺伝子をPCR増幅により検出し、検出例について塩基配列の決定と、すでに蓄積した10種類以上の病原性原虫標準株の塩基配列との比較による原虫種の解析を終えている。原虫種としては両国ともL.(V.)braziliensisが一位を占めL.(V.)guyanensisがそれに続く頻度を示したが、驚いたことに、これまでWHOのコレクションにもない新種と思われる原虫種が全症例中2割近くに見出された。これはエクアドルで特に多く、L.(V.)braziliensisとL.(V.)guyanensisの中間型とも考えられ、今後の大きな課題である。一方、(2)国内各地から輸入リーシュマニア症疑いの症例が紹介され、関東の症例はL.(L.)mexicanaと診断したが、東海地方の2例は原虫陰性であった。また、イラクに駐屯していた自衛隊員の症例も陰性と診断した。
著者
玉城 陽子
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1.大学在学時に測定・記録した基礎体温(BBT)と頸管粘液の変化について、1983〜1986年度入学学生(1G)105人、1988〜1990年度入学学生(2G)73人、1998-1999年度入学学生(3G)72人計250人ついて比較し、年代的な差異があるのかを明らかにするために分析した。1)排卵と無排卵(V型の一部・VI型)の両方の周期をもつ者は1、2、3Gそれぞれ24.7%、15.7%、33.8%であり、全周期無排卵型であったのは1、2、3Gそれぞれ8.6%、11.4%、12.3%と年代が上がって行くに従い高率になっている。2)黄体機能不全の可能性がある周期がある者は、1、2、3Gそれぞれ27.6%、26.6%、50.0%であり、全て黄体機能不全の可能性がある者は、1、2、3Gそれぞれ46.0%、48.4%、32.8%であった。3)低温水準の平均については、1、2、3グループそれぞれ36.29±0.18、36.33±0.13、36.24±0.17であり3Gが最も低温であった。4)頸管粘液については、牽糸状粘液が排卵日と一致した周期はどの年代も約半数であった。2.現在30代前半〜40代前半である1、2G学生178人のうち現住所が把握できた151人に対し郵送にてアンケートによる追跡調査を行い、返答があった69人(回収率45.7%)について分析した。1)169人中50人(72.5%)が既婚者であり、既婚者中14人(28.0%)が不妊治療の経験者であった。この14人についての学生時のBBTは、無排卵周期が1回でもあった者は50.0%、黄体機能不全の可能性がある周期が1回でもあった者も、50.0%であった。このうちの1人は、学生時より無排卵のため治療していた。2)学生時の生活習慣の振り返りで見てみると、排卵に影響していたのは、ダイエットの経験、飲酒の機会であり、黄体機能に影響していたのは、ダイエットの経験、外食の機会であり、過短・過長月経など周期へ影響したものは、外食の機会、ストレスの有無であった。
著者
平川 守彦
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

「亜熱帯における島嶼型アグロフォレストリーシステムに関する研究」の一環として下記の通りの成果を得た。本研究の実験現場は,今なお,大戦時の不発弾が多数存在するため機械による造成はひじょうに危険である。そのため蹄耕法(不耕起造成)により野草地を利用している。しかし,自生する野草は放牧牛にとって嗜好性が悪く,また,栄養価や再生力も劣るため改善する必要がある。その改善策として,短草型牧草であるセントオーガスチングラス(St.Augustine grass)の導入を試みた。方法は,(1)過放牧後(草高約5cm)(2)火入れ後(3)裸地(地際除草)の区画に30×40cmのセントオーガスチングラス張芝を植え,積算優占度,草量の推移を調査した。その結果,セントオーガスチングラスの積算優占度は,火入れ区において常に70%を維持していたのに対して,裸地区・過放牧区においては低く,20%であった。乾物重は火入れ区,裸地区,過放牧区の順に多かった。火入れ区以外は雑草の占める割合が高かった。以上のことから,火入れ後に張芝を植える方法が,雑草の侵入を防ぎ,セントオーガスチングラスの生育に良い効果をもたらすことがわかった。今後はセントオーガスチングラスの生育を長期間調査し,その牧草の導入が野草地の造成を可能にすることができるかどうかを調べる必要がある。また,アヒルと食肉鶏を利用したウコン畑の雑草防除を比較行動学的に調べた結果,両家禽ともウコンより雑草を好んで採食するため除草作業の一役を担うことがわかった。しかし,アヒルでは休息行動が多くみられ,踏み倒し行動による雑草防除,一方,食肉鶏では,探査行動が多く,つつきによる防除が認められた。
著者
里井 洋一
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

今研究において二つの目標を設定した。一つは一つの爆弾の被害状況がわかる教材をつくることであり、二つめは太平洋地域における爆撃被害の質的、量的状況の分布教材をつくることにある。1、爆弾被害典型教材として「不発弾」教材を開発した。「不発弾」教材は次の三つの教材性をもつ。(1)砲弾や爆弾が不発弾となった時点で、加害者(国家等)の政治的な意図と関係なく地域民衆に潜在的な脅威をあたえること。…潜在性(2)不発弾を地上から一掃しても、地中に半永久的に眠っているということ…永続性(3)不発弾は日本国内はもちろんのこと世界いたるところに存在していること…世界性2、米軍爆撃資料および空襲体験から、第二次世界大戦における太平洋地域被爆弾体験教材を開発した。この教材は次のような三つの性質をもつ。(1)米軍が太平洋地域に落とした爆弾の三分の二は、日本国内でなく日本が侵略した地域に落としたこと。(2)日本への爆弾の絶対多数が都市地域に対する焼夷弾であるのにたいして、侵略地域の爆弾は高性能爆弾が圧倒的に多く、その被爆地域は都市部にかぎらず全領域にひろがっていること。(3)(2)の性質は、日本国内唯一地上戦を体験した沖縄と共通すること。
著者
安田 正昭 山田 剛史 石原 昌信 当山 清善
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.125-134, 1992-12-01

酵素活性及び生酸性のバランスがとれた泡盛麹菌(Aspergillus awamori, Nakazawa IFO 4033)の生産するα-アミラーゼ及びグルコアミラーゼの酵素化学的諸性質を検討し,以下の結果を得た。(1)供試菌株の生産するα-アミラーゼの反応最適pHは4.5&acd;5.5,pH安定性は3.0&acd;6.0の範囲で安定であった。本酵素の反応最適温度は65℃,温度安定性は60℃まで安定であった。(2)供試菌株の生産するグルコアミラーゼの最適pHは5付近(4.3&acd;5.3)で,pH安定性は3.5&acd;6.0の範囲で安定であった。本酵素の反応最適温度は60℃,温度安定性は60℃まで安定であった。(3)供試菌株グルコアミラーゼの米(タイ国産砕米,うるち,もち),馬鈴薯,甘藷,小麦,とうもろこしの糊化デンプンに対する反応性を調べたところ,いずれも可溶性デンプンとほぼ同様の値を示した。(4)供試菌株グルコアミラーゼのタイ国産砕米デンプンに対する加水分解率は反応時間の経過に伴い増大し,反応24時間における値は82%であった。(5)供試菌株の生デンプン(タイ国産砕米)の分解活性の反応最適pHは3.2&acd;3.5であった。(6)供試菌株の各種生デンプン分解活性はウルチ米,タイ国産砕米及びもち米などで高い値を示し,小麦やとうもろこしにも比較的高い値を示した。しかし,生馬鈴薯デンプンに対する分解活性は著しく低い値を示した。
著者
大屋 一弘 渡嘉敷 義浩 高江洲 均 多喜 和彦 西垣 晋
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.165-176, 1976-12-01
被引用文献数
1

沖縄本島南部, 糸満市阿波根および西原村棚原に堆積する典型的な2つの"ジヤーガル"土壌断面を選定し, 各断面をおのおの5層に分け, 土壌断面中の理化学性, 粘土鉱物組成, および水溶性成分の移動・集積について調べた。粘土鉱物組成は主として選択溶解法とX線回折分析法を用い, 水溶性成分は蒸留水の浸出で溶出する成分中Siを比色法, Fe, Ca, Mgを原子吸光法, Na, Kを炎光法を用いておのおの測定した。典型的な"ジヤーガル"とその母材の土壌反応はいずれも弱アルカリ性反応を呈し, 粒径分布はシルト部分や細砂部分の含量が高く, 土性はSiCLあるいはLを示した。また, 有機炭素は1%以下で, CEC25&acd;34me/100gを示し, 置換性塩基中Caは31&acd;39me/100gで最も多量に含まれた。Kは1&acd;3me/100gで最上層と最下層に多く含まれ, Mgは1&acd;4me/100g, Naは1&acd;2me/100gでいずれも上層から下層へ漸次増加した。粘土部分の非晶質成分はジチオナイト可溶成分が4&acd;11%, そのうちFe_2O_3が2&acd;4%含まれ, 0.15Mシュウ酸ナトリウム可溶成分が8&acd;22%含まれた。後者の成分は上層から下層へ量的に漸次減少し, いずれもSiO_2/Al_2O_3分子比が2に近い値を示した。また, 粘土部分の結晶質成分は71&acd;85%含まれ, 上層から下層へ幾分増加した。断面中の鉱物組成は, 全層にモンモリロナイトが主体を占め他にイライト, Al-バーミキュライト, クロライト, カオリナイトがいずれも少量随伴した。一方, シルト部分は著しく多量の石英とごく少量の長石とが全層に含まれ, 両鉱物の他にごく少量のカルサイト, ドロマイト, クリストバライトが付随し, これらの鉱物の存否は各層間で異なった。"ジヤーガル"土壌断面での水溶性成分中Si, Feの溶出量および溶出の型は土壌断面の各層間で異なった。これに対しCa, Mg, K, Naの塩基類は溶出量および溶出の型に土壌断面の各層間でほぼ一定の傾向がみられた。Caは数10PP^m溶出し, 5mの深さの泥灰岩層に著しく多かった。Mg, Naの溶出量は1&acd;3ppmで上層から下層へ漸次増加し, 特にMgは最下層の泥灰岩層では5ppmに達した。Kは2&acd;4ppm溶出し最上層と最下層の泥灰岩に多く, 中間層ではMgとNaの溶出量の間にあった。なお, 連続的に抽出測定される水溶性塩基のMg, K, Naは或る比率をもって置換性部分から放出されるものと思われる。また, Caの大部分は遊離のCaCO_3として存在することが示唆された。
著者
本川 達雄 松野 あきら
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本研究の最大の成果は、カルシウムイオンがキャッチをひきおこすことを強く示唆する結果が、はじめて得られた事である。シカクナマコの体壁を、無刺激でキャッチしていない状態と、高濃度のカリウムイオンを含む人工海水でキャッチ状態にしたものとを、ピロアンチモン酸存在下で固定して、電子顕微鏡で観察した。キャッチしていない状態では、ピロアンチモン酸の沈澱は、2種類の細胞の中に観察された。大きなvacuoleを持った細胞のvacuole中と、0.2-0.6μmの楕円形で電子密度の高い顆粒をたくさん持つ細胞の顆粒の中とである。分析電子顕微鏡(EDAX)の分析により、これらの沈澱はカルシウムを含むことが分かった。一方、顆粒中の沈澱には変化がなかった。以上の結果は、vacuole中からカルシウムが放出されることによりキャッチが引き起こされることを強く示唆しており、キャッチ結合組織の機構を理解する上での、重要な発見といってよい。もう一つの成果は、ヒトデの腕のかたさとその変化を、はじめて定量的に記載し、この変化が、キャッチ結合組織によることをほぼ確実にしたことである。腕のかたさは曲げ試験を行い、梁理論を適用することにより求めた。腕の形態学的研究から、腕の形と断面二次モ-メントを記載する関係式をつくり、これをもとに、たわみ量からかたさ(ヤング率)を産出する式をもとめた。アオヒトデのかたさは、刺激をくわえない状態では8MPaであった。機械刺激により、かたさは3倍に増加した。かたさはイオン環境により大きく変わった。これは、体壁の結合組織がキャッチ結合組織であり、これがかたさの変化を引き起こしていることを示唆する結果である。ヒトデにもキャッチ結合組織の存在することがほぼ確実になった。
著者
中須賀 常雄 馬場 繁幸 伊藤 和昌
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.231-239, 1982-12-01

1.本論は八重山群島西表島船浦湾の海岸林における植生の配列について, 1978年10月および1980年8月に調査・研究したものである。2.本地の海岸林は海浜林, マングローブ林および縁取林の3林型に区分され, これらは地形と対応して更に小区分された。小区分された林型は地形と対応して複雑に配列しているが, 海岸から内陸への基本的な配列パターンは次のとおりである。海浜林(海浜草本帯&roarr;前浜堤低木林&roarr;浜堤低木林&roarr;後浜堤低木林&roarr;堤州低木林)⇒マングローブ林(ヒルギモドキ林&roarr;オヒルギ林&roarr;ヤエヤマヒルギ林&roarr;オヒルギ林)⇒海浜林(浜堤低木林&roarr;浜堤高木林)⇒マングローブ林(オヒルギ林&roarr;ヤエヤマヒルギ林&roarr;ヤエヤマヒルギ・オヒルギ林&roarr;オヒルギ林)⇒縁取林(アダン林)3.各林型の上層構成樹種は海浜林ではテリハクサトベラ, アオガンピ, イソフジ, ハテルマギリ, トベラ, クロヨナ, オオハマボウ, タイワンウオクサギ, ミズガンピ, シマシラキ, テリハボク, ヒメユズリハ, オキナワシャリンバイ, ヤエヤマコクタン, マングローブ林ではヒルギダマシ, ヒルギモドキ, ヤエヤマヒルギ, オヒルギ, 縁取林ではアダン, アコウ, ハマイヌビワ, アカギ, ハスノハギリ, オキナワキョウチクトウ, オオバギ, クロヨナ, サガリバナであった。