著者
青柳 尚朗
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.15-29, 2021-06-10 (Released:2021-06-18)
参考文献数
27

本研究では,社会的事象の本質を捉える思考の促進を目的に,中学校社会科で実験授業を実施し,その効果を検討した.学習内容を「具体的事実」「個別的本質」「普遍的本質」に構造化し,単元内に「複数の具体的事実を関連づけて共通点を探究する過程」「その社会的事象の持つ,他事象にも活用可能な性質を考察する過程」を組織した.その結果,複数の具体的事実を把握し,その共通点を探究することで個別的本質の理解が促進されること,そこで把握された個別的本質のうちのどの性質が近接領域の他事象にも適用可能かを検討することで普遍的本質の理解が促進される可能性が示された.上記の過程では,「①個人での多様な探究→②クラス全体での多様な思考の関連づけ→③そこで関連づけられた思考を生かした個人探究」という協同的・探究的な学習過程が組織され,①③で多くの情報を関連づけた生徒の中に普遍的本質の理解を達成する者が現れることが示唆された.
著者
小林 優介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.213-218, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
27

本研究は、都市計画や緑地計画のために、斜面林の環境経済価値の評価することを目的とする。このためにヘドニック・アプローチを用いて分析を行う。本研究の対象地域は、東京都の南西部の7区とする。まず、斜面林の外部経済効果を評価するために、ヘドニック・アプローチにより、地価と傾斜別の樹林地との相関について考察する。そして、傾斜の閾値により、地価評価地点から250m以内に含まれる傾斜の閾値未満の樹林地セル数と、地価評価地点から250m以内に含まれる傾斜の閾値以上の樹林地セル数の2つの説明変数により分析を行う。この2つの説明変数について、5%有意水準を満たすかどうかを明らかにする。次に、自由度調整済み決定係数が最大でAICが最小となった閾値により、各区の斜面林、平地林、斜面の非樹林地、平地の非樹林地の分布の分析を行う。その結果、以下のようになった。1)両線形型、半対数型ともに、閾値を14度以下にした場合の斜面林の外部経済効果はプラスとなり、5%有意水準を満たした。2)両線形型、半対数型ともに、2度を閾値とした場合の外部経済効果が地価と最も相関が高かった。
著者
進士五十八
出版者
横浜市
雑誌
調査季報
巻号頁・発行日
no.82, 1984-09-29
著者
脇田 尚紀 菱山 玲子
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.399-400, 2019-02-28

Word Wolf(ワードウルフ)は,新人狼ゲームと称されるソーシャルコミュニケーションゲームである.本研究では,ゲームの各プレイヤ間の対話と戦略・勝敗との関係性を解明することで,Word Wolfのプレイヤエージェントモデルの獲得を目指している.そこで,研究ではまず,オンライン上での人によるプレイから対話ログを収集し,このログに基づき対話タグ付けのためのタグセットを獲得した.タグセットの妥当性を人手により精緻に評価すると同時に,タグ付けされた対話と勝敗データを統合的に分析し,プレイヤの戦略と勝敗を考察した.その結果,このタグセットによる発話分類が,戦略・勝敗の分析に寄与することがわかった.
著者
橋本 謙二
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学会年会要旨集 第95回日本薬理学会年会 (ISSN:24354953)
巻号頁・発行日
pp.1-EL01, 2022 (Released:2022-03-21)

近年、麻酔薬ケタミンがうつ病の画期的な治療薬として注目されている。ケタミンは治療抵抗性うつ病患者に投与して数時間後に抗うつ効果を示し、その効果は1週間以上持続する。さらに、ケタミンはうつ病患者の自殺願望、希死念慮も劇的に改善し、自殺予防という点からも注目されている。ケタミンは、不斉炭素を有しているので、二つの光学異性体を有する。わが国で使用されている麻酔薬ケタミンはラセミ体である。米国Johnson & Johnson社は、NMDA受容体への親和性が強いエスケタミンを開発し、2019年に治療抵抗性うつ病の治療薬として、米国と欧州で承認された。一方、演者らはNMDA受容体への親和性が弱いアールケタミンの方が、エスケタミンより抗うつ作用が強く、副作用が少ないことを発見した。現在、米国企業がアールケタミンの第二相臨床治験を海外で実施中であり、わが国では大塚製薬株式会社が第一相臨床治験を準備中である。本教育講演では、千葉大学で開発した新規抗うつ薬アールケタミンの最新知見について議論したい。
著者
中村 好孝
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.18, pp.136-146, 2005-08-05 (Released:2010-04-21)
参考文献数
18

There are many support groups for people suffering from hikikomori (social withdrawal). How to aid their rehabilitation is a complicated subject. What do the supporters do actually? One role for private support groups is to visit people in hikikomori and act as “the disturbing other, ” to shake up their daily life which is divorced from any significant happening and to introduce an element of uncertainty. In so doing, the supporter has to manage her emotions to enjoy the uncertainty, and to make herself happy to meet people in hikikomori. Through this management of emotion, the supporter manages to show people in hikikomori that the uncertainty is necessary and fun and therefore they are welcomed by society.
著者
岩佐 厚志 裏 直樹 山中 武彦 川村 康博
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.E-145_2-E-145_2, 2019

<p>【はじめに・目的】</p><p>延髄外側梗塞において特徴的な所見のひとつにlateropulsion(以下:LP)がある.LPは,病巣側に体が不随意に倒れる症候である.これまで,急性期におけるLPに対する病巣を考慮した治療や客観的指標を用いた効果に関する報告は少ない.そこで本研究では,脳画像所見よりLP出現の責任病巣を同定し,損傷神経路を考慮した治療の選択と,体圧分布測定システムで測定した立位足圧分布を用いて治療効果を検証した.</p><p>【方法】</p><p>症例は,50歳代男性.左延髄外側に梗塞巣を認め,立位・歩行時wide baseでありLPのため左への傾きを認めた.第1病日から理学療法(以下,PT)を開始.第4病日より本研究を開始した.LPに対する治療効果は,シングルケースデザイン(ABA法)を用いて検証した.A1期,A2期は一般的なPTを実施.B期は一般的なPTを行う際に,左膝関節に対して弾性包帯(Osaki製ウエルタイ)を,足底には表面に凹凸のあるインソール(キャンドゥ製オウトツタイプインソール)を装着し,触圧覚入力を増強した状態で実施した.各期は各々1日とした.足圧分布は体圧分布測定システム(NITTA製BPMS)を用いて開眼閉脚立位にて20秒間測定し,左右比率,左右差の平均値を算出した.臨床的指標としてPostural Assessment Scale for Stroke Patients(以下,PASS),Scale for the assessment and rating ataxia(以下,SARA)を用い,その他立位時の傾きに対する内省を聴取し,転倒に対する恐怖感をvisual analogue scale(以下,VAS)で評価した.評価時期は足圧分布,VASを各期の前後に,PASS・SARAはA1前,B前,B後,A2後に行った.</p><p>【結果】</p><p>A1前,A1後,B前では足圧左右比率,左右差,PASS,SARA,VASに明らかな変化を認めなかった.B前とB後では,足圧左右比率が右64%から51%,左36%から49%,足圧左右差は5591mmHgから369mmHg,SARA 5点から3点,PASS30点から33点,VAS4/10から1/10と改善を認めた.傾きに対する内省はA1前とB前で「自分ではよくわからないけど倒れそう」であったが,B後では左足に「違和感を感じ右へ重心が行くようになった」「左足に意識が行くようになった」と左下肢に対する認識に変化を認めた.また,A2前後では各評価項目ともに明らかな変化を認めなかった.</p><p>【考察】</p><p>今回,延髄外側梗塞によりLPを呈した症例に対し,下肢への触圧覚入力により即時的な効果を認めた.LPの責任病巣として前脊髄小脳路,後脊髄小脳路,前庭脊髄路などの報告がある.本症例は拡散強調画像より,前脊髄小脳路の損傷が疑われた.前脊髄小脳路はL2以下の意識にのぼらない深部感覚を伝える上行性伝導路であることから,膝、足底への触圧覚刺激の増強により,LPが改善したと考える.このようにLPの原因となる損傷神経路を脳画像により同定し,治療方法を決定していくことは重要であり,前脊髄小脳路損傷によるLP例に対しては膝,足底への触圧覚入力が効果的であることが示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき,対象者に研究内容の説明と書面による同意を得た.</p>

1 0 0 0 OA 河床材料調査

著者
村上 正人
出版者
公益社団法人 砂防学会
雑誌
砂防学会誌 (ISSN:02868385)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.59-63, 2019-03-15 (Released:2020-03-16)
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
村島 直哉
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.3171-3175, 2010 (Released:2011-03-03)
参考文献数
6
被引用文献数
1

胃静脈瘤の治療方法は種類が多く,各施設の対応は現在一定ではない.しかし,内視鏡医の立場で治療アルゴリズムを立てておくことは,緊急治療の多い本疾患では必要である.胃静脈瘤出血を疑ったら,輸液などの内科的治療と家族本人への説明と同意を得た後,内視鏡的治療を選択する.シアノアクリレート(CA)を用いた内視鏡的硬化療法は,胃静脈瘤の緊急止血法の第一選択である.CAはリピオドールと約70% 混合溶液を直接胃静脈瘤に穿刺注入する.出血部位を充てんするだけでなく,周囲の静脈瘤内にも薬液が満たされるように配慮する.異時的に硬化療法やB-RTO(バルーン下逆行性経静脈的塞栓術)を追加して,完全消失を試みる.Hassab手術は若年者で考慮する.併存する肝機能異常の原因や門脈全体の血行路異常を調査しておく.肝癌合併も必ず調査する.
著者
勝間 進
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

変異ウイルスライブラリーを用いた行動スクリーニングから、新たな行動関連遺伝子arif-1を同定した。この遺伝子に変異をもつBmNPVは、ほとんど徘徊行動を起こさない。arif-1欠損ウイルスは培養細胞では顕著な表現型を示さないが、感染カイコにおいては全身感染が起こりにくく中枢への感染が遅れることで、徘徊行動が低下することが明らかになった。一方、ウイルス感染脳を用いたRNA-seqにより、徘徊行動時に発現が変動する宿主遺伝子を数10個同定することに成功している。現在、それらの機能解析をするために、遺伝子組換えウイルスの作成を行っているところである。
著者
渡辺 千賀恵
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.413, pp.97-106, 1990
被引用文献数
1 1

In this paper the causes of decrease in the number of bus passengers are analyzed using the data of public bus enterprises in Japan. Although the spread of private-car owners looks like one of the most important factors, it is nothing but a primary one. The passengers' behavior has been influenced more directly by the fare rises. The passengers decrease consists of the short-term one and the long-term one which have their own mechanism. The latter has begun at a &ldquo;turning point&rdquo; when the fare level overtook the consumer's price level. After that point there is a correlation between the rate of fare rise (<i>X</i>) and the rate of decrease (<i>Y</i>) as shown by <i>Y</i>=1-exp[-0.47<i>X</i>].
著者
宮本 五郎 村山 勇 宮川 俊夫 坂部 健
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会会誌 (ISSN:18846327)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.124-129, 1956-11-30 (Released:2011-08-11)

Optimal amounts of phenidone and hydroquinone in D-76 type PQ developers (pH 8.7), are 0.2g and 5.0g per 1000cc each other, as shown in Fig. 1 and 2. This Formula (PQE) gives slightly more fog than D-76, but addition of 0.2g KBr or 0.01g benzotriazole retards fog (Fig. 3).Optimal pH ranges have been estimated in several kinds of developing formula (Fig. 4-13).PQ-MK (Fig. 15, 16) and PM-MK (Fig. 17, 18) developers give sensitivity about two to three times more than D-76.
著者
堤 定美 関野 雅人
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.194-202, 1999-04-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
119
被引用文献数
4 3

In the last couple of decades since the a11-or fu11-ceramic crowns in dentistry were proposed, the ceramic materials for dental restorations have been remarkably improved at the request of dentists and technicians from the point of view of improving esthetics and biocompatibility.In this paper, the present situation of the dental ceramics with fabricating systems was reported focusing on their material properties, especia11y static and dynamic mechanical properties.