著者
前田 智子 浅川 具美 森田 尚文
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1139-1148, 1999

スポンジケーキは卵の起泡性を利用した菓子であり焼成後のケーキの組織や品質に生地中の気泡が与える影響は大きいと考えられる.そこで焼成前の生地の気泡, すなわち卵泡沫にバターを直接添加し, 泡沫の性状におよぼすバター添加温度の影響を明らかにした.泡沫は, 卵黄と卵白の両者を含む混合卵泡沫 (卵黄80g, 卵白120g), 卵黄のみの卵黄泡沫 (卵黄80g, 蒸留水105.6g), 卵白のみの卵白泡沫 (卵白80g, 蒸留水40.8g) の3種類を調製した.バターの添加量は30, 50,809とし添加温度は40, 75, 98℃とした.また対照としてバター無添加のものを調製した.<BR>(1) バター添加温度が高くなると, 混合卵と卵黄泡沫の比重および気泡力変動率は小さく, 戻り液量は少なくなり気泡保持と泡沫安定性が高まった.<BR>(2) バター添加温度が高くなると, 卵白泡沫の戻り液量は多くなり泡沫安定性が低下した.<BR>(3) 混合卵泡沫の安定性には卵黄, 卵白単独ではなく, 乳化性の高いLDLを含む卵黄と, 泡沫安定性の高いオボアルブミンを含む卵白と両方の存在が必要であると考えられた.<BR>以上の結果から, 混合卵に高温のバターを添加すると乳化安定性に優れたLDLを含む卵黄が, 油脂となじみの悪い卵白泡沫の破泡を抑制する.さらに卵白よりも低温で完全凝固する熱凝固性に優れた卵黄は, 若干の熱変性を生じ, 気泡膜を強化する結果, 泡沫安定性を高めると推察される.また, 卵白泡沫は油脂 (バター) の添加によって不安定とはなるが, 本来卵黄よりも泡沫安定性の高いオボアルブミンを含む卵白の存在は, 高温のバターを添加された混合卵泡沫の安定性には不可欠であると考えられる.このような卵黄, 卵白両成分の相互作用を考えると, スポンジケーキの調製において高温のバターを添加することは卵黄, 卵白両成分を別々に取り扱う別立て法ではなく, 両者をあらかじめ混合し泡立てる共立て法に用いることが特に有効であると推察される.したがって, 共立て法により調製された生地中の気泡保持と焼成中のケーキバッターの膨化は, 高温のバターを添加することによってより高められると推察され, これは前報の結果をさらに裏付けるものと考えられた.
著者
額田 清
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.93-97, 1965-04-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
7
著者
杉山 みち子 中島 昌子 森内 幸子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.323-330, 1986-05-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
17

中年期男性 (40~60歳) の身体的な機能低下から老化を意識する年齢ならびにその様相について調査・観察を行った.1) 男性においては, 身体的な機能低下 (老眼鏡の使用, 眼精疲労, 睡眠障害など), ならびに精神・心理的な変化 (物忘れしやすくなった, 懐古的になった) を意識するものは, 45歳から50歳にかけて比較的多く観察された.2) 身体的な機能低下の後に, 精神・心理的な変化のみられることが, 概括的に観察された.3) 眼精疲労を意識する年齢は, 他の身体的な機能低下ならびに精神・心理的な変化を意識する年齢と高い相関関係を示した.4) 嗜好の変化を意識しているものは約10%であった.5) 眼精疲労を意識する年齢には, 居住地域, 職業, 性格などの影響する可能性が観察された.
著者
加藤 寿美子 松生 勝
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.3-12, 1983-01-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
17

馬鈴薯澱粉の糊化過程における構造と物性の変化について検討した.糊化のさいの澱粉濃度依存性については, 1~6%懸濁液では低濃度ほど最高粘度値は小で, 最高粘度到達温度は高く, 光散乱像, 偏光十字の消失は速やかであった.加熱過程における濃度別粘度特性と偏光顕微鏡ならびに光散乱像による粒子の崩壊挙動は矛盾しなかった.加熱が急速に進行する場合は, ミセルのランダムな配向やその崩壊は緩慢な加熱より遅れて生じた.単一馬鈴薯澱粉粒の光散乱 {象は粒子の形状や内部構造を反映し, 小角度側のローブは楕円体の長軸方向に垂直に伸び, さらに高角度側に高次の強度極大を示した.これは形成核を中心に発達した同心円状の層状組織の半径方向への周期性によるものと推定される.
著者
湯浅(小島) 明子 亀井 正治 湯浅 勳
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.166, 2005 (Released:2005-12-08)

【目的】ニンジン葉は、根の部分に比べて栄養価が高く微量栄養素も豊富に含まれているのにもかかわらず、一般的に食用とされずに廃棄物として処理されている。ニンジン葉は、ルテオリンやアピゲニンなどのフラボノイドが配糖体の形で含まれており、これらのフラボノイドは、抗ガン作用やフリーラジカル捕捉能などの様々な生理作用を有することが報告されている。しかし、ニンジン葉の生理作用についての報告はほとんど見当たらない。そこで、本研究では、ニンジン葉の抗ガン作用について検討した。【方法】ガン細胞としてエールリッヒ腹水ガン細胞を用いた。ニンジン葉の乾燥粉末を有機溶媒(エタノール、クロロホルム、酢酸エチル、ブタノール)で分画し、凍結乾燥したものを実験に供した。細胞増殖能、細胞生存率および細胞周期を測定した。【結果】ガン細胞の増殖は、ニンジン葉の各抽出画分を添加することによって時間および濃度依存的に抑制された。細胞生存率に対する各抽出画分の影響を調べたところ、クロロホルム抽出画分は細胞生存率を時間および濃度依存的に抑制した。また、酢酸エチル抽出画分は細胞生存率を時間依存的に低下した。しかし、ブタノール抽出画分における細胞生存率は全く変化しなかった。さらに、これらの抽出画分の細胞周期におよぼす影響を調べたところ、ニンジン葉の各抽出画分は細胞周期をG2/M期(細胞分裂準備期/分裂期)で停止させた。【結論】ニンジン葉抽出物はガン細胞の増殖抑制効果を有することが認められた。そのメカニズムとして、細胞周期のG2/M期の停止が誘導されたことから、ニンジン葉抽出物は細胞分裂を阻止することによってガン細胞の増殖を抑制することが示唆された。
著者
妻鹿 絢子 藤木 澄子 荒川 信彦
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.618-621, 1979-08-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8

市販牛肉を実際の調理のさいのマリネ条件にもとづき, 角切り肉でマリネ処理した場合にも, 前報のホモジネートを用いた実験でみられたと同様のプロテオリシスが進行し, 筋原繊維蛋白質の部分分解および低分子化が起こることが認められた.また, マリネ処理において針入度の増加と切断応力の減少から肉の軟化が認められ, 肉重量の増加から保水性の増大が認められた.さらに, マリネ処理による低pHにおいて, 肉中のプロテアーゼにより筋原繊維蛋白質が分解し, 比較的高分子の蛋白質は保水性の増大にともなって肉漿中に保持されアミノ酸等の低分子物質は浸漬外液中に溶出した.
著者
渋川 祥子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.591-595, 1979-08-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
5
被引用文献数
4

圧力鍋で煮豆を作るときの加熱条件, および煮豆の特性を常圧下で作った煮豆と比較した結果, 次のことがらが明らかとなった.1) 予備浸漬により十分に吸水した大豆は, 圧力鍋加熱では, 蒸気噴出後の加熱継続時間0~1分, むらし時間5分でやわらかくなる.常圧下加熱にくらべ, 所要時間は1/3~1/4, ガス消費量は, 約1/4であった.2) 圧力鍋によるゆで豆は, 常法にくらべ, 甘味が強くねっとりした口触りであり, 煮豆として好まれる.3) 甘味が強いのは, 加熱時間が短いため, 煮汁中へ溶出する糖量が少なく, 豆中め糖量が多いためであり, ねっとりしているのは, 同じ理由で, 豆中の水溶性ペクチン量が多いためと考えられる.4) ゆで豆を加熱しながら調味すること, 圧力鍋ゆで豆は硬さに変化がないが, 常法のゆで豆は硬くなる.しかし, 調味料の浸透量には差がない.
著者
阿部 稚里 池田 彩子 山下 かなへ 市川 富夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.187, 2005 (Released:2005-12-08)

【目的】私達は、日常摂取しているビタミンEの約半分を植物油から摂取している。サフラワー油、サンフラワー油、オリーブ油などに含まれるビタミンEは、生理活性が最も高いα-トコフェロールがほとんどであるが、コーン油、大豆油、ゴマ油などには、α-トコフェロールよりもγ-トコフェロールが多く含まれる。そこで、本研究では、ビタミンEとしてα-トコフェロールのみを摂取した場合と、α-およびγ-トコフェロールを同時に摂取した場合の体内のα-トコフェロール濃度を、ラットを用いて比較した。【方法】ビタミンE無添加飼料を4週間摂取させたラットに、α-またはγ-トコフェロールのみを各10mg、あるいはα-およびγ-トコフェロール各10mgの混合物をそれぞれ胃内に経口投与し、8または24時間後に屠殺した。血清および組織のα-およびγ-トコフェロールを、HPLC法で定量した。【結果】α-トコフェロールの摂取によって、8時間後には血清、肝臓、肺、副腎のα-トコフェロール濃度は著しく上昇したが、心臓、筋肉、脂肪組織、皮膚などでは、24時間後でもその上昇の程度は小さかった。α-トコフェロールのみを摂取した場合と、α-およびγ-トコフェロールを同時に摂取した場合で、血清および肝臓のα-トコフェロール濃度に変化は見られなかったが、肺、心臓、大動脈などのα-トコフェロール濃度は、γ-トコフェロールの同時摂取によって有意に低下した。以上の結果から、体内のα-トコフェロール濃度は、γ-トコフェロール摂取によって低下することが明らかになり、ビタミンE同族体の摂取量によっては、ビタミンE要求量が増加する可能性が示された。
著者
伊東 きぬゑ
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.171-176, 1959-10-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
9

魚肉蛋白の基本調理形態による消化率の変化を検討するために、生魚、30%塩魚干魚(素干)、酢魚(30%酢)、煮魚(白煮)、蒸魚(素蒸)、炒焼魚(素ソテー)、揚魚(空揚)とした鮒肉を用い総合消化による人工消化試験を行った。その結果(加熱調理は総合消化のみ、加熱調理以外のものは総合消化に自己消化の加わったものについてである)。生魚、煮魚、蒸魚、干魚は最も良好であった。酢魚、炒焼魚、揚魚はこれに次ぎ、焼魚は稍消化不良であった。塩魚は全消化時間通じて著しく消化不良であった。自己消化は微々たるものであった。そのうち塩魚は最も低率であった。以上から基本調理法としては、消化の点から刺身、煮物、蒸物、干魚粉物が最もよく、酢物、炒焼物、揚物がこれに次ぎ焼物は劣り、塩物は著しく不良な調理加工法と言い得る。但しこれらの応用形態については今後の研究問題であり又調理のために生ずる可溶性窒素、アミノ態窒素、ペプトン態窒素についても検討せねばならぬと思う。
著者
長尾 慶子 加藤 由美子 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.677-682, 1988-07-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1

コロッケの破裂の機購および破裂を防ぐ揚げ条件を設定することを目的とし, 乾燥マッシュポテトを用いて加水量を変えたコロッケを調製, 実験し以下の結果を得た.1) コロッケの破裂は水分量および揚げ温度, 依存し, 水分が少ないほど, また揚げ温度が高いほど破裂しなかった.2) 油温200℃で揚げたときの, コロッケ破裂時の表層部 (1 mm 内側) 温度, 2 mm, 5 mm 内側および中心部温度は 118, 70, 40 および 22 ℃ であり中心部はほとんど変化がなかった.3) 破裂はコロッケの外皮付近で起きており, いずれの試料も表層部温度は100℃ 以上で破裂した.4) コロッケ外皮の破断強度は, 高水分試料のほうが小さく, また油温が高いほうが大となる傾向にあった.5) 破裂しやすい高水分試料の表層部を, 破裂の起きにくい低水分試料でおきかえると破裂は防止できた.6) 破裂は表層部の蒸気圧と皮の強度が関与している.
著者
岡村 浩 角田 由美子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.1017-1023, 1989-11-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
21

The improvement of water resistance of natural leather is a worldwide subject of investigation in leather industries.The present study was carried out to examine the effects of tanning and retanning agents on the water vapour and liquid water absorbability of collagen fibers as a fundamental study. By a recovery process with a less degree of alkali treatment, collagen fibers were obtained from the shoulder part of salted steer hide (58 lbs.). When the collagen fibers were treated with vegetable tannin or basic chromium sulfate, their absorbability of collagen fibers for the vapour and liquid water decreased as the degree of tanning increased. Such decreases were greater in case of chrome tanning at high pH values. Retanning with syntans and vegetable tannin showed a tendency to increase the vapour and liquid water absorbability of chrome collagen fibers. On the other hand, retanning of chrome collagen fibers with resin type syntans, acrylic resin (emulsion type) and inorganic tanning agent was recognized to cause a reverse effect.
著者
古館 明洋 目黒 孝司
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.71-74, 2001-01-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
8
被引用文献数
3

(1) 市販ジャガイモの遊離アミノ酸含量は, 男爵イモでメークインよりも有意に多く, 品種間差が認められた.(2) 男爵イモとメークインの遊離アミノ酸含量は収穫期が遅くなるほど増加し, 増加分の約半分はアスパラギンであった.(3) 男爵イモの遊離アミノ酸含量は窒素施肥量を増肥するにつれ増加し, 特に, アスパラギン, グルタミンの増加が大きかった.(4) 煮汁への遊離アミノ酸の溶出率は男爵イモ及びメークインとも約60%程度であった.グルタミン酸の溶出量は男爵イモでメークインより多く, 塊茎中の含量の違いを反映していた.(5) 一般的な調理の場合, ジャガイモの煮汁中のグルタミン酸は呈味の閾値を越えるものと考えられた.
著者
高柳 茂代 黒川 理加 河村 フジ子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.519-523, 1992-06-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
13

ゼラチンゾルにパイナップル汁を添加したゾルおよびゲルの特性について検討した結果を要約すると次の通りである.(1) パイナップルの頭部は, 中央部, 尾部に比べて, プロテアーゼ活性が強い.(2) 10%ゼラチンゾルにパイナップル汁を全ゾル量の25%添加した場合でも, 添加直後よりゾルの粘度が低下する.5%以上添加では, ゲル形成能は全く消失する.(3) ゼラチンゾルに, あらかじめ放置したパイナップル汁を添加すると, ゾルの粘度低下が抑制された.(4) ゼラチンゾルのpHを5.0または8.0にしてパイナップル汁を添加すると, ゾルの粘度およびゲルの破断応力は最低となるが, ゼラチンゾルのpHを3.0または9.0にすると, 十分なゲル形成能を維持し得た.
著者
那須 佳子 中沢 文子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.396-400, 1981-06-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6

苺ジャムの色について検討し, 次の結果を得た.1) 官能検査より, 電子レンジ加熱ジャムは電熱器加熱ジャムに比べ外観がよく色鮮やかで柔らかである.2) 電子レンジ加熱ジャムは電熱器加熱ジャムより可視部の吸光度が高く, レモン汁添加は吸光度を高める効果をはたす.3) 電子レンジ加熱の場合は, 加熱時間を増すにつれて可視部の吸光度が増大し, 見かけ上色鮮やかになるのに対し, 電熱器加熱の場合は, 加熱時間を増すといったん色鮮やかになり, 加熱時間が30分を越すと可視部の吸光度は減少し退色が肉眼でも明らかになる.4) 電子レンジ加熱ジャムにおいても実際はアントシアン色素が加熱によって崩壊しており, 見かけの色鮮やかさの原因は水分蒸発によりアントシアン濃度が高くなるからである.5) 室温で保存する場合, レモン汁添加は退色を遅延させるが, その効果は保存後5ヵ月で消失する.6) 室温保存では約3ヵ月でアントシアン色素の可視吸収はほとんど消失するが, 一方, 冷蔵庫保存ではほとんど退色せず, 冷蔵庫保存1年のものと室温保存1ヵ月のものとではほぼ同じような退色状態である.
著者
土屋 房江 倉田 美恵 辻 祥子 奥山 清美 塩田 芳之
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.145-149, 1981-02-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
4

1) 岡山県ではこんにゃく業者の8割弱, 広島県では7割強が地域食品認証制度に加入しているが, その製品すべてに認証マークをつけているわけではない. 製造年月日は購入したこんにゃくの35.4%しか表示されておらず, 製造業者名その他まったく表示のないものが65点中2 点あり改善の必要があると思われる.2) 価格は100g当たり17.7~54.7円, 平均27.4円で同じ製品が商店により65円および100円で売られていた例があった.3) 板こんにゃくでは長方形および正方形があり, 玉こんにゃくは形, 大きさがさまざまで, 1袋中のこんにゃく重量は 201~250gのものが最も多かったが表示重量より少ないものが7割強もあった. 注入液は 4~350mlで大部分ヒートシールされていたが, 上部を結んだもの, 輪ゴム止めのものもあった.4) 水分97~98%, 灰分0.2~0.3%, カルシウム60~70mg%, pH10.8~11.2の範囲のこんにゃくが最も多かった.5) 物性は製造業者により, また, 部位によっても異なるものがあり, 原料や製法の違い, こんにゃく糊の調製の仕方, 凝固剤の加え方等の違いによるものと思われる.6) 10%食塩水中で3時間加熱することにより, 水分は平均9.0%減少, pH は平均約1.6低下, カルシウム含量は平均約1/2に減少した. 硬さ, 破断力は増したが部位によるばらつきが大となった. また試食の結果, 物性値の中間のものが好まれた.
著者
野口 道子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.166-171, 1970-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
6
被引用文献数
1

A mixture of egg yolks and hot water was beaten with a “Mixmaster of Sunbeam”. Other substances were added into the mixture in some experiments. Effects of the consistency of egg yolk, the temperature of water and added substances on the formation and stability of the egg yolk foam were studied. The effect of the egg yolk foam on the sponge cake was also studied. The following results were obtained.1. When much water is added to egg yolks, more foam is made, but the stability of foam decreases.2. When the temperature of water added to egg yolks is high, the formation of foam is accelerated, and its stability increases.3. One per cent of tartaric acid in the mixture of egg yolks and water retards the formation of foam, but none of oil, sugar and salt of 1% does not affect it.4. When the more sugar is added, the less foam is formed, but the stability increases.5. When whipped egg whites are mixed in batter together with beaten yolks, soft texture of sponge cake is obtained.
著者
岡本 洋子 田口 田鶴子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.621-631, 1997-07-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2

A survey of the effect childhood diet on the taste sensitivity and personality in later life was conducted on college students from 18 to 20 years of age (93 females). The sensitivity toward sweet, sour, salty, bitter and umami tastes was measured by using aqueous solutions.The students recalled the tastes and nutritional balance from childhood when preparing daily meals. Dishes such as Hamburg steak, curry and rice, and nimono were eaten, together with snacks, cakes and sweet rolls by most of the 93 subjects during childhood.Most of the subjects recalled eating tasty and enjoyable meals around the family dinner table, and that their mothers prepared everything from scratch. A few of the students recalled eating meals alone and having a lot of fast food.Taste sensitivity tests with aqueous solutions showed that the subjects could perceive 0.1-0. 6% of sucrose, 0.01-0.05% of citric acid, 0.01-0.06% of sodium chloride, 1.0 × 10-9-1.0 × 10-4% of quinine, and 0.005-0.035% of MSG. Little difference was found between the diet in childhood and the subsequent taste sensitivity.There was, however, a significant correlation between the diet in childhood and 8 of the 12 personality traits. A balanced diet in childhood had a good effect on personality (i.e., absence of depression, an active demeanor and social extravesion).We conclude that a good diet during childhood had little influence on taste sensitivity in later life, while it had a positive influence on personality development.
著者
山越 成美
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.518-527, 1985-07-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
8

The purpose of this research is to make clear the actual conditions of houseworking of non-employed wives during their pregnancy.The results of this investigation were obtained by the answers from 70 non-employed wives who are pregnant. The data were collected from questionnaires and interviews that were made in Ichihara from July to November in 1983.The results are as follows : 1) During pregnant term, especially at early and advanced stages of pregnancy, both hours and quantity of houseworking of non-employed wives show reduction.2) Houseworking that is reduced during pregnant term is often complemented by family members or left undone.3) Many of non-employed wives who are pregnant feel the difficulties at managing houseworking which requires their bending posture or long-time standing such as cooking, bath-clean.ing, wiping floor, and folding up and spreading beddings.
著者
増田 美子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.973-982, 2001-10-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
12

A certain style of mourning dress was established in the first part of the Heian period, and while almost all of the basic styles. Continued to be worn in later years, the more formal style did not appear until the latter part of the period. The formal style was called Sokutai and the informal one was known as Noushi, the same as those for the Kichibuku (normal dress), while the color itself played a key role.In the case of the Ryoan Shozoku, dressing in a blackish Tsurubami (dark brown) was normal, and Ihou (outer garments designed for each job ranking) was worn for service in the Imperial Palace.For public funeral occasions, mourning dress other than the Ryoan were Mumon Kan (plain cap without any pattern) and Nibiiro Hou (dark grey outer garments), Mumon Kan and Mumon Hou (outer garments without any pattern), and Aya Kan (cap with a pattern) and Aya Hou (outer garments with patterns) in descending order of relationship intimacy. The colors of Sitagasane (underwear) and Hakama (pants) were Nibiiro, Ao Nibiiro (bluish dark grey), Ao Kuchibairo (bluish brown) Ki Kuchibairo (yellowish brown) in descending order of the intimacy of relationship. Each person selected a combination of the style of the costume and the color from among those mentioned above, based on his or her own state of mind at each occasion. After the 49th day from the passing, which came to represent the end of one of the mourning periods, the color of the mourning dresses were gradually changed to lighter ones. Private mourning dress was also worn in accordance with public dress in principle, and females also changed their Kichibuku to those of dark grey colors.
著者
藤本 この美 草野 篤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.108, 2003 (Released:2004-05-25)

【目的】日清・日露戦争期から日本内外の軍隊買春は拡大し、日中戦争の頃には軍そのものが戦場に「慰安所」を設置し、「慰安婦」を従軍させるといった「軍隊慰安婦」政策が実行された。政府はこれまで慰安所への関与は認めているものの、あくまで業者の経営によるものと主体性を否定している。そこで本研究では、公文書から当時の政府や軍の主体的関与を明らかにし、同時にこの問題を日本軍隊の特殊性や植民地支配のあり方、様々な人権差別が交錯した問題として捉え、慰安婦制度を生んだ社会的背景を考察する。【方法】朱徳蘭編『台湾慰安婦関係資料集』(不二出版、2001年)を用いて、公文書から軍や政府の主体的関与を探し出す。また、藤目ゆき氏の研究を参考に「性」・「階級」・「民族」という視点から、基本的人権をキーワードに論述する。【結果】台湾における慰安婦徴集・送出には「軍→内務省→台湾総督府→州知事・庁長→郡守・警察署長→業者」、海南島における慰安所の建設・経営には「軍→台湾総督府→台湾拓殖株式会社→福大公司→業者」といった組織の存在が明らかとなった。軍や政府の主体的関与が認められ、同時に半官半民の台湾拓殖株式会社の関与、さらにそれを隠蔽するため福大公司という子会社をトンネルとして融資をした事実も判明した。また社会的背景としては、天皇制国家・家父長制社会・差別社会の存在があったと考察される。女性は男によって「モノ」化され、天皇には侵略戦争のための「コマ」として扱われ、差別によって意思を遮断されたのである。今後女性の性の蹂躙をなくすためには、女性が自分の生き方と性のあり方を自分で決定できるような社会の土壌をつくっていくことが重要である。