著者
矢島 安朝 伊藤 太一 古谷 義隆 本間 慎也 佐々木 穂高 鈴木 憲久
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

近年、インプラント治療患者の年齢層が高齢化により口腔癌の好発年齢に一致してきている。「field cancerization」という概念より、常に慢性炎症の環境下にあるインプラント周囲上皮は、発癌のリスクが高いと考えられる。この仮説をもとに我々は、4NQOを用いた自然発癌モデルラットを使用し、インプラント周囲口腔粘膜と癌の相関性について検討した。6ヶ月間の4NQO投与によってインプラント周囲上皮の発癌は認められなかったが、対象群と比較して、N/C比の増大や異型核分裂などの細胞異型が多く見られた。この結果から、インプラント周囲上皮は発癌リスクが高い可能性が示唆され、さらに長期的な観察によって明らかになると考えられた。
著者
大桃 敏行 秋田 喜代美 村上 祐介 勝野 正章 牧野 篤 藤村 宣之 本田 由紀 浅井 幸子 北村 友人 小玉 重夫 恒吉 僚子 小国 喜弘 李 正連 植阪 友理 市川 伸一 福留 東土 新藤 浩伸 齋藤 兆史 藤江 康彦 両角 亜希子 高橋 史子 星野 崇宏 伊藤 秀樹 山本 清 吉良 直 星野 崇宏 伊藤 秀樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

日本を含めて多くの国で多様化や競争、成果に対するアカウンタビリティを重視するガバナンス改革が行われてきた。また同時に、単なる知識や技能の習得からそれらを活用する力や課題解決力、コミュニケーション能力などの育成に向けた教育の質の転換の必要性に関する議論が展開されてきた。本研究の目的はガバナンス改革と教育の質保証との関係を検討しようとするものであり、成果志向の改革では、広い能力概念に基づく教育において評価がどこまでまたどのように用いられるのかが重要な課題となってきていることなどを示した。
著者
北中 千史
出版者
国立がんセンター
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2000 (Released:2000-04-01)

神経芽腫は自然退縮がしばしば見られる癌としてよく知られているが、そのメカニズムについてはほとんどわかっていない。神経芽腫の自然退縮のプロセスにアポトーシスとは異なったプログラム細胞死の関与が示唆されていること、Rasの発現が神経芽腫の予後良好因子であることなどに加え、最近の我々の研究からRasがヒトがん細胞に細胞特異的に非アポトーシス性プログラム細胞死を誘導することが明らかになってきた。これらの事実から我々は神経芽腫におけるRas蛋白質の高発現がアポトーシスとは異なったプログラム細胞死を誘導し、その結果腫瘍の自然退縮が起きているのではないかと考えた。この点を確認するためにまず神経芽腫の腫瘍サンプルを用いた免疫染色を行ったところ、自然退縮を起こしやすい神経芽腫のサブグループにおいてRasの高発現部位に一致してアポトーシスとは異なる細胞変性が高頻度に起きていることを認めた。また、in vitroにおいても、腫瘍サンプルで認められた所見に一致して、Rasの発現が神経芽腫細胞にアポトーシスとは異なった細胞死を誘導することを確認した。これらの結果はRasにより誘導される非アポトーシス性プログラム細胞死が神経芽腫の自然退縮に寄与している可能性を強く示唆している。
著者
飯島 睦美
出版者
明石工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2014-07-25)

「英文読解ができない,英単語・英語例文が覚えられない」などの困難を抱える複数の学習者に行ったWAIS-Ⅲ(ウェクスラー成人知能検査)の結果を分析すると,共通して「処理速度,符号・記号,数唱」の能力が顕著に弱いということが観察できた。 こういった分析結果を「言語学習適性-音韻符号化能力,文法感覚,帰納的言語学習能力,暗記学習」の観点から考察し,英語学習の改善につながる具体的な指導法,および学習法を提案し,そして,英語学習に困難を感じる学習者には,どういった特性があるのかを明らかにした上で,さらにそういった特性を補って英語学習の改善につなげるための具体的指導法,学習法を提案することを試みた。
著者
原田 二朗 山本 健 溝口 正 佐藤 秀明
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

酸化ストレスを原因とする肥満から発展するメタボリックシンドロームは、脳梗塞や心筋梗塞のリスクファクターとなることから、予防法の開発が急務である。応募者はこれまでに、光合成細菌の直鎖型ケト化カロテノイドに優れた抗酸化能力が備わっていることを見出してきた。本研究では未だ動物実験では使われたことがないケト化カロテノイドを調べることで、メタボリックシンドロームの予防効果について検討する。平成29年度においても前年度同様に糸状性酸素非発生型光合成細菌Chloroflexus aurantiacusがもつ、糖鎖型ケト化カロテノイドに着目した。この細菌は4-keto3’,4’-didehydro-OH-g-carotene glucosideを最終産物とし、その中間体としても共役二重結合が異なる糖鎖型ケト化カロテノイドを合成する。これらのカロテノイドの合成経路の解明を行った。まず、この細菌の培養を条件を変えて行い、そのカロテノイド組成を分析したところ、嫌気光合成培養下では見られなかったケト化カロテノイドが、好気条件下でのみ合成していることが分かった。また、ゲノム上に見出されたカロテノイド合成酵素の相同性遺伝子を大腸菌の中で発現し、合成されるカロテノイドの分析を行った。その結果、この細菌のカロテノイド合成にはcrtE、crtB、crtI、crtY、crtO、cruF、cruCおよびcruD遺伝子が関与することが分かり、合成経路の決定を行った。カロテノイドのケト化はcrtO遺伝子が関与することが分かったので、C. aurantiacusにおける転写量を調べたところ、酸素存在条件下で転写量が上昇することが分かった。C. aurantiacusにおいてケト化カロテノイドは酸素条件下で合成され、抗酸化作用によって酸化障害から細胞を保護していると考えられた。
著者
大石 由美子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

肥満や、脂質代謝異常が慢性炎症を基盤とした動脈硬化をすすめるように、免疫と代謝とは、個体や組織のレベルで密接に連携している。そこで、私は細胞のレベルでも免疫と代謝とが連携しているのではないかと想定した。免疫応答に重要なマクロファージの細胞代謝としての免疫応答が、細胞内脂肪酸代謝と密接に連携して制御されることを見いだした。特に、マクロファージが炎症応答の後期に合成する不飽和脂肪酸が、マクロファージの自律的な炎症収束形質への変化と同時に、全身の炎症応答の収束に必須であることを明らかにした。本検討の結果、免疫細胞の細胞内代謝が炎症の慢性化を防ぐ、新たな治療標的となる可能性が示された。
著者
田岡 和城 荒井 俊也 吉見 昭秀
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

本研究の目的は、ヒトの血液由来人工多能性幹細胞induced pluripotent stem cells(iPS細胞)を用いて、骨髄移植に使用できる造血幹細胞を樹立誘導することである。白血病をはじめとする造血器腫瘍の根治治療として造血幹細胞治療がある。これまでは、骨髄バンクや臍帯血によって、ドナーを得ていたが、適切なドナーがいない場合や、コーディネートに時間がかかること、臍帯血は十分な細胞数が確保出来ないといった問題があり、十分な治療が出来なかった。申請者は、HLA一致のヒトの血液から速やかにiPS細胞を樹立し、さらに造血幹細胞に誘導することによってドナーソースとしてのiPS細胞由来造血幹細胞を作成することをめざす。この新たなドナーソースの作成は、骨髄バンクを基盤としたこれまでの移植医療を変革する可能性があると考えられる。iPS細胞を10T1/2細胞と共培養し、day1からday4にBMP4、day4からday9までIL3、day9からSCF、FLT3、TPO、IL3、VEGFをサイトカインで刺激すると、造血幹細胞に認められるCD34陽性CD38陰性CD90陽性分画を認めた。また、この方法では、非常に効率よく造血幹細胞様の血球を産生することを可能とした。誘導したCD34陽性造血前駆細胞を、骨髄系、赤芽球系、巨核球系の3系統に分化誘導したところ、多系統への分化能が保持されていることを示した。
著者
榎本 俊樹 小柳 喬
出版者
石川県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

フグ卵巣は塩漬け・糠漬けすることで毒性が低下した。また、これらのサンプルからTTX及びその類縁体である5,6,11-trideoxytetrotodoxin(TDTTX)が検出された。TTX及びTDTTXは糠漬けに伴い減少することから、TTXは分解されることで毒量が減少することが示唆された。フグ卵巣の糠漬けの菌叢について検討したところ、主要な乳酸菌は、Tetragenococcus muriaticusと同定された。さらに、Bacillus属及びClostridium属の細菌も主要な菌叢であった。これらの細菌のTTX分解への関与については、今後の研究課題として残された。
著者
海野 千畝子
出版者
兵庫教育大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01 (Released:2013-05-31)

本研究では,情緒障害児短期治療施設の被虐待児童を対象とした動物介在療法(ドッグプログラム)を愛着形成という側面から臨床的に検討した。ドッグプログラム前後において児童の情緒と行動の様相を比較した。結果,本来の施設側の治療に加えてドッグプログラムを行った介入群の児童らと施設側の治療のみの介入無群の児童らとの群間比較で, 児童らの愛着形成を阻害する解離症状の数値は,介入群がドッグプログラム前後で有意な差を認めた。犬との安全な皮膚接触を通した触れ合いを含むドッグプログラム(DOG-P)が,被虐待児童らの解離された感覚を統合し,必要な愛着形成を促進することが示唆された。
著者
海野 肇 けい 新会
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994 (Released:1994-04-01)

上下水の最終処理に広く用いられている塩素消毒は残留微量有機物質との反応によってトリハロメタン等の発ガン性物質を生成する可能性が大きく,その代替法として紫外線処理法が注目されている.一方,紫外線殺菌により一旦不活性化された細菌は近紫外線によって再び活性化するという現像がある.本研究では,最近水環境汚染の一つとして指摘されている腸管系ウイルスについて,紫外線処理による不活化過程を検討した上で,その不活化したウイルスの近紫外線照射下での挙動を調べた.実験には,ポリオウイルス1型のワクチン用弱毒株(LSc.2ab株)を用いた.紫外線によるウイルスの不活化実験は低圧水銀ランプ(波長253.7nm)の真下に一定濃度のウイルスを添加したPBS溶液を置き,異なる紫外線強度の条件下で連続攪拌して行った.また,紫外線処理したウイルスに波長300〜400nmの近紫外線を照射しウイルス活性の変化を調べた.ウイルス活性はプラーク形成法により評価した.紫外線照射によるウイルスの不活化過程は,いずれの紫外線強度においても紫外線量(強度と時間の積)増加と共に一次的に減少した.しかし,大腸菌の不活化に比べて同程度の不活化率を得るにはかなり大きい線量の照射が必要であった.また,異なった紫外線線量下で不活化したウイルスは近紫外線照射と未照射とでは同様な挙動をし,光による活性回復(光回復)現象を示さなかった.これは紫外線照射したウイルスと細菌への近紫外線の影響が異なったことを示した.本研究の結果から,上下水の紫外線処理法では,細菌の光回復による活性化を問題視する必要があるが,ウイルスはそのような問題がないことがわかった.
著者
清水 弘之 HO John H.C. KOO Linda C. 藤木 博太 松木 秀明 渡辺 邦友
出版者
岐阜大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990 (Released:1990-04-01)

ホンコンでは、わが国と比べ鼻咽頭がんの罹患率が高く、EBウィルスと関係、あるいは塩魚との関係が注目されてきた。しかし、一般集団のEBウィルスへの感染率は日本、ホンコンとも極めて高く、EBウィルスのみでは、日本とホンコンとの差、あるいは発病すめ者としない者の差を説明しきれない。つまり、別の因子の介在している可能性が充分に考えられる。今回、気道内の細菌のプロモ-ション活性に注目して、研究を実施した。ホンコン・バプティスト病院へ通院中の鼻咽頭がん患者5名(男子4名、女子1名、年齢40ー68歳)の鼻咽頭部から粘液を採取、直ちにGAM寒天培地を用い、好気・嫌気両方の条件で37℃、48時間培養を行った。また、コントロ-ルとして、同病院で働く職員を5名(男子3名、女子2名、年齢36ー64歳)選び、鼻咽頭部粘液を同様に培養した。それぞれの培養菌体を一旦凍結乾燥したのち、その溶解物を用い、プロテインキナ-ゼC、^<32>PーATP、Ca、フォスファチジルセリンの存在下で、ヒストンに取り込まれる^<32>Pの量を測定することにより、プロテインキナ-ゼCの活性を観察した。プロテインキナ-ゼCの活性(mU/10μg)は次の通りであった(平均値と標準偏差):鼻咽頭がん患者からの検体の好気培養…20.0 ±11.0鼻咽頭がん患者からの検体の嫌気培養…13.2 ±11.0対照者からの好気培養………5.18 ±6.16対照者からの嫌気培養………10.4 ±17.16つまり、好気培養・嫌気培養の結果とも、鼻咽頭がん患者からの菌体の方で高い活性値が認められ、特に好気培養でその傾向が顕著であった。また、ホンコンにおいては、女性の喫煙率が低いにもかかわらず、女性肺がんが高率であり、一般集団での慢性の咳・痰も日本の約10倍と推定されている。そこで慢性痰を有する女性3名の喀痰を37℃、好気および嫌気条件下で48時間培養後、一旦凍結乾燥し、以下の燥作を行い、nonーTPAタイププロモ-タ-であるオカダ酸クラスが示す、プロテインキナ-ゼの活性作用を検討した。すなわち、凍結乾燥菌体を酵素で消化、凍結乾燥後、メタノ-ルで抽出し、その抽出液をジクロロメタン/イソプロパノ-ルに溶解する分画Iと、その沈渣である分画II、さらにメタノ-ル抽出の沈渣をジクロロメタン/イソプロパノ-ルに溶解した分画IIIに分け、酵素活性への影響を観察した。好気培養で発育した菌は、どの分画においてもプロテインキナ-ゼの活性作用であるオカダ酸様作用を示さなかった。しかし、2名から得た嫌気培養発育菌は比較的強い活性(特に分画Iにおいて)を示した。分離同定の結果、その菌は Streptococcus sanguis であることが判明した。以上、鼻咽頭患者の腫瘍部あるいはその近辺から採取した細菌の菌体(あるいはその分泌物)に何らかのプロモ-ション活性を示すものが存在する可能性を示唆する結果を得た。しかし、診断後時間経過の短い患者を選んだが、既にがんが発生した後の鼻咽頭部からの菌の分折であり、がん発生以前の状況は不明のままである。また、ホンコンの肺がん患者10例から喀痰を採取し、凍結乾燥を終えているので、慢性の咳・痰を有する患者の成績と比較すべく、分折を継続中である。
著者
河野 公一 織田 行雄 渡辺 美鈴 土手 友太郎 臼田 寛
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997 (Released:1997-04-01)

研究総括体内に吸収されたフッ物はそのほとんどが腎臓から排泄されるため、高濃度のフッ素暴露のみならず長期にわたる低濃度のフッ素暴露でも腎障害をきたすことが動物試験により確認された。健常者では尿中フッ素量は生体へのフッ素の負荷量をよく反映し、一般環境からの摂取やフッ化物作業者における暴露の指標として広く用いられている。地域住民を対象とした検診結果および動物試験に、より尿中へのフッ素の排泄は腎でのクリアランスに依存しており、もし腎機能の低下がある場合、例えば慢性腎炎や腎不全の患者のみならず健康な個体でも中高齢化とともにフッ素の排泄障害と体内への蓄積が示唆されることが確認された。腎フッ素クリアランス値はクレアチニンクリアランス値に比べて40歳台までは比較的穏やかな減少傾向にとどまるが50歳台以降では急激な低下を認めた。さらに動物を用いたフッ化ナトリウム負荷試験ではフッ素クリアランスが低下し血中フッ素濃度が高く維持されること成績を得た。体内に吸収されたフッ素はその大半が24時間以内に排泄されるが、この排泄率は腎機能の低下とともに減少し、もし腎フッ素クリアランス値が20%低下すればフッ素の24時間における排泄率も20%減少することが確認された。わが国でも増加しつつある腎透析患者では血中フッ素濃度が高く維持され、アルミニウムなどの他の元素とともに骨や脳の病変とのかかわりから問題とされてきた。最近では透析液の脱イオン化などによりこれらの疑問は解消されたとする報告がみられる。しかし本研究の成績より、現在一般に使用されている透析膜自体の性格などから血中フッ素は十分に除去しえず、これらの問題は解消されたとする根拠が得られなかった。近年、わが国の産業界では作業者の中高齢化が急速に進みつつある。このような状況においてフッ物などの有害物を長期にわたって取り扱う作業者が今後さらに増加することが予想される。したがってこれら作業者の健康管理の基準はそれぞれの作業環境において個々の作業者の加齢による腎機能の低下などの生理的状態を考慮した上で評価することが強く望まれる。
著者
熊谷 エツ子
出版者
熊本大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989 (Released:1989-04-01)

われわれは、これまでに経験年数の長い診療放射線技師の中に放射線の影響と考えられる染色体異常やEBウイルス(EBV)に対する液性免疫応答異常の疑われる人が存在することを明らかにしてきた。本研究では、熊本県が成人T細胞白血病(ATL)の好発地域であることに着目して、診療放射線技師におけるhuman T cell lymphotropic virus typeー1(HTLVー1)と放射線被曝との関係を、ATL細胞、HTLVー1抗体、および染色体異常を指標として調べた。また、転座染色体と癌遺伝子存在部位との関連を調べるとともに、EBVと同じヘルペス科ウイルスであるサイトメガロウイルス(CMV)抗体の動態から低線量放射線の長期複曝の影響を追求した。その結果、1.HTLVー1抗体陽性例は診療放射線技師(経験年数が1年以上)99名中3例(3.0%)、対照群96例中4例(4.2%)みられた。その中の技師1例の末梢血にATL細胞が50%観察された。この技師の白血球数は8500/mm^3、Ca値は9.2mg/dlであり、当大学病院で慢性型ATLと診断された。しかし、残りのHTLVー1抗体陽性例にはATL細胞は見いだせなかった。2.構造異常を有する染色体が放射線技師(53名)には2.5%、対照群(36名)には1.6%の頻度で観察された。構造異常では転座染色体が最も多く検出され、その頻度は技師群が対照群に比べて有意に高かった。相互転座染色体の中ではt(7;14)の頻度が最も高かったが、技師群と対照群との間には有意差はみられなかった。7番染色体と14番染色体間の相互転座例の大多数が7q32ー36、14q11ー12の部位で部分交換をしていた。ATLでは14q11ー12に切断点を有する異常が報告されているが、今回対象としたHTLVー1抗体陽性例にはクロ-ンとしての異常はみられなかった。また、ski、abl、myb、mos、myc、Nーmycなどの癌遺伝子存在部位での転座例も若干みられたが、クロ-ンとしての異常は観察されなかった。3.CMV抗体量と低線量放射線被曝量との間には特定の関連はみられなかったが、CMV抗体異常陽性(ELISA OD値≧0.4)の放射線技師ではCMV抗体陰性の技師に比べて、EBVーVCA/IgGおよびEA/IgG抗体異常陽性例が高率にみられた。
著者
李 建志 島村 恭則 上水流 久彦 齋藤 由紀
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-21)

最終年度となった平成29年度も研究代表者の李建志が、きわめてよくない研究環境にあったため、最上の内容というわけにはいかなかった。具体的には体調不良なのだが、学内で進行しているパワーハラスメントが原因であり、本務校内で数年前から相談をし、実際にパワーハラスメントは認定されたものの、その後まったく動いてくれないため、体調がどんどんひどくなるという負の悪循環のなかにいることが原因だ。おかげで、研究会を組織する時間をとれなかったものの、同じ本務校に勤める島村恭則氏や、個人的に親しい関係にある齋藤由紀氏と上水流久彦氏といった研究分担者は誠実に研究を積んでくれたおかげで、その意味では本研究は進んだと確信している。ただし、研究代表者も研究成果を発表しつつあり、先住民問題を直接扱った論文はまだ計画段階ではあるものの、本研究の成果の一部は、先住民的な視点で研究するという研究手法を応用した朝鮮研究というかたちで、平成30年度の早い段階で研究書籍として出版することが決まっている。また、島村氏は民俗学の立場から、上水流氏は人類学の立場から、それぞれ研究を発表している。また、齋藤氏も一年前と同様に衣服とくに着物という視点から、先住民として国際的に認知されつつある沖縄の文化へと研究を進めるなど、さまざまな成果があがりつつある。研究代表者である李建志は、これらの研究をふまえて、平成30年度にはなんとか体調を緩やかに向上させ、すでに述べたような書籍はもちろん、研究分担者の成果も含めて、最終報告を活字で発表できるよう努力するつもりである。
著者
田中 敏郎 嶋 良仁 仲 哲治
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

アレルギー疾患の有病率が増加している現状において、その増加要因の解明と、発症を予防する手段の開発は急務の課題である。本研究においては、遺伝子多型がどのように喘息発症に関与するのか、また抗アレルギー作用を有するフラボノイドの適切な摂取によるアレルギー疾患に対する補完代替療法や予防法の確立を目指して、新たなフラボノイドの作用、作用機序に関して検討を加えた。IL-18の遺伝子多型IL-18-105A/Cは、アトピー型、非アトピー型喘息の発症に関与する多型であることが示された。IL-18-105A/Cは、IL-18遺伝子発現に関与するプロモーター領域のIL-18- -137G/C多型と連鎖不均衡にあり、これらの多型が末梢血単核球からのIL-18産生能に影響するのか検討したところ、遺伝子型がIL-18-105A/AやIL-18- -137G/Gである場合、それぞれ、IL-18-105A/C、IL-18- -137G/Cに比較して、単核球からのIL-18産生が上昇していた。このことは、IL-18が過剰産生されやすい遺伝子背景が、喘息発症のリスクとなることを示唆する。フィセチン、ルテオリン、アピゲニンなどのフラボノイドは、好塩基球からのIL-4やIL-13の産生を抑制するのみならず、CD40リガンドの発現も抑制する。したがって、好塩基球において、B細胞のIgE産生細胞への分化に必須なサイトカイン(IL-4、IL-13)とCD40リガンドの発現を抑制することより、フラボノイドは間接的なIgE産生抑制物質であることが示された。その作用機序として、転写因子のAP-1の活性化を抑制することが明らかとなった。また、フラボノイドのin vitroでのIL-4産生抑制活性と経口投与における体内への吸収性を考慮して、高活性、高吸収性のフラボノイドを合成した。
著者
有馬 雅史 坂本 明美 幡野 雅彦 徳久 剛史 岡田 誠治
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002 (Released:2002-04-01)

転写抑制因子であるBCL6はTh2サイトカインの産生に対して負の制御を行っている可能性が示唆されている。我々は、Th2型気道炎症を呈する気管支喘息の病態の解明や新たな治療の開発のための基盤研究として、BCL6のTh2サイトカイン産生および喘息性気道炎症における作用メカニズムについて解析した。本研究では、以下の点について明らかにすることができた。1.BCL6はT細胞によるTh2サイトカインの産生を抑制し、少なくともIL-5遺伝子はBCL6の標的遺伝子であり、その機序としてIL-5遺伝子の第4エクソンの3'末端の非翻訳領域にBCL6が直接結合して転写活性を抑制することを示した。2.BCL6はTh1細胞や休止期のTh2細胞に対してIL-5遺伝子のstabilityに関与する。3.マウスの喘息モデルでBCL6の強発現によってのTh2サイトカイン産生を抑制し、好酸球を中心とする気管支喘息の気道炎症を減弱することによって気道過敏性の亢進を抑制した。3.BCL6は樹状細胞(DC)の分化や機能を介してTh2細胞の分化を制御する。したがって、BCL6はリンパ球以外に抗原提示細胞の機能も制御してTh2型反応を総合的に制御すると考えられた。以上よりBCL6はリンパ球とDCの両方に対してTh2細胞の分化や機能を制御してTh2喘息性気道炎症の病態に関与する可能性があることを示した.このような研究成果は単に気管支喘息の治療法の開発につたがるばかりか、アレルギー性疾患の発症メカニズムの解明にもつながることが期待できる点において大変重要である.
著者
鈴木 智也
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2014-07-25)

自然現象を生み出す背景ダイナミクスをできるだけ破壊しないように時系列データを観測し,このデータよりダイナミクス(法則性)を学習することで予測力の高い時系列予測モデルの構築を目指した.しかし予測誤差を完全には排除できないため,これを予測リスクとみなし,事前の推定方法や緩和方法を検討した.このように将来予測およびリスク管理を両輪とするアプローチは金融工学に応用できるため,決定論的予測モデルに基づく新しい非線形金融工学を提案した.
著者
上田 敬太
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011 (Released:2011-08-05)

外傷性脳損傷の内、局所脳損傷特に前頭葉眼窩面損傷では、社会認知に影響を与える他者の情動表情認知に障害があることが明らかになった。また、びまん性軸索損傷においては、白質・灰白質ともに体積の減少を生じやすい脳部位が明らかとなった。白質では主に脳梁の膨大部、灰白質では前部帯状回や視床などの中心構造に加え、島皮質の体積減少が認められた。一方で、認知機能障害の特徴としては、びまん性軸索損傷では、局所脳損傷群と比較して、トレイル・メイキング・テストやウェクスラー成人知能検査における処理速度で有意な低下を認めた。アパシーなどの精神症状で両群に有意差は認めなかった。