著者
松井 理直
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究会
雑誌
トークス = Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : 神戸松蔭女子学院大学研究紀要言語科学研究所篇 (ISSN:13434535)
巻号頁・発行日
no.17, pp.67-106, 2014-03

日本語の有声破裂音における声立ち上がり時間(Voice Onset Time, VOT) の分布は、しばしば双極的な性質を持つ。2つの分布ができることを説明する1つの可能性として、声帯振動の開始時点を決める基準点が1つではなく、2つあることが考えられる。例えば、1 つは破裂音の開放時点、もう1つは子音・母音間の音韻境界を過程できよう。本稿は、この子音・母音間の音韻境界が日本語の母音無声化、阻害音の有声性、借用語における促音挿入/促音抑制といった様々な音韻現象に影響することを考察する。また、最後に、母音・子音間の音韻境界に基づくモデルが、VOT の分布をよくシミュレートできることを述べる。
著者
河本 洋一
出版者
日本音楽表現学会
雑誌
音楽表現学 (ISSN:13489038)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.33-52, 2019

<p> 人間の音声を駆使した "ヒューマンビートボックス" という新たな音楽表現は日進月歩の発展をみせており、海外では愛好者のコミュニティや研究者らの間で、活発な議論が展開されている。一方、日本では技術面への関心は高いものの、 概念形成に関する議論は不足しており、その拠り所となる日本語の資料が必要であった。</p><p> そこで本稿は、世界最大の愛好者コミュニティの様々な論考や世界初の解説書などが示す内容に、国内外の "ビートボクサー" と呼ばれる演奏者らへの聞き取り調査の結果を加え、ヒューマンビートボックスの歴史的背景や音楽表現としての様々な特徴や可能性を整理した。その結果、日本におけるヒューマンビートボックスの捉え方と世界的な流れにはずれがあったことや、ビートボクサーAfra(本名:藤岡章)が世界と日本との架け橋となり、日本におけるこの音楽表現の発展に大きく貢献したことなどが明らかとなった。</p>
著者
三浦 太郎
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.67-80, 2001-11-30

戦後, ドイツの西側地域では再教育理念と米民主主義の普及という考えを背景に, 各地に情報センターが設立される。これらは「アメリカ・ハウス」と呼ばれ, 1945年7月にフランクフルト郊外に読書室が開室されたことに始まり, 1947年までに17館, 1953年までに47館を数えた。占領期当初, 軍政府(OMGUS)内部における関心は低かったが, 冷戦の深化とともに1948年にスミス・ムント法が制定され, 翌年に西ドイツが建国されると, アメリカ・ハウスは米国文化を伝える窓口として米国務省の情報プログラムに確固とした位置づけを得るに至った。米国のコミュニティ図書館をモデルに, アメリカ・ハウスでは蔵書の貸出をはじめ講演会の開催や映画上映など, 多様な文化的サービスが展開された。占領下のドイツで米国は日本の場合ほど図書館政策に対する改革の意思を持っておらず, 米国文化の紹介が主眼に据えられた。
著者
鳥居本 幸代
出版者
日本風俗史学会
雑誌
風俗 (ISSN:02869802)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.p1-12, 1986-06
著者
井上 優
出版者
ココ出版
雑誌
一橋日本語教育研究
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-12, 2015-03-28

この文章では次のことを述べる。①言語の対照研究は,言語研究の一分野ではなく,言語を研究する際のスタイル・立ち位置である。②他の言語と比べて考えることは,対照研究だけでなく,個別言語研究においても重要である。③日本語研究の立場から対照研究をおこなうことは,日本語研究者の役割の一つである。④おもしろい対照研究にするためには,「何が問題の本質か」を常に考えながら研究をおこなうこと,そして,ふだんから異なる言語の研究者と直接話をしながら研究をおこなうことが重要である。⑤言語を比べて考えることは言語について分析的に考えるセンスを磨くのに役立つが,学生(特に留学生)が対照研究を研究テーマにするのがよいかどうかは,それとは別に考える必要がある。
出版者
日経BP社
雑誌
日経レストラン (ISSN:09147845)
巻号頁・発行日
no.502, pp.24-25,27,29, 2015-10

繊細な味付けで素材の味を楽しむ和食には、上品で細やかな味わいのデザートがよく似合う。 最初に紹介した「柿のクリームブリュレ」を考案した「日本料理 彩々楽」が「今月の甘味」(350円)のバリエーションとして提供し、人気を呼んでいる…
著者
三宅 智志
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.151-166, 2011-03-01

嘉永六年(一八五三)、譜代・家門で担っていた江戸湾警衛に外様国持が動員された。その理由を考察する中で、柳川立花家に着目すると当主鑑寛の正室は田安斉匡の娘である。本稿ではこの立花鑑寛と田安斉匡の縁戚関係をヒントに、徳川家の縁戚関係の広がりを検討し、近世後期に徳川家が行った縁組政策の目的を考察していく。その上で、前記の嘉永六年に外様国持が江戸湾警衛に動員された背景を解明していく。その結果、多くの外様国持は徳川家との縁戚関係上に存在している。つまり、何れも徳川家と文化・文政期以降に姻戚関係を築いた大名によって江戸湾が警衛されているのである。ペリー来航以前は、名実ともに家門と譜代であったが、ペリー来航以降は国持で家門にあたる大名が将軍のお膝元である江戸湾警衛に動員されるのである。
著者
寺阪 昭信
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.21-38, 2004-03

前回の論文(スポーツと都市2 38巻号3号)では,主として1998年フランス大会のキャンプ地のあり方と開催都市における競技場の立地を見たが,それに引き続いて今回はドイツ(1974,2006年),イタリア,スペインの諸都市について考察し,2004年のヨーロッパ選手権,およびここ10年間のヨーロッパチャンピオンズリーグが行われた都市を検討することによって,ヨーロッパにおけるサッカー都市とはどこかについて考察することにした。前回の論文と対応させるために,やや小さいが都市についての地図は全て,10万分の1に統一してある。
著者
兒玉 州平
出版者
社会経済史学会
雑誌
社會經濟史學 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.349-371, 2014-11-25

日本政府は,ドイツ企業の特許「ハーバー・ボッシュ法」を1917年,敵国財産として接収し複数の企業からなる組合に払い下げた。先行研究は,その後組合が設立した東洋窒素工業株式会社(以下,東洋窒素)は結局合成硫安製造を行わず,唯一の業務は,ドイツ硫安の輸入に際して,自身の持つハーバー・ボッシュ法特許権侵害を理由にロイヤルティーを徴収することだったとしてきた。しかし,東洋窒素のロイヤルティー徴収は1932年に中止されており,ここに東洋窒素は敗戦に至るまで存続したという事実との矛盾がある。本稿は,東洋窒素の存在意義は,1930年以前は,ドイツ硫安の需給調整によって国内企業を守ることにあったとした。1930年以降は硫安の輸入が許可制となり,また既存企業が明示的なカルテルである硫安配給組合を結成する中で,需給調整を行うことはなくなったものの,東洋窒素は配給組合の中で,配給組合に対するアウトサイダーが出現したとき,特許権侵害を仄めかし,さらには内部留保したロイヤルティーで株式を取得して直接経営に関与することで協調的な関係を築くことを可能にしたと結論づけた。
著者
三谷 紗世
出版者
関西学院大学
雑誌
関学西洋史論集 (ISSN:03860043)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.37-52, 2007-03

Artemisia Gentileschi is an important Baroque woman painter who painted some dramatic pictures of Judith, a biblical female 'hero', under the influence of Caravaggio's realism. She, however, was ignored by the 20th century art historians until in the 1970 's, when she was rediscovered by the feminist art historians as a female 'hero' of feminists. In this article, I wish to reevaluate Artemisia in the context of Firenze history, mainly focusing the images of Judith who she painted. How do we explain Artemisia's realism? Why did she make up her originality which was very different from her master, Caravaggio? All Judith images of hers are very realistic, which gives powerful and victorious elements to her works. Her realism was also emphasized by some violent elements. According the art interpretations, Artemisia's Judith had been believed to express her emotion of revenge to her rape experience for a long time. But, can we explain her realism only by taking up her personal unfortunate experience? Judith as a saint patron in Firenze has the dual images of virtues and vices. From the fifteenth to the seventeenth century, she was a symbol of victory and welfare as a patron of the Medici as well as of the Firenze's people. In the days when the Medici was ousted, however, she was also ousted as a symbol of violence. The relationship between Judith and Firenze or the Medici corresponds to that of Artemisia's. In those days, painters were craftsmen/craftswomen rather than artists. Even Artemisia was not free from her patron, Cosimo II, who wished to get back the time of Medici's prosperity, by evaluating the symbolism of Judith. In conclusion, Artemisia's realism on Judith will be explained only by considering how Judith was recognized by Cosimo II, Firenze's people, and Artemisia in the context of seventeenth century Firenze history.
著者
津崎 哲雄 Tetsuo TSUZAKI 京都府立大学福祉社会学部
出版者
京都府立大学福祉社会学部福祉社会研究会
雑誌
福祉社会研究 = The review of welfare society (ISSN:13471457)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-19, 2005-02-01

本稿では、戦後初めて全国的にメディアの注目をあびた栃木県宇都宮市における「里親による里子傷害致死事件」を素材に、現行里親制度・委託実務の現状を分析し、わが国における里親システムがいかなる特質をもつものであるか検討した。まず、わが国における里親制度のブローファイルを述べ、事件概要を紹介し、事件の要因分析をおこない、種々の側面からわが国の里親制度が諸外国のものとは著しく異なることを明らかにし、若干の他国のモデルと比較しつつ、今後の施策・実務課題や改善すべき点を明らかにした。具体的には、児童相談所の里親認定/調査の杜撰さ、委託後の指導/観察訪問が行われず、委託中の支援も皆無で、里親は全く研修を受けておらず、社会的孤立していたことが判明し、刑事裁判の判決(懲役4年実刑)が示唆するような容疑者個人に事件原因を収斂させることへの疑問を提示し、わが国の里親制度に巣食う根源的問題が真の原因であると結論づけ、今後改革を要する諸点を提示した。