著者
新城 郁夫
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

まず、2007年11月に出版した『到来する沖縄 沖縄表象批判論』(インパクト出版会、全246頁)において、本研究の全体像を公刊できたことが、当該研究の最大の成果と言える。この著作に明らかな通り、本研究においては、戦後沖縄文学を、主に次の3点において考察し、その考察を通じて、戦後沖縄文学を総合的視野から把握し、その可能性を広範な表現史的かつ思想的パーススペクティヴにおいて開示しえた。まず、1点目に、戦後沖縄の文学表現そして思想史的展開を考察するさい最も重要なテーマとであるところの、一九七〇年前後における反復帰・反国家論について、その文学的意義を明らかにした。次に2点目に、「日本語」の規範の脱中心化あるいは脱構築的可能性を、戦後沖縄文学の具体的テクストへの緻密な読解と分析を通して明快に論証した。そして3点目として、戦後沖縄文学におけるジェンダー的特質および身体の政治性を、具体的なテクスト分析と思想史考察を通じ論証した。そして、この三点目において、戦後沖縄文学に表出された男性の身体性がどのような性政治的特質を内在化させていたかを明証した点と、「従軍慰安婦」という存在の表出が果たす歴史的意義を戦後沖縄文学のなかにおいて明らかにした点は、本研全体においても、特に重要な成果と言い得る。以上の3点をもって本研究成果の柱と言うことができるが、この3点の明証を通じて、ポストコロニアル文学として瞠目すべき独自性と特異性を内在する戦後沖縄文学の総合的内実を本研究において明らかにすることができたことをここに報告する。
著者
狩俣 繁久 BAKSHEEV Evgeny Sergeevich BAKSHEEV Evgeny Sergeevic
出版者
琉球大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

N.ネフスキーが80年前に宮古島を訪問して得た資料に基づき現代との変容の有無などを現地で確認、検証した。琉球文化圏における村落祭祀を行なう御嶽(聖地)を中心に宮古、八重山、沖縄、奄美の民間信仰・民俗文化の比較研究・調査を行なった。聖地およびその祭祀の記録として映像資料を作成した。そのために、宮古、八重山、奄美、沖縄の各地で国内調査研究旅行をした。宮古サニツ(久松)、ナーパイ(砂川)、桟橋ニガイ(佐良浜)、ダツマス(伊良部)、スツウプナカ(高野)、旧八月十五夜(狩俣)、世乞(伊良部)、豊年祭(友利)、ヤーマスプナカ(来間)、正月行事(平良)、御葬式・三日目供養・開眼行事・四九日目供養(友利)、聖地・その年中行事並びにミャーカ墓などの墓制調査(平良、久松、狩股、来間、池間、下地、伊良部、上野、城辺)。沖縄島旧正月(糸満)、遺跡・聖地・門中墓などの墓制(糸満、浦添、西原)。八重山旧盆・アンガマ(西表祖納・星立)、十六日祭・洗骨(与那国)、聖地・墓制(祖納・星立;与那国)。奄美ショチョガマ・新節(龍郷町秋名)、柴差し(喜界島、宇検村阿室);ノロ祭り(宇検村阿室);聖地・ノロの祭祀・墓制(名瀬、龍郷、笠利、宇検;喜界;加計呂麻)。ネフスキー資料の調査採取・記録の状況を現地宮古島各地で調べた。宮古・沖縄にかんするネフスキーの論文ならびにネフスキーについての資料のカタログ・データベース作り始まった。ネフスキーの未発表の論文・資料の翻訳および公開のための準備を行っている。日本人言語学者との共同作業の結果で「宮古方言ノート」の大部分を解読して、日本語の翻訳をした。「N・ネフスキー『宮古方言ノート』の民俗学的考察」等の解説をまとめている。これから「宮古方言ノート」をもとに「宮古方言辞典」が完成されて、発行する予定である。
著者
高嶺 豊 KHAN Imran Ahmed BALARAJU Kasupa DAS D.K.Lal REDDY Sudhakara MURTHY Krishina PRATAP Kumar Raja
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

南インドのアンドラプラデッシ州における障害者の自助グループとその連合体の構築の取り組みが、開発途上国の農村部における障害者のエンパワメントと貧困削減に効果的であることが検証された。この取り組みは、さらなる研究が必要であるが、今後、この取り組みが、他の開発途上国においても障害者の貧困削減のための重要な解決策となることが期待される。
著者
笹澤 吉明
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

小中高生の不眠症の有病率とその心理社会的要因を明らかにするため、小学生1,000名、中学生1,500名、高校生1,000名に対して3度に亘り質問紙調査を行った結果、小学生では1割程度、中高生では、2割程度が不眠症傾向であり、不眠症傾向である小中高生は共通して、抑うつ気分、登校意欲の精神保健指標と縦断的に関連があることが明らかとなった。小中高生の不眠症傾向者共通して就寝時刻が遅く、睡眠時間が短い傾向があった。また生活面では、小学生、中学生の不眠症傾向者のテレビ視聴時間との縦断的関連が明らかとなった。小中高生それぞれ6名にアクチウォッチによる睡眠-覚醒の観察を行った結果、質問紙とアクチウォッチによる睡眠時間はほぼ一致していたが、不眠症傾向者の入眠潜時、中途覚醒時間との関連はみられなかった。以上の結果から、小中高生の不眠症の予防には、テレビの視聴時間の制限と就寝時刻を早めることの徹底が効果的であることが示唆された。
著者
崎間 敦 等々力 英美
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

伝統的沖縄食介入試験の成果をもとに、高血圧の一次予防を目指した伝統的沖縄食による降圧効果についての無作為割付試験を行った。対象者は沖縄県在住の職域あるいは一般住民を対象とした。132 名を登録し、研究を継続しえた 110 名(平均年齢 51±14 歳、女性62 名)を解析対象とした。伝統的沖縄のパターン食の情報介入により血圧が低下し、推定ナトリウム摂取量の減少を伴った。さらに、塩味覚閾値が低い群では血圧が低値であった。これらより、パターン食の情報介入は高血圧の一次予防および非薬物療法に有用であることが示唆された。
著者
長田 康敬
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

コンピュータの超高速化, 高機能化にともなって集積回路が超微細化加工されるに従い, 従来のクロックによる同期式システムの考えだけでは正しい動作が保障されないため, 要求/応答制御信号を用いた非同期システムが注目されている. 本研究では, 相対遅延モデルを提案し, これに基づく非同期システムやパイプラインシステムを設計し, これらをFPGA上に実装し, 評価を行うものである. 研究の途中で, D-素子や2線論理実装ライブラリ, また, 非同期システムの検証手法, 時相論理の新しい体系などを提案している.
著者
狩俣 繁久
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

3年間で白保方言の臨地調査と波照間方言・白保方言の比較研究を行った。日本語の影響は、予想以上に大きく、回答を得られない単語が近接する方言間の言語年代学的な数値を出すには無視できない数であった。そこで、さまざまな音環境にあらわれる母音、子音がどのように音韻変化したかを詳細に比較した。両方言で類似するものの多くは、分岐する以前の祖方言の形式を保存するだけでなく、変化の要因などを共通に有したまま分岐し、別々に平行的に変化したものがあることがわかった。波照間、白保方言に特徴的にみられる語末のN音挿入も分岐した後に平行的に変化したものである。母音の音位転換と子音の音位転換があることを指摘したが、音位転換は分岐後の収斂変化であることがわかった。形容詞の代表形を収集し、波照間方言と白保方言を比較した。その結果、波照間白保祖方言の形容詞語尾は-haNであったが、両方言ともに、周辺方言、とくに石垣島中心市街地方言の影響で一部の形容詞の語尾に-saNと-sahaNを有する語があることがわかった。saN形容詞は借用語形であり、sahaN形容詞は、saN形容詞のsa連用形をhaN形容詞の語幹として取り込んだものである。語尾にsahaNをもつ形容詞の発生は両方言で平行的に変化したものである。形容詞語尾の違いが八重山方言、宮古方言の下位区分の重要な指標になりうることもわかった。文法現象は、名詞の語彙に比べて借用されにくく影響も小さい。文法現象が体系的であることを反映して、借用された形容詞語彙は、その判別が名詞に比べて容易であることもわかった。
著者
井関 邦敏
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

日本透析医学会の調査によるとわが国の慢性透析患者数は増加の一途をたどっている。2005年度には国民500人に1人の割合を超え、沖縄ではすでに400人に1人の高頻度である。透析導入の原因疾患は1998年度よりそれまで首位であった慢性腎炎から糖尿病(DM)に移行した。前者が減少しつつあるのに対し、後者は直線的に増加し続けている。透析患者増加の背景には膨大な数の透析予備軍が予想される。健診データ数の変動にもかかわらず2mg/dl以上のCKD頻度は約0.2%前後(千人に2人)と一定である(沖縄県総合保健協会の資料)。CKDは多くの場合、自覚症状がなく検尿異常(またはGFR低下)から始まり、徐々に腎機能が低下して末期腎不全に進行する。これまでに報告された透析導入の発症危険因子のなかで最も鋭敏で簡便な検査法は試験紙法による検尿(蛋白尿)である。透析導入の発症率は蛋白尿が多いほど高い。加齢に伴い腎機能は低下するが、蛋白尿を伴わなければ透析導入が必要になるほど低下しない。検尿以外の項目では血圧が重要で、血圧値は高いほど、性別に関係なく透析導入が増える。高血圧は患者数が多いこと、降圧薬で治療可能であることを考慮すると、血圧コントロールの重要性が伺える。肥満は蛋白尿発症および透析導入の有意な危険因子で、とくに男性において肥満の影響が大である。男女差の要因は不明であるが、男性では女性に比し生活習慣、治療コンプライアンスに問題があるのではと考えられる。空腹時血糖値:126mg/dl以上では糖尿病の可能性が高く、透析導入率も高くなる。CKDの発症、進展にメタボリック症候群、肥満が関与していることは明らかとなっている。禁煙、適度な運動、食事指導(蛋白質、食塩、カロリー)が必要である。肥満者では体重減少によって蛋白尿が低下する。生活習慣の改善は末期腎不全予防に有効である。
著者
大森 保 新垣 雄光 又吉 直子 棚原 朗
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

(1).瀬底島サンゴ礁において、海水中の炭酸系成分のシステマチックな時系列観測を5年間継続しておこなった。海水中の二酸化炭素濃度は、昼間に低く、夜間に高い日周変化を示す。これは、昼間には光合成と石灰化が卓越し、夜間には呼吸が卓越することによる。(2).流向流速計を用いた海水の流動解析をおこない、さんご礁の炭酸系変動の日周変動を説明できるボックスモデルを構築した。(3).海水中の二酸化炭素濃度の変動を周期解析すると、最も主要な変動周期は、約26.7時間であった。これは、海水中の二酸化炭素濃度変動が、太陽の日射量変動よりも、むしろ月の運行に関連した潮位変動に大きく規定されることを示している。それ以外にも、13時間、6.5時間などの短時間の周期変動があり、複合的なメカニズムによって規定されることが示唆される。(4).短周期の成分変動を除去して、年間を通した長周期の変動をみると、二酸化炭素濃度は、おおよそ、月単位でブロック上に変化し、夏に向かって上昇する傾向と、冬に向かって減少する傾向が確認された。この変動は、主として、海流の循環にともなう季節変動に支配されていると示唆された。サンゴ礁炭酸系変動と地球環境変動の関係を解明するためには、炭酸系変動の長周期因子の解明が必要であることがわかった。(5).瀬底島で構築した炭酸系変動ボックスモデルをレユニオン島のサンゴ礁に適用したところ、炭酸系の日周変動をうまく説明できることが確認された。これによりサンゴ礁の炭酸系をグローバルな視点から整合的に評価する方法を確立することができた。(6)以上により、サンゴ礁における炭酸系変動と地球環境変動について解明するための基礎を確立した。
著者
仲宗根 平男
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.703-708, 1975-12-01

以上の刺針法による植栽地, 低温ビニール室の実験結果から1)沖縄産スギ材は, 3月初旬から早材形成が始まり, 6月末の梅雨明けまで継続される。2)梅雨明けより気温も上昇するため, 7月から晩材形成が始まる。3)8,9月も高気温が続くため, 成木, 幼令木とも晩材形成が継続される。4)10月より気温低下が始まり, 実生幼令木のヤナセ, ヤクは早材形成となるが, 地スギの幼令, 成木, 実生成木は晩材形成が継続される。5)11月から日照時間も短かくなり, 気温も下降するため, これまでの晩材細胞より小径の, 厚膜の細胞が形成され, 12月末まで続き, 休眠期に入る。6)1,2月は休眠期となる。7)細胞数は早晩材共約同数に近いが, その巾は早材部が広く, 晩材が占める面積割合(晩材率)は, 40∿50%となって, 内地産スギ材より高い値を示している。8)晩材形成の主要因は, 30℃前後の高温が続く7,8,9月と, 日照時間が短くなり, 気温も低下する11,12月の異なった二つの要因と考えられる。9)10月の気温は, 4,5月の気温に近いため, 春材形成となると考えられるが, 地スギ幼, 成木, 実生成木は晩材形成を継続する。それらの要因については, 今後の課題としたい。
著者
Deniis Baron
出版者
琉球大学
雑誌
The Okinawan journal of American studies (ISSN:13491032)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-12, 2005

Recent decades have seen a rise in nativism in the United States, manifested in calls for tighter immigration controls, resistance ot bilingual education,m and increasing support for English as the official language. There are renewed calls to restrict both the public and private scope of languages other than English, as well as the stignatized dialect called nariously Black English. Afro-Americhan Nernacular English, or Ebonics. While earlier nativist movenents in the U.S. targeteed immigratant groups. Hispanics show more language loyalty and resist assimilation into the Anglo mainstream, supporting their claims with figures from the recent Census 2000/ I will discuss the history of U.S. language policy in light of recent legislation, legal decisions, Census language data, and public commentary on language issues. While Spanish contimues to be perceived as kisruptive and a threat to the dominance of English, I argue that such perceptons are erroneous, based more on prejudice than on linguistic reality.
著者
友寄 長重
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.151-155, 1967-10-01

毛細管現象により液肥を砂床に地下自動供給する方法により山東菜に対する液肥の濃度試験を行なった。対象区として砂床と土床に地上灌水(液肥)する区を設けた。液肥は尿素, 過燐酸石灰, 塩化加里を窒素, 燐酸, 加里が12-5-7になるように配合したものを稀しやくして用いた。地下自動給水区は4区設け, 液肥の濃度は200倍, 400倍, 800倍, 1600倍区にした。地上灌水区は砂区, 土区とも200倍液を月, 水, 金曜日に1平方米当たり1lの割合いで灌注し, 火, 木, 土曜日には同量の水をかけた。1966年11月26日に播種し, 1967年1月20日に測定した。地下自動給水区の液肥がなくなった12月10日と21日に50lづつ液肥を入れた。土区では生育の途中で害虫が多く発生し測定できなかった。砂床地上灌水区は, 試験期間中降雨が多かったため, 地下自動給水の200,400,800倍区に劣っていた。地下自動給水区では生育の中途までは400倍区がよかったが, 結果は200倍区が成績は最もよかった。200倍区のT/R率が極めて高く, 十分の水と肥料が供給されれば, 根長, 根重は小さくても, 地上部に十分の養分を供給するものと考えられる。地下自動給水により液肥を砂床に供給し, そ菜, 花卉を栽培することは筆者が1966年9月から始めたものであり, 満足のゆくような施設と研究はできなかった。液肥を貯めるのに内径10∿15cmのビニールパイプを用い, その他いろいろ改良を加えれば, 多額を要さない施設費で栽培の省力化と増収にかなり設立つものと考えられる。
著者
鹿内 健志
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.53-107, 1998-12-01

本論文は軟弱地盤において作業を行なう農用車両の走行性に関して, 車輪と土の力学的相互作用の面から究明し, さらに, 耕盤を有する圃場の車両に対する支持力特性について解明し, 農用車両走行部の力学的設計に不可欠な基礎的知見を提示したものである。まず, 車輪と土の力学的作用を把握するため走行車輪下の土の変形計測システムの開発を行なった。本システムにより気乾豊浦標準砂を対象に車輪走行実験を行い, 走行車輪下の土の変形およびけん引力, 接地応力など走行性に関する力学的諸量の計測を行なった。また, 車両の支持力特性について, すべり線法による理論解析を行なった。耕盤を有する圃場の車両に対する支持力問題を, 剛盤上の摩擦性塑性体の二つの近接する荷重に対する支持力問題と理想化した。荷重間隔, 荷重幅および耕盤深さに応じて五つのすべり線場を設定し, これらに基づき支持力の計算を行なった。以下, 各章ごとの総括と結論を述べる。第1章において, 新たに開発した走行車輪下の土の変形計測システムの構造と特徴について論じた。厚さ25μm, 直径5mmのポリエステル製の円形マーカを土槽側壁の内側に設置し, マーカの土に伴う動きを透明な土槽側壁を通し連続写真撮影した。2軸X-Yテーブルと拡大CCDカメラからなる平面位置検出装置により写真からマーカ座標を読取った。これにより土中の変位分布を計測し, さらに有限要素解析における方法を用いて土中ひずみ分布を算定した。計測の不確かさ解析により, 従来の土の変形測定法に比較し, 簡易な方法で, 微小変形から大変形にわたり高精度で計測が可能であることが確認された。また, 新たに開発したマーカは薄いポリエステル製で周辺土壌へ影響を与えることなく, また, 含水比が比較的高い一般の圃場の土に対して使用可能である。第2章では, 土の変形解析システムにより計測した走行車輪下の土の変形解析結果について述べた。車輪は剛性車輪を対象とし, 車輪表面材の摩擦係数による違いを比較するため, 鋼鉄製車輪と鋼鉄製車輪の表面に加硫したクロロプレンゴムを5mm厚さでコーティングしたゴム被覆車輪の2種類を供試した。静的沈下時の土粒子の動きの変位ベクトルは, ゴム被覆車輪および鉄製車輪とも車輪中心を通る鉛直線を中心軸として対称に分布する。車輪が回転すると, 変位ベクトルは車輪前方部で, 前向きの水平成分を持つものと後向きの水平成分を持つものの二つの領域に分けられることがわかった。土の経時的な動きを明らかにするため, 深さ毎の土粒子の変位の軌跡を求めた。また, 土粒子の軌跡を指数関数を用いて表現した。土粒子は車輪中心線が真上にくると, 大略, 最大深さまで動く。ゴム被覆車輪下の土粒子の描く曲線は鉄製車輪のものより土中深くまで移動し, 後方への変化も大きい。車輪と土の接触面では土は車輪表面に固着して動くのではなく, 車輪と土との間にすべりが生じる。鉄製車輪では摩擦係数が小さく, 接触面での車輪と土とのすべりが大きくなり土粒子の変位が小さいと考えられる。ゴム被覆車輪および鉄製車輪下の土中ひずみ分布を等値線図により詳細に示した。各すべり率における鉛直方向・水平方向の垂直ひずみおよびせん断ひずみの特徴について述べ, ゴム被覆車輪と鉄製車輪のひずみ分布の比較を行なった。第3章では, ゴム被覆車輪および鉄製車輪の接地面法線・接線応力分布とけん引力の変動現象について述べた。法線および接線応力の分布はいずれの車輪においても車輪前方部で最大値を示す凸型の曲線を描く。また, 法線および接線応力の最大値はすべり率の変化に伴い変化する。すなわち, 最大法線応力はすべり率の増大とともに減少する。最大接線応力はゴム被覆車輪ではすべり率40%付近まですべり率とともに増加し, その後一定値を示すが, 鉄製車輪ではすべり率40%付近で極大値を示す。接線応力の法線応力に対する比(接地応力比)は, ゴム被覆車輪および鉄製車輪とも車輪と土の接触が始まる部分と接触が終わる部分で高い値を示し, 最小値はその間に現れる。最小値が現れる位置はすべり率が大きくなると車輪前方部に移動する。けん引力の経時的な変動現象を究明するため, その波形を車輪回転角を変数とする正弦関数で近似した。ゴム被覆車輪のけん引力の変動はすべり率によらず, 短周期の振幅の小さい微小振動を示し, 鉄製車輪の場合, 長周期で, すべり率が増大するほど振幅の大きくなる波形を示す。ゴム被覆車輪と鉄製車輪のけん引力の変動の周期と振幅について車輪下の土の破壊態様と照応して論じた。第4章では, 耕盤を有する圃場の車両に対する支持力問題について論じた。すなわち, 本支持力問題を, 二つの近接する荷重が剛盤上の摩擦性剛塑性体に作用するものとしすべり線法により解析を行なった。2荷重によるすべり線場が干渉し, 一般にPrandtl場は成立しないが, 荷重幅, 荷重間隔および耕盤深さに応じて5種
著者
菊地 香 中村 哲也 魏 台錫 仲間 勇栄
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.93-99, 2003-12-01

本稿では,本来ならば経営を引退して地域に埋没してしまう高齢者自らがその知識と経験を活用することで農産加工の起業することが地域にとってどのような効果をもつのかについて沖縄県具志川市の事例をもとに明らかにする。その方法として最初に農村における農産加工での起業化が一般にどのような位置付けがなされるのか,その枠組みを設定する。次いで起業的な経営を行っている生産者グループを対象にして,どのような経緯で起業化を行ったのかを明らかにする。分析の結果は,次の3点にまとめられる。第1に大手メーカーに原料を供給するだけの組織は,ドメインを構築するまでもなく原料を生産するだけの組織であり,起業的な取り組みは全くなされていない。第2に原料の生産はせず製造から販売を行う組織は,安定した原料確保ができず,またそれにより製品の生産量が常に一定とならないことからドメインの構築に至っていない。第3に原料の生産から販売まで行う組織では毎年一定の原料確保ができることから,製品の生産量も安定し,販売戦略もとることができることから,ドメインの構築を行うことにより起業段階から集合化段階に移行しつつある形態が沖縄県でもみられることである。特にこうした起業的な取り組みの担い手が事例のような高齢者を中心とした組織でも可能であり,新たにそこに若い担い手が参加させようとする形態をとっていることである。このことは若い担い手の流出が避けられない農村部において,若者を呼び戻す契機につながることから,こうした起業化は地域の活性化につながる利点があげられる。
著者
川満 芳信 重久 利枝子 福澤 康典 村山 盛一
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1-14, 2002-12-01

CAM植物であるパインアップルのCO_2収支量を増大させるためには明期の気孔を更に開孔させる必要があると考え,気孔開閉を制限している要因を検討した.1.暗期を短縮してCO_2固定を抑制してもリンゴ酸蓄積量は対照区とほぼ同じであった.暗期におけるリンゴ蓄積量とPhase-3の長さ,明期におけるリンゴ酸の消失と気孔開孔(ガス交換の開始)には関係は無く,Phase-4において葉内CO_2濃度が低下しても気孔は開かなかった.2.暗期短縮やCO_2-free air処理はリンゴ酸蓄積量を減少させたが,Phase-4の気孔開孔は著しく阻害された.3.葉のリンゴ酸含量が増加すると水ポテンシャルおよび浸透ポテンシャルは低下した.4.暗期を短縮した長日条件にすると明期のCO_2吸収は増加し,総CO_2収支量は僅かに増加した.更に明期が長くなると,C_3回路よりもリンゴ酸を精製するC,ジカルボン酸回路が活発に働き,総CO_2収支量の増加は期待できなかった.
著者
仲宗根 平男
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.192-202, 1970-12-01

亜熱帯地域に属する沖縄に300年前よりさし木法によって受け継がれたといわれる, いわゆる地スギが北部山奥へ小面積ながら残っている。その地スギ3本を採取し, その幹材の理学的性質を明らかにすることにより, 造林樹種として, 価値判定の資料に役立てる目的でこの実験を行なった。なお福岡産のスギ1本も実験に加えた。測定結果は下記の通りであった。1)年輪巾 : 地スギ材は未成熟材部で変動が大きく, 成熟材部で安定している。2)晩材率 : 晩材率が70%を示し, 本土産スギ材10∿25%と比較すると著しく高い値を示している。3)気乾比重 : 早材は地スギ材0.3∿0.5,福岡産スギ材0.2∿0.3で地スギ材が高く, 晩材は0.7∿0.9と産地による差がない。4)細胞膜厚 : 早材で6∿12μ, 晩材6∿14μと産地による差はない。5)細胞径 : 早材は地スギ材20∿40μ, 福岡産スギ材40∿50μと福岡産スギ材が大きい。6)細胞径に対する細胞膜厚割合 : 早材は地スギ材が20∿40%, 福岡産スギ材10∿20%と地スギ材が高く, 晩材は地スギ材50∿80%, 福岡産スギ材50∿70%で両者に差はない。この高い値は明らかに早材と区別される。7)仮道管長 : 地スギ材の未成熟材は髄から10番目年輪程度までで, 成熟期に達する期間は福岡産スギ材と大差ないが, 仮道管長は短かい傾向がある。8)地スギ材の特徴 : 晩材率が70%と著しく高く, 早材細胞径も小さく, したがって比重の高い緻密な材である。
著者
金城 政勝 源 宣之 杉山 誠 伊藤 直人 淺野 玄 金城 政勝
出版者
琉球大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

エマージング感染症の多くの病原体は野生動物や昆虫と共存し、自然界で密やかに感染環を形成している。そこで本研究では、野生動物や吸血昆虫から種々の病原体や抗体を検出して、わが国に既に侵入しているあるいは侵入する恐れのある新たなウイルス性感染症をいち早く補足し、それらの予知法を考察しようとするものである。最終年度である本年度は、岐阜及び西表島での昆虫採集を引き続き行い、それらからのフラビウイルス(日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、ダニ脳炎ウイルス及びデングウイルス)遺伝子の検出を試みた。また、蚊由来培養細胞C6/36細胞を用いてウイルス分離も試みた。1)岐阜及び西表島における蚊の採取:本研究期間内において、最終的に20,919匹及び40,423匹の蚊がそれぞれ岐阜及び西表島で採取された。岐阜で採取された蚊のうち最も多かったのはイエカ属(80.0%)で、ハマダラカ属(17.2%)がそれに続いた。一方、西表島では、クロヤブカ属(62.7%)及びヤブカ属(32.7%)の蚊が大きな割合を占めた。2)RT-PCR法を用いた蚊からのフラビウイルス遺伝子の検出:同一のプライマー・セットを用いて日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、ダニ脳炎ウイルス及びデングウイルスの遺伝子を検出することができるRT-PCR法により、685プール(1プール50匹、計29,966匹)の蚊からウイルス遺伝子の検出を試みた。しかしながら、目的の増幅産物を得ることができなかった。以上にことから、上記のウイルスは岐阜及び西表島に高度に浸潤していないことが示唆された。3)蚊由来培養細胞を用いたウイルス分離:C6/36細胞に接種した599プールのうち、34プールが明瞭な細胞変性効果(CPE)を発見した。このうち西表島のヤブカ属のプールから分離されたCPE発現因子について各種生物性状を調べたところ、上記ウイルスとは異なるフラビウイルスであることが示唆された。今後、このウイルスの哺乳動物に対する病原性等を詳細に検討する予定である。
著者
石本 隆士 緒方 茂樹
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学教育学部障害児教育実践センター紀要 (ISSN:13450476)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.137-154, 2002-05-01

本研究は、長期的な不登校の状態にある児童に対して行なわれた取組を取り上げ、特別な支援教育に必要な概念構造を発展させることを目指して計画した事例研究である。特に本稿では、不登校における児童の変容と支援チームの取組について、事例の経過にそって詳細に記述し、注目すべきいくつかの点について考察を行なった。まず小学校入学時から不登校に至るまでの様子についてみていく中で、対象児童は周囲の状況を的確に把握し、その期待に応えようとする傾向が強いこと、低学年の段階から自分の自然な感情を無意識に抑えてきていることが予想された。そして、不登校の状態は自身の内面にある葛藤の現れであると捉えられた。次に、小学校最終学年における約1年間の様子を経過を追いながら詳細にまとめた。その中では、特別室登校から在籍学級復帰に至る段階的な変容とそれぞれの時期に出現し周囲から問題とされた行動が注目された。最後に、取組後の経過について、中学校の協力に実施された自尊心に関するアンケート結果も含めた記述を行なったところ対象児童は、小学校卒業後2年を経過しようとする時点でも無遅刻無欠席を続けているという事実と内面的な解決の途上であることが確かめられた。取組の初期において支援チームが行なったことは、現象面だけでなくこころに注目した取組を主眼とすることであった。これにより、児童が変容する過程で観られた問題行動について過剰に反応せず背景にあるこころの有り様を観ていこうとする姿勢が貫かれることになった。そして、このような事例に対する状態の捉え直しを繰り返し行い、その時点でできていること、すでに持っているもの等の中に存在する解決に向かうために利用できる要素を、「資源」という形で支援計画に位置づけていったことは、支援チームの帯びた特徴的な傾向の一つだと考えられた。
著者
ホサイン モハヤド・アムザド 松浦 新吾郎 土井 光弘 仲村 一郎 石嶺 行男
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.145-149, 2004-12-01
被引用文献数
1

万田31号は,作物の収量と品質を高める発酵自然植物凝集物である.万田31号がウコンの生育および収量に効果的であるかを調べるために,1999年5月から2000年2月にかけて琉球大学の亜熱帯フィールド科学教育研究センターの実験圃場で試験した.試験区を葉,土壌,葉と上壌の3つに分け. 100ppmの万田31号を15日間隔で10回施用した.ところが,1999年9月22日に強い台風が発生し,すべての圃場のウコンが大きな被害を受けた.しかしながら,台風後のウコンの回復力に万田31号施用区と無施用区では大きな違いが見られ,興味深い結果を示した.万田31号施用区と無施用区における台風後のウコンの被害の回復,生育および収量について調査した.その結果,万田31号施用区では,新しい分けつの発生と新芽が台風後15日目に確認でき,約70%の植物体は,万田31号の施用を続けることでウコンは順調に回復し,台風後,12月まで生育は良好であった.一方,万田31号施用区に隣接している無施用区においては,施用区から4〜11m離れた畝のウコン収量は,11m以上離れたウコンの収量よりも有意に高く,18m以上離れた畝の植物体は,台風後40日以内に枯死した.総じてウコンの収量は,万田31号施用区が無施用区に比べて約3倍高かった.これらの結果は,万田31号は台風によるストレスに効果的で,しかも,万田施用区近隣の植物体にまで有利に働くと考えられる.万田31号の効用は,激しい降雨による流水によって隣接する圃場へ移動すると推察された.
著者
松嶋 卯月
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.1-37, 2001-12-01

本研究は,無極性ガスを利用して切り花の鮮度保持を行うことを目的として行われた。緒論において述べたように,無極性ガスは切り花内に溶解すると,細胞内の水が構造化し,生体反応が抑制され鮮度保持効果が得られると考えられ,オレンジキャンドル種のカーネーション切り花で効果が確認されている。本論ではとくに,水の構造化によって水の動きが変化することに着目し,主として,切り花内の水移動の変化という観点から,無極性ガスによる水の構造化の鮮度保持効果を解明することを目的とした。以下に各章ごとの要約を述べる。1 切り花からの無極性ガスの脱離速度(第2章要約) 無極性ガスを利用した保存法のカーネーション切り花に対する適用性を明らかにするために,まず,切り花体内において無極性ガスによる水の構造化がどの程度持続するかを検討する必要がある。ここでは,無極性ガスの溶解の状態をその脱離過程から明らかにすることを目的とした。実験の結果以下のことが確認された。1) 切り花および水からの脱離過程は,いずれも2次の反応速度式で回帰された。以下,切り花からの脱離過程を水と同様の単純な界面からの脱離であると仮定し,両者の比較をおこなった。2) 水からの脱離速度は,脱離表面積に比例した。一方,切り花の脱離表面積と速度定数の比例関係は,比例定数が水とほぼ同じである例と,その約1/3程度低い値である例が見られた。両者の差は,切り花の生理的状態によって脱離する表面積が変化するためと考えられた。3) 切り花の脱離過程は2時間から3時間の間でほぼ終了した。よって,その後のキセノン処理の効果は,大気下において,水に飽和して溶解しているキセノン,および,生体高分子の疎水基近傍で会合しているキセノンによると考えられた。2 切り花内部における水の動的状態(第3章要約) 本章では,無極性ガスによる水の構造化が切り花内の水の動的状態に与える影響を明らかにするために,^1H-NMRによる縦緩和時間T_1の測定を行った。測定の結果以下のことが明らかになった。1) 切り花子房部の平均的T_1は,約0.4秒から0.8秒の間にあり,時間の経過に伴い長くなった。しかし,48時間にわたってキセノン処理区のT_1は対照区より小さな値を示し,無極性ガスによる水の構造化によって,組織内の水の束縛が強くなったと考えられた。2) 上記の平均的T_1を得た同一のデータについて2つの指数近似式を用い解析した結果,0.1秒から0.3秒の範囲および0.4秒から0.8秒の範囲にある2種類のT_1が得られた。短いT_1を持つ水成分(以下I成分と称す)は水の束縛が強い部分,また,長いT_1を持つ成分(以下II成分と称す)は水の束縛が弱い部分の水の動的状態を示すと考えられた。対照区ではII成分のT_1が長くなったが,キセノン処理区では顕著な変化が見られなかった。3) 試料中の全プロトンに対する成分IIの存在割合では,対照区において時間の経過に伴い増減が観察された。キセノン処理区では,成分IIの存在割合の変化は低く抑えられた。これは,細胞の老化および細胞内の液胞と原形質間の水移動の抑制を示すと推察された。3 無極性ガスによる水ストレスの抑制効果(第4章要約) 本章では,第3章の結果を受け,水の構造化によって切り花内部の水移動が低減すると仮定し,切り花の水ストレスの抑制効果として働く可能性について検討した。中性子イメージングによる結果を以下に示す。1) 中性子イメージングによって,カーネーション切り花の水分分布を解析可能である良好な画像を得ることができた。2) 0.5,0.6,0.7MPaのキセノン処理区では,水ストレス下においても階調値の最頻値は対応する対照区より明るい階調に存在し,切り花内の水分量が多いことが示された。その結果,無極性ガスによる処理は,対照区と比較して切り花内の水が保持されることが明らかになった。特に,子房部において水が保持される傾向が顕著であった。3) 水分分布の等高線図の経時変化,および階調値の累積相対度数分布曲線の経時変化では,キセノン処理区が対照区と比較してカーネーション切り花内部の水分量が増加する傾向が顕著であった。すなわち,無極性ガスによって初期の吸水能力が維持されたと考えられた。4 無極性ガスによる処理を行った切り花の生理的応答(第5章要約) 本保存法の効果を総合的に判断するために,無極性ガスによる水の構造化が切り花の生理的状態に与える影響を明らかにすることを目的とした。特に,水の構造化による水移動の変化と生理的状態変化との関係を明らかにするために,切り花の蒸散速度および吸水速度と,生理的状態と密接な関係にある呼吸速度を連続および非破壊で計測するシステムを構築し計測を行った。計測の結果以下のことが明らかになった。1) 本章で試料として使用したカーネーション切り花フランセスコ種はクライマクテリック上昇型の花卉であることが確認された。2) キセノン処