著者
岡田 章 今井 晴雄 米崎 克彦
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

本研究の目的は、社会規範を取り入れて既存の交渉理論を再構築し、理論と実験の両面から社会規範が交渉行動と交渉帰結に及ぼす影響を分析することである。平成28年度の研究成果は次の通りである。(1)経済学、社会学、社会心理学、政治学、文化人類学、ゲーム実験などの関連分野の文献サーベイや研究情報の探索を行い、規範の定式化の理論的可能性と対応する実験の手法や結果等を検討した。(2)交渉主体が一定の社会規範の制約を受ける下での交渉問題を、相手の規範に関する認識が不完全であるようなケースに拡張する可能性について予備的分析を行った。とくに、出発点として、互いの規範が異なることを認識として共有している場合を考え、さらに、相手の規範について不確実であるような単純な不確実性の導入を検討するという方針を確認した。(3)外部性を伴う提携交渉問題における利得分配のコア概念を考察した。社会規範からの経済主体の提携による離脱に対して他の経済主体の反応行動自体が社会規範の制約を受けることを考慮して、新しい協力ゲーム解の性質を分析した。(4)社会規範と交渉行動のダイナミックスを分析するために確率的進化モデルの分析を発展させ、提携形成と提携内公平戦略が進化的に安定である条件を明らかにした。(5)分配に関する社会規範、状況の認識識別および規範の共有度の評価の調査のためのアンケート調査とその方法についての検討も継続して実施した。また、学生を対象とした授業内実験という形で、事前の行動選択の内容が予期せず事後の交渉の条件-パイのサイズ-に影響するという場合に、その与える効果を調べた。この実験では、行動選択の内容の影響が強く見られなかったと同時に、行動選択内容に十分なバラエティを与えることができなかったために、実験デザインについてのさらなる改善が必要であることを確認した。
著者
宋 基燦
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

朝鮮学校は、日本最大の外国人学校組織であるにも関わらず、その特殊な政治的立場とそれに起因する閉鎖性のため、今まで研究者の接近がやや難しい領域だった。本研究は、朝鮮学校の教育の実態を理解し、それが日本社会に示唆する意味を長期的な面で明らかにするための人類学的研究として位置付けることができる。研究代表者は、13年前から朝鮮学校の現場研究を行っており、当時の調査に基づいた結果を朝鮮学校の民族誌として発表したことがある。本研究は、当時の研究に続く後続研究として、当時の学生たちのその後を追跡することにより、朝鮮学校の卒業生の日本社会における生活世界を理解することを目的としている。主な研究対象として、当時の生徒と教師、現在の朝鮮学校現場を設定している。13年前の調査現場への参与観察は、本務校の業務の関係で、実現することが現実的に難しかったため、2016年からは、京都の朝鮮学校を中心に現場研究を進めている。その傍ら卒業生、特に韓国で活動している朝鮮学校卒業生の事例を中心的な事例として訪問インタビューなど、研究を進めてきた。なお、朝鮮学校が持っている政治的特殊性への理解を深め、それを研究に反映するべく、朝鮮大学や総連関係者との関係構築にも努めてきた。その結果、北朝鮮を取り巻く国際政治の環境変化が朝鮮学校へ及ぼす影響に関する理解を得ることができた。この理解は、今後の研究の展開と結果をまとめるにおいて非常に重要な部分になるであろう。
著者
山本 かほり 野入 直美
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28 (Released:2011-08-05)

愛知朝鮮中高級学校での参与観察および学生,卒業生,教員,保護者へのインタビュー調査,行事への参加などを通じて,朝鮮学校での日常およびその意味を考察してきた。さらに朝鮮民主主義人民共和国への修学旅行」にも同行調査を行い,朝鮮学校の生徒たちにとっての祖国の意味を考察した。朝鮮学校が当事者にとってもつ意味は,朝鮮人としての肯定的アイデンティティを形成し,日本においても朝鮮人として生きていくことの自己肯定感の育成,そして,朝鮮半島を「祖国」として考えつつ,日本において何ができるかを考える遠隔地ナショナリズムが育成されていることを考察した。
著者
渡辺 治
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01 (Released:2018-04-23)
著者
小川 基彦
出版者
国立感染症研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001 (Released:2001-04-01)

ツツガ虫病の起因菌Orientia tsutsugamushiはリンパ球や血管内皮細胞など細網内皮系細胞に主に感染する.その結果,ヒトには免疫応答など様々な生体反応が誘発され,発熱,発疹,CRP,肝酵素の上昇などの症状が起きる.また,一部の患者は播種性血管内凝固(DIC)をおこし重症化する.そこで,本研究ではツツガ虫病の免疫応答と病態の関係に注目し解析をおこなった.まず,患者の発生状況や臨床所見に関して行った調査票による疫学調査の中で,特に免疫応答に関連するリンパ球を含む白血球減少,DICなどの所見に注目し疫学的な解析をおこなった.その結果,主に春に発生が多くGilliamおよびKarp株の感染が多い東北・北陸地方は白血球減少およびDICをおこす頻度が高く,重症度が高いこと,一方で秋に発生が多くKawsakiおよびKuroki株の感染が多い関東および九州地方では頻度が低く,症状が軽いことが明らかになった.これらの結果から,本菌の血管内皮細胞やリンパ球への感染による免疫応答が病態と密接に関係している可能性が示唆された.次に,ヒト臍帯内皮静脈細胞(huvec)に病原性の強いKarp株を感染させ,免疫応答のメディエーターであるサイトカインの誘導を解析した.huvecにKarp株を感染後,感染細胞からRNAを抽出しRT-PCRによりmRNAレベルでサイトカインの発現を解析した.その結果,感染後72時間でIL-6,8,GMCSF, MCP-1,RANTES, TNFαの発現がみられた.また,同様の解析をヒト単球セルラインU937で行ったところ,IL-1β,8,RANTES, TGFβの発現がみられた.また,U937にはKarp株への感受性が高かったが,別の単球セルラインのK562は感受性が低かった.また,huvecを用いた血管透過性の解析では,およびを用いて,Transwellメンブレン上のモノレイヤーの感染後の電気抵抗の変化をEndohmにより解析した.その結果,Karp株の感染およびTNFα(陽性対照)により透過性が亢進した.今後,産生されるサイトカインの役割,内皮透過性,単球への感受性,病原性の異なる株による違いに注目した解析を行い,各細胞のin vitroにおける役割・応答を解析するための基礎データが蓄積できた.
著者
大角 欣矢 花岡 千春 塚原 康子 片山 杜秀 土田 英三郎 橋本 久美子 信時 裕子 石田 桜子 大河内 文恵 三枝 まり 須藤 まりな 中津川 侑紗 仲辻 真帆 吉田 学史
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-21)

近代日本の洋楽作曲家第一世代を代表する作曲家の一人、信時潔(1887~1965)に関する音楽学的な研究基盤を確立するため、以下の各項目を実施した。①全作品オリジナル資料の調査とデータベース化、②全作品の主要資料のデジタル画像化、③信時旧蔵出版譜・音楽関係図書目録の作成、④作品の放送記録調査(1925~1955年のJOAKによる信時作品の全放送記録)、⑤作品研究(特に《Variationen(越天楽)》と《海道東征》を中心に)、⑥明治後期における「国楽」創成を巡る言説研究、⑦伝記関係資料調査。このうち、①から⑤までの成果は、著作権保護期間内の画像を除き原則としてウェブにて公開の予定。
著者
森山 優 森 茂樹 宮杉 浩泰 小谷 賢
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

(1)日本、アメリカ、イギリス、オーストラリアの文書館を調査し、外交・インテリジェンス関係の一次史料を収集した。従来の研究では見逃されてきた多数の貴重な史料を発掘できた(2)これらの史料を整理して、その一部をデータベース化した。(3)先行研究を収集して、問題点を検討した。(4)収集した史料を総合し、日本の情報戦に関する理解を深化させた。(5)成果の一部を学会報告・論文・書籍、マスコミ取材等で発表・発信し、学界のみならず一般社会に向けて研究の意義を強調した。