著者
松崎 元 大内 一雄 上原 勝 上野 義雪 井村 五郎
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.69-76, 1999-01-31 (Released:2017-07-21)
参考文献数
13
被引用文献数
4

つまみ・水栓金具・ふた等の操作具を前提とした円柱の回転操作において, 使用する指の状況が円柱の直径の変化によって, どのように推移するかを検討するため, 32名(19〜20歳の男性23名, 女性9名)の被験者で実験を行った。実験の方法は以下のようなものである。直径が7mm〜130mmの間で異なる木製の円柱(高さ50mm)を45本用意し, 無作為に選択された各円柱を, 順に台上の回転軸に差し込み, 右手で時計回りに回転させる。操作の状況は, 下方からビデオカメラで撮影し, 得られた画像から各指と円柱の接触状況を判断した。その結果, 回転操作開始時に使用する指の本数が変化する境界値を, 相対的に図示し把握することができた。また, 円柱の直径が増大するのに伴って, 各指の接触位置がどのように推移するかを二次曲線で近似でき, その傾向が明らかになった。この結果は, 回転操作機器の形状デザインに役立てることができる。
著者
大久保 賢一
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.127-141, 2015-02-25

本論文では、日本行動分析学会「体罰に反対する声明」を受け、学校場面における「体罰」に依存しない行動問題に対する適正手続きについて解説する。まず、わが国における児童生徒が示す行動問題に対する懲戒や出席停止、あるいは有形力の行使などの適正手続きについて紹介し、「体罰」と懲戒の線引きに関する課題を明らかにする。そして、タスクフォースが声明において何に反対し、何に反対しないのかということをより明確にする。さらに、声明において推奨されているポジティブな行動支援の一例として、米国において普及しつつあるSchool-wide Positive Behavior Support (SWPBS)について紹介し、行動問題に対する予防的で階層的、そしてシステムワイドな支援モデルについて紹介する。米国の「障害のある個人教育法」(individuals with Disabilities Education Act: IDEA)において定められている学校教育における懲戒ルールについて解説し、適切な支援を行うことを前提とした行動問題への適正手続きについて言及する。
著者
小林 裕章 金子 剛 西本 紘嗣郎 内田 厚
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.63-65, 2010-01

Penile strangulation is one of the emergent urologic disorders, because immediate release is the critical treatment to prevent penile necrosis, urethral injury, erectile disorder, and other unfavorable events. A 66- year-old man was transferred to the emergency room of our hospital for the penile swelling and pain, occurring by penile insertion to the beverage bottle for masturbation. The penis was completely relieved using an electric plaster cutter without any injury. The strangulation time was four hours and a half, and there were no complications. We recommend an electric plaster cutter as a useful tool for this incident.
著者
安藤 香織
出版者
岐阜大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

茶谷らはRu3(CO)12触媒を用いる(pivaloylaminomethyl)pyridineのメチル基C-H結合の活性化によるエチレンおよび水存在下でのレジオ選択的カルボニル化反応を最近報告した。我々は反応機構に興味を持ち、触媒の初期構造としてRuにピリジン窒素、1分子のCO、1分子のエチレンの配位した錯体Aを用いて分子軌道計算による反応の解析を行った(B3LYP/6-31G*(Ru:lanl2dz))。近傍にあるアミドN-H結合へのRuの酸化的付加、エチレンのRu-H結合への挿入の後、近傍にあるC-H結合のRuへの酸化的付加、還元的脱離によるエタンの生成と2つのCOの配位、COのRu-C結合への挿入と空いた配位座へのCOの配位、還元的脱離によるサクシンイミドの生成により生成物が得られると説明される。C-H結合の酸化的付加の活性化エネルギーは24.6 kcalであり、この段階が律速である。茶谷らはD化された基質を用いて同位体効果を調べ(KIE: 3.8)、C-H結合の開裂が律速段階であると結論しており、我々の計算結果と一致する。また、ピバロイル部分のメチル基を1つエチル基に換えた基質でもメチル部分で反応が進行すると報告されているため、律速段階の遷移状態計算を行った所、6個の構造が得られメチルで反応する最も安定な構造はエチルで反応するものより160 ℃、17気圧下2.84 kcal/mol安定で、ボルツマン分布も考えると99.5:0.5の選択性となり実験結果とよく一致した。立体障害が主な要因であると考えられる。なお、反応系中生成する不活性錯体Bは水との反応でCO配位子がCOOHに変わり、同時にアミドのNがプロトン化されルテニウムから脱離することによって活性錯体Aに変化することが分かった。活性化エネルギーは34 kcal/molで、このために160℃の加熱が必要となる。
著者
寺田 拓晃 渡邊 誠
出版者
北海道大学大学院教育学研究院 臨床心理発達相談室
雑誌
臨床心理発達相談室紀要 (ISSN:24347639)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-31, 2022-03-18

本研究では自身を「メンヘラ」という語によって理解しようとしている学生にインタビュー調査を行い、彼女たちが自身のどのような経験を「メンヘラ」として語っているのか、そこで語られる「病む」こととは何かを検討した。協力者たちの語りからは、相手と“繋がりたいのに繋がれない”ことによる傷つき、そのような傷つきを抱えた中で感情にまかせて取ってしまう“行き過ぎた”行動が、「メンヘラ」として表現される「病む」ことであるとの示唆が得られた。先行研究においては「メンヘラ」等の語を用いてセルフ・ラベリングを行うことの否定的な側面が強調されているが、本研究では、困難や生きづらさを抱えた際に「メンヘラ」という視点が、自身を見つめ直す契機となることも示された。このような両義性を踏まえた上で、人々が自らの「病む」経験を語るため利用している「メンヘラ」のような言説と向き合っていくことには、臨床的にも意義があると思われた。
著者
牧野 正直
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.25-36, 2010-02-01 (Released:2011-09-02)
参考文献数
18

本年(2009年)は、わが国においてハンセン病患者の公的機関への隔離・収容が開始されて丁度100年目にあたる。すなわち、政府は1907(明治40)年法律第11号「癩予防ニ関スル件」を公布し1909(明治42)年それを施行、放浪する患者の隔離・収容を開始した。 この小論で、わが国のハンセン病医療史において最も重要な事項の一つである、この法律の成立にかかわった医師、政治家、官僚がどのようなものであったかを検証した。するとこれは意外に少人数のエリート集団であり、一人ひとりが学閥・同門・同郷などといったしがらみで強く結びつけられていたことが明らかになった。 また、この法律は、二回の改正を経ながら89年間維持・継続されることになったが、この維持・継続のためには光田健輔を中心とした系類や光田イズムを信奉し続けた多くの療養所所長たちが浮かび上がって来た。 全療協が主張する「100年の“記念”でも“祝賀”でもなく“総括”である」という言葉を重く受け止めたい。
著者
熊谷 学而 川原 繁人
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.155, pp.65-99, 2019 (Released:2019-10-02)
参考文献数
98
被引用文献数
1

本研究では,ポケモンの名付けにおける新たな音象徴的イメージを検証した2つの実験を報告する。実験1では,進化後のポケモンの名前として,開口度の大きい母音[a]が,開口度の小さい母音[i, u]よりもふさわしいことが明らかになった。また,有声阻害音の数の効果を検証した結果,進化後のポケモンの名前として,有声阻害音が2つ含まれる名前は,それが1つしか含まれていない名前よりふさわしいこともわかった。実験2では,母音と有声阻害音の優先性や相乗効果の検証も行った。その結果,ブーバ・キキ効果と同様に,母音の効果より,子音の効果のほうが強く現れること,そして,母音と有声阻害音の組み合わせは,どちらか一方を含む場合よりも,進化後のポケモンの名前として判断されやすいことが明らかになった。さらに,本研究では,実験2で得られた母音と有声阻害音の音象徴的効果について,制約理論である最大エントロピーモデル(Maximum Entropy (MaxEnt) Grammar)の枠組みでの分析も提供し,音象徴を生成言語理論の視点から捉える。