著者
川畑 昌子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.9, pp.673-678, 1981-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
7

For the purpose of clarifying the diurnal change of the human height measurements, the stature, cervicale height and right spina iliaca anterior superior height of 10 female students (19-26 years of age) were taken twice in one and another day. The measurement was practiced at 22 o'clock and every 2 hr from 6 (just after the hour of rising) to 16 o'clock on the following day, i.e., 14 times for each subject.The Variance Analysis Method was made using 3 factors; measurement hours (6 levels), subjects (10 levels), and measurement dates (2 levels). Reduction occured on the stature, head and cervical height, and lower limb height were discussed respectively.The following conclusions were obtained : 1) The diurnal change takes place mainly on the trunk.2) Total reduction of the stature from 6 to 16 o'clock is 1.5 cm on an average. Sixty % of that occurs about 8 o'clock and 80% of that does about 10 o'clock.3) It is desirable to avoid the stature measurement within 3 hr after rising, because the physiological statural reduction during this period exceeds the measurement errors.
著者
斎藤 輝子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.515-520, 1979

In this paper, the development of "Kosode" in the middle and the end of the Heian era (10 C.-12 C.) is studied. The study is done from a viewpoint of a life of court-nobles and that of common people.<BR>For common people, in the beginning of the 12th century, "Kosode" was already used as everyday clothes. For them "Kosode" was outwears as well as underwears. "Kosode" was the production of their sense of simplicity and practicability.<BR>In a life of 'Samurai', "Kosode" was used as outwears in the Meiji era (1159-1160) and they began to use colored "Kosode" earlier than court-nobles.<BR>In a life of court-nobles, it is not clear when "Kosode" began to be used. For them "Kosode" was not outwears.
著者
緑川 知子 登倉 尋實
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.323-330, 1994-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
30
被引用文献数
2

寒冷環境における帽子の保温効果について, 着帽による被覆部の保温効果が, 体全体からの熱放散をどれほど減少させているか, 果たして直腸温・鼓膜温にどれほど影響を及ぼしているのかを, 温熱生理学の立場から明らかにするために, 7人の女子学生を対象に, 環境温10℃の寒冷環境において, ウサギの毛皮でできている防寒帽着用時と無帽時について, 体温調節反応を調べた.得られた主な知見は, 以下の通りである.1) 環境温19℃における鼓膜温は, 無帽時36.67±0.11℃, 着帽時36.65±0.12℃で, ほぼ同じレベルであったが, 寒冷暴露直後, いずれの場合にも約0.1℃下降した.無帽時の鼓膜温は下がり続け36.54±0.13℃に至ったが, 着帽時の鼓膜温は, 寒冷環境において着帽により, むしろ0.3℃の上昇を示し, 36.77±0.12℃となり, 無帽時より有意に高いレベルを維持した。有風下では, 無帽時には0.25±0.05℃の下降を示したが, 着帽時には0.11±0.03℃しか下降しなかった.2) 頭頂部毛髪上温は, 前室では無帽時には29.8±0.9℃, 着帽時に30.8±0.5℃で, ほぼ同じレベルであったが, 寒冷暴露後無帽時に直ちに約8℃下降し21.5±0.7℃になった後, 有風時には更に4.6℃の下降を示した.寒冷暴露後の着帽時の頭頂部毛髪上温は, むしろ1.7±0.5℃上昇を示し, 無帽時よりも有意に高い32.9±0.5℃のレベルを維持した。有風時も僅か0.5±0.7℃しか変化しなかった。帽子の表面温は, 前室に置いているときにはほぼ室温と同じ19℃であったが, 寒冷暴露後は, 環境温に近い13℃を示した。これは, 無帽時の頭頂部毛髪上温21.5±0.7℃よりも, 更に低い値であった.3) 前額部表面温は, 前室では無帽時に32.9±0.1℃, 着帽時に32.4±0.2℃でほぼ同じであったが, 寒冷暴露後は, 無帽時に2.4±0.4℃下降を示し30.3±0.4℃となり, 有風時にはさらに5.6±0.6℃下降した.着帽時には寒冷暴露後1.9±0.2℃上昇を示し, 無帽時よりも有意に高い34.6±0.2℃となり, 有風時も0.7±0.2℃の下降しか認められなかった.4) 前室における直腸温は, 無帽時には37.02±0.09℃, 着帽時には37.00±0.12℃で, ほぼ同じであった.寒冷有風時における直腸温は, 無帽時には0.02±0.02℃の有意な下降を示したが, 着帽時には変化が認められなかった.5) 無帽時の心拍数は前室における78.41±11.9beats/11ninから, 寒冷暴露後有意に低下して68.9±10.7beats/minになったが, 着帽時には有意な低下は認められなかった (前室では76.9±12.7beats/min, 寒冷暴露後71.8±11.5beats/min).寒冷環境並びに有風下において, 耳部は着帽時にも無帽時と同様に露出されていたにも拘わらず, 鼓膜温が着帽時に無帽時よりも有意に高く保たれたのは, 着帽時には帽子の保温効果により頭頂部毛髪上温, 前額部皮膚温が無帽時のように低下しなかったことにより, 組織伝導による熱放散が少なく, また対向流熱交換も行われて, 鼓膜温を低下させなかったと考察した.無帽時に認められた寒冷有風時における直腸温の有意な下降が, 着帽時には認められなかった.これは, 着帽によって体全体からの熱放散が抑制されたからと考えられる。また, 着帽時には前額部が保温されたので, 無帽時に認められた寒冷刺激による徐脈が, 着帽時には消失した.
著者
荒木 裕子 山本 直子 上浦 沙友里 江本 彩乃 丸井 正樹
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.197, 2015 (Released:2015-07-15)

【目的】ネームはタイ北部で生産される伝統的な発酵ソーセージである。その製法は、新鮮な豚肉に食塩、にんにく、唐辛子、糯米飯を入れ常温で数日間発酵させて製造する。ネームは乳酸発酵により、pHが低下し、微生物の増殖が抑制され、完成したネームは適度に酸味があり、生食する人もいる。近年、日本でも製造され、市販品も見られるが、我が国ではネームに関する研究が少なく、安全性の検討もされていない。本研究ではネームを作製し、細菌叢の変化やpHの変化を経時的に調査した。【方法】試験試料として1)ネームパウダー添加区2)ネームパウダー無添加区 3)ネームパウダー、にんにく、唐辛子無添加区の3種のネームを調製した。調製開始から完成までの4日間、24時間毎に採取して実験試料とした。細菌の測定では、一般生菌数、大腸菌群の測定、乳酸菌の測定をおこない、pHの測定も実施した。【結果】ネームパウダー添加区では、ネームパウダーの主成分である無水グルコン酸により、調製後即時にpHの低下が見られ、細菌の増殖も抑制されていた。2)、3)の製法では、発酵1日目では大腸菌群が確認された。しかし、発酵の進行に伴い乳酸菌数が増加し、pHも低下した。それに伴い大腸菌群数が極めて減少した。ネームは製造手法により、発酵中の細菌叢や細菌数に差が見られたが、発酵完了時では全試料でpH低下がみられた。発酵により、ネーム本来の酸味と旨みが生じ、安全性も付加されることが示唆された。
著者
水谷 令子 富田 寿代
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.108, 2005 (Released:2005-12-08)

[目的]コーカサスは旧ソ連のヨーロッパ部分の最南端に位置し、西は黒海、東はカスピ海に挟まれた地域であり、紀元前に遡る歴史をもち、古くから文化が栄えた。本研究では、グルジアの水道水および地下水の水質を調べ、この地域の生活用水の現状と将来について検討する。[試料採取および実験]トビリシからバツーミまでの各都市の水道水および住民が飲用している湧水や地下水を採取し、上水道試験方法に従って水質を調べた。[結果及び考察]首都トビリシはグルジア東部、内陸部の山に囲まれた平野にあり、大陸性気候である。ここで使われている水道水は、pH8付近、電気伝導度(EC)30~40ms/m、硬度120~160mg/Lの中硬水であった。黒海沿岸地方は湿潤温暖気候で、この地方の代表的な都市バツーミの水道水は、ECが低く、硬度35~45mg/Lの軟水であった。黒海の水は溶存酸素がやや低く、アニオン、カチオンの量を反映してECの値が著しく高くなっている。今回調査したほとんどの試料は硬度と総アルカリ度の値がよく関連しており、ミネラル分は炭酸塩由来であることを示している。グルジアの主な都市には上水道が布設されており、街角には水飲み場があり、人々は頻繁に飲用していた。水道水源は湧水や地下水で、水質は良好で、水量は豊富といえる。また、ミネラルウォーターの採水地も多い。これは、国土は山がちで、比較的降水量が多く、たくさんの河川に恵まれていることに加え、産業や観光目的の開発があまり進められていないことも水質保全に役立っていると思われる。
著者
道本 徹
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.203-209, 2001-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
17

昨年都立病院で発生した女性患者が消毒液の注射により死亡した事件で, 死亡した患者の遺族が医療ミスとその隠蔽工作によって受けた精神的苦痛に対して提訴する考えであることが報じられており, これに対し病院側は医療事故対策を検討し再発防止のために「航空機の事故防止対策の手法を取り入れ, 事故報告をどんどん出すように奨励している」と述べている.また, 今年の5月の朝日新聞の記事では医療ミス防止に向けてNASA (航空宇宙局) 方式を導入する米国の復員軍人省の例が紹介されている.NASA方式というのは航空の自発的安全報告制度のことでFAA (米国連邦航空局) から委託を受けて第3者であるNASAが1976年から運用している制度であり, 人間はミスを犯す者であるとの認識から故意でない限り, 報告者を罰するより事故の再発防止の方を重要視する免責制度を基本とした安全報告制度である.この制度は航空機のパイロットや客室乗務員, 整備士, 航空管制官等が, 安全を脅かすようなミスを犯したり, いわゆるヒヤリ・ハット的な出来事を自発的に報告し, 事故となる前にプロアクティブに対策をとり事故を未然に防止するために活用されている.米国においてはこのような免責を基本とする安全報告制度は航空の世界だけでなく他の交通機関や医療の事故を未然に防ぐ対策を取るうえで有効とされている.最近の航空機事故の原因を分析するとヒューマンファクターに起因するものがほとんどであり, 事故後のパイロット, 整備士あるいは管制官の証言で「その問題は前から分かっていたんだよ」ということがしばしばある.GAINはこれら航空に携わる人々の自発的な安全情報を集め, 分析し, 事前に安全対策を取る世界的なネットワークを構築しようとするものである.本稿は航空の専門家でない利用される立場の皆様に航空界で現在進められている安全報告制度「GAIN」の活動についてご紹介すると共に, 「GAIN」のプロアクティブな事故防止の考え方はあらゆる方面での事故防止対策に応用され得るものであることをお伝えするものである.
著者
土井 サチヨ 山名 信子 福井 弥生 高橋 純 畠山 絹江 西村 美智代
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.327-331, 1971-08-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
3

It is believed that it would be a helpful measure in determining the size of clothes and also an important factor in designing clothes to study the change in the human body proportion according to the physical growth of the body.In this report, a study is made on the body proportions of boys and girls ages from 7 to 15. The summary of the results is as follows : (1) The degree of the growth in the lengths varies with the part of the body. As for the three items of the head length (height, width, and length of a straight line drawn from the front to the back), the growth is very slow in all ages. By comparing the rate of increase in the crotch height with that in the sitting height, it is found that the former is greater than the latter for the boys who are from 7 to 13 years old, and for the girls from 7 to 11 years old.(2) The head-body index (ratio of the stature to the head height) becomes larger and larger as the age advances, and the indexes of girls show higher values than those of boys up to the age of 13.(3) The comparison of proportional lengths of some parts of the body made between boys and girls measured by assuming that their respective statures are 100, shows that girls over 13-14 have larger values of the total head height and sitting height and smaller value of crotch height than boys of the same ages.
著者
平尾 和子 西岡 育 高橋 節子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.363-371, 1989

タピオカパールは, 調理に際して煮くずれしやすく, 芯が残りやすいなどの問題点があり, その加熱方法はむずかしい.透明感や歯ごたえがあり, 煮くずれが少なく, 芯のないタピオカパールを得るためのより簡便な加熱方法を知る目的で本実験を行った.<BR>加熱方法は, 湯煎による加熱の湯煎法と魔法瓶を用いるポット法について比較し, 顕微鏡観察, 物性測定および官能評価の結果から浸水効果や加熱方法を検討した.結果は次のとおりである.<BR>1) タピオカパールは, 加熱に際しての浸水効果は認められず, 浸水することなく, 直接ふりこんで加熱するほうが煮くずれしにくい結果となった.<BR>2) 加熱方法では, ポット法が湯煎法に比べて煮くずれせず, 弾力があり, 芯のない煮上がりとなるなど, 物性値においても, 官能評価においても最も好まれた. 魔法瓶を用いるポット法は, 加熱途中の攪拌や湯を補うなどの手間もかからず, しかも形状やテクスチャーのよいタピオカパールを得ることができるなど, 簡便かつ効果的な加熱方法と考えられる.<BR>3) 湯煎法のうち, 水にふり込んで加熱する水湯煎法は, 熱湯にふり込む熱湯湯煎法に比べて加熱時間が短縮され, とくに2時間加熱することにより, 透明で歯ごたえのある試料が得られた.
著者
中浜 信子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-4, 1965-02-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14
著者
中村 恵子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.351-356, 2003-05-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
19

電子レンジ調理におけるNaCl添加の影響を明らかにするために, 液体モデル試料を用いて, 加熱実験を行った.エネルギーの吸収効率に及ぼすNaCl濃度および試料体積の影響を検討したところ, NaCl濃度が高いほど吸収効率は小さくなったが, 1%程度であれば無添加試料とほぼ等しいと考えても差し支えなかった.温度および水分蒸発量を測定した結果, 沸点以下において, NaCl添加試料の平均温度は無添加試料より低いにも拘わらず, 水分蒸発量は多かった.これは, NaCl添加試料の周辺部近傍で高温となった液体が対流によって移動し, 上部が高温となったことが原因であると推察した.NaCl添加試料においては, 昇温過程において蒸発の潜熱として用いられるエネルギーの割合が水より高いため, 加熱効率は悪かった.
著者
高正 晴子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.399-406, 1997-05-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
127

A survey was made of various cookery books from the Middle Ages to modern times to identify the consumption of whale meat in Japan.During the Muromachi Period, whales were considered valuable because of their sheer size, and the meat was served to high-ranking people like the Shogun.In the middle of the Edo Period, whale meat was served to the most important and least important members of a Korean delegation. Whalecatching had developed from harpooning to netting, enabling whales to be caught in large numbers so that whale meat became available for common consumption.Until recently, whale meat had been a common local food in many areas of Japan. Its size made it considered suitable for serving at important events, and it stood as a popular food source.The results of this survey clearly show that whale meat has been an important part of the Japanese diet over a long period of time.
著者
清水 祐美 岡田 実紀 片桐 孝夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.180, 2012 (Released:2013-09-18)

目的:天ぷらは高温の油で揚げることにより衣の脱水と吸油が起こり、サクサクとした食感が生じる。一般的にサクサクとしたおいしい天ぷらを作成する際、冷水を使用すること、衣を攪拌しすぎないことなどが知られているが、非常に難しい。そこで、本研究では、衣を調製する際にレモン果汁を添加することで衣の物性に与える影響について評価し、おいしい天ぷらの調理方法の可能性について検討した。 方法:天ぷらの衣は、小麦粉:調味液を1:1.5の割合で調製し、180℃で揚げた。調味液は、13%レモン果汁、もしくはコントロールとして水を使用し、両者の物性等に与える影響の比較を行なった。衣の状態を比較するため、生衣での衣の付着量と、揚げ衣での水分量、吸油量、物性の測定、官能評価を行った。付着量はシリコンゴムに付着した衣の量を測定した。水分量は常圧乾燥法により、吸油量はクロロホルム・メタノール混液抽出法により測定した。物性は、テクスチャーアナライザーを用い、揚げ衣が破断されるまでの間のピーク回数を測定し、食感(サクサク感)の評価を行った。 結果及び考察:天ぷら衣の付着量の結果より、レモン群はコントロール群より少なく生衣の粘りが少なかった。揚げ衣においては、レモン群はコントロール群に比べ、水分が少なく、油量が多い傾向にあった。テクスチャーアナライザー、および官能評価の結果より、レモン群は、衣のサクサク感も高かった。以上の結果から、天ぷら衣を調製する際にレモン果汁を添加することで、含まれるクエン酸により、小麦粉のグルテン形成が阻害され、揚げた際にサクサクとした食感の天ぷらを作成することができると考えられる。
著者
大羽 和子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.1051-1057, 1988 (Released:2010-03-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1

1) ジャガイモの総ビタミンC量は春イモ19.3 mg %, 秋イモ18.8mg%であったがイモの貯蔵に伴い減少した.貯蔵1~2ヵ月の間の減少が最も顕著で, 2ヵ月後には収穫時期の半分以下となった.また, 総ビタミン Cの減少と発芽の間に密接な関連はみられなかった.2) ジャガイモをスライスして放置すると, ビタミンC (AsA) 量が増大することを, DNP法, TLC法, 差スペクトル法で明らかにした.総ビタミンC量およびAsA量は2日後に最大となり, 以後減少した.3) 加熱調理に伴うビタミンC量の変化を経時的に追ってみると, オーブン加熱と電子レンジ加熱では, 加熱時間が長くなるにつれてAsA量が減少した.ゆで加熱と蒸し加熱では, 10分以内にAsA量が顕著に減少し, 以後ほぼ一定の値を示した.最適加熱時間で加熱した後の総ビタミンC残存率を比較すると, 電子レンジ加熱が最も高く (96%), ついで蒸し加熱 (67%) とオーブン加熱 (62%) が高く, ゆで加熱が最も低かった (28 %).4) イモをオーブンや電子レンジで加熱するさい, 1個を丸のままで加熱すると総ビタミンCの残存率は高いが, 切断して加熱すると低くなった.5) 市販の冷凍ジャガイモの総ビタミンC量は製品ごとのばらつきが大きく, 4mg%から18mg%のものまであった.夏以前に製造され秋まで保存されたものは全般に総ビタミンC量が少なかったが, 秋以降に製造され, 保存期間が5カ月までのものでは多かった.また, 秋から春にかけて貯蔵される場合には生イモよりも冷凍ジャガイモのほうが総ビタミンC量が多かった.
著者
小野瀬 裕子 草野 篤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.123-133, 2001-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
22

本研究ではアメリカ合衆国が主導権を握っていたGHQの憲法草案作成の背景を整理した.日本と同じ第二次世界大戦で敗戦国となったドイツとイタリアの新憲法では, ベアテ草案の「男女平等」と「教育の機会の平等」はどの様に条文化されているか比較して考察を加えることで, ベアテ草案の特徴を明確にした.その結果を以下にまとめる.(1) GHQ草案の作成に至る経緯GHQ最高司令官のマッカーサー元帥 (アメリカ合衆国) は, 憲法改正について当初は日本側が自主的に検討すべき問題であると捉えていたが, 日本政府の草案が保守的で, 大日本帝国憲法の表面的変更にとどまるものであることを知り, また, 極東委員会が対日管理を1946年2月26日からFECに移行することを決定したことから, GHQはこれに先立って憲法を改正するためにモデル憲法を準備し提供することが効果的だと考えた.(2) 第二次世界大戦敗戦国の新憲法との対比戦後のドイツとイタリアの新憲法には, ベアテが起草しGHQによって削除された「母性保護」「非嫡出子差別禁止」「労働における男女平等」と同様の条文を見いだすことができた.ベアテ草案にあり, 3力国の憲法にはない内容として「家庭における男女平等」のなかに「個人の尊厳」という言葉がはいっていたことをあげることができた.ベアテが戦前の日本の家制度を否定し, その意味を明確にするために入れた注目すべき言葉であったといえる.(3) アメリカ合衆国憲法における家族の扱いと男女平等の実現のための憲法修正に対する動向日本はGHQ占領下において, 最高司令官マッカーサーによりアメリカ合衆国を介して間接統治されていた.アメリカ合衆国憲法では, 「家族」に関しては, プライヴァシーの範疇であると考え, 憲法に条文として規定することはなかったこと, 詳細な社会権の規定は憲法の下位規範である法律に委ねられていたこと, アメリカ本土で当時, 女性組織が女性保護法と対立するものと考えて男女平等のための憲法修正に反対していた事実がある.一方, ベアテ草案第6条「性別における差別の禁止」, ベアテ草案第18条「家庭における男女平等」は日本国憲法に残った条文であるが, アメリカ合衆国憲法にはなく, 本土よりも1歩進んだ条文であったということができる.(4) ベアテ草案削除に関してベアテ草案の「家族における男女平等」は残ったものの, その他の「家族」に関する条文や「労働における男女平等」などの条文の多くがGHQによって削除された理由として, 日本の歴史的背景が大きく関係していると考えられる.また, GHQの主導権を握っていたアメリカ合衆国憲法での状況として, 「男女平等」や「家族」に関するベアテ起草と同じ内容の社会権が, 憲法に条文として導入されることはなかった事実があることがわかった.
著者
浜野 美代子 伊野 みどり
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.10, pp.841-848, 1986-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
14

日常, 摂取する食事が唾液中に分泌されるNO3-およびNO2-濃度にどのような影響を与えるかを明らかにするため, 5日間にわたり, 種々献立の実験食を設定し, これを摂取したさいの, 唾液中のNO3-およびNO2-濃度の変化を経時的に追跡した.得られた結果を要約すると次のようになる.1) まず, 実験食の調理前後におけるNO3-およびNO2-量を測定した結果, 食事の種類によりNO3-およびNO2-量にかなりの差がみられた.とくに調理との関連をみると, ほうれん草のおひたしを用いた献立では, 下調理, つまり, ゆでることにより喫食部分に含まれるNO3-とNO2-量は著しく減少した.2) 実験食摂取後の唾液中のNO3-およびNO2-濃度を調べた結果, NO3-では食後30分ないし1時間で最高濃度を示し, NO3-ではNO3-よりも30分ないし1時間遅れて最高濃度に達した.3) 食事からのNO3-摂取量の多いほど, 摂取後の唾液中のNO3-およびNO2-濃度が顕著に上昇したが, NO3-やNO2-のレベルには大きな個人差がみられた.また, 口腔内における硝酸塩還元能, つまり, 唾液中のNO2-濃度についても個人差がみられた.4) 食事に含有されているレベルの硝酸ナトリウムを被検者に経口投与した結果では, 投与量の多いほど唾液中のNO3-濃度が高くなる結果が得られた.
著者
石黒 初紀 阿部 加奈子 辰口 直子 蒋 麗華 久保田 紀久枝 渋川 祥子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.95-103, 2005-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1

一般には炭火で調理されたものがおいしいと評価されることは多いがその根拠は明らかにされていない.そこで, 伝熱量および放射の割合を同等にした数種の熱源で鶏肉を焙焼し, 官能検査, においの成分分析を行った.さらに, 試料を焙焼する熱源から発生する燃焼ガスの成分分析を行った.官能検査の結果, においと総合的評価は[炭火焼き]と[ガス網焼き]を比較すると, 有意差は認められなかったが[炭火焼き]が好まれる傾向がみられ, さらにその匂いの差は識別できるものであった.そこで, においについて機器測定を行った.その結果, エレクトロニック・ノーズによる分析結果からセンサーが測定できるにおい成分の量は[ガス直火焼き], [ガス網焼き], [ヒーター焼き]は同等であるが, [炭火焼き]は他の熱源のものより低いことがわかった.このため, 炭火加熱により生じたにおいに何らかの違いがあることが考えられた.また, GCMSによる分析結果から, 官能検査により炭火加熱をした鶏肉の方が好まれた要因は, 香気成分組成において好ましくないにおいを持つ脂肪族アルデヒド類の割合が焼き網に比べ少なく, 香ばしい香りを有するピラジン類やピロール類の割合が多いためと考えられた.鶏肉の焙焼香の違いの原因は, 燃焼ガスにあるのではないかと考え, 燃焼ガスの測定を行った.その結果, 炭の燃焼ガスには, 焼き網よりも還元性の強い一酸化炭素や水素が多く含まれ, 酸素の含有量が少なかった.なお, この燃焼ガスの組成の違いと香気成分の生成との詳細な関連についてはさらなる検討が必要である.
著者
水野 時子 山田 幸二
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.153, 2003 (Released:2004-05-25)

【目的】近年、食品成分の機能性について関心が高まっており、生理活性物質とその作用についてよく知られている。また、機能性を持つ成分を富化する研究も多く行われている。大豆は、調理加工の前処理として水浸漬を行うことが多いが、演者らは先に大豆を水浸漬することにより、血圧上昇抑制作用などを有するγ-アミノ酪酸(GABA)が特異的に増加することを報告した。そこで、大豆加工製品の第三次機能を検討することを目的とし、市販大豆製品のGABA含量を測定した。【方法】郡山市内の大手スーパーで購入した枝豆、大豆もやし、豆腐、おから、きな粉(黄大豆・青大豆・黒大豆)、豆乳(豆乳飲料)、納豆、煮豆(袋詰・缶詰)、大豆の発酵食品(テンペ・乳腐・豆腐よう)および自家製味噌を、各数点ずつ分析した。GABAは日立L-8500形高速アミノ酸自動分析計を用い、生体液分析法で分析した。【結果】市販大豆製品のGABAを分析した結果、枝豆は204.2mg/100g dryであったが、茹でる事により44.6mg/100g dryと顕著に減少した。きな粉は6.5mg/100g dryであったが、黒大豆を用いたきな粉は黄大豆、青大豆を用いたきな粉より高い値を示した。煮豆は缶詰(ドライパック)30.4mg/100g dry、袋詰9.0mg/100g dryで、袋詰に対して缶詰で高い値を示した。大豆もやしは400.1mg/100g dry、豆腐は26.2mg/100g dry、おからは18.7mg/100g dry、豆乳(豆乳飲料)は0.8mg/100ml、納豆は11.8mg/100g、 自家製味噌は26.3mg/100gであった。大豆の発酵食品である乳腐はテンペ、豆腐ように比べて顕著に高い値を示した。以上の結果、大豆もやしはGABA高含有食品であることが示唆された。
著者
大西 真理子 庄司 一郎 小川 宣子 中上 寧 長岡 俊治 下村 道子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.305-313, 2004-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
20
被引用文献数
4

炊飯過程において調味料の添加が, 飯粒の水の吸水・膨潤にどのような影響を及ぼしているのか, 米の品種に違いがみられるのかを食塩を用いて検討し, 以下の結果が得られた.(1) 米の粗タンパク質およびみかけのアミロース含量はコシヒカリよりも初霜の方が多かった.(2) コシヒカリと初霜の飯の物性をテクスチュロメーターによって測定した.低圧縮測定した付着性については両品種とも食塩飯粒は普通飯粒よりも有意に減少していた.高圧縮測定した中心部の硬さ, 付着性, 凝集性のいずれも, コシヒカリについては, 食塩添加による影響はみられなかったが, 初霜については, 特に硬さについては有意に増大し (p<0.001, n=20), 付着性は減少傾向がみられ, 凝集性は有意な増加を示した.(3) 飯粒横断面の組織は, コシヒカリでは, 食塩飯粒と普通飯粒は同様の形態を示し, 胚乳細胞は表層部, 中心部ともに膨潤していた.初霜の食塩飯粒では, 飯粒の表層部は膨潤しているが, 中心部の胚乳細胞は小さく, 膨潤が抑制されているのが観察された.組織構造への食塩添加の影響は, 品種問に違いがみられた.(4) コシヒカリと初霜の白米 (掲精度90%) における蒸留水の吸水率は, 両品種間に差はなかったが, 食塩水の吸水率は, 蒸留水のそれよりも有意 (p<0.01) に低かった.また, 白米中心部 (搗精度50%) では, 蒸留水における吸水率は, 両品種間に差がみられ, 初霜の蒸留水の吸水率はコシヒカリの蒸留水のそれよりも低く, 食塩水においても有意に低かった.(5) 初霜の米粒を蒸留水および食塩水に浸漬したときの粗タンパク質の溶出は, 両浸漬水でみられ, 蒸留水におけるよりも食塩水の方が溶出率は高かった.そして, 溶出タンパク質のうちグロブリン, アルブミンおよびグルテリンが多いことをSDS-PAGE分析により確認することができた.