著者
黒田 明慈
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

水に微量の長鎖状高分子あるいは棒状ミセルを形成する界面活性剤を添加すると,乱流域での抵抗が著しく低減することはToms効果として知られている.著者らは微小なダンベル状要素で高分子を模擬したモデルを構築し,本モデルを用いて二次元チャネル内乱流のDNSを行い,Toms効果を再現した.また,この離散要素が縦渦減衰による抵抗低減機構と壁面近傍の付加応力による抵抗増加機構の2つの機構を内在していることを示した.二次元チャネル内乱流を対象として,抵抗低減流れの直接数値計算を行った。混入要素は(1)流体中で一様に発生する(2)流体から受ける引張り力に応じた確率で切断消滅するものとした.(2)の効果によって流体中で要素の濃度分布が生じるが、瞬時の要素濃度は移流拡散方程式を解くことによって求めた。その結果、従来50%程度であった抵抗低減率が最大で約70%となった。またこの場合に流れがほとんど層流化していることが確認された。さらにRe_tau=120-600の範囲で計算を行い,高レイノルズ数では抵抗低減効果が消失するなどのレイノルズ数依存性が見られることを確認した.
著者
高橋 智子
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010 (Released:2010-08-23)

海上保安庁の海洋情報部に未整理の状態で保管されてきた海軍時代の水路部の資料調査を行った。その結果、これまで未確認だった「高度方位暦」を発見することができた。膨大な計算を必要とするこの高度方位暦の作成を可能にしたのは、天体暦そのものを独自に推算し、計算方法を工夫してきた編暦課の天文学者たちの努力であった。その経緯を明らかにし、海軍つまり軍事組織のなかで行われた天文学者たちの研究の特徴を論じた。
著者
川名 敬
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28 (Released:2011-08-05)

子宮頸癌前癌病変(CIN3)の初の治療薬として、HPV16型E7発現乳酸菌,GLBL101c, の有効性を臨床試験によって証明したが、その有効性を増強させることを目的とした。GLBL101cに粘膜アジュバントLTBを添加した状態で十全大補湯、補中益気湯を併用したところ、腸管粘膜リンパ球にGLBL101c単独よりも4-5倍高いE7-CMIが誘導された。1.2x10~8乳酸菌あたり E7分子量として0.1-0.3μgが菌体表面に表出する最高量であり、かつ0.3μgのE7分子量の量比が最もE7特異的IFNγ産生細胞の誘導能が高かった。新型E7発現乳酸菌を開発するための基礎情報となる。
著者
坂井 晃 片渕 淳 小川 一英 吉田 光明
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2014-07-25)

100 mSv以下の低線量被ばくによる染色体への影響をGiemsa染色法とCentromer-FISH法の2種類を用いて解析し比較検討したところ、前者では2,000個以上、後者では1,000個以上の分裂細胞の解析が必要であることが判明した。さらに1回のCT検査による二動原体染色体 (DIC)と転座型染色体の形成数ついて解析を行い、1回のCT検査による被ばく線量 (100 mSv以下) でもDICが有意に増加することを見出した。一方で転座型染色体では有意な増加は認めなかった。これは、転座型染色体では年齢や喫煙、疾患に対する過去の治療などの交絡因子が影響していることが推測された。
著者
村上 ひとみ 榊原 弘之 瀧本 浩一
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

本研究では地震後非常参集における交通手段アンケート調査から自転車活用条件を明らかにした。東日本大震災では名取市における津波避難アンケート調査をもとに、渋滞は厳しいが、身の危険は徒歩・自転車より自動車の方が低いこと、自転車は避難開始が早く機動性に優れることを示した。山口市の住民アンケート調査から自家用車依存が地理知識獲得に負の影響を及ぼし、地域活動参加が公共施設や商店等の正規化得点を高める傾向を示した。また災害早期の被害情報共有に役立つモバイル情報システムを開発した。以上を併せて、日常の自転車利用を促進し、自家用車依存を軽減することで、非常参集や津波避難に役立つ等、地震防災への効用が示された。
著者
茂木 進一 枡川 重男 西田 保幸 道平 雅一 南 政孝
出版者
神戸市立工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

一般に,交流/直流電力変換器は,新幹線,ハイブリッド自動車,太陽光発電用パワーコンディショナなどの多くのアプリケーションで使用されている.そこで本研究では,交流/直流電力変換器に最適なパルス幅変調(Pulse Width Modulation; PWM)法を明らかにする.具体的には,高調波フィルタを接続しないモータドライブシステムには指令値シフト二相PWM法が,太陽光発電用パワーコンディショナや高調波フィルタを接続するモータドライブシステムにはパルス重畳二相PWM法が適していることを明らかにした.
著者
高橋 久仁子
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

マスメディア等からの食情報が原因と推察される健康被害事例について学会誌等に発表された論文を収集・分析するとともに医療関係者(医師、看護師、検査技師、管理栄養士等)および食生活指導者を対象に聞き取り調査を実施した。その結果、特定のテレビ番組に起因する健康被害と、メディア等を介して人口に膾炙した食情報を原因とする健康被害とが混在することが判明した。論文発表に至る事例はごく少数にとどまることが確認された。
著者
片岡 直行
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003 (Released:2003-04-01)

真核生物の核にコードされる遺伝子の多くは、イントロンと呼ばれる介在配列によって分断化されている。このことにより、核内で合成されたmRNA前駆体が、細胞質において蛋白質合成の鋳型として機能するためには、イントロンを取り除きエクソン同士を連結するRNAスプライシングが必須である。スプライシングにより切り出されたイントロンは核内にとどまり、スプライシング因子が除去された後、分解されると考えられている。ヒトではイントロンはmRNA前駆体の実に95%を占めている。またイントロン上にはsnoRNAやmicroRNAなどの遺伝子発現調節に関わるnon coding RNAがコードされていることからも、イントロンの代謝は高等真核生物において重要だと思われるが、ほとんど解析されていない。本研究では、核内でのイントロンの代謝とそれに伴うスプライシング因子のリサイクル機構を解明することを目的としている。そこでこれまでに同定されている二つの因子、hDBR1とhPRP43に注目した。hDBR1と複合体を形成している因子を同定するため、培養細胞でFlagタグを付けたhDBR1とその不活性化変異体を発現させ、Flagタグに対する抗体を用いて免疫沈降を行った。その結果、新規のタンパク質因子を同定した。またin vitroでの結合実験より、この因子はhDBR1と特異的に結合することを確認した。またheterokaryon実験により、hDBR1が核と細胞質を往復する活性があることがわかり、細胞質での機能が示唆された。またRNAヘリケース様タンパク質であるhPRP43のヘリケースモチーフに変異を導入し、変異体をin vitroスプライシング反応に用いたところ、切り出されたラリアット型イントロンが安定化し、変異体タンパク質とともに沈降するのがみられた。
著者
上村 俊雄
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991 (Released:1991-04-01)

日本列島の近海に沿って流れる黒潮は、一つは九州の西を過ぎて日本海に入り本州および北海道の西岸を洗い、他の一つは太平洋岸側の伊豆諸島に達している。本研究では、黒潮の流れに乗って原始・古代の南島および大陸からどのような文物が往来したのか、また九州沿岸地域にどのように影響を及ぼしたのかなどについて調査研究を試みた。調査研究の対象を1.南島産の貝製品(ゴホウラ・イモガイ・オオツタノハなど)、2.大陸の関係の深い支石墓の2点にしぼり、壱岐・対馬、五島列島などの島嶼および西北九州を中心とした九州西岸の沿岸地域を調査した。1のテ-マの南海産貝製品のうち、ゴホウラ製貝輪は有川町浜郷遺跡(五島列島)、平戸市根獅子遺跡(平戸島)、イモガイ製貝輪は佐世保市宮の本遺跡(九十九島中の高島)、五島列島の福江島大浜貝塚・中通島浜郷遺跡・宇久島宇久松原遺跡、オオツタノハ製貝輪は宇久松原遺跡・福江島大浜貝塚などで出士している。また、埋葬人骨にともなうアワビの副葬列が中通島浜郷遺跡、福江島大浜貝塚で確認されたが、同様な列は沖縄本島読谷村木綿原遺跡にもあり、弥生時代の五島列島と沖縄に共通した理葬習俗が見られることは注目される。南海産貝輪は九州西海岸をかすめて北九州へ運ばれるル-トの中で五島列島へもたらされたと考えられる。2のテ-マの支石墓については、甕棺・土壙・箱式石棺などの下部構造について調査した。九十九島の宮の本遺跡、五島列島の宇久松原遺跡・神ノ崎遺跡(小値賀島)・浜郷遺跡などの箱式石棺墓の中に南九州特有の古墳時代の墓制である地下式板石積石室墓を想起させるものがある。地下式板石積石室墓の祖源は縄文時代晩期の支石墓に遡る可能性を示唆しており、五島列島方面から南九州西海岸に到達したものと考えられる。この見解については平成3年11月9日、隼人文化研究会で「地下式板石積み石室墓の源流」と題して口頭発表をおこなった。
著者
植田 弘師 澄川 耕二 井上 誠 藤田 亮介 内田 仁司
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

神経損傷に伴う難治性の神経因性疼痛の分子機構解明において、リゾホスファチジン酸(LPA)をめぐる治療標的分子の同定に成功した。主たる働きは知覚神経と脊髄後角におけるLPAの逆行性シグナルとしての脱髄や遺伝子発現制御とLPA合成を介する疼痛増強する機構である。脊髄内におけるLPA誘発性のミクログリア活性化、上位脳における同様なフィードフォワード機構、疼痛制御遺伝子発現のエピジェネティクス性増幅制御の存在など、新しい視点に立った創薬基礎を築いた。
著者
大須賀 敏明
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010 (Released:2010-08-23)

造血幹細胞の凍結保存には凍害を防ぐためにDMSOが添加されているが、副作用が生じる場合もあるため、新規凍結保存剤を開発した。新規凍結保存剤で凍結保存した造血幹細胞を培養して赤血球と白血球へ分化するコロニーの数はDMSOで凍結保存した場合と同等であり、凍結保存液に入れた細胞の生存率は高く、ラットの体内で有害な分子を生じなかったため、新規凍結保存剤はDMSOに劣らない凍結保存剤となることが判明した。
著者
市原 恭代
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01 (Released:2016-04-21)

災害下においては一人の人間も逃げ遅れることなく避難するよう誘導すべきである。そのためのデザインは万人に共通したサインを送ることを要求される。しかし、人間の色の感じ方は一様ではない。遺伝子のタイプの違いによって色の見え方が異なる人が日本には300 万人以上存在する。ヒトの色覚に多様性があることはあまり知られておらず、そのために起きる社会の諸問題は解決されていない。とりわけ色分けされた防災地図において、適切な色が使われていないと生命の危険さえある重要な場面で誤情報伝達が起きる可能性がある。この研究では、従来色弱と呼ばれてきた日本の男性5 パーセントを占める赤と緑を混同するタイプの色覚の人々をも配慮して、全ての人に誤情報が伝わらないようなカラーユニバーサルデザインを実際に設計・提案している。これらの基礎研究の結果を生かし、2004年にNPO 法人カラーユニバーサルデザイン機構を立ち上げに協力し現在は理事を務めている。Color Universal Design Organization (カラーユニバーサルデザイン機構)、略称CUDO (クドー) は、社会の色彩環境を多様な色覚を持つさまざまな人々にとって使いやすいものに改善してゆくことで、「人にやさしい社会づくり」をめざすNPO 法人である。その結果、色覚バリアフリー/カラーユニバーサルデザインへの配慮を啓発する活動は科学界の外へも広がり、色彩学者、デザイナー、色弱者団体の関係者らがこの活動に賛同して、具体的にどのようなデザインが見分けにくいのか、そのデザインをどう変えれば見分けやすくなるのか相談を依頼してくる企業、自治体、団体等に対して、科学的で実用的なデザインが生まれることとなった。
著者
玄田 有史
出版者
学習院大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993 (Released:1993-04-01)

労働者の労働意欲を高め、企業内への定着を促す為の誘因システムとして、日本の退職金制度がどのような機能を果たしているかを考察した。分析は、主に二つの内容からなる。一つは、情報の経済理論モデルを用いて、自就職時の労働需給状況と退職の際の自己都合退職金と会社都合退職金の差額との関係を分析した。経済理論的には、労働のインセンティブを高める為の長期契約には、供託金の労働者と企業間での授受によるもの(供託金仮説)と、企業が労働者に一定期間勤続後の退職には一定のプレミアムを含めた支払を行うもの(効率賃金仮説)の二つの種類が考えられる。これらの理論を退職金制度に応用した結果、次のことが明らかになった。供託金仮説が妥当であるときには、経済に発生する失業はすべて自発的な失業であり、需給逼迫時に就職した労働者ほど、退職時の二種類の退職金の差額は小さくなる。一方、効率賃金仮説が妥当であるときには、経済に非自発的失業が発生し、需給逼迫時に就職した者ほど二種類の退職金の差は大きくなる。もう一つの分析内容は、先の理論仮説についての実証研究からなる。実証分析には、中央労働委員会『退職金・年金事情調査』と労働省職業安定局統計を用いた。分析方法は、製造業の各産業について、被説明変数を二種類の退職金の差として、説明変数の中に就職時の雇用充足率を含め、その変数の最小自乗推計量を用いて行った。その結果、日本の製造業の退職金制度には供託金制度の妥当性を支持する結果は得られなかった。一方、繊維産業や機械産業などの製造業の退職金制度については、効率賃金仮説を支持する結果が得られた。これから、日本の労働者の動機付け、将来のプレミアムの支払らわれる可能性を通じて行われており、その結果日本の失業者には非自発的な失業者も含まれていることが分かった。
著者
奥津 哲夫 渡邉 興一 平塚 浩士
出版者
群馬大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000 (Released:2000-04-01)

本研究では、「光による結晶成長制御が可能であることを示すこと」を目的とし、研究期間内に以下の実績が得られた。光で結晶成長させることが可能であるような系の探索を行った結果、1.有機結晶を用いた系分子性結晶であるアントラセンを用い、結晶が懸濁した溶液にパルスレーザー光照射を行った。アントラセン結晶が溶解し、同時に新たな結晶の出現と成長が観測された。レーザー一光子で結晶相の分子4〜5分子が溶液相へと溶解した。このため、結晶表面がパルス励起されると、飽和溶液中に分子が溶解し過飽和状態となり、結晶成長の駆動力を生じることが判明した。このことから、光により結晶成長制御を行うことが可能であることが示された。2.無機化合物結晶結晶を用いた系無機化合物として硫酸銅結晶を用いた。レーザー光照射を行うと、結晶は溶解するのみで新たな結晶の出現・成長は観測されなかった。36光子を吸収することにより一分子が溶解した。光照射を行いながら結晶成長を行ったところ、光照射により結晶成長は著しく遅くなることが判明した。このことから、光照射を行うと結晶表面の温度が上がり、溶解度が上昇するため、成長速度が遅くなることと解釈した。光照射を特定の面に行うことにより、その結晶面の成長を制御することが可能であることが判明した。3.結晶表面に吸着物質を吸着させ、光で剥離させることにより特定の面を成長させる試み硫酸銅結晶にゼラチンあるいはシアニン色素を吸着させ、結晶成長を抑制させた。この結晶にレーザー光を照射し、表面の吸着物質を剥離させた。この結晶を飽和溶液中に吊し、結晶成長させたところ、レーザー光を照射した面の結晶成長が観測された。
著者
黒田 純子 林 雅晴 川野 仁 小牟田 縁
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01 (Released:2013-05-31)

子どもの脳の発達障害の一因として、環境化学物質の影響が懸念されている。本研究では、リスク評価が不十分な農薬ネオニコチノイドの低用量長期曝露の影響を、発達期のラット小脳神経細胞培養を用い、遺伝子発現の変化から発達神経毒性を調べた。ニコチン、ネオニコチノイド2種を低濃度で2週間曝露した小脳培養のmRNAをDNAマイクロアレイで解析し統計処理した結果、複数の遺伝子で1.5倍以上の有意な発現変動を確認した。3種の処理で共通に変動した遺伝子には、シナプス形成に重要なカルシウムチャネルやG蛋白質共役受容体などが含まれており、ネオニコチノイドはニコチン同様に子どもの脳発達に悪影響を及ぼす可能性が確認された。
著者
富永 一登
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

本研究では、『太平広記』『古小説鉤沈』の字句の校勘と厳密な読解を行いながら、約7000話の中国古小説の話題事項を抽出し、それを分類整理した。これによって、中国古小説の類話を検索するための利便性が高まり、中国古小説研究のみならず、日本あるいはアジアの諸地域、広くは世界の説話との比較研究を行う上で、関連ある話題事項を提供することが可能になった。また、古小説の訳注作業を着実に進展させるという成果も得られた。
著者
梅田 耕太郎
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004 (Released:2004-04-01)

核融合炉の実現には高温高圧のプラズマを長時間閉じ込める必要があり、その閉じ込め配位として30-40%の高いベータ値を持ちつつ、トカマクの安定性を引き継いだ球状トカマクが注目を集めている。しかし、球状トカマクはその形状からトカマクと同様の、中央ソレノイドコイルによる立ち上げを行うことができない。本研究では外部コイルの誘導により生成した2個の球状トカマクを合体させることにより高ベータ球状トカマクを立ち上げる手法を提案している。本年度は球状トカマクを含むコンパクトトーラスの合体加熱実験において、2次元磁場揺動を得るために、アンプ回路の設計、構築を行った。この結果、得られた磁場揺動は単体コンパクトトーラスの生成時、および合体時において著しく生じることが示され、合体後、5μsで生成時の1/10まで減衰する。この揺動は250kHz前後と低い周波数を持っており、また合体前から生じることから圧力駆動型不安定性由来の揺動ではないと推測される。また、1次元で対向させた光ファイバによる分光計測を用いて、流速を計測し、流速による補正を加えたイオン温度を算出した。その結果、イオン温度は60eV程度であった。磁気リコネクションでの磁場から熱への変換効率は100%近いことが報告されており、本実験では理論的には200eV程度が予測される。この損失は前述の揺動によるもの、すなわち合体後の配位完成までの間の熱損失が原因と考えられ、初期コンパクトトーラス形成、移送時の平衡、安定性についての議論が今後の課題である。
著者
菅沼 起一
出版者
東京藝術大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22 (Released:2016-05-17)

今年度は、資料の収集とディミニューション技法に関する一次資料の精読を中心に行なった。夏季休業中にロンドンとバーゼルに赴き、中世・ルネサンス期のインタヴォラトゥーラに関する手稿資料を調査・閲覧した。ロンドンでは、大英図書館所蔵の16世紀の鍵盤音楽の手稿資料3点の調査を行い、バーゼルでは、各地の図書館からバーゼル・スコラ・カントルム図書館に集められた写本資料のマイクロフィルム調査、当館所蔵のファクシミリ本(16世紀のリュート教則本やディミニューション教則本)などの閲覧を行なった。バーゼルでの調査資料の中には、21世紀に入ってから発見され、未だ基礎研究も行われていない15世紀イタリアの資料も含まれており、特にタブラチュアで記譜された手稿に関して包括的な目録作業も行われていない現在の資料状況の整理につながった。また、今年度は2回の学会発表を行なった。1回目は修士論文で扱った独奏楽器のためのディミニューションとリュートや鍵盤楽器のためのインタヴォラトゥーラとの親近性の指摘を行う内容であり、バロック以前の器楽曲とその実践の中で「声楽曲を器楽で演奏すること」がいかに重要かつベーシックな位置付けを持っていたかプレゼンテーションを行なった。2回目は、ディミニューション技法そのものに焦点を当てた発表を行った。そこでは、16世紀を通して記述された多くの言説資料から、特にディミニューションがアンサンブルの中でどのように実施されるべきであると考えられていたのか、そしてディミニューション技法が持つヴィルトゥオジティを当時の著述家たちがどのように意識されていたのか、という問題に関しての仮説を提示した。上記の研究から、インタヴォラトゥーラなどの「声楽曲を器楽で演奏する実践」が当時の器楽奏者達の基礎となる演奏技術である一方、高いヴィルトゥオジティを誇示する場として意識し実践されていた可能性が浮上した。