著者
花崎 直太
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012

地球温暖化による水資源への影響を地球規模で予測し、適切な適応策を立てることは重要である。これに関して、これまでに多くの報告書や論文が出版されてきた。しかし、先行研究には3つの課題がある。第1に、先行研究の多くが年単位で水資源の評価をしていることである。第2に、先行研究の多くが気候と人口以外の要素を現状で固定して評価を行っていることである。第3に、先行研究はNakicenovic and Swart (2000)による社会経済・排出シナリオ(以下SRES)およびそれに基づく気候シナリオCMIP3を利用していたことである。現在、SRESに代わる新しいシナリオRCPが整備されつつある。本報告では、これらの問題に対応した新しい全球水ストレス評価の検討結果を報告する。
著者
藤森 真一郎 長谷川 知子 増井 利彦 高橋 潔 シィルバ エラン ディエゴ 戴 瀚程 肱岡 靖明 甲斐沼 美紀子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.II_217-II_228, 2015
被引用文献数
2

Special Report on Emissions Scenarios(SRES)が公表されて以降,気候変動関連研究は主としてSRESを用いて行われてきた.一方,2007年以降に新シナリオプロセスが開始され,新しい社会経済シナリオ Shared Socioeconomic Pathways(SSPs)は気候モデル,影響評価モデル,統合評価モデルで使われ,中核的なシナリオとなることが期待される.また,近年統合評価モデルが提示するシナリオはパラメータの設定等が明瞭に示されずブラックボックスとなっているという批判が存在し,統合評価モデルが抱える大きな問題の一つとなっている.このような背景を踏まえ,本論文は以下の二つの目的を有する.第一にSSPの定量化プロセスについて詳細に記述し,シナリオ定量化作業をオープンにすることである.第二にその結果を既存のシナリオであるSRESとRCP(Representative Concentration Pathways)と比較し,シナリオの特徴を明らかにすることで,今後SSPの主たるユーザーとなる気候モデルや影響評価モデルに対して有用な情報を提供することである.本研究で得た主要な結論は以下のとおりである.第一に大気汚染物質の排出量はRCPで一貫して減少していたが,SSPの一部は増加するシナリオが含まれ,気候モデルにとってエアロゾルの違いの影響を明らかにすることができる.第二に耕作地面積はいずれのシナリオでも21世紀で拡大し,水資源,森林生態系など土地利用に影響される影響評価モデルにとっては土地利用シナリオを考慮することが重要であることが示唆された.
著者
荒武 欽郎
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.75-102, 1968-01

この論文は、十九世紀五〇年代末~六〇年代初ロシアの第一次革命的情勢の時期において、ロシアの革命運動が軍事革命の路線をとるにいたった事情に考察を加えたものである。当時、資本主義発展の道をたどりはじめたばかりのロシアでは労働者階級の組織的結集、革命政党の大衆のなかでの定着が見られず、このため、当時の革命家は人民革命を基本としつつも、革命のイニシアティヴを唯一の組織された力としての軍隊に期待するにいたったのである。結局は、準備不足のため、革命にはいたらなかったが、この過程において歴史発展の原動力としての人民の役割、ツァーリズムの階級的本質、ロシア゠ポーランド革命的同盟の基礎についての理解は深まり、次の時代への遺産としてひきつがれることになる。
著者
ホシノ ユタカ 星野 豊
出版者
学事出版
雑誌
月刊高校教育
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.90-91, 2008-03
著者
瀬川 智哉
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.59-63, 2013-01-01

2011年9月3日,高知県東部に上陸した台風12号が紀伊半島において驚異的な雨量をもたらし,熊野川が上流にあるダムの放流の影響もありこれ迄にない水位を記録し,紀州工場から直線で約6km上流にある工業用水取水設備及び工場内KP,ボイラー周りの電気室及び機器が浸水した。これにより工場が16日間に渡って操業が不能となった。<BR>紀州工場における浸水被害は,工場内及び工業用水取水場共に電気設備の被害が大きく,また,工業用水取水口においては熊野川上流の崩落,土砂崩れによる岩及び土砂の流入でほぼ閉塞状態となり,浚渫による復旧に時間を要した。<BR>しかし,全社を挙げての支援体制を被害直後に整え,応援部隊派遣を直ぐに決定するという迅速な対応をとり,また,メーカー他の支援協力があり早期の操業再開を実現した。<BR>更に,今回と同規模の水害発生による工場操業への影響を最小限に抑える対策も復旧直後より検討し,第一期対策の実施を決定した。<BR>本稿では,今回の浸水被害の状況及びその復興作業,そして浸水対策の取り組みについて報告する。
著者
井口 貴文 井口 守丈 手塚 祐司 青野 佑哉 池田 周平 土井 康佑 安 珍守 石井 充 益永 信豊 小川 尚 阿部 充 赤尾 昌治
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.1102-1107, 2018-10-15 (Released:2019-12-06)
参考文献数
10

先天性アンチトロンビンⅢ(AT-Ⅲ)欠損症は比較的稀な常染色体優性の遺伝性疾患である.AT-Ⅲ欠損症においては静脈血栓塞栓症(VTE)が多発することが知られている.VTEの治療には従来からヘパリンが使用されていたが,ヘパリンの抗凝固作用は血中のAT-Ⅲレベルに依存するため,AT-Ⅲ血栓症に伴うVTEに対しては,ヘパリンの単独治療では十分な抗凝固作用が期待できず,AT-Ⅲ製剤の補充が必要とされる.近年,VTEの治療に対しては,ヘパリンに代わって直接型経口抗凝固薬(DOAC)が有効であるとの報告が相次いでなされている.DOACはAT-Ⅲを介さずに抗凝固作用を発揮するため,AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEに対しても効果があると考えられるが,AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEに対してDOACが有効であったとの報告は極めて限られている.今回われわれは,AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEの症例に初期からDOACの1つであるリバーロキサバン単剤で加療し,比較的速やかに症状の改善,D-dimerの低下,および画像上の血栓の消退が認められた症例を2例経験した.2例ともその後リバーロキサバンを継続することでVTEの再発なく経過している.AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEに対してリバーロキサバンの有効性を示唆する貴重な症例であると考え,ここに報告する.
著者
福岡 忠雄
出版者
一般財団法人 日本英文学会
雑誌
英文学研究 支部統合号 (ISSN:18837115)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.331-338, 2012

Peter Widdowson takes us by surprise when he enumerates as the major themes of Thomas Hardy war as well as sex and class. But the surprise is only for a moment. A moment's reflection on Hardy's literary career soon makes us agree with him. The battle of Waterloo was fought only 25 years before his birth. His interest in Napoleonic wars was a lifelong one as is shown by the novel The Trumpet-Major, a short story 'A Tradition of Eighteen Hundred and Four' and, above all, that striking feat of poetic creation, The Dynasts which he completed in his sixties. While Napoleonic wars took place before he was born, the Crimean war, the Franco-Prussian war and the Boar war all broke out in his life time. Especially the Boar war which his friends and relatives took part in induced Hardy to write about ten poems including 'Drummer Hodge.' This essay is an attempt to focus on the comparatively neglected aspect of Hardy, i.e. Hardy as war poet, with special reference to the Great War and to the way the War brought a serious blow to Hardy's faiths in human progress. When England declared war to Germany which invaded Belgium to secure the route to France, Hardy was 74 years old. The reason why the War gave him so great a shock as he had never experienced is that it seriously undermined the last resort which barely kept in check the aggravation of his pessimistic view about the future of humanity. In 'Apology', a short essay attached to one of his collections of poems, Late Lyrics and Earlier, Hardy attempts to repudiate the criticism leveled to his pessimistic attitude by citing the evolutionary meliorism prompted by the advance of science. But the War made him face the fact that what the advance of science brought in was machine guns, cannons and poison gas which exacted an appallingly heavy toll of young lives caught up in this bloody war. His despair was so deep that in 'We Are Getting to the End', a penultimate poem of his final collection Winter Words, he gloomily predicted the misery of the Great War should be repeated. It might be argued that he was rather lucky not to see his prediction actualize in the form of the Second World War which arose only 11 years after his death.
著者
藤高 和輝
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

もともとの研究計画をほとんど達成し、且つこれまでの研究成果をほぼ公表することができた。とりわけ、ゲイル・サラモン『身体を引き受ける――トランスジェンダーと物質性のレトリック』(以文社)の翻訳出版を達成できたことが大きな成果である。他には、「感じられた身体--トランスジェンダーと『知覚の現象学』」(立命館大学人文科学研究所紀要)、「「曖昧なジェンダー」の承認に向けて――ボーヴォワール『第二の性』における「両義性=曖昧性」」(『女性空間』)、「インターセクショナル・フェミニズムから/へ」(『現代思想』)など、多くの論文を公表する機会を得た。以上を通して、トランスジェンダーの「生きられた経験」を哲学的に研究する「トランスジェンダー現象学」の導入・深化を行った。トランスジェンダーの経験をよりリアルに捉える分析枠組みを提示することで、「哲学・倫理学」の学問分野のみならず、社会学や心理学、ジェンダー・スタディーズ、クィア理論などより広い分野に貢献することができたと自負している。今後は、特別研究員のあいだに行った研究を一冊の書籍にまとめ、研究成果をさらに社会に発信・公表していきたい。
出版者
日経BP社
雑誌
日経レストラン (ISSN:09147845)
巻号頁・発行日
no.376, pp.36-43, 2006-10

自分の夢を描き、その実現に向けて日々努力している経営者たちがいる。おそらく様々な障害があったに違いない。しかし、それでもあきらめることなく、前だけを見据えている。その理由を探った。そんな田舎にお客は来ないと言われたが……仲間の思いが詰まった店真狩の料理を提供したい中道 博 氏(オーベルジュ「マッカリーナ」オーナー) 札幌から車で約2時間。
著者
大倉 正雄
出版者
拓殖大学政治経済研究所
雑誌
拓殖大学論集. 政治・経済・法律研究 = The review of Takushoku University : Politics, economics and law (ISSN:13446630)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.77-138, 2020-03-25

ウィリアム・ペティ(William Petty, 1623-87)の主著『政治算術』(Political Arithmetick, 1690)は,「政治算術」にもとづいて三列強の国力・経済力を分析した書物である。第1・第3章において,オランダ・フランスの国力・経済力を比較分析し,国力・経済力の大きさを決める究極的要因は,領土・人口ではなく交易であるという結論を導き出している。第4章以降においては,先行する諸章での分析結果を踏まえて,イギリスの国力・経済力を分析している。そこでは,人口は国力・経済力の究極的要因ではないけれども,国民総数に占める「余剰利得者」の割合は重要な要因である,という結論を引き出している。第5・第7・第8章では,他の諸章での算術的分析による結果を踏まえて,イギリスの国力・経済力を強化する政策を提案している。第7章では税制改革案が掲げられている。それは,フランス国王ルイ十四世によるオランダ侵略戦争を目の当たりにして掲げられた,政治力・軍事力を強化する提案である。第8章で示された,雇用の拡大による交易の奨励策は,最も重要な提案である。ここでは,海外交易を重視するオランダ型の経済システムにもとづいて,国力・経済力の強化が図られている。さらに第4章の余論では,「理性的な提案」というよりは,「夢か空想」にすぎないという提案が示されている。イギリスの後進地域(アイルランド,スコットランド・ハイランズ)の全住民を,その先進地域(イングランドなど)に移入させるという提案である。この提案も実際には,算術的分析を踏まえて示された国力・経済力の強化策であり,必ずしも単なる夢想ではない。『政治算術』は実践的な政策論議を主眼としており,経済科学の理論体系を構築することを目的にして書かれた書物ではない。ところがこの書物では,ベーコン主義の実験哲学を継受しながら,「政治算術」という経済分析方法が考案されている。その算術にもとづいて経済的・社会的事象が分析され,その分析結果を踏まえて政策が提案されている。このような科学的な分析方法を踏まえて編まれた書物は,経済学史のうえにおいて当の『政治算術』が最初である。このような理由により,方法論の観点から,この書物には経済科学の形成の兆しが見られるといえるのである。
著者
松井 寛二 森岡 弥生 竹田 謙一
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
巻号頁・発行日
no.3, pp.11-16, 2005 (Released:2011-03-05)

4頭の木曽馬の馬房内の夜間の姿勢と体温変化の特徴を明らかにし、姿勢および体温変化と睡眠の関連を考察した。姿勢と行動はビデオカメラを用いて、体温(膣温)はデータロガを用いて記録した。姿勢は、1)立位(歩行・摂食)、2)立位(休息)、3)伏臥および4)横臥の4型に区分して記録した。伏臥および横臥の出現パターンには個体差が認められた。4頭平均の伏臥持続時間は16.4分、横臥持続時間は4.2分、夜間11.5時間の横臥回数は6.1回であった。体温は17時の38.1-38.6℃から早朝の37.6℃前後まで漸減した。伏臥から横臥の姿勢変化時にノンレム睡眠からレム睡眠に移行し、横臥時にレム睡眠であることが推察された。