著者
幸喜 善福
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.429-554, 1978-12-01
被引用文献数
1

本論文は, 塩害の原因となる飛塩が, 地表物体にいかに付着し, 供給されているのかその実態と, これをどのように制御しうるかについて, 主として沖縄における測定値によってとりまとめ, 防潮林造成上に必要な基礎的諸問題の解明をはかったものである。1)モールの銀滴定法と比電導度法の関係は次式によって示される。Y=0.0269x+0.2625 (r=0.999) y=0.0527x+0.6002 (r=0.998)式中Y : 100ccの蒸留水中に溶出した塩素量(mg), y : 同塩分量(mg), x : 同比電導度の値(μ℧/cm)である。2)ガーゼヘの付着塩分は, ガーゼの重ね枚数は少ないほうが多量の塩分が付着する。また, 野外および室内実験によってガーゼの露出時間は2時間が最適であるが, 4時間まで露出してもたいした問題にはならない。3)なお, ガーゼヘの付着塩分量とブラシへの付着塩分量の間には良好な相関関係があり, ブラシはガーゼの約4.5%の付着塩分量である。4)ガーゼに付着する塩分量が, 海岸から500mまでの範囲でどのように分布しているか沖縄島の本部町備瀬崎, 宜野湾市大謝名, 沖縄市泡瀬の各地で実測し, 国内各地での測定結果と比較すれば, 海岸線近くでは備瀬崎だけが2g/m^2/hr程度で, 国内各地の砂浜での値と似たオーダーであるが, 大謝名, 泡瀬では完全に1桁小さい。しかし, 180∿200m以上内陸に入れば0.1g/m^2/hrのオーダーになって, 国内各地より1桁ないし2桁も大きくなる。沖縄ではエーロゾル状態の飛塩が多く, 砕波による大粒の湿った飛塩は, 沖のサンゴ礁で発生するのが多いため, 海岸に到達する部分が少ないことによるものと考えられる。5)植物体に付着する塩分量においては, 単位葉面積当り付着塩分量の平均的な値は, 針葉のものではモクマオウで5.92×10^-2mg/cm^2,リュウキュウマツで4.75×10^-2mg/cm^2,広葉のものではモンパノキが3.12×10^-2mg/cm^2,オオハマボウが3.17×10^-3mg/cm^2,タイワンウオクサギ, サトウキビ, アダン, テリハクサトベラ, フクギ, アオガンピの順に1.70×10^-3mg/cm^2から1.13×10^-3mg/cmに少なくなる。針葉のものは広葉に比較して5∿50倍も多く付着するが, 広葉のものでは葉の表面に短柔毛があり, しかも葉脈による凹凸の多いモンパノキとオオハマボウが顕著に多くなっている。当然のことながら海岸線から内陸に入るにつれて付着塩分量は減少し, 防潮林の風上林縁と風下林縁では前者に多い。各樹木については高いところほど付着塩分量が多くなるが, 吹きぬけのある場合は地面近くにも多くなる部分ができる。要するに風が強く(多く)吹きつける部分に付着塩分量が多くなっている傾向がある。6)降雨水に含まれる塩分については, 月平均では9月が最高で3.7×10^2μ℧/cmに達するが, 11月から2月までは2.6×10^2μ℧/cmの状態が続く。最低は6月で4.4×10μ℧/cm位と1桁近く低下し, 7月, 10月は7∿8×10μ℧/cm位, 年平均は約1.8×10μ℧/cmとなる。沖縄本島を横断しての分布は西海岸で3.0×10^2μ℧/cm, 東海岸でその2/3,内陸部では1/2から1/3位の平均値になる。東海岸では夏季に, 西海岸では冬季に多くなる傾向がある。台風と北西季節風に大きく支配されている。連続降雨については, 測定回数目盛の対数と含塩量の対数が逆比例し, 最初の含塩量の多少にかかわらずほぼ一定に減少し, 3∿4回目に半減し, 7∿9回目で約1/10になる。したがって降雨量が少ないほど含塩量は大となる。これに対し台風時の降雨では, 一般に台風が接近するほど含塩量が急増し, 最初の2∿17倍にも達し, その後漸減する。また, 樹幹流下水および樹冠滴下水中の塩分量の月別変化も, 降雨の場合と相似であり, その平均値は前者で降雨の9倍, 後者で5.7倍になる。海岸線近くでは内陸の約3倍になる。連続降雨では3回目で1/2ないし1/3になる。7)ガーゼおよびブラシヘの付着塩分量には数日ないし十数日周期の変動があるので, 観測結果は観測時刻ごとに毎月の平均値もしくは合計値で示した。全体の平均では13時の観測値は9時の値に対して, ガーゼ付着塩分量で50%, ブラシ付着塩分量では100%の増になる。風速は24%, 気温は8%の増となるが湿度は15%の減少となった。17時の観測値も大同小異であった。付着塩分量と平均風速との関係を任意に選んだ11ケ月の毎日のテーターを用いて直線・対数・指数の3つの相関係数を求めた結果, 対数回帰の相関が最もよく, ガーゼヘの付着塩分のほうがブラシヘのものよりすぐれ, 9時の観測値が13時, 17時のものより相関のよいことが示された。そこで9時の全観測値について回帰係数ならびに相関係数を求めたが, 3ケ月の特例以外は相関係数は高度に有意であったが, その法則性は明らかでなかったので, 毎日のテーターを予測に用いることは妥当でないことがわかった。毎月のそれぞれの観測値の合計においても対数関係が適用されることから次式をえた。ΣlogS_G=0.5628ΣV^^
著者
石本 隆士 緒方 茂樹
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学教育学部障害児教育実践センター紀要 (ISSN:13450476)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.155-168, 2002-05-01

本研究は、長期的な不登校の状態にある児童に対して行われた取組を取り上げ、特別な支援教育に必要な概念構造を発展させることを目指して計画した事例研究である。通常、学校現場における事例研究は、注目すべき事例の経過報告という形で終わるものが多い。そこで、本稿では、取り上げた事例が学級担任制をとる小学校において実践された意義をふまえ、特に組織の役割とその在り方について焦点を絞り検討を行った。本稿は、事例の中に存在する様々な要素を統合し、いくつかの概念としてまとめ上げていこうとする試みであることから、学校現場における事例研究の方法論的なモデルを示す試みでもある。今回の事例において通常学級に在籍する児童に対する特別支援教育の要素として抽出されたものは、1)状況に対する枠組みの継続的な捉え直し、2)システム論的な観点に立った支援体制の形成、3)こころの有り様に注目し自発的な変容を促す児童中心の関わりの3つであった。そして、支援組織に関する総合的な考察を行う中で、特別な支援教育の発想を具現化していくために必要だと思われるいくつかの方向性について整理した。そこでは、これまで特殊教育と呼ばれる分野で培われてきた専門性を、通常の教育の場において子どもに日常的直接的に関わる教育職員と共有する際の専門性について検討することが必要だと考えられた。また、そのような専門性共有のコミュニケーションに関して検討する際には、時間や空間の共有過程で専門家同士の間に起こっているプロセスに注目していくことが重要であるとも考えられた。本事例では、支援組織の調整役である情緒障害通級指導教室担当者が行ったことを吟味する中で、特別な支援教育を推進していく者の立つ位置として「隙間(を埋める)」という位置がいかに適切であるかということが確かめられたと考えている。
著者
亀山 統一
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

琉球列島のマングローブの重要な構成樹種の主要病害であるメヒルギ枝枯病の病徴進展・蔓延に影響する要因を明らかにするため、初期病徴形成すなわちシュート壊死に着目し、病徴形成の季節変化、関与する菌類、激害林の水分環境について検討した。本病激害林である沖縄島北部の汀間川メヒルギ林では、初期病徴形成は調査期間を通じて観察されたが、春から初夏に多発し、健全なシュートは1-2年以内にほぼ全てが損傷を受けた。同時期には、西表島の微害林でもメヒルギのシュート端の損傷が春〜初夏に促進されたが、シュート壊死〜枝枯の病徴への移行は少なく、両者の比較により本病の流行には春〜初夏の誘因の関与が大きいことが示唆された。汀間川河川水の水質の定常変化に異常値は見られなかった。また、穿孔・食害性の鱗翅目昆虫の影響は、激害林では一般に大きかったが、発病・進展に必須の誘因ではなかった。これに対して、マングローブの塩分濃度は満潮の冠水時には樹体上部と下部で大きく異なり、罹病木の部位により塩分ストレスの負荷に相違があることがわかった。また、激害林分である名護市真喜屋大川メヒルギ林では、病患部組織から多様な菌類が分離され、その一部は接種試験で病原性を示した。一部の菌株は、本病病原の強病原性菌株に匹敵する病原性を示した。本病病原Cryphonectria likiuensis自身やこれら病原性を示す菌がシュート壊死を引き起こし、これを引き金にして本病が進展することが推測された。したがって、今後、これら菌類の初期病徴形成への関与を明らかにすれぱ、メヒルギ枝枯病の初期病徴の実験室的な病徴再現が容易となり、本病の激害化を促進する因子の特定につながるものと考えられた。
著者
財部 盛久
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学教育学部障害児教育実践センター紀要 (ISSN:13450476)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.51-68, 2001-03-31

The present study examined the effectiveness of videotape feedback procedure in the development process of affective communication between an infant with autistic spectrum disorder and a mother who has an infant with autistic spectrum disorder, and mother's change in the manner of talking and behavior towards her infant with affective communication developed. Videotape observations at her home and videotape feedback interviews were conducted. As a result, the manner of talking and behavior towards her infant and the point of view understanding to her infant were changed. At the same time, mother-infant interactions were activated and affective communication between mother and infant was developed. Using PAC analysis, it could be confirmed that the mother had positive image for her infant. Based on these results, the effectiveness of videotape feedback procedure and PAC analysis were discussed.
著者
青木 一雄 牧野 芳大 鄭 奎城 勝亦 百合子
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ド国サントドミンゴ市の小児(15歳未満)1,031人(男性505人、女性526人)に対し、上部消化管に関する健康調査を実施し、以下の(1)~(5)の結果を得た。(1)ド国小児のH.pylori感染率は、6-10歳において男女間で有意差(p<0.01)が認められたが、他の年齢階級においては、男女間で有意な差は認められなかった。また、慢性萎縮性胃炎(CAG)有病率は、どの年齢階級においても有意な差は認められなかった。小児の男性、女性ともに、加齢とともにH.pylori感染率は増加していたが、CAG有病率は、男性、女性ともに加齢変化は認められなかった。(2)ド国小児のH.pylori菌の病原性の指標になるCagA抗体の陽性率は、男性、女性とも加齢とともに増加していた。また、全体(男性、女性合計)で陽性者、強陽性者の合計は、0-2歳;0.143,3-5歳;0.210,6-10歳;0.356,11-15歳;0.480と加齢とともに有意(p<0.01)に増加していた。(3)H.pylori感染リスクをロジスティック回帰分析で検討した結果、自覚症状として下痢を有していた小児は、同症状を有していない小児に比し、1.6倍高く、男児は女児に比し1.5倍高かった。また、小児の年齢、同居している小児の人数、及び血清ガストリン値は、それぞれ、年齢が1歳高くなるとH.pylori感染のリスクは1.3倍、同居している小児の人数がひとり増えるとそのリスクは1.2倍、さらに血清ガストリン値が1pg/ml増加するとリスクは1.008倍になっていた。(4)CAGのリスクをロジスティック回帰分析で検討した結果、H.pylori感染者では、非感染者に比し2.7倍高かった。また、H.pylori菌の病原性と関与するCagA抗体の多寡もCAGのリスクを2.1倍高め、血清ガストリン値の上昇(1pg/ml)は、CAGのリスクを1.006倍高めていた。(5)H.pylori感染とCagA抗体陽性率の関連性の検討において、男性においては、H.pylori感染者のCagA抗体陽性率は、陽性者、強陽性者を併せて0.883であり、女性においてのそれは0.901であった。また、H.pylori感染の有無別のCagA抗体陽性率は、男女間で有意な差は認められなかった。
著者
我部 政明
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、米軍プレゼンスを有効に利用して東アジアにおける多国間安全保障枠組の創出へ向けた現状を把握し、個々の安全保障協力の諸条件を検討し、その上で地域別・機能別協力レジームそしてレジーム相互の組みの合わせにより、実現可能な重層的なレベルでの安全保障協力枠組の創出を可能にすることであった。ここでは、米軍プレゼンスのハブとして位置づけられている沖縄における米軍再編が、地域安全保障の枠組みへどのように影響を与えているのかを明らかにした。米軍再編の東アジアにおける展開を、歴史的に、プレゼンスの構造および機能別に、今後の展望について言及した。以下が、研究の結果、明らかに出来たことである。収集した資料は、これまで研究者の間で存在についてすら言及されたことのないものであった。これらの文書を分析した結果、沖縄における米軍プレゼンスの変容が明らかとなった。前方展開能力においては、これまで有事の際の戦略輸送と相互補完による代替性が重視されてきた。しかし、1996年12月に公表され沖縄における米軍基地の再編計画(いわゆるSACO合意)のなかでの普天間米海兵隊飛行場の沖縄本島北部への移設計画は、有事の際の戦略輸送と代替性を放棄していたのである。このことは、米軍プレゼンスの変容が起きていることを示している。研究実施計画に照らすと、米軍プレゼンスのハブとなる沖縄基地を重視したため、他の米軍基地の現況を十分に取り上げられなかったのは反省点である。その理由として、分析対象へのアクセスが少なくなったのは米軍プレゼンスに関わる公開情報の乏しさにあったと考えられる。
著者
本郷 富士弥 川島 由次 多和田 真吉 砂川 勝徳 諸見里 秀宰
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.51-57, 1987-12-05
被引用文献数
1

沖縄在来種およびジアイアントタイプとして知られている高木型系統のギンネム3品種(K-8,K-28,K-72a)の成分上の特性を知る一端として, 一般化学組成とミモシン含量を調査し, つぎのような結果を得た。茎葉部4品種の一般化学組成は, 乾物量26.1&acd;28.1%(平均27.5%), 粗たん白質22.1&acd;23.4%(平均22.7%), 粗脂肪4.6&acd;6.1%(平均5.7%), 粗灰分5.9&acd;7.3%(平均6.6%), 粗繊維14.3&acd;16.0%(平均15.0%)および可溶性無窒素物43.4&acd;51.7%(平均50.0%)の範囲にあり, 品種間で著しい差異は認められなかった。木質部と樹皮部4品種の一般化学組成は, 木質部の90%以上, また樹皮部の70%以上は, 炭水化物系物質で占められており, いずれの品種においても木質部は粗繊維が62.2&acd;63.2%(平均62.8%)の範囲, 樹皮部では可溶性無窒素物含量45.4&acd;57.1%(平均511%)の範囲にありそれぞれ最も高い値を示していた。各成分の木質部における品種間の著しい差異はみられなかったが, 樹皮部においては粗たん白質含量でK-28が16.6%と最も高い値を示した。ミモシンは, すべての部位に存在し, 4品種のミモシン含量の平均値は約3.3%であり, 品種の違いによる目立った差異は認められなかった。また, 生長の盛んな若葉に最も多く含まれており8.6&acd;9.4%(平均9.1%)の含量範囲にあった。しかし, 根部や木質部の含量は極めて低い値を示しそれぞれの平均値は0.1および0.4%程度であった。
著者
幸喜 善福
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.559-569, 1972-12-01

1.樹木の葉の重量と葉面積の関係について調べた。2.その樹種はモクマオウ, サトウキビ, アダン, モンパノキ, アオガンピ, タイワンウオクサギ, ゲットウ, オオハマボウ, フクギ, テリハクサトベラの10種類である。3.各樹木の葉の重量と葉面積との関係を数式で示せばつぎのようになる。即ち, モクマオウY=77.70+52.14χ(γ=0.73)サトウキビY=3.74+32.23χ(γ=0.88)アダンY=45.83+13.48χ(γ=0.86)モンパノキY=-137.58+17.83χ(γ=0.93)アオガンピY=75.35+15.70χ(γ=0.92)タイワンウオクサギY=65.15+19.90χ(γ=0.97)ゲットウY=6.30+29.91χ(Y=0.97)オオハマボウY=6.20+32.01χ(γ=0.84)フクギY=17.71+14.20χ(γ=0.91)テリハクサトベラY=14.20+20.85χ(γ=0.91)ここで, Y : 葉面積χ : 葉の重量γ : 相関係数
著者
國吉 真哉
出版者
琉球大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、沖縄県を中心とした亜熱帯島嶼地域における環境配慮型の生活文化について、デジタル教材を開発し、高等学校家庭科の「生活文化の伝承と創造」に対応した授業研究を行うことを目的とするものである。そのため、研究最終年度となる本年度では下記のことを研究成果として明らかにした。1. 自然環境に配慮した暮らしの知恵(工夫)に関するデジタル画像としてのデータベース化昨年度、天候不良のため十分な調査結果が得られなかった夏至の日について再調査を実施し、国指定重要文化財中村家住宅において、季節格差、日格差、気象などに配慮した暮らしの知恵をデジタル画像(動画及び静止画)で撮影し、そのデータベースを作成した。尚、観察時間は、午前9時30分から午後5時30分の時間帯において実施した。2. デジタル教材の開発高等学校家庭科の学習指導要領に基づき、住生活の視点からデジタル教材開発を行った。高等学校教員との事前ヒアリングを通して、(1)授業者が多様に活用できる、(2)視覚的に分かりやすい、(3)短時間のものに仕上げる、ことに配慮し、実証的な観察データをとりまとめた教材「中村家住宅での日影の動き~夏至の日と冬至の日の比較~」 (ソフト:Microsoft PowerPoint)を作成した。3. デジタル教材に対する評価の実施当初予定していた本教材を用いた授業実践は、高等学校教員の協力が得られず実施ができなかった。そこで、本デジタル教材自体に対する高等学校教員へのアンケート調査を実施した。調査は沖縄県内の高等学校60校に在籍する全家庭科教員158名を対象に実施した。有効回収率は50.6%であった。その結果、概ね教材に対する評価は得られたが、住領域の学習時間の確保、情報関連設備の不足、生徒の基礎学力に対応した補助説明の必要性等、課題もみられた。今後は、生徒や学校環境に対応した教材の改良を行っていく必要がある。
著者
嘉数 朝子 池田 尚子 友利 久子 識名 真紀子 島袋 恒男 石橋 由美
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学教育学部障害児教育実践センター紀要 (ISSN:13450476)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.87-97, 2004-05-31

本研究では, 幼稚園児と親を対象として, 幼児期の家庭における読書環境と心の理論の発達との関連を検討した。結果は, 対象児が5歳台後半であり心の理論課題は天上効果を示していため, 両者の関連は明確ではなかった。部分的に明らかになった点は, 読み聞かせの頻度や家庭の蔵書数は誤信念の理解と関連していることであった。
著者
吉田 浩之 原田 隆史 来田 宣幸
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

中等教育の部活動の実態として教育目標とされている内容を, アンケート及びインタビュー調査によって定性的・定量的に検討し,部活動における具体的な教育目標の項目で構成される部活動の目的意識・行動達成度尺度を作成した.「競技力・専門性」, 「内面的成長」を含む10因子,45項目,5件法の尺度であった.45の項目は,部活動における具体的な教育目標であり,評価規準としての機能を持ち,生徒の教育目標到達度の評価を可能とした.また,本尺度をもとに部活動指導プログラムを作成し,中学校,高等学校の顧問教員を対象とした研修会で導入し,実践事例の検証を通じてプログラムの実効性を高めた.
著者
池田 孝之 平良 博紀 小場 京子 崎山 正美
出版者
琉球大学
雑誌
環境科学特別研究
巻号頁・発行日
1986

1.壁面緑化省エネ効果実例実験の方法(1)実験対象は、屋上緑化収集事例より沖縄県読谷村の住宅とした。当地は始めは米軍家族用住宅として造られた屋根スラブのみの平屋コンクリート住宅約30戸の住宅地である。実験は、屋根スラブ上面に棚をこさえ緑をはわせた緑化住宅と屋根スラブのみの住宅を比較対象とした。(2)測定は、気温を中心に屋根緑ネット内,屋根上部空気層,屋根表面,天井内,室内,戸外で行なうと同時に、室内湿度,屋根面日射量,微風速も測定した。測定器具は、自記温度計(マルチロガー12CH,銅・コンスタンタン熱電対),自記湿度計ロビッチ自記日射計,風速型指示風速計を用いた。(3)期間は、残暑厳しい10月22〜25日の4日間の快晴日で、自動記録で終始継続的に行われた。2.壁面緑化のふく射熱緩和効果一日の最も大きな温度変化は、緑化なし屋根面で、19.9℃(6:17)〜43.0℃(14:4)と23℃の変動があるのに対し、緑化住宅屋根面では終日22℃(6:14)〜25.7℃(16:44)と大きな変動はなく安定している。特に、13時〜15時には、両邸の差は最大23℃と著しい。直ぐに日射を受ける屋根面と、緑を施した場合とではふく射熱の差が大で、緑による遮へい効果の高さがうかがえる。(2)室内温の日変化は、緑化なし住宅が23.3℃〜29.7℃で6℃の変動に対し、緑化住宅では24.3℃〜28.7℃と変動が小さい。両邸における室温の差は17時に最大3℃となる。(3)但し屋根面温度の著しい差がそのまま室内温に反映される訳ではなく、天井ふところによる緩和作用も大きいことが伺える。(4)緑なし住宅の室温や天井内温が緑化住宅のそれと同様な値となるのは21〜22時頃からであり、日中のふく射熱がかなり遅くまで蓄積されていることを如実に示す。
著者
仲間 勇栄
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.127-139, 1998-12-01

Precious animals such as Sapheopipo noguchii or Rallus okinawa inhabit the northern part of mainland of Okinawa. At the place, forestry production is done, and therefore relation with forestry and conservation of nature becomes a big problem currently from the past. In October, 1993,I wrote a paper with a title "Forest development and nature conservation problem in northern part of mainland of Okinawa" in a text for University of the Ryukyus' television broadcast open lecture. In this paper I picked it up from a point of view of the history about the forest felling and its relation with wildlife, and I referred more about the symbiosis of forestry and conservation of nature. Mr. Ito, an ecologist, wrote critiques in a book titled "Forest of Okinawa Yambaru" (October, 1995) about my paper. In the content of Mr. Ito's critique, it was found that there are extremely partial things which ignored my major point at issue, and also there are erroneous determination of facts about the history of forestry of Okinawa Yambaru and the dogmatism therein. I argue against Mr. Ito's thought from the point of view of the quantity of forest felling, felling area, felling place of Okinawa Yambaru, the meaning of mosaic vegetation environment, and the landscape ecology and zoning of Yambaru.
著者
渡辺 信 馬場 繁幸 馬場 繁幸
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

生態ニッチ確立の初期段階において、マングローブ実生が生存するためには通気層が未発達な根における無酸素呼吸によるエネルギー獲得が重要と考えられた。樹種によっては実生が水没してから早い段階で根の通気層が形成されることから、無酸素呼吸から有酸素呼吸に移行するタイミングが樹種間の生存競争に影響を及ぼすと考えられた。一方で、壮齢期のオヒルギが優先するマングローブ林では一年を通じた湛水頻度は低く、樹種間相互の被陰による光不足がマングローブ樹種間の競争に大きな影響を及ぼすことが示唆された。
著者
砂川 洋子 照屋 典子 知念 正佳 笹良 剛史 金城 恵 里見 雄次
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、沖縄県内(離島を含む)の300床以上の総合病院に勤務する看護師1377人を対象として、緩和ケア実践上の悩みや困難感などの現状調査を行った結果、多くの看護師が疼痛緩和や症状緩和、患者家族の意思決定支援、精神的ケアなどで課題を抱えていることを明らかにした。このことを踏まえて、教育プログラムを構築し、アクションリサーチによる介入を行った結果、緩和ケアの知識や技術の獲得につながり、継続教育支援の必要性が示唆された。
著者
豊見山 和行
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究の目的は、近年注目され、かつ多くの成果をあげつつある漂流・漂着という歴史的事象に着目し、琉球史の再構成を図ることにある。漂流・漂着という歴史的事象は、偶発的な海難事故である。しかし、前近代において、それらの難船した船舶や人員に対して各国がどのように対応、処遇していたかという点では、それぞれに差異があった。その差異を検討することは、それぞれの前近代国家が海上交通や海域をどのように認識し、陸の権力として海上交通や海域をどのように処理していたかを明らかにすることにつながると言えよう。そのような問題意識から本研究では、琉球史における漂流・漂着の事例を探索することと同時に、漂流・漂着の前提となる琉球における海運の問題へのアプローチを行うこととした。これまでの琉球史における漂流・漂着の研究は、それ相応の蓄積が行われてきた。それらは、主に琉球列島へ漂着した日本船、朝鮮船、唐船、そしてオランダ船などである。他方、琉球船が中国、朝鮮、東南アジアなどへ漂流・漂着し、それらがどのように処遇され、送還されたかの議論も積み重ねられつつある。しかしながら、日本へ漂着した琉球船に関する研究は十分なものとは言えない状況にある。そのため、このような研究状況を打開するには、まず日本へ漂着した事例とそれに関する史料の探索が必要となる。そのような視角で史料探索した結果、四点の漂着関係文書を発掘することができた。旧来、注目されることのなかった史料であり、今後、琉球船の漂流・漂着関係を検討する上で重要な位置を占めるものと言えよう。本報告書は、第一部<論考篇>と第二部<史料篇>で構成されている。その第二部に上記四点の漂着関係史料を収録した。本研究のもう一つの柱は、琉球における海運の研究である。漂流・漂着という事象の前提には海上交通がある。つまり、海上交通・海運の状況が漂流・漂着という事象を生み出すのであり、漂流・漂着と海運は表裏の関係にあると言えよう。そのような視点で琉球の海上交通・海運を回顧した時、旧来の研究において琉球列島域内の海上交通研究はけっして豊かなものとは言えないことが分かる。むしろ、不十分な研究状況が続いており、そのような研究状況を打開する上でも関係史料の探索・発掘は不可欠の作業と言えよう。そのため、本報告では論考篇では海上交通、海運に関する論考を中心に編むこととした。さらに、史料篇においても三点の海運関係史料を収録した。
著者
町田 宗博 目崎 茂和 山下 欣一 渡邊 欣雄 都築 晶子 三浦 國雄 中村 誠司 高良 倉吉
出版者
琉球大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

本研究の目的は、以下の3点である。1.中国における風水思想とその変遷,及び朝鮮・沖縄におけるその受容と展開を風水書や民間説話などの文献・民俗資料を通して明らかにし,各地域の比較を行う。2.日本の中でも復元可能な沖縄地域の風水説の受容,政治・歴史的背景との関連,近代以降の受容を,文献と野外調査を踏まえて総合的に検討し,その全体像を解明する。3.以上の個別研究を踏まえ,沖縄を中心として韓国・台湾・香港の風水文化の異同を学際的に比較検討する。これらの目的の達成のため,本年度は,2回の研究会と現地検討会(風水巡検)を開催した。特に本年度は,沖縄県石垣島において,風水見(風水師)与儀通事親雲上鄭良佐による与那国島,波照間島を除く全集落を対象とした風水見分文書・「北木山風水記」が見つかり,風水巡検は,同文書と現地集落の対応関係に力点をおいた。この結果,沖縄における風水見の風水知識受容の態様と,具体的集落空間に対する認識形態の一端が明らかになった。このことは,「風水」が,沖縄の景観解読の一つの鍵になりうることをも示唆している。また,研究会においては次の発表を得た。【中国(香港・台湾)の風水】中国大陸の風水研究書について(宮崎順子)【韓国の風水】韓国の風水研究-村落風水を中心に-(朝倉敏夫),現代韓国の風水説(野崎充彦)【沖縄の風水】八重山の村落風水(新城敏男),与儀通事親雲上鄭良佐の風水見分(町田宗博)【インド,タイ】タイ北部の山岳民族の風水について(吉野晃),タミル風水孝-南インド内陸農村社会の自然観と経済観(重松伸司)【公開講演会】中国の呪符について(坂出祥伸),気功と風水(津村喬)【風水巡検】八重山風水文書と現地集落との対応関係(小浜島・竹富島・石垣島)【討論会】村落風水の比較研究-沖縄・韓国・中国-
著者
玉城 政美 赤嶺 政信 高橋 俊三 狩俣 繁久 大胡 太郎 久万田 晋
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、宮古諸島で伝承されている儀礼歌謡を良質な映像と音声で記録し、恒久的に保存することを第一の目的として、来間島、池間島、伊良部島、多良間島などで実践した。記録方式としてデジタルビデオ、デジタル録音テープなどの機器を使用した。次に、活字化された歌謡資料や現地で収集した映像・音声資料から歌詞を翻字し「歌詞データベース」を作成した。あわせて、既存の文献に収録されている歌詞を翻字して「歌詞データベース」に加えた。デジタルテキスト化したことで今後の研究に大いに貢献するであろう。次に、「宮古歌謡語辞典」の基盤を整備した。この辞典は「見出し語」「漢字」「語釈」「用例」などが主要な項目を構成する。宮古歌謡語は、方言と同様に各地域で著しく差がある。そのため発音通りの見出し語では、同じ語を同じ項目にまとめることが不可能となる。見出し語を琉球祖語で表記することによってこの問題は解決できる。こうすることで既刊の『沖縄古語大辞典』と比較検討することが可能となった。つまり、他の諸島の歌謡語と同じ次元で比較検討することが可能となったので、研究の飛躍的な進歩が期待できるようになった。だが、祖語に復元できない未詳語が数多く存在する。宮古歌謡語の研究はこの辞典が土台になるのであるから、やむを得ない面もある。研究の出発点を提示して今後多くの研究者のアクセスをまつことにしたい。なお「語釈」においては『宮古島の歌』に記録された注釈が大いに参考になった。次に、明治期に記録された田島利三郎の『宮古島の歌』を翻刻した。この文献は、原本であり、かつ、宮古歌謡研究の嚆矢というべきものであるにもかかわらず、これまで無視されてきた。従来は、原本ではなく、これの写本が尊重されてきたが、文献学的には非常識な扱いであった。今度の翻刻によって、今後はこの原本が活用されるであろう。
著者
緒方 茂樹
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

●本研究は島嶼圏を抱える沖縄県の地域的な特殊性に鑑み、離島地域である宮古島の地域性を最大限に活かした今後の特別支援教育の在り方を、地域ネットワーク作りを通じて考えていこうとするものである。●平良市教育委員会、宮古教育事務所と連携して、特に公立学校の担当者を対象とした研修会と学校支援を進め、最終年度は伊良部島も含めて全ての地域まで範囲を広げることができた。●平成17年度にまず毎月行われている県の巡回医療相談・訓練に宮古養護学校と連携しながら教育相談窓口を同時に開設した。これを受けて平成18年度はこの相談活動を「出張教育相談」として、宮古地域特別支援連携協議会の事業として正式に取り入れ、養護学校職員が巡回アドバイザーとして正規に相談に当たれるように図った。平成19年度は3年目という事もあり、相談窓口への相談件数が増加し、特に就学前の相談件数が増えたことが特徴的であった。●平成17年度に宮古地域特別支援連携協議会が立ち上がった。平成19年度は、特に専門家チームの在り方や教育相談、学校支援に当たっての課題を整理し、宮古教育事務所及び宮古島市教育委員会と連携しながら学校支援の件数を増やしていった。●最終年度は、教育、医療・保健、福祉、労働の4つの関係分野に加えて特に就学前についても視野を広げ、これまでに個別に行われてきた障害児支援の現状と課題についてさらに調査、研究を進めた。
著者
池田 栄史 根元 謙次 佐伯 弘次 中島 達也 後藤 雅彦
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2006

本研究では伊万里湾全域にわたる物理学的海底音波探査を実施し、詳細海底地形図および地質図を作成した。その上で、海底面および海底堆積層中で検出した音波探査反応体について、9つに類型化し、水中考古学的手法による確認調査を実施した。その結果、類型の一つから元寇沈船と思われる船体の一部と大量の磚を検出した。この調査により、元寇関連遺跡・遺物の把握と解明については、物理学的音波探査手法と水中考古学的手法の融合が有効であることを確認するとともに、これを今後の元寇沈船を含めた海底遺跡に対する新たな調査研究方法として提示するに至った。