著者
大槻 信
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

「文献資料年代推定のためのガイドライ.ン」のプロトタイプを作成し、その試用と改訂を行った。原本の実地調査を重ね、ガイドラインへのフィードバックを繰り返した。昨年度までの研究を受け、「文献資料年代推定のためのガイドライン」のプロトタイプを作成した。これは文献資料年代推定のための指標(メルクマール)となる事象を整理し、その年代別の推移を記述したものである。その上で、貴重古典籍を多く蔵する京都大学附属図書館(貴重書庫を含む)、京都大学文学部図書館(貴重書庫を含む)、高山寺、勧修寺などを中心に原本の実地調査を行った。加えて、国立国会図書館、東京大学、東洋文庫、金沢文庫などを訪れ、資料の収集を行うと同時に、「文献資料年代推定のためのガイドライン」へのフィードバックを繰り返した。つまり、ガイドラインを実際の調査で実用し、その有効性を測定しながら、改善を加える作業を数度にわたり繰り返した。その過程で、大型液晶ディスプレイを導入し、作業の効率化を図った。今年度の研究で、ひとまずプロトタイプの完成を見たが、複数の研究者にガイドラインを試用してもらうこと、ならびに、ガイドラインの公表までには至らなかった。
著者
湯之上 英雄
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、少子高齢時代を迎えたわが国の公共政策、特に公共政策の主要な担い手である地方財政に注目して分析を行った。また、高齢人口の増加に伴い、介護保険費の増加が予想されており、どのように介護保険を提供するのかを分析した。
著者
油納 健一
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

"権利の無断使用(特許権の侵害)"に対して不当利得制度を用いた場合に、特許権者をいかに救済できるのかが、本研究の課題であった。ドイツの判例・学説を中心に詳細に検討した結果、特許権者は特許権侵害者に対して、特許権の使用可能性という利益を請求することができると考えるのが、ドイツにおける現在の支配的見解であり、日本法においても重要な示唆を与えうるものであることが判明した。もっとも、使用可能性という利益は、無形・無体の利益であるため、価格算定を行う必要があり、ここでは算定基準をいかに考えるかが問題となる。返還義務の対象の問題と同様に、ドイツの判例・学説を中心に検討した結果、客観的市場価格を基準とすることが最も妥当であることが判明した。これにより、不法行為制度に限らず、不当利得制度によっても、特許権保護を全うできる理論構成を提示することができ、今後の実務にも参考になることが期待されうる。
著者
柚木 貴和
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、ヒト膀胱平滑筋細胞のATP感受性カリウムチャネル(KATpチャネル)におけるKir及びSUR蛋白のサブタイプの決定を行い、膀胱平滑筋KATPチャネルの分子実体の解明を第一の研究目的とした。さらに現在開発中の膀胱選択性KATPチャネル開口薬や従来のKATPチャネル開口薬を用い、モルモット及びヒト膀胱平滑筋収縮に及ぼす効果を詳細に検討し過活動膀胱治療薬としての有効な薬剤を検索することを第二の研究目的とした。第一の研究目的であるが、ヒト膀胱平滑筋のKATpチャネルは電気生理学的実験および分子生物学的実験よりKir6.2+SUR2Bという構造が主に機能し、加えてKir6.2+SUR1という構造も一部機能していると考えられた。このようなサブタイプの組み合わせは血管平滑筋などの他の臓器のKATpチャネルとは明らかに異なっており、膀胱選択的なKATPチャネル開口薬の開発の可能性を期待させるものであった。第二の研究目的については、膀胱選択的といわれているZDO947と他の薬剤を比較しながら、さらに膀胱平滑筋と血管平滑筋を比較しながら検討した。その結果、ZDO947は他の薬剤より低濃度の領域から膀胱平滑筋のカルバコールによる収縮を抑制し、さらに血管との比較によって他の薬剤より優れた膀胱選択性を有することが明らかとなった。またこの膀胱選択性にはSUR1の発現が関与している可能性も示唆されたが、それについては現在検証中である。さらにKATPチャネル開口薬を臨床応用に近づけるために、現在過活動膀胱のモデル動物を作成し、それらにおける各種KATPチャネル開口薬の作用、副作用も検討する実験を試みている。
著者
湯之上 隆 鈴木 淳 大塚 英二 大友 一雄 保谷 徹 岩井 淳 杉本 史子 横山 伊徳
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

静岡県を調査主体とする江川文庫史料西蔵調査事業と連携して調査研究を進めた。平成24年3月刊行の静岡県文化財調査報告書第63集『江川文庫古文書史料調査報告書』4冊により、約30, 000点の古文書を目録化した。本研究の前提となる第1次調査分の約20, 000点と合わせた約50, 000点にのぼる古文書調査はほぼ完了し、本研究の所期の目的は完遂した。江川文庫研究会を5回開催し、調査研究成果の公表と情報の共有を図った。国文学研究資料館の「伊豆韮山江川家文書データベース」により、調査成果を公開した。
著者
湯ノ口 万友 辻村 誠一 塗木 淳夫 塗木 淳夫
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近年、有訴者の症状で肩こりや腰痛は上位を占めるけれども、医療機関を受診する頻度は極端に低い現状である。そのため、申請者らはこの点に注目して、手軽に行える温熱と磁気刺激を組み込んだ筋疲労回復装置の開発を試みた。そして、筋疲労に対する温熱磁気刺激の回復効果を明確にすることを目指し、その結果、試作した温熱磁気刺激装置により、筋疲労の回復を促進させることが出来ることを確認した。測定には血流量、最大発揮筋力、皮膚温度および積分筋電図などのパラメータを用いた。温熱磁気刺激により血流量、最大発揮筋力、皮膚温度は増加傾向あり、一方積分筋電図の増加は抑制された。これらの結果は、温熱磁気刺激が筋疲労回復に有効であることを示唆している。これらの成果は、2編の論文と、7件の口頭発表にまとめた。
著者
柚木 朋也
出版者
岸和田市立旭小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

研究目的:本研究では、創造性に関わる研究の一つとして、創造性育成と大きくかかわる推論であるパースのアブダクションを明確にしようと試みた。そして、アブダクションに関わる理科教材の開発と指導についての分析を行うことで、論理的な思考の育成方法の開発を試みた。研究方法:創造性の育成については様々な見解があり、多くのアプローチがなされている。本研究では、創造性は推論あるいは論理的思考と強く結び付いていることを踏まえ、論理的思考の育成、特にアブダクションの解明とその活用に重点を置いた。具体的には、アブダクションの概念を明確にした上で、創造性を育成するための理科教材の開発について検討した。また、様々な授業、研修、地域における科学教室において使用した「振り子時計」、「映像を利用した天体」、「メッキの実験」などについて分析し、検討した。成果:アブダクションの基礎は、演繹にあり、探究の過程の中で他の推論とかかわり合いながら深められることが明確になった。そのため、論理的思考を高めるためには、それぞれの場面でどのような推論がなされるかを分析することが重要であると考えられる。実際に、「水撃ポンプ」や「フロッピーディスクケースを利用した燃料電池」などに関して分析を試みた結果、アブダクションの関与が明確になった。さらに、教材を使用した種々の実践を検討し、どのような思考の流れがなされるかの分析を行った結果、思考の流れを制御することで探究の過程をより効果的に行わせることが明らかになり、論理的思考や創造性を育成する視点を明確にすることができた。
著者
海老原 淳
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

地中生配偶体を形成するハナヤスリ科ハナワラビ属シダ植物で、配偶体の空間分布を効率的に調査するための分離法・分子同定法を確立した。複数種の胞子体が混生する茨城県つくば市の野生集団において胞子体の平面分布と地中生配偶体の空間分布とを解析した結果、胞子体が比較的少ない地点の土壌中に高密度で配偶体が生育し、2種の配偶体が空間的に近接する場合があることも明らかになった。
著者
長峯 純一 湯之上 英雄
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1999年の合併特例法改正でスタートした平成の市町村合併を検証したところ,ほとんどの合併は財政支援を受けられる期限直前の駆け込みであった。それも合併への誘因を与えたのは,三位一体改革による交付税ショックであった。合併した自治体は行革に邁進しつつも,まちづくりをどう進めていくか,とりわけ旧役場や住民サービスをどうするか,職員の意欲をいかに高めていくかという課題に直面していることが明らかとなった。
著者
平野 宏文 岸田 昭世 有田 和徳 湯之上 俊二 岸田 想子 神野 真幸
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

グリオーマ由来細胞におけるWntとFzの発現を調べ,Wnt-5a,-7,Fz-2,-6,-7の過剰発現を確認した.ヒト腫瘍組織でWnt-5a は, 79%に強発現しており,腫瘍の悪性度と相関していた.また,Wnt-5aの抑制は細胞の移動,浸潤能力の低下と共に,matrix metalloproteinase-2(MMP-2)の発現を低下させた.逆にWnt-5aは,細胞の移動,浸潤能力を刺激した.以上より,Wnt-5aは予後因子であるだけでなく,腫瘍浸潤に関与していることより,これを抑制することで抗腫瘍作用を期待しうる分子標的になる可能性があると考えられた.
著者
柚木 彰 海野 泰裕
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

前立腺がん治療に用いられるヨウ素125密封小線源について、その治療効果において重要なパラメータとなる線源の線量方向分布の測定を行った。大容量自由空気電離箱の製作を行い、測定結果を得た。補正係数及び測定不確かさの評価を行い、正確な測定データが得られることを示した。
著者
毛受 矩子 林田 嘉朗 前川 厚子 佐藤 拓代 中嶋 有加里 小松 洋子
出版者
四天王寺大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

女子大生の健康支援を目的に睡眠障害と自律神経動態の調査を行った。女子大生 471 名についての質問紙調査結果から、起立性調節障害といわれる不定愁訴有は 34.8%で、睡眠障害、精 神衛生について不定愁訴有無群で有意差が有った。一方、女子大生 30 名の臥床から起立時の 血圧等の計測から血圧、血圧調整能力において不定愁訴の有無で有意差は見られなかったが睡 眠障害の有無では有意差があった。以上から睡眠障害に注目した健康支援が求められる事が示 唆された。
著者
宮本 紀男 平間 淳司
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1.植物葉面で観測される対傷害防御または応答シグナルの観測系(下記)を本研究に駆使できるように構築・整備完了した。(1)葉面極微弱生物フォトン発光計数システム(2)葉面微弱クロロフィル発光計測システム(3)自発性微弱AE(超音波放出)信号計測系(4)葉面電位信号計測系統 並びに(5)2室分離型カプセル状シャッタ/遮光暗室を製作した。2.上記(1)と(2)について、フォトン発光、クロロフィル発光の葉面2次元分布(イメージング)画像構成プログラムの立ち上げ調整を完了した。これにより、同一個体の任意の葉に加えた冷熱刺激が、冷熱刺激を加えていない同一個体の別の葉に伝達している兆候をクロロフィル蛍光強度変化により検出できることを突き止めた。3.植物個体内部の対傷害防御指令に対応するmRNAの発現を検知するための遺伝子解析システムの導入と同システムの立ち上げ、調整を完了した。このシステムを用いて害虫の加害を受けた稲と受けていない稲のそれぞれのmRNAの検出手法を確立した。この手法により、加害を受けた稲と受けていない稲のそれぞれのmRNAに有意差が確認された。上記2.3の結果から、植物個体内部の情報伝達機構や情報の内容を探知できる可能性が裏付けられた。植物同士の情報交換機構についても把握できる見通しが得られた。
著者
淺野 貴之
出版者
埼玉県深谷市立深谷小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では,指導要領で取り上げられていない発展的な内容を理科授業に取り入れていくことにより,児童の科学的な思考力の育成にどのような効果を及ぼすのかについて,小学校第6学年「電流の働き」及び「水溶液の性質」,小学校第5学年「物の溶け方」の3つの単元において調査し,その結果の分析を行った。まず「電流の働き」においては,従来小学校段階では取り上げてこなかった1本の導線に流した電流が生み出す力について,児童に演繹的に学習させる群を実験群とし,学習指導要領通りの学習をさせる群を統制群として,その効果を比較した。その結果,実験群の児童は,電磁石を強くする方法を考える局面において,根拠を基に予想を立てたり,結果を考察したりすることができるようになることが明らかとなった。次に「水溶液の性質」においては,教師が与えた6つの液体の正体を確かめるための方法を考えるという発展課題に取り組ませた。そして授業中の会話プロトコルのデータとプリントなどの記述データを詳細に分析した。その結果,発展課題に取り組む中で,児童が実験方法の特徴を考えて,どの実験を行うかを決定するようになることが明らかとなった。最後に「物の溶け方」においては,児童にいろいろな物を与え,水に溶ける物と溶けない物とを分けていくという発展課題に取り組ませた。その結果,本発展課題に取り組んだ実験群の児童は,教科書に記載された発展的な学習に取り組んだ統制群の児童と比較して,水溶液かどうかを判断する際に,水溶液の定義を基に思考することができるようになることが明らかとなった。以上より,発展課題に取り組ませることにより,実験方法を決定する局面及び実験結果について予想・考察する局面における児童の科学的な思考力の育成に効果があることがわかった。
著者
市田 敏啓
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は多国籍企業がホスト国の消費者市場に参入を考える場合にいかなる参入形態選択すべきかを理論的に分析することを主眼としている。その際に主に2つの観点からの分析を行った。一つ目はブランドの差別化の度合いに応じて参入形態が変わるという考え方である。また、二つ目は流通チャネルコントロールの問題にマルチタスクのプリンシパル・エージェントモデルなどを応用することでメーカーと小売りの指向の違いが参入形態を変えるという考え方である。
著者
船木 實 東野 伸一郎 坂中 伸也 岩田 尚能 中村 教博
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

小型無人飛行機により、南極・ブランスフィールド海盆にある Deception 島で空中磁気観測等を行い、同島の北半分と周辺海域の磁気異常を明らかにした。 本研究により、南極でも無人飛行機による科学観測が可能で、安全で大きな費用対効果を持つ ことが示された。King George 島では岩石磁気、年代、それに磁気異常の研究が行われ、ブラ ンスフィールド海盆が典型的な背弧海盆の特徴を持つことを明らかにされた。
著者
深谷 優子
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,日本の文化・社会に特有の省略や直接表現を避けた言語表現の代表として俳句を取りあげ,俳句理解に関連する個人特性測定のための尺度として,読書経験・読書態度尺度を開発した。また,ピアレビュー(共同推敲)の教授技法を用いたところ,主に俳句理解の質的側面が支援可能であること,またその前提として,自分で予想したり考えたりするなどの思索専念傾向の態度を保障するような環境づくりが重要であることが明らかとなり,俳句理解の支援のための実践的な方策の示唆を得た。
著者
成瀬 九美
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

同じリズムで動くとき、我々は共通の感情を表出し、他者との一体感を味わうことがある。リズム同調性のある活動は社会的統合の現われでありソーシャル・スキルの一つである。本研究では2者のコミュニケーション場面を取り上げ、前腕回転課題、タッピング課題、手合わせ課題を用いた実験や、幼稚園児の積み木遊びの観察事例において,動作速度の変化を分析した。同調過程では他者身体に対する自己身体の調整が行われ、この相補的な関わりの中で二者のリズムが形成された。
著者
清水 宏祐 堀 直 小松 久男 林 佳世子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

過去の海外調査で収録した100本以上のビデオ映像をデジタル化し、HDDに収納して、プログラム名を付け、見たい箇所をすぐに検索して提示できるシステムを構築した。プログラムは200以上に及び、バザールでの商取引の比較映像(新彊、トルコ、エジプト)では、手を握って交渉し、合意に達すると離すという、イスラーム世界特有のバイアという手続きを即座に、、見比べることができるようになった。また、バザールの商店構成が年とともに変化する情況を比較したり、市壁が新たに改修される様子を、新旧の比較対象が行えるようにプログラムした。12月9日の九州史学会は、各研究者から趣旨説明、個別報告が行われた。各種の映像資料の提示は、大きな反響を呼び、「今日、ここから新しい映像歴史学が誕生した」との印象を与えるものであった。この成果を生かし、さらに映像の集積と分析を行い、映像資料を歴史史料として定着させる努力を続ける所存である。成果の全容は、報告書『現地調査で収録したビデオ映像のデジタル化と情報共有ネットワークの構築』として刊行した。
著者
東郷 賢 加藤 篤史 蟻川 靖浩 和田 義郎 加藤 篤史 蟻川 靖浩
出版者
武蔵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アフリカ(ケニア、ボツワナ、ガーナ、アフリカ開発銀行)を訪問し、それぞれの国の経済成長における援助の果たした役割についてヒアリングを行った。また、援助供与国の中で最も優れていると言われるデンマークの援助庁も訪問し援助方針についてヒアリングを行った。OECD も訪問し、援助データの詳細について議論をおこなった。これらの内容を踏まえて分析を行っている。その結果、経済成長に関し援助の果たす役割は決定的ではないものの、効果的に利用することは可能であることが判明した。