著者
石井 治恵
出版者
北海道大学高等教育推進機構高等教育研究部
雑誌
高等教育ジャーナル : 高等教育と生涯学習 (ISSN:13419374)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-9, 2019-04

Abstract - In Japan, universities have experienced an increase in the number of students seeking counseling services. While many university counseling centers perceive crisis management to be challenging, the crisis intervention literature only provides scattered evidence of its effectiveness and lacks a comprehensive classification of these interventions, making it difficult for university counseling centers to implement research-informed crisis management policies and plans. This paper presents a classification model of crisis intervention specific to university settings where three factors are displayed along the three axes of a cube. The axes consist of 3 stages of crisis, 3 scales of crisis intervention, and 3 foci of crisis intervention, resulting in 27 categories. Rationales and descriptions for these three axes are provided, followed by a discussion of the limitations and possible contributions of the cubic classification model.
著者
細川 敏幸 山田 邦雅 宮本 淳
出版者
北海道大学高等教育推進機構高等教育研究部
雑誌
高等教育ジャーナル : 高等教育と生涯学習 (ISSN:13419374)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.59-65, 2019-04

Abstract - The questionnaire on learning situations used by the University IR Consortium was introduced by Yamada et al. in 2004 with reference to the Cooperative Institutional Research Program (CIRP) used in the USA. A questionnaire based on the National Survey of Student Engagement (NSSE) used in USA was also introduced in Korea in 2009. The questionnaires (CIRP and NSSE) referred to in both countries have been gradually reorganizad after that, and there are several different parts. In this report, we focus on the CIRP compared with the other three questionnaires, and summarize recent trends in US questionnaire contents. This will assist in future discussions about the contents of student survey questionnaires.
著者
宇田川 拓雄
出版者
北海道大学高等教育推進機構高等教育研究部
雑誌
高等教育ジャーナル : 高等教育と生涯学習 (ISSN:13419374)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.25-33, 2019-04

Abstract - In 2017, the Japanese Goverment announced the plan of the New Policy for Human Development, aiming to reduce inequality and nurture the workforce needed for the development of 21st-century Japan. It includes tuition-free scholarships for low-income families, benefit-type scholarships, and income-linked repayment loans for university students. In contrast, a new, diffirent type of schlarship is in place in some states in the United States. In 2014, Governor Bill Haslam of Tennessee signed the Tennessee Promise Act, and it was implemented in 2015. It is a state scholarship that makes tuition for community colleges free for two years for all the first time students who attend any of the Tennessee community colleges. The completion rate for community colleges is only 25%. Why did the lawmakers decide to spend money on institutions of higher education with such low productivity? The Tennessee Promise has been an immense success and, by March 2018, fifteen states had followed Tennessee and enavted similar Promise-type programs. Today, in Japan, as well as in the United States, more than 50% of 18-yaer-olds attend college or university. We are at the universal stage of Martin Trow's model of higher education. Why free-tuition policies have appeared at this stage of universalization? In this paper, the author analyzes the features of Tennessee's free-tuition scholoarships and tries to explain the meaning of the program using Trow's model.
著者
渡邉 絢夏
出版者
Master's and Doctoral Programs in International and Advanced Japanese Studies, Graduate School of Humanities and Social Sciences, University of Tsukuba
雑誌
国際日本研究 = Journal of International and Advanced Japanese Studies (ISSN:21860564)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.23-44, 2019

中華民国は複雑なアイデンティティの形成を経ながら現在の「台湾」へと収斂していった。その背景には、有史以来の外来政権による支配や、蒋介石率いる国民党軍政期以来の社会的背景などが大きく関与している。台湾は長らくno man's land の状態であった。オランダ統治を契機に、以降様々な外来政権によって統治されることとなった台湾は、帝国日本の統治によって初めて「台湾」を意識することとなった。台湾は長らく複数のエスニック・グループが共存していた。エスニック・グループ同士で一つのネイションとして意識を共有することはなく、また一つのグループが明確に島の支配者として独立することもなく、棲み分けられていた。それは清朝統治時代においても同様であり、あくまでも部分的な統治に留まっていた。「日本」というネイションに統合されることで、台湾に住む人々が共に「日本人」化させられた。しかしながら、明らかな内地人と外地人の差別・差異に、外地人たちは自らを他者化することとなり、「われわれ」を意識することとなった。この「われわれ」は日本人とは異なるナショナル・アイデンティティを有するものであり、「台湾」創出の萌芽であった。本研究では台湾のナショナル・アイデンティティの萌芽を日本統治期に見るものである。方法として日本人作家の川合三良と台湾人作家の呂赫若の文学作品をテクストとして取り上げ、内地人が外地台湾をどのようにまなざしていたか、外地人たちが日本帝国の家族国家観による統治をどのように受容していたかの2 点を文学作品から分析する。さらに日本人という支配者が存在したことで、原住民族と漢族グループの境界に揺らぎが生じたことで、現代に繋がる「台湾」としてのナショナル・アイデンティティの萌芽が日本統治時代に現れていたことを明らかにする。
著者
山口 響子 森口 徹生 山下 大介 大西 丘倫 金子 貞男 的場 亮 鄭 漢忠 近藤 亨
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.94-103, 2019-03

最も悪性度の高い脳腫瘍の1つであるグリオブラストーマ(GBM)は,標準治療(外科手術および化学放射線療法)を施しても平均生存期間中間値(約15か月)が極めて短い難治性疾患である.この難治性の原因の1つは,腫瘍細胞の強い組織浸潤能と増殖能により神経症状発症時には摘出不可能な範囲に腫瘍細胞が拡散しているためである.つまり,簡便かつ検出感度の高いGBM診断用バイオマーカーがあれば,早期腫瘍摘出が可能となり,予後の改善が期待できる.分泌小胞体エクソソームは,その産生細胞が発現しているmRNA,microRNA (miR),タンパクなどを含み,様々な体液中に安定に存在することから,新たなバイオマーカー探索の標的としてその解析と利用が注目されている.今回,私たちはGBM患者と健常人の血漿中のエクソソームに含まれるmiRを比較分析することで,診断マーカーとなりうるmiRの同定を目的として解析を行った.GBM患者6人の凍結血漿8検体(同一患者の再発術前1検体と術後1検体を含む)と健常人2人の凍結血漿を用いて解析を行った.凍結血漿から調整したエクソソーム内miRについて,RNA-seqを用いた網羅的な解析を行い,GBM患者血漿エクソソームに多く含まれる34種のmiRと健常人血漿エクソソームに多く含まれる47種のmiRを同定した.GBM患者血漿エクソソームに多く含まれていたmiRの中で,エクソソームバイオマーカーとして報告のないmiR-186とmiR-20aについて,定量PCRを用いてGBM患者と健常人血漿エクソソーム内miR量を検討した.その結果,miR-20aはGBM患者と健常人間で有意な差は認められなかったが,GBM患者5人中4人の血漿エクソソームにmiR-186が豊富に含まれていることを確認した.加えて,術後患者ではmiR-186量が健常人レベルまで減少していることを発見した.さらに,標準治療を行った再発例においても,術前血漿エクソソーム内miR-186の上昇を認めた.これらの結果は,血漿エクソソーム内miR-186がGBMの病状に即した新規バイオマーカーである可能性を示唆している.
著者
武智 あさぎ
出版者
首都大学東京
巻号頁・発行日
pp.1-72, 2017-03-25

首都大学東京, 2017-03-25, 修士(考古学)
著者
石井 良則
出版者
首都大学東京小笠原研究委員会
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
no.33, pp.27-49, 2010-05-20

島根県仁多郡横田村(現奥出雲町)出身の岡崎喜一郎は、小笠原諸島の姉島という無人島に渡航して、小笠原姉島家庭塾という名称の感化教育施設を設立し、1937(昭和12)年1月より1939(昭和14)年8月まで、非行少年の更生のため生活を共にしながら教護したが、事情で施設の閉鎖を余儀なくされ、戦後間もなく郷里で死去した。2年8ヶ月という期間であったが、感化教育という困難に満ちた事業に献身した岡崎の大凡の活動を、彼の3男である岡崎洋三の書簡を通して推考する。
著者
宇野 重規
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3-4, pp.153-172, 2011-03-15

本稿は「労働」と「格差」について, 政治哲学の立場からアプローチする. 現代社会において, 労働は生産力のみならず社会的なきずなをもたらし, さらに人々に自己実現の機会を与えている. 対するに格差は, 社会の構成員の間に不平等感や不公正感を生み出すことで, 社会の分断をもたらす危険性をもつ. このように労働と格差は, 正負の意味で政治哲学の重要なテーマであるが, これまでの政治哲学は必ずしも積極的に向き合ってこなかった. その理由を政治思想の歴史に探ると同時に, 現代において労働と格差の問題を積極的に論じている三人の政治哲学者の議論を比較する. この場合, メーダが, 政治哲学と経済学的思考を峻別するのに対し, ロールズは, ある程度, 経済学的思考も取り入れつつ, 独自の政治哲学を構想する. また, 現代社会が大きく労働に依存している現状に対しメーダが批判的であるのと比べ, ネグリのように, あくまで労働の場を通じて社会の変革を目指す政治哲学もある. 三者の比較の上に, 新たな労働と格差の政治哲学を展望する.
著者
植原 亮
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.41-56, 2018-10-15

本稿の目標は,徳と人間本性をめぐるアリストテレス的な主題に関連する現代的な議論の見取り図を描き出すことである.そのために,この主題を構成する要素のうちの三点を取り上げて批判的に検討を加える.第一に,卓越した性格特性としての徳という見方に関する状況主義論争を手短に振り返る.第二に,人間本性にもとづく特定の徳のセットやそれがもたらす繁栄という概念の抱える困難を指摘する.第三に,人間本性という考えそのものを発生システム論などの現代の理論的枠組みから吟味する.
著者
中島 喜代子 廣出 円 小長井 明美 Nakajima Kiyoko Hirode Madoka Konagai Akemi
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:03899241)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.77-97, 2007-03-30

現在「居場所」という言葉は、日常的によく使用されているが、「居場所」の概念は、一般用語としても、また研究の面においても捉え方が様々であり、明確な定義は定まっていない。そこで、本稿では、子どもの「居場所」の概念を明確にすることを目的としている。この目的を達成するため、まず一般用語としての「居場所」の概念を捉えるために、「居場所」という言葉の登場時期と使用状況を検討し、子どもの「居場所」と社会的背景との関わりの検討を行った。さらに子どもの「居場所」に関する研究を検討することにより、研究レベルの「居場所」の概念を検討した。以上の検討を踏まえ、「居場所」の定義づけを行い、また「居場所」の構造を捉えるため「居場所」の構造を検討し、さらに「居場所」の実態を具体的に捉えるため「居場所」の持つ概念の諸側面を明確にした。そして、現在の子どもの「居場所」づくり事業を検討し、今後の事業に対する提案を行った。
著者
奈良教育大学教育学部附属教育実践研究指導センター
出版者
奈良教育大学附属教育実践研究指導センター
雑誌
奈良教育大学実践センターニュース
巻号頁・発行日
vol.21, 1997-11-01

センターの新たな出発に向けて/新メンバー自己紹介/<シリーズ若手教科専門研究者の一言>教育実習を参観して/<海外視察記>オーストラリアの数学教育/近畿地区教育メディア・生涯学習情報提供研究協議会〈奈良大会〉に出席して/第51回国立大学教育実践関連センター協議会報告/教育工学関連学協会連合第5回大会の報告/センター関連情報/編集後記
著者
蓮沼 素子
雑誌
GCAS report : 学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻研究年報 (ISSN:21868778)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.24-41, 2015-02

近代以降、産業の発展と共に新しい文化が芽生え、現在ではポピュラー文化と呼ばれ、世界へと情報発信しながら進化を遂げている。過去に生まれた文化が同時代には新しい流行であったのと同様に、今まさに生まれている文化もまた、将来の日本文化を支える重要なパーツである。しかし、近現代の文化は日本において次世代へと継承する対象とは認識されておらず、保存・活用のための方法論も確立していない。本論は、このような近現代文化から生み出される文化資源を地元文化として次世代へと継承すべき文化資源と捉え、近現代文化アーカイブズと定義した。具体的な事例としては、地元自治体が継承している現代舞踊アーカイブズとまんがアーカイブズを取り上げ、それぞれの機関が所蔵する資料群の編成を試み、このような近現代文化資源を地元文化資源として地元自治体が継承し活用する意義と課題を提示した。