著者
西口 敏行 Toshiyuki Nishiguchi
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2009-03-24

It is generally accepted that the frequency bandwidth of human hearing byair conduction does not far exceed 20 kHz. However, some papers discussedthe influence of extending the frequency by such high resolution audioformats on the auditory impression and brain activity. Studies on thebandwidth of human hearing are important for defining the frequencybandwidth for sound recordings and for developing electro-acoustictransducers, next-generation broadcasting systems and the definition of therecording format of audio archives.If differences of sound impression among high resolution audio formatsindeed exist, it is necessary to consider two factors: influence of reproductionof very high frequency, and difference of sound quality in auditory frequencyband among the sampling formats.Regarding the former factor, we conducted subjective evaluation testsconcerning the influence of very high frequency components on the humanperception in musical sounds. To make a precise evaluation, the test systemwas designed to exclude any influence from very high frequency componentsin the audible frequency range. Tests showed that the subjects coulddiscriminate between musical sounds with and without very high frequencycomponents.While, to study the difference of sound quality in the auditory frequencyband among several high sampling digital recording formats, we alsoconducted subjective evaluation tests of perceptual discrimination amongthe following digital recording formats: 24 bit/48 kHz, 24 bit/192 kHz andDSD. The results showed no significant difference, namely, sound quality ofthe auditory frequency band in this experiment system does not depend onthe sampling format.According to the results of these tests, extension of the frequency range byhigh resolution audio affects the perception of sound and it is caused by thereproduction of very high frequency components. It could be worth recordingmusic by high resolution audio systems with a very wide frequency range.However various issues have been pointed out regarding the very highfrequency band, i.e., the non-linear distortion of the amplifier orloudspeaker, time jitter and so on. Very accurate handling is required toreproduce the very high frequency components.
著者
寺町 晋哉 Shinya TERAMACHI 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.105-122, 2018-03-09

2017 年3 月に小・中学校の学習指導要領が改訂される告示が公示された。新しい学習指導要領は、小学校が2020 年度より、中学校が2021 年度より施行される。そこで本稿では、新しい学習指導要領をジェンダーの視点及びセクシュアリティの視点から整理することを通して、ジェンダー公正な社会を目指す上での課題について明らかにすることを目的とする。本稿で明らかになったのは、ジェンダー平等やジェンダー公正な社会の構築へ向けて、新たな学習指導要領が果たす役割は極めて小さいということである。むしろ、性別特性や性別役割分業を暗に前提とした記述も見られることから、ジェンダー不平等な社会の形成へ学習指導要領が貢献しているとも言えよう。また、文部科学省によって対応が示されたLGBTIの人々の存在についても、新学習指導要領では一切触れられていない。
著者
野村 貴郎 Kiro NOMURA
出版者
武庫川女子大学学校教育センター
雑誌
学校教育センター年報 (ISSN:2432258X)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-11, 2019-03-25

助動詞「です」の使用状況を,18 歳~24 歳の377 名に対するアンケートをもとに考察した。その結果,(1)動詞に接続する「です」の用法で,よく普及しているのは「~ませんでした」の形だけであるが,「~でしょう」の形に定着の傾向が見られること。それに対して「~です」や「~たです」の形は認められておらず,その他の形は,まだ“ゆれ”ていること。 (2) 形容詞に接続する「です」の用法は比較的よく普及しており,「~です」「~ですか」「~たです」の形は,ほぼ完全に定着していること。しかし,その他の形は,なお“ゆれ”ていること。 (3) 格助詞(準体助詞も含む)「の」「ん」に接続する「です」の用法は,少なくともこの調査からは徐々に衰退しつつあることなどがわかった。 また,1999 年のデータを用いて,この18 年間の使用率の変化も考察し,(4)形容詞に接続する「です」「~たです」の用法が,ほぼ定着していること。(5)動詞に接続する「~でしょう」の用法や,用言に接続する 「~ないです」の用法が,しだいに定着してきていることなどを確認した。
著者
彭 丹
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.11-50, 2012-03-30

日本には八点の国宝茶碗がある。八点のうち、南宋時代に焼造された天目が五点を占める。曜変天目三点、油滴天目一点、玳皮天目一点である。これらの天目茶碗は、生産地の中国の地には残されていないのに、なぜ日本に残っているのか?日本の国宝と中国の天目とは矛盾しないのか?天目を求め続ける日本人の情熱はいったい何か?
著者
深山 覚 中妻 啓 米林裕一郎 酒向慎司 西本 卓也 小野 順貴 嵯峨山 茂樹
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.78(2008-MUS-076), pp.179-184, 2008-07-30

本稿では歌詞の韻律を用いた歌唱曲の新しい自動作曲手法を提案する。旋律を音の経路と捉え作曲を経路探索問題として定式化することで、任意の日本語の歌詞を用いた歌唱曲の自動作曲が、歌詞の韻律に基づく制約条件下での最尤経路探索問題を解くことで実現できることを示す。さらにこの作曲原理を実装した自動作曲システム "Orpheus" を用いて実際に楽曲生成を行い、作曲家による生成された楽曲に対する評価を踏まえて、今回の手法によって妥当な音楽性をもった歌唱曲が生成されたことを検証する。
著者
宮下 修一
出版者
中央ロー・ジャーナル編集委員会
雑誌
中央ロー・ジャーナル = Chuo Law Journal (ISSN:13496239)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.23-48, 2021-03-31

Das Verbrauchervertragsgesetz wurde 2016 und 2018 zweimal geändert. Jedoch infolge der Beschränkung des Änderungsumfangs und des Anwendungsumfangs der geänderten Artikelist der Umfang der Abhilfe in tatsächlichen Fällen von Verbraucherschäden enger geworden.Daher möchte ich in dieser Abhandlung zunächst den Inhalt der Änderungen über die Allgemeiner Teil und Anfechtungsrecht vom Verbrauchervertrag des Verbrauchervertragsgesetz auf Grundlage des Hintergrunds der Diskussionen untersuchen, die zu diesen Änderungen geführt hat, und dann die verbleibenden Probleme klären. Danach möchte ich darüber nachdenken, wie das Verbrauchervertragsgesetz geändert werden sollte, um diese Probleme zu lösen, und wie das Verbrauchervertragsgesetz und die Gesetzgebung in Bezug auf Verbraucherschutz in Zukunft gesetzt werden sollten.
著者
小松 謙之
出版者
麻布大学
巻号頁・発行日
2015-07-08

オガサワラゴキブリ(Common name : Surinam cockroach)は、世界の熱帯、亜熱帯に広く分布する害虫であり、国内では鹿児島から南西諸島、小笠原諸島などに分布している。近年、このゴキブリが、我が国の都市部の建築物内にも侵入し、捕獲や駆除が報告されはじめている。また海外においても、同様に都市部の家屋内への侵入が問題となっている。疫学的には、エチアピアにおいて、Kinfu and Erko (2008) は、このゴキブリの体表から、ヒトに感染性をもつ蠕虫類の回虫卵やテニア科条虫卵を検出し、さらに腸管からは、これらに加え、鞭虫卵や原虫類である大腸アメーバのシストの検出を報告しており、感染症を媒介する衛生害虫としても注目されている。 オガサワラゴキブリに関しては、形態的に良く似た2種が知られており、両性生殖を行うPycnoscelus indicusと、単為生殖を行うPycnoscelus surinamensis が存在する。P. indicusとP. surinamensisの種の分類方法については、Roth(1967)が成虫を用いた交配実験を行い、受精嚢内に精子があるにもかかわらず、雌のみを産出した個体をP. surinamensis、雌雄を産出した個体をP. indicusとしている。また、形態的な違いとしてP. indicus は複眼と単眼点の距離が離れているのに対して、P. surinamensis は両眼が接していることで区別できるとしている。 P. indicus の雄は雌に比べて乾燥に弱く、生育環境が適切でないと雄が死んでしまうため交尾ができず、繁殖することはできない。ところが、P. surinamensis は繁殖に雄は必要ないため、雌が1匹でも生息すれば多少環境が悪くても侵入した場所で繁殖を繰り返すことが可能である。 朝比奈(1991)は、日本産の個体は、雌雄が常に同時に採集されており、雌だけの単為生殖の系統は観察されないことから、日本に生息する個体はP. indicusである可能性を示唆した。しかしながら、日本産のオガサワラコギブリを用いた詳細な実験による証明が行なわれるまでは、従来のP. surinamensisとすることを提唱し、今日に至っている。このように、オガサワラゴキブリは衛生害虫として重要なゴキブリでありながら、種の鑑別と分布がまったく不明なのが現状である。 そこで本研究では、成虫にまで発育する前に雌雄の区別ができるように、まず幼虫期における雌雄の鑑別方法の確立を行った。ゴキブリ類の幼虫期における雌雄の鑑別については、トウヨウゴキブリBlatta orientalis、チャオビゴキブリSupella longipalpa、クロゴキブリPeriplaneta fuliginosaで確立されており、幼虫期の腹板の形態により鑑別可能であることが報告されている。そこで、沖縄県八重山郡竹富町石垣島で採集し、予備実験により産仔幼虫が雌雄の成虫に発育することを確認した個体群を使用して実験を行い、孵化直後の幼虫を腹板の形態ごとにグループに分け、成長段階における腹板の形状を記録し、最終的に各グループの個体が雌雄のどちらになるかを調べた。その結果、雌では1~6齢期の幼虫において第9腹板の後縁中央部に雄では見られないnotch(V字型)を有し、7齢(終齢)期では、第7腹板が発達して第8~9腹板および尾突起を覆い隠した。これに対して雄では7齢期まで第8~9腹板、尾突起がみられた。したがって、この特徴を観察することによって幼虫期の雌雄鑑別が可能であることが判明した。 次に幼虫期の齢期を判定するため、尾肢の腹面および背面の環節数を計測した。その結果、背面の環節数は2、3齢で同数となり判定できないが、腹面の環節数は1齢幼虫で3節、2齢幼虫で4節と加齢するごとに1節ずつ増加することが分かり、この部位の環節数を調べることにより幼虫の齢期の判定が可能となった。 これらの結果をもとに、日本に生息するオガサワラゴキブリの種と分布を明らかにするため、小笠原諸島(硫黄島・母島・父島・西島・媒島)、奄美諸島(徳之島・奄美大島)、沖縄諸島(沖縄島・宮古島・石垣島)、ハワイ島から採集した雌成虫を単独で飼育し、実験に用いる個体の繁殖を行った。その結果、硫黄島・徳之島・沖縄島は、雌のみを産出する個体と、雌雄を産出する個体が見られたため、前者をAグループ、後者をBグループとして11地域14系統の個体群を使用して交配実験を行った。 交配実験は、雌のみを産出する個体群には、Roth(1967)と同様にP. indicusと判明しているハワイ産の雄を使用し、雌雄産出する個体群は、その個体群内の雄を使用した。その結果、1地域で2系統見られた硫黄島、徳之島、沖縄島では、硫黄島Aグループの個体での産出数は、雄0個体、雌478個体で、産出後のすべての各個体における受精嚢内に精子を保有していたことよりP. surinamensisであった。硫黄島Bグループは、雄162個体、雌157個体を産出し、1回の平均産仔数の雄雌比は、10.8:10.5(p>0.05)で、性比に有意差は認められずP. indicusであった。徳之島Aグループは、雄0個体、雌221個体を産出し、すべて受精嚢内に精子を保有していたことよりP. surinamensisであった。徳之島Bグループは、雄242、雌207を産出し、1回の平均産仔数の雄雌比は12.1:10.4(p>0.05)で、性比の有意差は認められずP. indicusであった。沖縄島Aグループは、雄0個体、雌724個体を産出し、すべての受精嚢に精子が保有されていたことよりP. surinamensiであった。沖縄島Bグループは、雄322、雌312を産出し、1回の平均産仔数の雄雌比は16.1:15.6(p>0.05)で、性比の有意差は認められずP. indicusであった。以上の結果より、硫黄島、徳之島、沖縄島は、P. surinamensisとP. indicus の2種が同時に生息していることが初めて明らかとなった。 雌のみが産出された母島・父島・西島・媒島の個体のうち、母島の受精嚢に精子が確認された個体での産出数は、雌248個体、父島の精子が確認された個体での産出数は、雌59個体、西島の精子が確認された個体の産仔数は、雌663個体、媒島の精子が確認された個体での産出数は、雌143個体であったことから、以上4島の個体は全てP. surinamensis であることが明らかとなった。 雌雄産出した個体のみであった奄美大島・宮古島・石垣島では、奄美大島の個体は、雄260、雌260で、1回の平均産仔数が14.4:14.4(p>0.05)であった。宮古島の個体は、雄230、雌267で、1回の平均産仔数が16.4:19.1 (p>0.05) であった。石垣島の個体は、雄281、雌266で、1回の平均産仔数が16.5:15.6(p>0.05)であった。ハワイ島の個体は、雄199、雌189で、1回の平均産仔数が11.7:11.1(p>0.05)であり、以上4島の個体はすべてP. indicusであることが明らかとなった。 以上の結果より、日本にはP. indicusとP. surinamensisの2種類が生息しており、これらが混生している地域、およびP. indicusのみ、あるいはP. surinamensisのみが生息する地域があることが明らかとなった。 次に、実験により種が判明した個体を使い、この2種類の形態的な違いを調べた。Roth(1967)は、複眼と単眼点が接していればP. surinamensis、離れていればP. indicusであるとしたが、本実験ではP. surinamensis の雌成虫の複眼と単眼点は接しておらず、その距離は、母島0.16㎜>父島0.14㎜>媒島0.13㎜>西島・徳之島・沖縄島0.12㎜>硫黄島0.10㎜となり、平均0.13㎜であった。一方、P. indicus 雌成虫の複眼と単眼点の距離は、硫黄島 0.18㎜>宮古島0.16㎜>奄美大島・沖縄島 0.13㎜>徳之島・石垣島0.12㎜で、平均0.15㎜となり、どちらの種も接しておらず、両種の複眼と単眼点の距離による鑑別は不可能であった。 また、昆虫類の種の違いとして前翅長の違いが広く利用されているため、雌成虫の平均前翅長を計測した。その結果、P. surinamensisは、沖縄島15.82㎜>母島15.26㎜>西島15.07㎜>媒島14.16㎜>父島13.81㎜>徳之島13.57㎜>硫黄島12.87㎜、P. indicus 雌成虫の平均前翅長は、沖縄14.72㎜>硫黄島14.35㎜>石垣島13.81㎜>徳之島13.54㎜>奄美大島13.53㎜>宮古島12.96㎜と、地域的な差異が大きく、両種を鑑別することはできなかった。 一方、交配実験を行わなくても種を鑑別できる方法を検討するため、本実験で得られた各雌成虫の未交尾個体による飼育実験を行った。その結果、P. surinamensisはすべての個体が幼虫を産出し、前述した幼虫期の雌雄鑑別法により、すべてが雌であることがわかった。一方、P. indicusはすべての個体で幼虫は産出しなかった。このことより、野外で採集した雌成虫の同定法として、産仔幼虫がすべて雌であった場合はP. surinamensis、また雌雄を産出、あるいはまったく産出しない場合はP. indicusと同定できることが判明した。 以上、本研究により、これまで日本に生息するオガサワラゴキブリはP. surinamensisのみであると考えられていたが、P. indicusも同時に生息していることが明らかとなり、これらの結果から、日本に生息するゴキブリは1種増えて58種となった。さらに、現在までP. indicusとP. surinamensisは生息地域が違うと考えられてきたが、2種類が同一地域に混生している事実が明らかになり、今後の研究の方向性を再検討する必要がある。また、Roth(1967)が提唱している複眼と単眼点の距離による形態をもとにした鑑別方法は利用できないことがわかった。これに替わる新たな鑑別方法として、交配実験を行わなくとも未交尾の雌個体であれば、そのまま飼育して産仔すればP. surinamensis、産仔しなければP. indicusと判断でき、野外採集個体であれば、産出された幼虫が雌のみであればP. surinamensis、雌雄産出すればP. indicusと判断できることがわかった。朝比奈(1991)の報告では、我が国におけるオガサワラゴキブリの種に関する知見が明確ではなかったが、本研究における種々の交配実験や形態的な観察により、その詳細が明らかとなった。
著者
小堀 和人 李 忠翰 廣津 登志夫
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2022-OS-155, no.1, pp.1-9, 2022-05-19

近年普及の進んでいるマイクロサービスアーキテクチャでは,多数のモジュールが目的や状況に応じて柔軟に連携しあうため,構成が複雑になりやすくシステム全体を通した性能分析や負荷状況の把握が困難である.このような分散した複数のモジュールからなるサービスの実行状況の監視や性能の分析のためには分散トレーシングが用いられる.分散トレーシングでは,各マイクロサービス上で収集した統計情報の整合性を確保するため,サーバ間の高精度な時刻同期が重要である.Linux 上の高精度時刻同期プロトコル (Precision Time Protocol: PTP) の実装では,NIC のドライバ上でパケットのタイムスタンプを取得することで時刻同期の精度を向上させることができるが,これはドライバの実装に依存するためより汎用な仕組みで実現することが望ましい.本研究ではカーネルが提供する機能の一つである eBPF を用い,可搬性の高い高精度時刻同期を実現した.その設計と実装について述べるとともに,PTP マスタとの同期のずれの推移を元に,本提案実装がドライバ依存の実装と同等の性能を持つことを示す.
著者
佐藤 友香 小柳津 和博
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.26, pp.97-109, 2022-11-30

障害児者をきょうだいにもつ姉を対象として、同胞に対する思いの変容について調査した結果、きょうだいの同胞に対する思いは変容し続けるものであることが明らかになった。思いが変容するきっかけは、同胞の成長や同胞への理解などに対しての気付きがあったときや、同胞の可能性について着目したときにあった。また、同胞がいて良かったと思うことのできる経験によって、きょうだいの気持ちは前向きになったり、同胞を尊重したいという思いになったりしていくことが示唆された。 きょうだいは、賞賛されるタイミングや内容によっては、必ずしも好意的な感情を持たないということが明らかになった。また、「同胞+私」で賞賛されるより、「私」を個として認め、ほめられることに喜びを感じる可能性があることが明らかになった。"
著者
徐 方啓
出版者
近畿大学商経学会
雑誌
商経学叢 = Shokei-gakuso: Journal of Business Studies (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.17-31, 2015-07-01

[要約]BYDはもともと1995年深圳 に設立された電池メーカーであったが, 自動車製造の参入で事業を拡大してきた. とりわけ, 自社開発のリン酸鉄リチウム電池をベースにする電気自動車は, 安定性と一回充電で250キロ走れるなどで競合企業より競争優位をもっているため, 2008年ウォーレン・バフェットから出資を受けた. それ以来, BYDの動向は時々マスコミに報道されているが, BYD の競争戦略についての研究はほとんどされなかった. 本稿は, BYD のこれまでの歴史を踏まえた上で, 主に競争戦略を研究して求めたものである. BYDの競争戦略は, 具体的に「コストリーダーシップ」「ハイテク産業の人海戦術」「非特許技術の活用」と「垂直統合」に現れている. ただ, 近年, BYDの売上高は伸びているが, 純利益が減少しているので, このような競争戦略は持続可能かに多少の疑問が残っている. [Abstract]BYD was originally battery manufacturer which was established in 1995 in Shenzhen, but has been expanding its business in the entry of automobile manufacturing. In particular, the electric vehicle that based on self-developed lithium iron phosphate battery, because it has some advantages than competitors in such as the stability, to run 250km in a single charge and so on, Warren Buffett invested HK$1.8billon to BYD in 2008. Since then, although trends of BYD sometimes have been reported in the media, research on competitive strategy of BYD was hardly. This paper was summarized by mainly studied the competitive strategy, on which is based on the history of BYD. The competitive strategy of BYD has appeared in the "Cost leadership", "Human wave tactics of hightech industry," "Using of non-patented technology" and "Vertical integration". However, in recent years, sales of BYD is growing, but since net income is decreasing, there remains some doubt on whether such competitive strategy is sustainable.
著者
小坂 美保 Miho OSAKA
雑誌
女性学評論 = Women's Studies Forum
巻号頁・発行日
vol.32, pp.53-72, 2018-03-20

スポーツにおいて素晴らしい記録がでたとき、当該アスリートには「賞賛のまなざし」と「ドーピングでは?」「疑惑のまなざし」が向けられる。女性アスリートには、この2つのまなざしだけでなく、「男性では?」という「性別へのまなざし」が加わる。本報告では、性別に疑惑を向けられたある女性アスリートを事例に、スポーツにおける性別問題について考察をおこなった。競技を実施する上での平等性の確保とともに、女性のパフォーマンスが男性をうわまわる可能性を排除しようとする構造がスポーツ界に存在するのではないだろうか。そのために、髙いパフォーマンスを発揮した女性アスリートに対して「性別疑惑」が浮上し、「女性選手」のカテゴリーへの包摂を拒むのである。そして、当該選手が、「女性選手」として競技に参加するためには、「女性選手」という枠組みに適合する身体にならなければならない。近代スポーツは、「女」か「男」かという二分法を揺るがす選手の存在は、近代スポーツが抱える「女性/男性」という枠組みの枠組みの限界を示しているともいえるのである。
著者
川上 香 Kaori KAWAKAMI
出版者
総合研究大学院大学文化科学研究科 / 葉山町(神奈川県)
雑誌
総研大文化科学研究 = SOKENDAI Review of Cultural and Social Studies (ISSN:1883096X)
巻号頁・発行日
no.19, pp.96(165)-63(198), 2023-03-31

高度経済成長期以前の日本では、多くの山村で、自給を目的とした作物栽培が行われていた。また、焼畑に付随した茶などの換金作物栽培も行われ、人びとは暮らしを維持していた。昭和30年代に焼畑は衰退するが、現在までの山村の耕作地や作物の変化は、具体的に明らかになっていない。本研究では、静岡市井川地域の山村を対象に、個人の事例を通して耕作地の茶畑への転換と、耕作地の変化に伴う作物への影響について論じた。それらは次のようにまとめられる。1 耕作地は、焼畑や常畑、採草地の複合的利用から、高度経済成長期には、茶畑への転換と拡大がおこった。昭和60年頃からは、高齢化により茶畑は縮小化した。2 耕作地の変化に伴い、ヒエやオオムギなどの穀類の自給や、焼畑休閑後に自生した在来茶の利用は、昭和30年代から40年代にかけて終焉を迎えた。3 自給的作物栽培は、昭和30年代から続く常畑と茶畑の一部で現在も持続している。Before rapid economic growth occurred in Japan, crops were cultivated in many mountain villages for subsistence purposes. Cash crops such as tea were also cultivated in conjunction with slash-and-burn farming to sustain people’s livelihoods. Although slash-and-burn farming declined in the 1950s, the specific changes that took place in cultivated land and crops in mountain villages up to the present day have not been clarified. This study discusses the conversion of cultivated land to tea plantations and the impact of changes in cultivated land on crops through an examination of individual cases in mountain villages in the Ikawa area of Shizuoka City. A summary of the study is as follows: 1. Cultivated lands were converted to tea plantations from a combination of burnt fields, common fields, and grassland and expanded during the period of rapid economic growth. Starting at about 1985, tea plantations shrank in size due to the aging of the population.2. With the change in cultivated land, subsistence cultivation of grains, such as Japanese millet and barley, and the use of native tea that grew naturally after the slash-and-burn fallow period came to an end from the mid-1950s to the mid-1966s.3. Subsistence crop cultivation continues to this day in some continuous cultivation fields and tea plantations that have been in existence since the mid-1950s.