著者
山崎 彩
出版者
イタリア文化会館
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

20世紀初頭のトリエステは、オーストリア帝国の一都市でありながらイタリアの文学史の上でも非常に重要な場所である。本研究の目的は、イタリア語の一方言であるトリエステ語を母語とする作家たちが標準イタリア語によってトリエステという町独自の文学を創造しようとした試みをたどり、第一次世界大戦前夜におけるトリエステの文化状況を明らかにすることである。分析の対象としては、当時のトリエステを代表する作家、ズラタペル、サーバ、ズヴェーヴォの第一次大戦前の活動に重点を置くことにした。研究に必要な資料(特にズラタペルに関する資料)が日本では手に入りにくいことから、夏休みを利用し、充実した資料のあるトリエステ市立図書館とフィレンツェ国立図書館で資料収集をおこなった。トリエステ市では市立中央図書館に併設されている「イタロ・ズヴェーヴォ博物館」の学芸員の方にお徴話になり、図書館に所蔵されている資料、主にズラタペル、ストゥパリッチの本を数多く閲覧・複写することができた。また、書店も訪れて必要な図書、特にトリエステでしか入手できない類の出版物の購入をおこなった。続いて訪れたフィレンツェにおいては、トリエステでは見ることのできなかった雑誌記事を閲覧することができた。しかし、この記事の複写が許可されなかったために、デジタルカメラで撮影し、後でPDFファイル化して出力するという手段を取った。また、中継地として寄ったパリにおいても「エコール・ノルマル」の図書館で資料収集をおこなった。このようにして収集した資料に基づいて、23年2月18日に地中海学会定例研究会において発表をおこなった。20世紀初頭のトリエステ文学の研究は日本においてはまだ充分におこなわれていないが、多民族化の進行する現在の日本においても、100年前の多民族都市の文学のあり方を研究することは意義あることと考えている。〔775字〕
著者
山本 正幸 長 篤志
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

視覚障害者が単独歩行するためには,白杖または盲導犬の助けが必要である.盲導犬は実働数が少ないため,簡易に利用できる白杖による歩行が現状では主となっている.しかし,白杖を用いた歩行には十分な訓練が必要であり,また,安全性の問題もある.そこで,本研究では,盲導犬のように視覚障害者を安全に誘導できる自律移動型歩行補助システムの開発を目指した.その結果として,ユーザとシステムの相対速度を検出する機構の提案とシステム速度を調節することで使用者に危険の有無を呈示する手法の提案を行った.
著者
笛木 賢治
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

I.目的本研究では咀嚼機能の観点からみた片側性遊離端義歯の人工歯部歯列の近遠心径についての臨床的示唆を得ることを目的としている.初年度は実験的に下顎の片側性遊離端義歯を対象にして人工歯部歯列の近遠心径を変化させた時にこれが咀嚼の混合能力に及ぼす影響を検討し第二大臼歯を半歯に短縮しても咀嚼の混合能力は低下しないことを明らかにした.そこで平成15年度は,上顎の片側遊離端欠損の症例で検討を行った.II.方法被験者は上顎第一、第二大臼歯の遊離端欠損を有しかつ対合には天然歯もしくは固定性の補綴装置が装着されている患者8名(男性2名,女性4名,平均年齢61.5歳)を選択した.実験義歯は片側性の設計で白金加金を用いてワンピースキャストで製作した.上顎第二小臼歯に近心レストとバックアクションクラスプ,上顎犬歯および第一小臼歯にエンブレジャーフックを設置した.人工歯部歯列の頬舌径は顎堤頂を中心軸として幅を7mmとし,光重合レジンを用いて口腔内で直接製作した.人工歯部歯列の近遠心径は以下の3種類に変化させた.Aは欠損部に隣接する上顎第二小臼歯の遠心面から対合の下顎第二大臼歯の遠心面(平均18.2mm)までとした.順次近遠心径を13,9mmとし,それぞれB, Cとした.咀嚼機能の評価は当教室で開発した混合能力試験で行い,被験試料を義歯装着側で10回咀嚼させ混合値(MAI)を算出した.3回試行しその平均値を各歯列の代表値とした.各歯列間の比較はTukey法により有意水準5%で行った.III.結果とまとめ歯列の近遠心径がAとBの間には,混合値に有意な差は認められなかったが,AとCおよびBとCの間には有意差が認められた.この結果から,人工歯部歯列の近遠心径を13mmより短くなると混合能力が減少すると考えられた.このことから,下顎と同様に上顎の片側性遊離端義歯においても第二大臼歯を半歯に短縮しても咀嚼機能が低下しないことが示唆された.
著者
田村 照子 小柴 朋子
出版者
文化女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

湿潤感は着衣の快適性研究において極めて重要である。本研究の目的は着衣による湿潤感の感知構造を探り、湿潤感の中枢・自律神経系への影響を探ることにある。主たる結果は以下のようである。1)全身の湿潤感を左右する重要な要因としては、湿度そのものよりも湿度によって影響を受ける皮膚蒸散量並びに人体-環境間の体熱平衡から求められる蒸発放熱量であることが明らかになった。2)カプセル又はポリエチレンフィルムを用いた閉塞性の局所湿潤負荷装置による実験の結果、人体の局所湿潤感を左右する要因は、皮膚からの水分蒸発に伴う皮膚温変化と皮膚水分に対する触感量の複合であることが示された。3)衣服内湿度の生理影響を調査するために、異なるサイズの孔を穿ったポリエチレンフィルムを用いて実験衣服を製作、その物性値及び熱・蒸発熱抵抗をKES法並びに発汗サーマルマネキンを用いて評価した。穿孔の有無、穿孔サイズにより衣服内湿度および皮膚濡れ状態に差を生じたので、これを以下の実験に供した。4)心電図R-R間隔のパワースペクトル分析により自律神経の活動レベルを測定した結果、衣服内の湿度が高いほど副交感神経活動の指標HF/(HF+LF)が低下し、交感神経活動の指標LF/HFは上昇した。5)国際10-20法による13部位の脳電図並びに脳波CNVを測定した結果、衣服内湿度が上昇するにつれて脳波のα波含有率、β波含有率ともに少なく、CNVでは振幅の抑制が認められた。6)衣服内湿度の内分泌反応への影響を調べた結果、衣服内湿度が高いほど唾液中のストレスホルモンといわれるコルチゾール、分泌型IgAともに増加し、尿中アドレナリン分泌量が低下する結果となった。以上の結果は、すべて衣服内の湿度上昇が心理的不快感のみならず、自律神経活動、内分泌反応、中枢神経活動のいずれにも負の負荷を与えることが生理学的に示唆された。本研究成果の一部は平成12年9th国際環境工学会(ドイツ)において発表した。
著者
吉野 博 小林 仁 久慈 るみ子 佐藤 洋
出版者
東北大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

本研究では衣服内の空気は動くものとして捉え、建物内部の換気量測定法であるトレーサーガス法を、衣服内換気量の測定に適用できるかどうかについて検討を行った(1)簡易温熱マネキンの製作:簡易温熱マネキンは、表面温度のコントロールのために、サーミスタ温度計をマネキン表面(胸部・背部・上腕部・前腕部・大腿部・下腿部)に貼付し、体幹部以外は左右別々に、発熱を制御できるようにスライダックを通して調整を行った。(2)ガス発生方法の検討結果:測定はトレーサーガスとしてCO_2を用い、定量発生法で行った。実験室内の温熱環境条件は、室温20.1℃〜24.5℃である。実験被服は、塩ビフィルム製の袖なしワンピース型とした。ガス発生方法の検討の結果、チャンバー(150*90*90cm)を用い間接的にガスを発生させる方法を考案した。チャンバーでの測定結果では、衣服内ガス濃度と外気のガス濃度との差は550〜670ppmの範囲にあるが、各実験において、同一条件下では衣服内のガス濃度は一様に分布し、各実験ごとの測定点間のガス濃度の標準偏差は±6.37ppmと小であった。この方法によると、チャンバー内でガスを完全拡散させることが可能となり、チャンバー内と衣服内のガス濃度はほぼ一定となることがわかった。また、室温が高くなると換気が促進されて、衣服内ガス濃度は低くなり、両者は反比例する。また、実験の再現性は高く、衣服の着せ替えによる影響はなかった。マネキン平均表面温度とチャンバー内温度の差と衣服内平均ガス濃度についてみると、温度差が大になると、やや衣服内濃度が高くなる傾向にあることがわかった。塩ビ衣服の換気量を求めたところ、発生量は平均0.065L/min.であることから、6〜7m^3/h.であると算出される。以上の結果より、チャンバーを用いて間接的にガスを発生する方法は有効であると考えられる。
著者
藏中 しのぶ
出版者
大東文化大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

『和漢朗詠集』絵入版本2種、貞享元年「絵入」と元禄2年「図解」における詩題と挿絵の画題を比較検討し、以下の結論をえた。(1)「絵入」は『和漢朗詠集』の部立の詩句本文に具体的に詩語として詠みこまれた表現素材を散りばめて、一幅の絵を構成していた。すなわち、「絵入」は、ひとつ以上の部立の漢詩句と和歌の詩語にもとづいて、直接的に絵画化のための素材を選択していた。(2)「絵入」は数少ない挿絵を有効に活用するために、一幅の絵のなかに複数の漢詩句・和歌の意味をこめていた。「絵入」の絵が同時に複数の部立の十数首にもおよぶ詩句本文の挿絵として機能できたのは、この絵が部立のなかの複数の表現素材を統合していたためである。「絵入」の絵は一幅の絵として完成されており、なおかつ、そのなかに複数の部立の代表的な詩語を配している。(3)「絵入」の五年後に刊行された「図解」の絵は、「絵入」に学びつつも、「絵入」の絵を解体する。統合された「絵入」の絵から、一、二の素材をぬきだして、ひとつの小さな絵を構成するのが、「図解」の挿絵の手法である。(4)「絵入」の絵は、漢詩句・和歌のひとつひとつに対するのではなく、部立全体をひとまとまりとみて、総合的な一幅の絵を構成しようとしている。つまり、「絵入」の絵は、『和漢朗詠集』の漢詩句一句・和歌一首の断片的な理解によって構成されているのではない。むしろ、部立の連続性をよく踏まえて、ひとつの絵を構成するのが「絵入」の方法であった。最初の絵入り版本「絵入」の絵には、複数の詩句本文の詩語、さらにはこれらを含みこむ複数の部立の意味が統合性と連続性をたもちつつ、一幅の絵の中に凝縮されていたのである。
著者
長尾 彰夫 木下 繁彌 村川 雅弘 浅沼 茂 安彦 忠彦 山口 満 西川 信広 田中 統治 的場 正美 今野 善清 柴田 義松 長尾 彰夫
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究の最終年度は、これまでインタビューや授業観察および研究資料の内容分析などによって明らかになった各学校での新教育課程の開発状況について、インターネットのWEBページとして発信するための研究に重点をおいた。本研究で開発したインターネットサイト(http://jcultra.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/〜sougo/)に掲載した学校は、大阪教育大学附属池田中学校、高槻市立上牧小学校、緒川町立緒川小学校などである。それぞれの学校の研究状況を、「地域の特色」、「学校の沿革」、「カリキュラムの概要」、「総合的な学習の位置づけ」、「授業実践事例の紹介」を基本とする項目で整理した。また、授業分析によって得られた研究知見を、文章表記によってのみ記述するのではなく、子どもの個人情報の保護に十分留意しつつ、写真等を用いて、より具体的な研究情報として閲覧することができるようにした。このインターネットサイトの活用目的は、上記の情報を公開することによって、全国の小・中学校の教師がそこから新教育課程に対応した新しいカリキュラムの開発を行うための実践的な知見を得られるようにすることである。この目的を達成するために、たんに学校の実践事例を並列的に掲載するだけでなく、すでに作成されている教師のための教育用インターネットサイトにリンクを貼ったり、本研究の分担者として各学校で訪問調査を行った研究者に直接掲示板を通して質問を寄せたり、あるいは閲覧者同士が意見交換できる掲示板システムを付随させたりしたいる。以上のように、本研究は、当初の計画通りに、新教育課程を先端的に実施している学校を訪問調査することによって、カリキュラム開発の手続きやデザインに関する経験知を集約するとともに、それをインターネットサイトを通して発信することによって、オンラインでの新しい教師教育、ないし教師の自己研修に貢献するという所期の目的を達成することができた。
著者
山内 祐平
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本年度の研究では、昨年度にひきつづき、日本のメディアリテラシー教育に歴史的に特徴として見られるメディア制作活動と最近になって概念に導入された批評する活動の関係に関するモデル化を行った。特に、日本民間放送協会と東京大学大学院情報学環MELL Projectで行われた実践を中心にモデル化と分析を行った。「民放連プロジェクト」は、送り手と受け手が放送メディアを学び合う、新しい場を地域社会の中に作っていくことを目的としている。今年は、昨年度に引き続き、長野県と愛知県でパイロット研究を進めるとともに、宮城県、福岡県でも実践を行った。長野県は、テレビ信州と同県でメディアリテラシー教育を推進している林直哉・梓川高校教諭を中心とする各地の中学、高校で共同研究を行っている。愛知県は、東海テレビ放送と清水宣隆教諭をはじめとする私立春日丘中学・高校で実践が行われた。宮城県では東日本放送とせんだいメディアテーク、南方町ジュニアリーダーの協力体制の元生中継番組が制作された。福岡県では、RKB毎日放送と子どもとメディア研究会、台湾政治大学附属小学校の間で国際交流学習が行われた。今年の研究では、長野の実践を、メディア・リテラシーに取り組むリーダー(学校教師、子供たちのリーダーなど)を養成するためのプランとして、愛知の実践を地域に根ざした活動を定着させるためのプランとして、宮城の実践を社会教育に開かれたモデルとして、福岡の実践を教育NPOに開かれたモデルとして位置づけて、モデル化を行った。
著者
小澤 静江
出版者
江戸川区立春江中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

1、目的 ある一定の場所の地下の深い所から浅い所まで1mおきにボーリング資料を採取し、その中に含まれる珪藻及び、珪質鞭毛藻を分析し、過去の環境の変化を推論させる。2、方法 (1) 江戸川区の7地点の小中学校のボーリング資料を江戸川区教育委員会学事課施設係の協力を得て深度60m〜1mまで1m間隔で得た。(2) 薬品処理をする。(3) 深度ごとのプレパラートを作る。(深度ごとに10〜20枚)3、結果 1.平井(小松川三中)…深度60m〜55mでは海だったと考えられます。その後、深度55〜30mまでは3回海進海退を繰り返し、その後深度30m〜10m間での長い間海の時代が続き、その後、しだいに陸になったのではないかと考えられます。2.清新(清新二中)…深度60m〜15mまでは、平井の結果とほぼ同じでした。しかし、深度15mから急に陸になり深度10m頃から、また海になり、現代に至ったと考えられます。3.松江(松江二中)…深度30mより深いところでは、陸生のケイソウが多く、ほとんど陸だったと考えられます。深度30m〜15mは長い間、海が続き、そのあと少しずつ陸になっていったと考えられます。
著者
丸山 富雄 市毛 哲夫 日下 裕弘 ICHIGE Tetsuo
出版者
仙台大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

本研究は、わが国ではこれまで本格的な研究がなされてこなかった「スポーツと社会階層」の問題をとり上げ、統計的調査によって、一般成人の直接的・間接的なスポーツ参与と社会階層との関係を明らかにしようとしたものである。調査データは人口規模及び産業構造を参考に、東北地方を代表すると思われる宮城県内4市の選挙人名簿より郵送法によって得られた881(回収率35.4%)のサンプルを用いた。職業威信、学歴、所得、及び生活様式の社会的地位変数をクラスター分析した結果、調査対象者は上層及び下層と4つの様々なパターンをもつ中層の階層クラスターに分類できた。1.多様な運動やスポーツ活動のなかで、男性の手軽な体操や球技、ならびに女性のダンス系の運動では階層的な相違はあまりみられなかった。2.しかし、その他の運動やスポーツ、特に施設を利用する運動や野外スポーツ、競技的なスポーツの場合、階層による参与の違いは明らかであった。社会の上層及び将来上層に達するとみられる人々の参与率は高く、下層の成員は極端に低いという結果が得られた。3.また、間接的なスポーツ参与に関しては、一般的なスポーツ・ニュースやプロ野球では社会的な地位や社会階層による差はあまりなく、これらのスポーツ施設に関してはスポーツの大衆化を指摘しうると思われる。4.しかし、大相撲やゴルフ、プロレスのテレビ視聴では、一般に大相撲は高齢者、ゴルフは上層、プロレスは下層の人々がよくそのテレビを見るという傾向がみられ、これら種目の間接的参与と年齢や社会階層との関連性を指摘できた。
著者
礒田 正美 小川 義和 小原 豊 田中 二郎 佐々木 建昭 長崎 栄三 清水 静海 宮川 健
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の高次目標は、世界で有効に活用しえる算数・数学教材・教具を開発することである。具的には、数学を学ぶ意欲を喚起し、さらに深く知る契機を提供する機関として科学系博物館の展示・教育システムを活用し、科学系博物館向け数学展示、実験教材を開発し、数学における具体的で体験的な教育プログラムを提供することを目的とする。国立科学博物館、牛久市教育委員会、つくば市教育委員会、埼玉県立春日部高等学校、埼玉県立大宮高等学校の協力を得て、3年間を通して、科学博物館等で活用しえる数学展示、実験教材の事例開発を行った。蓄積した事例を領域でまとめれば、次の6領域になる:(1)透視の数理、(2)変換の数理、(3)機構の数理、(4)音階の数理、(5)測量の数理、(6)それ以外。開発教材の特徴は、学年、学校段階によらず、様々な学習が可能である点である。報告書は事例を示した。開発教材は、内外で注目を浴びた。国内では、小中接続・連携、中高接続・連携、高大接続・連携の立場から注目され、飛び込み授業のための事例集の出版を依頼された。変換の数理ではソフトウエア開発も行い、WEB上で閲覧可能である。国外では、国際会議で招待講演を2回(韓国、香港)、全体講演を1回(台湾)、研究発表を1回(ローマ)、海外での講習を2回(フィリピン、ホンジュラス)行った。特に数学教育国際委員会100周年記念国際会議では、ヨーロッパにおける教具の歴史的発展からの系譜をたどった。また、効果的な発表の方法についての調査もあわせて行った。既にフィリピン、ホンジュラスで開発したソフトウエアが利用される見込みとなった。成果をWEB公開することで、当初の予定通り様々な場で役立つ数学展示教材の開発が実現した。SHH, SPPなどでも成果を利用したい旨、依頼を得ている。博物館に展示することは将来的な課題であるが、成果は教育の場で活用しえる状況にある。
著者
渡辺 智恵美
出版者
別府大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

古墳時代の金属製品(刀やよろい、馬具、耳飾りなどの装身具)に残された製作時の痕跡から、それらを製作する技術や道具を調査した。調査方法として顕微鏡観察のほか、X線CTスキャンや三次元計測、材料の成分分析といった自然科学的方法も応用した。その結果、耳飾りの製作工程の復元を通して、使用された道具や方法を解明することができた。また、よろいなどの鉄製品に残された、板を切断した痕跡から、使用された道具の刃先の大きさも推定できた。
著者
宇佐見 香代 八木 正一 岩川 直樹 庄司 康生 舩橋 一男 野村 泰朗
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

教師は、それぞれの教室で生起する特定的・一回性的な状況と絶えず相互作用しながら、日々授業の創造や学級づくりの問題に取り組んでおり、具体的文脈の中での臨床的実践的な知覚や熟考、判断を基盤にした臨機の活動をその専門性の主軸としている。様々な問題状況のなかで、教師たちがその見識を拡げ葛藤を乗り越えて生き生きとした実践を生み出すためには、この具体的文脈へ教育研究者や将来教師になる学生が共同参加して臨床的研究を進めることが必要とし、その研究成果をまとめた。
著者
鈴木 文二
出版者
埼玉県立春日部女子高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

「練り上げられた、工夫された教材」は小学校から高校までの特定な発達段階での、特別な目的に照準を合わせた感がある。そのため、個々の対象の知識は深まるが、逆に階層性が逆転したりしてしまうこともある。例えば、高校理科の授業において、星までの距離を測る方法を詳細に展開しても、見慣れた星座を作る星がどのような空間的な位置にあるのか、太陽系と銀河系の包含関係はどうなっているのか。まさに「木を見て森を見ず」という状況が散見される。次期指導要領においては、簡単な観察から始めて、より高度な科学的な研究・考察に発展させる「スパイラル学習」が重要な方法として提起されている。そこで本研究は、小学校から高校まで、共通した学習展開が可能になるように教材を統合化し、地球惑星科学、天文学の大きな柱である「時間と空間」を意識させ、なおかつ先進的な教材を配したスパイラル学習教材群を作成することを目的とする。本研究で作成した教材は、異なる発達段階における科学的リテラシーを考慮しつつ、ブラックボックス的な部分を極力少なくした。また直感的に現象を捉えつつも、現象を数値化する意欲を持たせられるものとした。さらに、入手しやすい材料・素材を用いて、専門的な知識・技能を持たない教員でも製作しやすい教材とした。今年度に開発した教材群は、以下のふたつである。(1) カシオペア座の観察、撮像から、恒星の位置、進化を知る(2) 大陸移動と古海流をシミュレートし、未来の気候を推定する引き続いて、赤外放射温度計を用いた、「雲底高度と気象変化」についての教材を作成中である。指導要領の『理数科目の前倒し実施』によって、これらの教材群は、移行措置期間中に柔軟に対処可能な教材として、その価値を見出すことができるものと考えられる。