著者
照屋 俊明
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

沖縄県備瀬海岸のサンゴ礁池で観測されるエダコモンサンゴとリュウキュウスガモの混合群落の形成に関与する化合物を探索するため、リュウキュウスガモ抽出物がエダコモンサンゴ幼生に対してどのような影響を与えるのか検討した。また、コントロール実験として、コユビミドリイシの隠蔽種Acropora sp. 1幼生を用いた。その結果、リュウキュウスガモ抽出物からエダコモンサンゴ幼生に対して毒性を示すカフェ酸を単離した。また、カフェ酸は0.0018 mg/ml~0.18 mg/mlの濃度ではエダコモンサンゴ幼生に対して影響を示さないが、Acropora sp. 1幼生の形態を変化させることが明らかとなった。
著者
河名 俊男
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

1771 年に宮古・八重山諸島に襲来した明和津波の各島での最高遡上高は、宮古島で約10m、多良間島で約15m、石垣島で約30mと推測される。各島の津波石の年代測定から、明和津波以前の津波として、西暦1667 年、西暦1500 年、約500 年前、約1000 年前、および約2400 年前の時期が推定される。1951 年のルース台風と2007 年の台風4 号の高波による岩塊の打ち上げと移動を確認した。沖縄島周辺島の古宇利島の海岸地形から、海食崖の後退規模を推定した。
著者
金城 尚美 加藤 清方
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、「危ない表現」の使用意識を調べることを目的として、国内および海外で調査を実施した。調査は、相手を罵倒したりののしったりするような11の場面、例えば、列に割り込んだ人に対してどう言って反応するか等を4コマ漫画で視覚的に明示し、台詞を挿入する自由記述形式で行った。また各場面で発話者が男性または女性の場合の視点を設定した。さらに大人と子ども、上司と部下、夫婦等、上下等の人間関係の設定にも変化を持たせた。調査票は、日本語、タイ語、中国語(中国本土・台湾)、韓国語6種類を作成し、日本(東京・沖縄等)、韓国、(釜山・ソウル・光州)、タイ(バンコク)、台湾(台北・台南)、中国(大連)の各国でデータを収集した。その結果、日本語と比べて韓国語、中国語、タイ語のデータは、異なる社会・文化的背景により、卑下する対象となる用語の異なりの分布や使用環境及び用語の豊富さなどが顕著であることなどが明らかとなった。今後、データのサンプル数を増やし、日本語と各国語をそれぞれの社会・文化的背景とのつながりを詳細に記述し、あぶない用語の社会言語学的かつ語用論的分析をさらに深化させることが必要である。
著者
堤 純一郎 安藤 徹哉
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

研究期間の3年間に6つのテーマで研究を行った。まず、亜熱帯島嶼地域の沖縄における伝統的な木造住宅から最近のパッシブクーリング住宅まで、歴史的な変遷を考慮した6棟の戸建住宅における熱環境の実測調査または既存データの解析を行い、住宅の熱環境に関する変化について考察した。次に、低緯度における最大熱負荷要因となる屋上面の遮熱、断熱に対する対策として、RCスラブと亜鉛鉄板屋根を対象に、屋上植栽、セラミックタイル、ペイントなどの6種類の屋上被覆材料の熱的効果に関する屋外実験を行った。屋上植栽の熱的効果が最も高く、セラミックタイルはそれに準じる。市販の断熱ペイントの遮熱性能も確認できた。さらに、沖縄県産の素材を用いた3種類の外装仕上げ材料を実験用の小型RC住宅の西壁と北壁に塗り、これらの遮熱及び断熱性能の評価を行った。単純な塗り壁仕様の仕上げ材料であるが、これがある程度外断熱的な働きをすることが明らかになった。以降は建物を取り巻く屋外環境に関する研究である。まず、伝統的な町並みの代表として首里金城町の石畳の道とアスファルト舗装の熱環境を比較測定した。日中ばかりでなく夜間も石畳の表面温度は常にアスファルトよりも低いことが明らかになった。また、沖縄の伝統的屋敷囲いであるフクギの防風林に関する、詳細な調査を本部町において行った。現存するフクギ林だけでなく、歴史的な変遷に関する調査も行った結果、フクギ林の生活環境に与える効果を肯定する住民の意見と、RC造住宅に替わってから徐々にフクギ林が減っている現実を明らかにした。次に、都市の熱環境を調整要素としての重要な働きが期待される樹木そのものの熱環境に関する実測調査を行った。琉球大学構内において8種類の樹木の熱環境測定を行い、樹種による熱的効果の違いを明らかにした。さらに、天空における樹冠の形態係数を用いて、街路樹が日陰を作る効果を定量化した。
著者
仲地 博 江上 能義 高良 鉄美 佐藤 学 島袋 純 宗前 清貞 前津 栄健 徳田 博人
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、2001年より続いた3年間の研究であり、まず、その研究軌跡を記しておく。初年度上半期は、理念的・基礎的テーマについて研究成果の交流(報告書No1)を行い、初年度下半期は、市町村自治基本条例のモデル素案の作成(報告書No2)を行った。2年目上半期は、市町村自治の実態の分析とともにモデル条例の深化(報告書No3)をはかった。2年目下半期は、沖縄県レベルの自治の在り方に主たる焦点をあて、自治の理念と動態を広い視野から検討すべく、この分野の第一線の研究者を招き研究の交流を行った(報告書No4)。最終年度の上半期は、沖縄の自治構想の歴史的研究を集中的に行った。同時に研究会を3つの班(主として政治学研究者からなる班、憲法研究者からなる班、行政法研究者からなる班)に分けそれぞれの分野からの自治構想を研究した(報告書No5)。下半期は、その成果を受け、3つの構想を中心とするシンポジウム、さらに、それを踏まえ、「沖縄自治州基本法」の研究会が継続的に行われた。それは約半年の議論をへて、県レベルの新自治制度の構想案としてまとめ上げられた。他方で、研究者一人一人の自治基本条例及び自治基本法に関する研究成果を最終的な研究論文の取りまとめが行われた。それは、構想案とともに最終報告書(報告書No6)に掲載されている。本研究は、住民自治の基本原則を明文化するという目的を有する自治基本条例もしくは基本法であるという性質上、住民、自治体職員や議員の参加を広く呼びかけ、今期も広く一般に公開した。合併問題、財政危機のように自治の大きな転換期にあたって、本研究に関連する地元メディアの関心も高く3年間で約90本に及ぶ関連記事が掲載された。また、80回に及ぶ研究定例会等への学外者・市民の参加は、延べ5千人を超え、確実に自治に対する意識の転換をもたらした。そのような成果を、科学の地域貢献としても評価可能である。
著者
平敷 徹男 平野 英一
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

研究成果の概要: 本研究では、小売業におけるマーケティング・サクセスは、現地適応力がキーとなっていることが明らかにされた。国内においては、九州と沖縄の消費者の地域的特質の相違から地域マーケティングの可能性が示唆された。さらに海外進出についても、チェーン化による標準化より、むしろ地域の特質にあわせてグローバリゼーションを進めることが成功要因であり、ローカリゼーションとグローバリゼーションが表裏一体となったマーケティングの実践が重要である。
著者
渕上 竜也 神里 興太
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

異常な筋肉運動であるジストニアを生じるジストニアマウスを用いた研究を実施し、ジストニアマウスにグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD65)と小胞GABAトランスポーター(VGAT)という2種類のタンパク質を多く発現させることで以下の研究を実行する計画である.①アデノ随伴ウイルス( AAV9 )を利用した新しい遺伝子導入技術(軟膜下注入法という新たな手術手技)によるGAD65/VGATの過剰発現による異常運動の改善②大脳運動野・頸髄におけるGAD65/VGAT増加確認:免疫組織学的検討,分子生物学的検討③脳脊髄における抑制性神経伝達物質の増加:分子生物学的検討,免疫組織学的検討
著者
川俣 太
出版者
琉球大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

本研究は最先端のゲノム解析により、膵癌で数多検出される癌の突然変異から治療対象となる遺伝子変異を同定し、その分子機構を解明する研究である。特に、門脈系浸潤を伴う切除可能境界(borderline resectable: BR) 膵癌に対する治療に関しては、ゲノム解析を取り入れることで、術前治療を含む最適な治療戦略を構築できる可能性がある。具体的には、膵癌の再発形式(局所・遠隔転移)の違いが原発巣の遺伝子変異により異なることが解明されれば、局所再発が高いと予想される症例では術前化学放射線療法(CRT)を、遠隔転移の可能性が高い症例では化学療法の期間を長くすることで膵癌の長期予後を改善できる可能性がある。
著者
益崎 裕章 高山 千利 島袋 充生 松下 正之 小塚 智沙代
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

慢性的な高脂肪餌の摂取が食欲中枢の視床下部において小胞体ストレスを亢進させることにより、高脂肪餌への嗜好性をさらに高める悪循環の分子機構をマウス病態モデルで明らかにした。玄米含有餌を与えたマウスの解析から、玄米に特異的かつ高濃度に含有される生理活性物質、γオリザノールが経口摂取後、脳に移行し、小胞体ストレスを軽減する分子シャペロンとして機能することが明らかとなった。γオリザノールは高脂肪食によって糖尿病を来したマウスの膵島(インスリン分泌細胞)における小胞体ストレスの亢進を緩和し、β細胞の保護と機能回復に貢献することも明らかとなり、天然食品由来成分を活用する新たな医学応用の基盤が確立出来た。
著者
辻 瑞樹 松浦 健二 秋野 順治 立田 晴記 土畑 重人 下地 博之 菊地 友則 ヤン チンチェン 五箇 公一
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

生物学的侵略機構の研究には自然分布域と侵入域の比較が不可欠である。日本ではあまり知られていないが、近年北米で日本由来の複数の外来アリ種による環境被害が広がっている。しかし皮肉にもこれは日本の研究者にとって居ながらにして侵略アリの自然個体群情報を収集できる絶好の機会である。そこで、本研究では侵略的外来昆虫研究の日米のエキスパートが協力し、これら日本からの侵入者の生態・行動・遺伝情報を侵入先と自然分布域である日本国内で徹底比較する。さらに広大な国土を持つ米国で日本では不可能な野外実験を行う。既存の諸学説を整理しながら網羅的にテストすることで外来アリの侵略機構に関する一般論を導く。以上の目的で研究を始めたが、初年度冒頭に代表者の不測の病気が発覚し研究が遅延した。そこで、2年度目以降は遅れを取り戻すべく主として以下の研究を鋭意進めている。まず、米国側のカウンターパートと協力し、オオハリアリ、アメイロアリ、トビイロシワアリの各国個体群の基礎データを収集した。とくにトビイロロシワアリの炭化水素データを重点的に収集した。また多数外来アリが分布する沖縄では外来アリと在来アリの比較研究を室内および野外で進め、外来種を含むアリには採餌機能に関する複雑なトレードオフが存在することを立証した。また、日米比較の最大の成果として、オオハリアリが侵入前の原産地である日本国内においても侵略先の米国個体群と同様に、高度な巣内近親交配を行なっていることを明らかにし国際誌に発表した。これは近親交配耐性が侵略の前適応であることを示した世界初の成果である。また、テキサスのフィールドに研究代表者が研究室の学生らとともに訪問し実験のプロットを設置しており、2017年夏に2度襲来したハリケーンのため野外プロットが水没した遅れを取り戻すべく鋭意研究を進めている。H30年度にはプロットを再設置した。
著者
中村 衛 松本 剛 古川 雅英 古本 宗充 田所 敬一 田所 敬一 安藤 雅孝 古川 雅英 松本 剛 古本 宗充
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

琉球海溝に固着域が存在するか否かを明らかにするため、中部琉球海溝で海底地殻変動観測を開始し、琉球海溝付近前孤側でのプレート間カップリングを検出する試みをおこなった。2年間の観測から、海底局群が沖縄本島に対して北西方向に7cm/yrで移動したことが明らかになった。予想される固着域の幅は約30-50kmである。このように琉球海溝の海溝軸付近には固着域が存在しプレート間カップリング領域が形成されていることが明らかになった。
著者
高山 千利
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

坐骨神経痛などの神経障害性疼痛は、罹患率が高く難治性であることから、世界的健康問題であり、有効な治療法の開発が待たれている。治療法開発の突破口の1つとして、γアミノ酪酸(GABA)の機能異常を介する痛みの発生機序を明らかにし、その治療法に迫ることを目的として研究を行った。その結果、疼痛モデルマウス、遺伝子改変マウスにおいて、ミクログリアの活性化が持続し、K, Cl共輸送体(KCC2)の発現量が減少したままの状態が続くため、GABAによる抑制力が低下しており、この抑制力の低下が痛みの持続を生み出していることが明らかになった。
著者
宮城 加津也
出版者
琉球大学
雑誌
産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) トライアウト トライアウトタイプ(標準)
巻号頁・発行日
2021

本申請は、非溶融-粉末成形焼結法を用いて、微細複雑形状-光デバイス(ナノフォトニクス)実現を目標とする。これにより、光を使った小型・省エネ「光速」演算処理を可能にする光電融合アクセラレータ実現を目指す。その背景にはCMOS微細-集積電子回路の終焉が徐々に近づく現状を打破する大きな可能性を秘めた「光を人為制御する」新たな演算手法として注目される。これ多くの研究要素から本研究では「光非線形素子・光データバス(導波路)」製造技術にフォーカスを絞る。具体的には、申請者が独自に開発した製造装置を活用する事で、数多-存在する製造条件の最適化の発見に成功したことで、透光性-光デバイス製造に成功した。
著者
押川 渡
出版者
琉球大学
雑誌
産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 地域事業 地域イノベーション創出総合支援事業 シーズ発掘試験
巻号頁・発行日
2005

ACM(Atmospheric Corrosion Monitor)型腐食センサ(以下、ACMセンサ)は絶縁層を挟んだ異種金属対で構成され、その出力を解析することによって濡れ時間、海塩付着量、腐食量などを求めることができる。これまでに、基板となる炭素鋼板の上に絶縁層およびカソード(Agペースト)を印刷法により与えたFe-Ag対ACMセンサを開発し、海洋性大気環境から工業化住宅内環境までの広い範囲の環境において、環境あるいは腐食挙動のモニタとして適用してきた。また、実用化に成功し、センサおよびその出力解析ソフトは市販されている。こうした中、種々の鉄鋼材料あるいは構造物中の種々の部位を対象とした腐食・環境モニタの要求が高まってきているが、従来型ACMセンサではこうした要求に十分に応えられるとは言えない。本研究の目的は、鉄鋼材料の種類、構造物中の部位を問わずに環境・腐食モニタができる新型のセンサを開発することである。カソードには十分貴なAuあるいはPtを採用し、絶縁シート上に付着させ、これを対象となる鉄鋼材料と貼合わせる(カソード付与)ことで、異種金属対を構成する。
著者
池田 譲
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、イカ類の共感性を、ツツイカ目のアオリイカを主対象に読み解くことを試みた。その結果、アオリイカは捕食者、餌生物などの対象に対してボディパターン(体色変化)により情動を表出し、それらボディパターンを介した情動表出は同種個体間で伝染すること、情動伝染は生後発生的な過程であることを明らかにした。さらに、コウイカ目のトラフコウイカについても調べ、ボディパターンを介した情動伝染を確認した。
著者
赤嶺 由美子
出版者
琉球大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は,UDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)1A4の遺伝子多型がラモトリギン体内動態に与える影響を明らかにし,副作用発現予測を可能とすることを目標に,以下を遂行した。はじめに,本研究ではラモトリギン服用患者を対象として,本剤と主代謝物であるN2-グルクロン酸抱合体の体内動態解析を行うため,その体内動態同時測定法の開発を行った。臨床現場でよりルーチン業務に適した高速液体クロマトグラフィーを使用し,高感度に検出を行うために最適な分析カラム,使用溶媒を決定した。また,短時間での作業を可能とするため,血漿からの抽出方法はフィルトレーションシステムを利用した直接ろ過法とカラムスイッチングを組み合わせる方法とした。これにより,迅速,簡便,かつ高感度にラモトリギンと主代謝物の同時測定を行うことが可能となった。次に,琉球大学医学部附属病院薬剤部所有の全自動遺伝子解析機器を用いて,UGT1A4の遺伝子変異検出系の構築を行った。Qprobe法を用いて,酵素活性低下を示すと考えられている142T>G変異を有するUGT1A4*3の検出系を確立した。現在,これら測定法・遺伝子変異検出系を使用して,被験者のラモトリギン体内動態をUGT1A4遺伝子多型別に比較し,副作用発現との関係を解析中である。また,本研究の成果は今年度(平成24年度)の第22回臨床精神薬理学会・第42回日本神経精神薬理学会合同年会においてポスター発表する予定である。さらに,英文原著論文投稿に向けても現在準備中である。
著者
富永 篤 西川 完途 中田 友明 島田 知彦
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

アカハライモリ5遺伝集団の分類学的関係の解明のため、集団遺伝学的解析に加えて、飼育下での配偶行動の観察と比較、性フェロモンの地理的変異の把握を行った。また、各系統の潜在的な生息適地を推定した。その結果、北日本と中部日本系統、中部日本と西日本系統は交雑帯を形成しつつも独自性を維持していること、北日本系統の東北集団と関東集団間には遺伝的にも形態的にも緩やかなクライン状の変異がみられることを確認した。系統間の分布境界では境界を挟んで配偶行動と性フェロモンの組成に明瞭な地理的変異がみられることを確認した。生息適地解析では、現在の交雑の実態と各系統の潜在的生息適地に関連がありそうであることを確認した。
著者
野入 直美 飯島 真里子 佐藤 量 蘭 信三 西崎 純代 菅野 敦志 中村 春菜 八尾 祥平
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、(1)引揚者が戦後の沖縄社会でどのように包摂され、いかなる階層に位置したか、(2)引揚者はどのような社会的役割を果たしたか、(3)「専門職引揚者」の社会移動は、他県でも見出せるパターンが沖縄で集約的に表れているのではないかということを、沖縄の台湾・満洲「引揚げエリート」を事例に解明し、(4)戦後沖縄社会を<引揚げ>という新しい視点からとらえなおす。「引揚げエリート」とは、日本帝国圏の在住期から戦後にかけて、水平・上昇の社会移動を遂げ、沖縄の戦後再建を担った人びとを指す。その中心は、外地において教員、公官吏などの専門職に就き、その経験を資源として戦後を生きた「専門職引揚者」であった。