著者
樋田 浩一 上野 佳奈子 嶋田 総太郎
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.493-497, 2013-12-01 (Released:2014-12-24)
参考文献数
13

このたびは日本認知科学会大会発表賞を頂き,誠にありがとうございます.ご選考いただきました先生方および認知科学会関係者の皆様に深く感謝致します.今回の受賞を励みに,今後も研究活動に邁進してまいりたいと思います. 本研究は,2011 年度に明治大学理工学部建築学科に提出した卒業論文の内容を発展させたものです.没入型の多チャンネル音場再現システムの開発に伴い,必要性能である演奏時の遅延の許容範囲を検討しました.大変魅力的なテーマであり,この先,博士後期課程を通じて,多感覚統合プロセスの解明やよりリアルな聴覚情報を呈示するシステム開発の為の知見を深めたいと考えております. 最後に,本研究をまとめるにあたり,指導教官である上野佳奈子先生,嶋田総太郎先生には多大なご助力とご助言を頂きました.この場をお借りして厚く御礼申し上げます.
著者
桑島 勝雄
出版者
東北地理学会
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.115-131, 1986
被引用文献数
1

東北6県における保育所の分布を, その定員数, 児童収容率を指標として, 各市町村単位でみると, 次のような傾向や関係が表われている。<br>1) 保育所定員数および同児童収容率において, 県単位では, 両者の値の高い市町村のその県に占める割合は, 青森県が最も高く, 次いで, 岩手, 秋田, 山形の各県がほぼ並び, その下に宮城, 福島両県が位置しているという, 北高南低の傾向がみられた。<br>2) また, これらの地域格差の生ずる要因として, 0~4歳児人口, 共稼夫婦核家族世帯数 (0~6歳児を有する), 児童福祉予算の3要素が, 保育所定員数と正の相関を有していることが判明した。<br>3) 保育所児童収容率において, 全般的に市部は低率であり, 町村部は高率を示している。そして, 高率町村の大部分は過疎地域に位置している。<br>4) 保育所定員数に大きな影響を与える幼稚園の在園児童収容率においては, 高率市町村のその県に占める割合は, 宮城, 福島両県がともに高く, 次いで, 山形, 秋田, 岩手各県がほぼ並び, そして, 青森県が最低という, 南高北低の傾向を示している。<br>5) また, ベビー・ルームなどの無認可保育施設が, 中心都市およびその周辺の市町村に進出し, 保育所機能の一端を担っている。<br>6) そして, 各県において, 保育所定員および幼稚園, 無認可保育施設在籍児童の3施設の総和の児童数は, 0~6歳児数に対する割合においては, 各県とも, ほぼ総数の3分の1が, 上記施設のいずれかに在籍している割合になっている。
著者
安里 和晃
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.10-25, 2009-06-01 (Released:2019-10-10)
参考文献数
43

アジア的な福祉政策といわれる家族ケアの活用は,残余的な福祉サービスの供給体制,性役割分業の維持,女性の労働力率の上昇や家族構成の変化によって困難を抱えているが,シンガポール,香港,台湾では,外国人家事労働者が家族ケアの重要な担い手となっている,台湾の例では「重度」以上の要介護者の半数以上が,外国人家事労働者によってケアを受けているーこれらの地域は高齢化率が10%に達した段階だが,残余的な福祉サービスと家庭内のインフォーマルケアを活用しようとしている点で共通している.家族によるケア供給の活用は,政府による各種の補助金制度や税の優遇制度,老親扶養の法制化,外国人家事労働の雇用許可,モラル教育といった「家族化政策」を通して支えられ,家族の福祉機能を維持・強化しようとしている.外国人家事労働者の導入は市場メカニズムを通じたサービスの供給形態の一つであり,国際労働市場を形成させ,女性の階層化を伴いながら性役割分業を固定化し,経済政策と福祉政策の見えない基礎となっている.ところが家事労働者のフレキシブルな労働力は,労働法令非適用と引き換えに成立していること,ニーズ、に合った人材育成がなく社会的地位が低いといった問題を抱えている目さらに「家族化政策」は家族形成を前提としてケアが確保されるものであり,単身者や結婚を選択しない者は,外国人家事労働者を雇用しない傾向にあることからケア確保の問題を解決することはできない, といった問題点を抱えている.
著者
LiHui Lee Tzi Lun Weng Yu Yin Huang
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

本研究はピンク、桃花色、臙脂色など女性聯想をさせる色彩を多く使ったベビールームの現状を批判し、ベビールームの空間機能とユーザー心理に相応しい配色を追求するために、その内部空間のカラーイメージについて研究を進めた。利用者へのアンケートとインタビュー調査を行った結果、暖かい、快適、安らぎ、微笑み、穏やか、リラックス、赤ちゃん、幸せ、希望、家庭などの空間イメージが多く上げられた。多くの回答者は赤ちゃんを配慮し、明るい、柔らかい、甘い色を選んだが、特定な色相を好む傾向は見なかった。それゆえ、ベビールームの配色は、女性向けカラーを独断に使うのではなく、赤ちゃんの特質、ニーズ、ベビーケア内容を配慮すべきだと思われる。<br><br>
著者
光武 翼 中田 祐治 岡 真一郎 平田 大勝 森田 義満 堀川 悦夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0804, 2014 (Released:2014-05-09)

【目的】後頭下筋群は筋紡錘密度が非常に高く,視覚や前庭覚と統合する固有受容器として中枢神経系との感覚運動制御に関与する。後頭下筋群の中でも深層の大小後頭直筋は頸部における運動制御機能の低下によって筋肉内に脂肪浸潤しやすいことが示されている(Elliott et al, 2006)。脳梗塞患者は,発症後の臥床や活動性の低下,日常生活活動,麻痺側上下肢の感覚運動機能障害など様々な要因によって後頭下筋群の形態的変化を引き起こす可能性がある。本研究の目的は,Magnetic Resonance Imaging(以下,MRI)を用いて後頭下筋群の1つである大後頭直筋の脂肪浸潤を計測し,脳梗塞発症時と発症後の脂肪浸潤の変化を明確にすることとした。また,多変量解析を用いて大後頭直筋の脂肪浸潤に影響を及ぼす因子を明らかにすることとした。【方法】対象は,脳梗塞発症時と発症後にMRI(PHILPS社製ACHIEVA1.5T NOVA DUAL)検査を行った患者38名(年齢73.6±10.0歳,右麻痺18名,左麻痺20名)とした。発症時から発症後のMRI計測期間は49.9±21.3日であった。方法は臨床検査技師によって計測されたMRIを用いてT1強調画像のC1/2水平面を使用した。取得した画像はPC画面上で画像解析ソフトウェア(横河医療ソリューションズ社製ShadeQuest/ViewC)により両側大後頭直筋を計測した。Elliottら(2005)による脂肪浸潤の計測方法を用いて筋肉内脂肪と筋肉間脂肪のpixel信号強度の平均値を除することで相対的な筋肉内の脂肪浸潤を計測した。大後頭直筋の計測は再現性を検討するため級内相関係数ICC(2,1)を用いた。発症時と発症後における大後頭直筋の脂肪浸潤の比較はpaired t検定を用いた。また,大後頭直筋の脂肪浸潤に影響を及ぼす因子を決定するために,発症時から発症後の脂肪浸潤の変化率を従属変数とし,年齢,Body Mass Index(以下,BMI),発症から離床までの期間(以下,臥床期間),Functional Independence Measure(以下,FIM),National Institute of Health Stroke Scale(以下,NIHSS),発症時から発症後までのMRI計測期間を独立変数としたステップワイズ重回帰分析を行った。回帰モデルに対する各独立変数はp≧0.05を示した変数を除外した。回帰モデルに含まれるすべての独立変数がp<0.05になるまで分析を行った。重回帰分析を行う際,各独立変数間のvariance inflation factor(以下,VIF)の値を求めて多重共線性を確認した。すべての検定の有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】すべての患者に対して文章,口頭による説明を行い,署名により同意が得られた者を対象とした。【結果】対象者のBMIは21.5±3.3,臥床期間は5.3±9.5日,FIMは84.6±34.5点,NIHSSは5.6±5.9点であった。大後頭直筋の脂肪浸潤におけるICC(2,1)は発症前r=0.716,発症後r=0.948となり,高い再現性が示された。脳梗塞発症時と発症後に対する大後頭直筋の脂肪浸潤の比較については発症時0.46±0.09,発症後0.51±0.09となり,有意な増加が認められた(p<0.001)。また重回帰分析の結果,大後頭直筋における脂肪浸潤の変化率に影響を及ぼす因子としてNIHSSが抽出された。得られた回帰式は,大後頭直筋の脂肪浸潤=1.008+0.018×NIHSSとなり,寄与率は77.5%(p<0.001)であった。多重共線性を確認するために各変数のVIF値を求めた結果,独立変数は1.008~4.892の範囲であり,多重共線性の問題は生じないことが確認された。【考察】脳梗塞患者の頸部体幹は,内側運動制御系として麻痺が出現しにくい部位である。しかし片側の運動機能障害は体軸-肩甲骨間筋群内の張力-長さ関係を変化させ,頸椎の安定性が損なわれる(Jull et al, 2009)。この頸部の不安定性は筋線維におけるType I線維からType II線維へ形質転換を引き起こし(Uhlig et al, 1995),細胞内脂肪が増加しやすいことが示されている(Schrauwen-Hinderling et al, 2006)。脳梗塞発症時のMRIは発症前の頸部筋機能を反映し,発症後のMRIは脳梗塞になってからの頸部筋機能が反映している。そのため,脳梗塞を発症することで大後頭直筋の脂肪浸潤は増加する可能性がある。また大後頭直筋の脂肪浸潤に影響を及ぼす因子としてNIHSSが抽出され,麻痺の重症度が関係している可能性が示唆された。今後の課題は,脳梗塞患者における大後頭直筋の脂肪浸潤によって姿勢や運動制御に及ぼす影響を検証していきたい。【理学療法学研究としての意義】脳梗塞片麻痺患者は一側上下肢の機能障害だけでなく頸部深層筋に関しても形態的変化をもたらす可能性があり,脳梗塞患者に対する理学療法の施行において治療選択の一助となることが考えられる。
著者
佐野 由佳 穐山 壮志 廣田 智久
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.941, pp.53-55, 2010-12-20

2009年9月、表参道ヒルズの本館地下2階に「キッズの森」がオープンした。文字通り、子ども向けの商品をそろえたショップが集まるエリアで、約130坪のなかに0〜6歳向けの商品を扱う6店舗が軒を並べる。エリア内にはベビールームも設け、個室の授乳室、オムツ換えベッド、調乳用温水器などを備え、来館者は自由に使うことができる。それに伴い同年12月には、ベビーカー置き場も設置。
著者
小張 真吾 磯崎 淳 山崎 真弓 田中 晶 安藤 枝里子 中村 陽一
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.155-163, 2016
被引用文献数
2

【背景】近年, 食物アレルギー児の数は増加し, 乳幼児を預かる施設での対応が求められている. 【目的】横浜市内の幼稚園・保育所での食物アレルギー児への対応の実態を明らかにする. 【方法】横浜市内の全幼稚園・保育所を対象に, 食物アレルギー児の把握法, 食事状況, アドレナリン自己注射薬 (エピペン<sup>®</sup>) の使用などについて無記名アンケート調査を行った. 【結果】過去の同種の調査と比べ食物アレルギー児の割合は幼稚園・保育所ともに増加していた. 保育所に比べ幼稚園では除去食や代替食対応が可能な施設は少なく, 食物アレルギー児の把握も医師の診断以外で行っている施設が多かった. 保育所の中でも, 認可外保育所には同様の傾向がみられた. エピペン<sup>®</sup>処方児は幼稚園で多かったにもかかわらず, 投与可能な施設は幼稚園のほうが保育所と比較し少なかった. 食物アレルギーに関する知識は, 保育所に比べ幼稚園職員で乏しい傾向があった. 【結語】幼稚園や認可外保育所を中心に, 乳幼児保育施設において, 食物アレルギーに関する知識の啓発と食物アレルギー対応の拡充をより進める必要がある.
著者
小柳津 卓哉 坂井 顕一郎 新井 嘉容 大川 淳
出版者
東日本整形災害外科学会
雑誌
東日本整形災害外科学会雑誌 (ISSN:13427784)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.49-53, 2020 (Released:2020-04-29)
参考文献数
5

【目的】健常人24名の頚部伸展筋活動を表面筋電図で測定した.【方法】頭板状筋・僧帽筋を対象とし,頚椎後屈位,中間位,前屈位,頭部前方突出位(前方注視)における平均筋活動量と筋疲労を解析した.【結果】頭板状筋において平均筋活動量が前突位で有意に増加していた.僧帽筋の平均筋活動量と頭板状筋・僧帽筋の筋疲労は姿位による有意な変化を認めなかった.【結語】首下がり姿位からの水平視は頭板状筋の筋活動を要した.
著者
Logunov Dmitri V.
出版者
日本蜘蛛学会
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.39-44, 2015
被引用文献数
4

The paper is devoted to new taxonomic and faunistic data on five <I>Lyssomanes</I> species from French Guiana. Three new species are diagnosed, figured and described: <I>L. aya</I> sp. nov. (♀), <I>L. courtiali</I> sp. nov. (♂♀), and <I>L. rudis</I> sp. nov. (♀). A previously unknown female is described for <I>L. tapirapensis</I> Galiano 1996. New faunistic records are provided for <I>L. remotus</I> Peckham & Peckham 1896 and <I>L. tapirapensis</I>.
著者
光田 恵 村田 順子 棚村 壽三
出版者
人間-生活環境系会議
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.179-180, 2014

本研究では、在宅介護環境の臭気対策に必要なデータを収集することを目的とし、臭気発生場面の調査を実施した。1次調査では、ガスセンサーを用いて在宅介護環境の臭気の発生場面、発生状況を調査した。2次調査では、1次調査において、においの発生場面と特定した場面の臭気を採取し、嗅覚測定法と臭気成分分析を行い、臭気濃度、臭気強度、快・不快度、臭気質、臭気成分濃度などのデータを収集した。1次調査の結果、主な臭気発生場面は、排便行為、尿・便によるおむつ交換時、体位変換時であり、寝室の使用済みおむつ用のごみ箱からのにおいが室内の臭気のレベルへ影響している可能性が示された。2次調査の結果、摘便時は臭気強度、不快度が高く、摘便時、便によるおむつ交換時に、メチルメルカプタン濃度と酢酸濃度が上昇傾向にあることが明らかとなった。
著者
久保田 貢
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.130-142, 2017

<p> 主権者とは国民主権の原理を採用する憲法によって定義づけられる。しかし教育現場は憲法と「断絶」し、主権者教育の歴史も忘れられている。永井憲一は主権者教育権論を提起した。主権者教育論は、他にも1950年代後半から日教組周辺の議論の中でみられ、歴教協などで深められる。いま国家が主権者教育の推進を図るが、これは新たな排除をもたらす。文化的自治のルートの回復と、教育現場の当事者たちによる、より直接的な協議の場の構築が課題となる。</p>
著者
住 斉
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.911-918, 1991-11-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
34
被引用文献数
2

化学反応の速度に関する最も標準的な理論は, Eyringに始まる遷移状態理論である. この理論は, 反応の進行中に反応の始状態内の熱平衡が常に保たれていることを仮定している, ところがこの十年程の間に, 溶媒中の反応ではこの仮定が成立しない場合があることが次々と明らかになってきた. その原因は, 例えば水中の反応では, 溶質分子が水和状態を作り, その熱揺らぎがゆっくりしていることにある. 溶媒中の反応は, 化学反応の内で最も基本的なものの一つである. そのため, それらにも適用できるより一般性を持つ反応速度の式を求めて, 理論・実験の両面で活発な議論が展開されるようになってきた. その経過を紹介しよう.