著者
谷 聖一 佐久間 拓也 筧 捷彦 村井 純 植原 啓介;中野由章 中山 泰一 伊藤 一成 角田 博保 久野 靖 鈴木 貢 辰己 丈夫 永松 礼夫 西田 知博 松永 賢次 山崎 浩二
雑誌
情報教育シンポジウム2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.7-14, 2016-08-15

情報入試研究会と,情報処理学会情報入試ワーキンググループは,2013年と2014年に引き続き,2015年と2016年に「大学情報入試全国模擬試験」を実施した.「大学情報入試全国模擬試験」の目的は,「どのような試験方法、どのような範囲・内容・水準の問題が適切であるかについて意見を交換し、その成果として具体的な入試問題の試作を行い世の中に公開すること」ことであった.2015年実施の模試には約2000名の高校生が,また,2016年実施の模試には約750名の高校生が参加した.本報告では,その実施概要と結果について報告する.適切な範囲・内容・水準を確立するためのの議論の素材となりうる具体的な入試問題を提示したという点で,目的をある程度達成できたといえる.

1 0 0 0 序文

著者
荒川 孝 奴田原 紀久雄
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1, 2015

従来の上部尿路結石破砕治療の評価は,1989年に日本泌尿器科学会雑誌に公表された故園田教授等による『Endourology・ESWLによる結石治療の評価基準』が大筋で用いられていた.しかし近年においては,この評価基準が公表からあまりにも時間が経過しているためその存在が忘却され,各学会発表,各掲載論文がそれぞれ異なる基準により報告されていることが多く統一性が失われ,それ故それぞれの治療成績の比較が正当に行われているか否かに疑問が残される.また,結石の大きさの評価法も時代とともに変化してきている.これらの事柄を修正し,AUA,EAUいずれの最新ガイドラインでも示されていない,時代に即応した『新たな尿路結石治療効果判定』を提案するべく,2011年秋頃より荒川と東先生,麦谷先生,山口先生の4人の有志により模索が始められた.これは新たなルール作成の作業であるため,慎重に時間と手間を掛け,2013年の日本尿路結石症学会第23回学術集会と第27回日本泌尿器内視鏡学会総会,2014年の第102回日本泌尿器科学会総会と第79回日本泌尿器科学会東部総会の4つの学会において,各学会会長のご理解とご協力のもと『新たな尿路結石治療効果判定の提案』と題した内容でシンポジウムを開催させて頂いた.繰り返し会員の先生がたのご意見を伺いながらversion upし,最終的に今回の本誌特集に於いて論文発表をさせて頂いた.その過程で先の4人に加え,宮澤先生,奴田原先生にもご参加頂き,合計6人が今回の特集の構成メンバーとなった.本特集では,最初に宮澤先生より『国内外における結石破砕治療評価の現状について』と題してご報告頂く.現状では,治療前の結石の大きさの表現方法はKUBや超音波検査による結石の長径,近年の尿路結石診断で多用されるCT検査を用いた結石の表面積を用いたものや,3次元画像を用いた結石の体積など様々である.小さな結石であれば大きな誤差は少ないかもしれないが,大きな結石になると,単純な長径だけの比較と表面積や体積の比較では大きな違いが生じてくる.この疑問に答えるべく東先生は『結石の大きさの術前評価と残石の評価法』において結石の大きさを体積表記に統一する提案をされている.様々なデータ解析を用いて,CTを実施していない症例に於いても簡便に体積の近似値を求める計算式を提示されている.更には,大きな結石に於いては残石率という概念の提案も併せてなされている.結石の外科的治療は完全摘出が基本であろうが,評価の一助となろう.また,治療結果の判定においては,stone freeのみが治療成功の評価なのであろうか?との疑問もある.つまり結石の存在により生じた尿の通過障害の解除は評価されなくてよいのであろうかという点である.これにつき麦谷先生は『結石治療後の尿路閉塞解除の評価について』の中で,結石による閉塞の解除が確認できた症例を成功例とする提案を行っている.最後に山口先生より我々6名の提案を具体的な表にして示して頂いた.これらの提案は,学会の正式な委員会設置によるものではないので拘束性は無い訳であるが,一つでも多くの学会報告,論文作成においてお役に立つ事が適うならば,我々6名望外の喜びである.なお,この特集の根幹をなす東先生の論文に於ける共同著者である山田先生に対し,膨大な数の症例のデータ分析に多大なるご尽力を頂いた事に対し,深く感謝申し上げる次第である.
著者
渡辺 孝章
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料試験 (ISSN:03727971)
巻号頁・発行日
vol.11, no.105, pp.352-357, 1962-06-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1
著者
三品 拓人
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.74-87, 2019

<p>本稿は「なぜ児童養護施設において子ども間の暴力が多発しているとされるのか」を明らかにした。子どもの身体的暴力を男性性の一種である「男子性」との関連から検討した。</p><p>児童養護施設において発生する子ども間暴力が深刻な問題として提起されてきた。先行研究においては、施設内で子ども間暴力が多く存在していることは複数の調査や語りから実証されているが、暴力が発生する文脈や状況を詳細に明らかにした研究は少ない。そこで、児童養護施設において参与観察調査を行うことによって、小学生の男子間で起きる身体的暴力が発生する文脈を把握した。</p><p>分析では、4つのタイプの身体的暴力を提示した。制裁的な暴力、ケンカにおける暴力、遊びやふざけ合いでの暴力、やつあたりとしての暴力である。身体的暴力は子ども間で適切な態度や振舞い方などを他者に再確認させる資源、ケンカの最終的な手段、遊びの一種などとして活用されていた。</p><p>以上から、身体的な暴力行為が小学生男子にとっていかに重要な他者とのコミュニケーション手段になっているか明らかになった。身体的暴力を他者とのコミュニケーションの資源として活用できる指向性を「男子性」として捉えられる。このような「男子性」は施設のみならず、広く社会にも存在するだろう。ただ、児童養護施設において小学生男子18人が共同で生活することにより「男子性」がより凝縮された形で維持され、発揮されている。</p>
著者
陶湘輯
巻号頁・発行日
vol.第1冊, 1938
著者
斎藤 幾郎
出版者
日経BP社
雑誌
日経パソコン = Nikkei personal computing (ISSN:02879506)
巻号頁・発行日
no.741, pp.91-94, 2016-03-14

個人の情報が漏れる原因はいろいろ/モバイル端末やオンラインサービスの危険性/"不適切発言"をしたユーザーは「特定」される/ファイルを偽装して動画やフォルダーに見せかける/ファイルの「共有」で誰でも閲覧可能に/メールの誤送信で情報漏洩/スマートフォンには「ロック」を掛ける
著者
吉田 紅
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.10, pp.691-699, 2019

<p>ブラックホールがこれほどまでに人々を魅了するのは,「一度入ってしまうと,二度と出てくることはできない」という神秘性からであろう.しかし,この不可逆性は物理学的な立場から見ると,非常に奇妙な代物である.我々がこれまで観測してきた全ての現象は量子力学を用いて説明することができるが,量子力学は可逆の理論である.現在の状態を知ることで過去の状態を完璧に遡ることが原理的には可能なのである.この量子力学と重力理論,特にブラックホールの物理との不整合は,ブラックホール情報損失問題と呼ばれている.</p><p>長らくこの問いに対する我々の答えは,系を記述する運動方程式があまりに複雑すぎて過去まで遡ることができないだけだというものだった.たとえ最初は局所的だった量子情報も,ブラックホールに落ちていく過程で複雑な相互作用を経て,ブラックホールの外にいる観測者の立場からは,まるで非局所的なものに変換されたように見える.それは到底観測できないような物で,損失したも同然だ.この現象はスクランブリング(量子情報の非局所化)と呼ばれており,まさに量子版のバタフライ効果である.このような背景から,ブラックホールの量子カオス的な時間発展は,量子情報の非局所化が最も強く純粋な形で見られる系ではないかと思われてきた.</p><p>しかし約十年ほど前に,ブラックホール情報損失と量子カオスに関する衝撃的な結果が2人の量子情報理論研究者ヘイデン(Hayden)とプレスキル(Preskill)によって発表された.彼らは通常考えられてきた物とは異なる,「古いブラックホール」と呼ばれるエントロピーの半分以上をすでにホーキング輻射で失ったブラックホールを考察した.そして,運動方程式をランダムなユニタリー発展と仮定する簡単なおもちゃの物理モデルを使うことで,ブラックホールに落ちてしまった情報を非常に短い時間スケールで取り出すことが「原理的には可能」であることを発見したのである.</p><p>ブラックホールがまるで鏡のように情報を即座に跳ね返すというこのヘイデンとプレスキルの結論は,スクランブリング現象及び情報損失問題の研究に革命的な発展をもたらしつつある.これまでとは全く異なる新しい物理量が量子カオスの秩序パラメータとして考案され,新たな重力ホログラフィーの模型が提案された.その影響は重力,量子情報,そして物性物理にまで及び,最近ではこれらの概念は実験家の興味の対象にさえなっている.しかし,これらの結果が真に驚くべきものである点は,「情報の取り出し可能性」がまさに「ブラックホールの量子カオス性」からの帰結であることである.もし,ブラックホールが量子情報を非局所化しない非カオス系であったならば,ヘイデンとプレスキルの言ったような情報の取り出しは不可能なのだ.</p><p>量子情報理論的概念の応用から得られたこれらの一連の結果は,情報喪失問題に対する新しいアプローチを生み出すこととなった.「ブラックホールからは二度と出てくることはできない」というのは迷信だったのであろうか? ブラックホールの事象の地平線は本当に絶対的な存在なのだろうか? これらの問いを,量子情報の非局所化という視点から今一度見つめ直してみよう.</p>
著者
石井 香澄 荒牧 元 新井 寧子 内村 加奈子 岡部 邦彦 西田 素子 余田 敬子
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.249-256, 2002-03-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

<目的> 扁桃周囲膿瘍は副咽頭間隙に近接しており, 種々の合併症を生じ得るため早急な対応を要する. 副咽頭間隙の内側には内頸動脈が走行しており, 処置の際に血管損傷など副損傷を併発する可能性がある. そこで迅速かつ適切に対応するため, 扁桃周囲膿瘍例のCT像から, 膿瘍と副咽頭間隙の主要臓器の位置関係を計測し, 処置の際の安全範囲を検討した.<対象・方法> 1997年2月から1999年4月までの期間, 当科で初診時に造影CT scanを施行し, 扁桃周囲膿瘍と診断された31例を対象とした. 平均年齢は30.7歳 (12~54歳), 男性19例, 女性12例で, 患側は右側20例, 左側11例であった. フィルムから膿瘍および副咽頭間隙内の主要臓器である頸動静脈と神経系を含む軟部組織辺縁の位置を, 診療時に指標となり得る門歯正中矢状断および上歯槽後端を基準に距離および角度として計測した.<結果> 副咽頭間隙内の主要臓器の内側縁は門歯正中から15±2°, 正中矢状断からは扁桃上極で24±4mm, 下極で23±3mm外側にあった. 前縁の深さは上歯槽後端から29±5mm後方の位置にあった. 間隙内側に位置する内頸動脈は上歯槽後端を含む矢状断上にあった. 正中と間隙との角度および距離は患側, 健側ともに上極とほぼ同様の計測値で, 有意差は認められなかった. 咽頭粘膜を含めた膿瘍前壁および扁桃周囲膿瘍後壁から, 間隙前縁までの距離は各々31±5mmおよび9±4mmであった. 全例で膿瘍の中心は, 門歯正中と内頸動脈を結ぶ直線より内側に位置していた.<結論> 副咽頭間隙の位置を想定する際, 上歯槽後端と正中矢状断との関係が参考となる. 上歯槽後端の矢状断に副咽頭間隙内側 (内頸動脈) が位置するため, 穿刺・切開の際, 極力穿刺点から矢状方向に進み, 穿刺深は20mm以内とし, 方向は穿刺端が上歯槽後端の矢状断より内側に留めると, 血管損傷を回避した有効な処置が可能と考えられた.
著者
上田 護國
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.115, no.2, pp.70-74, 2020-02

近年,清酒の売上に占める特定名称酒の割合が増加傾向にあり,その結果蔵では多品種少量生産が常態化してきている。一方,近年,杜氏集団の後継者不足,酒造メーカーの零細化等により,酒造経験の比較的浅い社員杜氏やオーナー杜氏が増加している。ベテラン杜氏達は長い経験と卓越した技術を取得し,素晴らしい吟醸酒を醸出しているが,彼らと同じように習熟した技術を得るのは並大抵ではない。一般の吟醸麹造りは,揉み上げ時の水分が固定されず,麹の状貌を見て状況を判断し,手入れと積替え,掛け布等により品温と状貌をコントロールしながら製麹する。これは経験に裏付けられた高度な官能検査能力と技術を必要とすることを意味する。そこで,「誰にでも,簡単に,再現性よく造れる」をテーマに試行錯誤の結果,蒸米の吸水率を制御指針とする製麹(通称タライ麹,以下「上田流製麹」)技術の開発に至った。喜ばしいことに本製麹技術は,近年多くの蔵で検討していただいているが,中には基本的な考え方を誤解している例も散見されるようになってきた。ここでは上田流製麹を改めて解説すると共に,その効果を例示して技術の正しい普及を図ることとした。