著者
田中 きく代 阿河 雄二郎 竹中 興慈 横山 良 金澤 周作 佐保 吉一 田和 正孝 山 泰幸 鈴木 七美 中谷 功治 辻本 庸子 濱口 忠大 笠井 俊和
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、海域史の視点から18・19世紀に北大西洋に出現するワールドの構造に、文化的次元から切り込み、そこにみられた諸関係を全体として捉えるものである。海洋だけでなく、海と陸の境界の地域に、海からのまなざしを照射することで、そこに国家的な枠組みを超えた新たな共時性を映し出せるのではないか。また、海洋を渡る様々なネットワークや結節点に、境界域の小さな共同体を結びつけていくことも可能ではないか。このような着想で、共同の研究会を持ち、各々が現地調査に出た。また、最終年度に、新たなアトランティック・ヒストリーの可能性を模索する国際海洋シンポジウム「海洋ネットワークから捉える大西洋海域史」を開催した。なお、田中きく代、関西学院大学出版会、日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B)研究成果報告書『18・19世紀北大西洋海域における文化空間の解体と再生-「境界域」の視点から-』を、報告書として刊行している。
著者
橋田 光代
出版者
関西学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,抽象化した音楽表情のコントローラに基づき,集約したパラメータ制御によって,簡易に実時間で生き生きとした音楽表情を作りだすインタフェースを開発することを課題とした.具体的には,フレーズ表現とアテンションの移動に着目した複数旋律音楽の表情付けモデル(Pop-E)をベースとした,音楽構造解析支援機能の整備と,スライダによるパラメータセット操作により実時間で演奏を生成するシステムの実装を行う.本年度は,以下の項目についての研究・調査を実施した.1.音楽構造解析支援機能の整備外部ファイルに記述された演奏制御パラメータと,MusicXML形式で記述した音楽構造情報(グループ構造,フレージングの頂点,アテンションパート)を入力とし,オフラインで動作するプロトタイプシステムに対し,グループ構造の解析候補機能と演奏制御パラメータのインタラクティブ制御機能,フレーズとその頂点音の編集機能の実装を行った.2.Pop-Eインタラクティブシステムの実装に向けての調査実装済みのプロトタイプシステムを,操作パラメータの記録機能,実時間演奏レンダリング機能を有するリアルタイム動作版に拡張するために,音楽情報科学研究会,エンターテイメントコンピューティング(EC),インタラクション,ACII2007,NIME2007,の各学会に参加し,演奏表現に関するインタラクティブシステムの類似研究の調査と,MIDIコントローラ,テルミン,Wiiコントローラなどのジェスチャ・センサデバイスに関する情報収集と意見交換を実施した.また,本システムの応用・実利用先の検討として,音楽教育支援に関する予備調査として,小〜中学生を対象としたケーススタディの実施,音楽教育学会への参加・情報収集を行った.
著者
山路 勝彦 棚橋 訓 柄木田 康之 成田 弘成 伊藤 真
出版者
関西学院大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本研究は、平成7年度に引き続き、野外調査の方法によって、オーストロネシア諸族の産育慣行と生命観、そし性差の比較を目的とした研究である。人が産まれ・育つ過程を研究するにあたっては、それぞれの社会が認知する社会的・文化的意味を理解しなければならない。そして、その過程に男女がともに深く関わる以上、性差の文化的意味付けを考える必要がある。平成7、8年度と、二回にわたる野外調査は、ポリネシア(タヒチ、トンガ、ラロトンガ、西サモア)、メラネシア(パプアニューギニアのナカナイ族、およびマヌス島民)、ミクロネシア(ヤップ島民、パラオ島民)、インドネシア(スラベシのブギス族)で実施された。このような広域にわたるオセアニア地域での比較研究は、広い知見を与えてくれた。例えば、インドネシアおよびポリネシアの双方にわたって類似した性差慣行、つまり「第三の性」、もしくは「トランス・ジェンダー」の存在が指摘される。身体的には男でありながら、家事仕事など女の役割を受け持ち、女としての自認を持つ、この「第三の性」の比較研究は、性差の多様な現象形態を浮き彫りにするのに、よく貢献する。男・女という分類は身体的形質だけに基づいているのではなく、社会的・文化的に規定された分類でもある。とすれば、性差の現れ方は多様である。社会構造、文化的背景を考慮しながらの、両地域での比較研究は有益である。他方、この「第三の性」は男らしさ、女らしさのイメージについて、ポリネシア的な特徴を教えてくれる。この「らしさ」は、幼少年期の育児方法と深く関係していて、子ども達のしつけ、遊びなどの参与観察を通してその調査は実施された。例えばトンガでは、男は農耕、女は家事というように、はっきりとした性差の役割分担が見られる一方で、この二極分化に反するように、異性の役割を受け持つ存在があり、これが「第三の性」を生み出していると結論できる。そして、その異性の仕事を受け持つ男の子は、幼少年期から母親との愛着関係が濃密であった。ミクロネシアでも、性と生殖、産育慣行の調査は続行されるとともに、これらの慣行を支える社会・文化的環境を視野にいれ、その変化を探求できた。例えば、結婚儀礼についての詳述な資料を得たほかに、第一子出産に伴う儀礼的交換の実態を把握でき、そして日本時代から現代に至る変化の様相も浮き彫りにされた。パラオ島では、大首長の即位式で、首長は男と女の双方の装束を身にまとい、両性具有の姿態で登場する場面がある。この儀礼的文脈での性差の研究も、大きな収穫であった。この両性具有の研究もまた、今後の性差研究に新しい展望を切り開くであろう。メラネシアでは、昨年度に引き続きマヌス島民の調査を行い、出産をめぐる諸儀礼、禁忌などの宗教的観念を広い観点から調査した。とりわけ神話・歌謡・詩の資料収集に努め、性と生殖に関する豊富な資料(イディオム)を採集したことは大きな収穫であった。本研究の意義は、オセアニア地域での性差観念の比較研究と並んで、出産をめぐる諸儀礼、禁忌などの宗教的観念を広い観点から調査したことにある。その一例として、月経や出産時の血の穢れなどの禁忌の事例を探求した。とりわけメラネシアで得られたこの種の知見は、今後の日本の事例をも含めて、比較研究の題材となりうる。オセアニア地域ではまた、植物の成長過程が様々な社会関係と比喩的に語られる場合が多い。例えば、人間の成長過程や親族(親子)関係などは、播種(挿し木)から成長し、やがて実を結ぶまでの植物の成長過程と対比して語られる場合が多い。本研究は、こうした象徴的分析法を通して本題に取り組んだことでも独創的であった。
著者
関根 孝道
出版者
関西学院大学
雑誌
総合政策研究 (ISSN:1341996X)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.117-156, 2005-09-20

The Amami lawsuit for "the rights of nature" was filed in 1995 at Kagoshima District Court. Since Amami's black rabbit population and other 3 birds' species were named as co-plaintiffs together with humanbeings, the case was so well-publicized that the notion of rights of nature has come to attract a wide range of public attention. In societies where the proposition that nature should have its own rights is often seriously advocated, co-existence between humanbeings and nature is more vigorously sought for the sake of nature. Although the part of complaint in which the animals' species are designated as co-plaintiffs was ordered to delete and the case itself was dismissed for the lack of standing, the court decision implied the defect of the modern civil law's dichotomy that only humanbeings were allowed to enjoy the status of right-holders. Also the court shared the view that such a legal system as enabled those who were acquainted with the nature and motivated for its protection to file a lawsuit for the environment need to be contemplated given the seriousness of environmental destruction in this century. This article points out the court decision's significance together with its limitations as well. First, the case's factual settings are introduced and analyzed. Secondly, the plaintiff's assertions are examined according to the decision's summary of assertions in contrast with the complaint and other legal briefs submitted. Then the court' judgement are explained and commented with the emphasis on environmental standing issues. Finally, this article raises the queries with regard to the right of nature and pinpoints the unsolved legal issues that the decision left for us as a homework.
著者
門田 修平 野呂 忠司 長谷 尚弥 島本 たい子 越智 徹
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では「コンピュータ版英語語彙処理テスト開発に関する研究を、その中心的な成果として報告し、大規模なテストの妥当性の検証を行った。その結果、英語の語彙処理能力において、日本人英語学習者の場合には、「語彙知識量(語彙知識の正確さ)」と「語彙知識運用度(語彙アクセスの流暢性)」の間に乖離があり、この乖離の程度が、ある個人(被験者)内でも、どのようなプライム語の後で、どのターゲット語にアクセスするかによって大いに変わってくるという結論に達した。
著者
内田 充美 山内 真理 小島 篤博
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

大学英語教育が取り組むべき課題のうち習熟度の低い学習者に対象を絞り,整った英語の文章を書くことができるようになるために何が問題となっているのかを明らかにすることを主たる研究目的とした.そのために,まず,中間言語資料(大学生の書いた英文)を継続的に収集し,自前の学習者コーパスとして利用できる手順を確立した.作成した資料の分析から,日本語の文法に引きずられたと考えられる誤用(母語の干渉)を幅広い範囲で確認した.これらの特徴はいずれも対照言語学的に見ても意味深いものであり,英語と日本語のように言語間距離が大きい場合においては特に,言語学の知見に基づいた指導が有効であることを示しているといえる.
著者
亀田 啓悟
出版者
関西学院大学
雑誌
総合政策研究 (ISSN:1341996X)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-10, 2006-11

The purpose of this paper is to review recent literatures on Non-Keynesian effects pioneered by Giavazzi and Pagano (1990), and discuss the current situation on domestic studies in this area. The results are: (1) Perotti (1999) and Hjelm (2002) are superior to the others since only these two studies have theoretical foundations for estimation functions, (2) we have only two domestic studies in this field, Nakazato (2002) and Takeda, Komaki and Yajima (2005), and both of them applied Perotti (1999)'s frameworks, (3) therefore, we should analyze this topic with Hjelm (2002)'s frameworks as well.
著者
三浦 信
出版者
関西学院大学
雑誌
商學論究 (ISSN:02872552)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.59-71, 1955-06
著者
松本 有一
出版者
関西学院大学
雑誌
經濟學論究 (ISSN:02868032)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.1-14, 2006-09

Professor Oka published a textbook on environmental economics in 2006, which criticized the energy analysis by Georgescu-Roegen based on the entropy law. However, Oka approves the significance of the entropy law and attempts to construct environmental macroeconomics. This paper will prove that Oka misinterpreted Georgescu-Roegen's analysis and will suggest a direction for constructing environmental macroeconomics based on the entropy law.