著者
小川 剛生
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = The Bulletin of The National Institute of Japanese Literature (ISSN:03873447)
巻号頁・発行日
no.29, pp.53-169, 2003-02-28

『百寮訓要抄』は、二条良基(一三二○~一三八八)が著した朝廷官職制度の解説書で、二官八省以下の大小の官衙とその職員を列挙し、沿革・職掌・任官の慣例等を仮名書きで説明したものである。同じく南北朝時代に著された北畠親房の『職原抄』とならんで、官職制度理解のためのよき手引きとされている。しかし本文批判は殆どといって良いほど行われておらず、そのまま利用するには問題が多い。本稿では五十本ほどの伝本を調査し、大別して二類六種に分類される諸本の性格と本文の形成について、ほぼその見通しを立てることが出来た。そうして得られた本文をもとにして、室町期を中心とした流布の様相を述べつつ、その官職制度書としての特質について考えた。附録として陽明文庫蔵慶長三年(一五九八)写本を底本に、簡略な校本を作成した。 “Hyakuryoukunyosho”(百寮訓要抄)is the manual of the system in the imperial Court government officials written by Nijyo Yoshimoto which enumerated the big and small Kanga(官衙) less than the Two Departments and eight Ministries, explained the history, duties, customs of investiture written in Kana. It is regarded as a good guide book along with “Shokugensho”(職原抄) written by Kitabatake Chikafusa. However, as the text was hardly criticized, there are so many problems to just use it. In this paper, as about 50 biography books were investigated, it was almost possible to make the prospect about the character of books which categorized as group2 type6(2類6種)and the formation of the text. Based on that, while stating an aspect of circulation mainly on Muromachi period, regarding the specific character as a manual of the system of the Imperial Court government officials was considered. As an appendix, a simple variorum based on the manuscript in 1598 owned by Youmeibunnko was created.
著者
和泉 徹彦 イズミ テツヒコ Tetsuhiko Izumi
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.15-39, 2010-03-18

2009 年に世界で大流行した新型インフルエンザは豚インフルエンザ由来のH1N1 ウイルスであった。事後的に季節性インフルエンザと比較して毒性が高くなかったことが判明したものの、致死性の高い新型インフルエンザを想定して策定された即応計画に基づいた対応がとられた。即応計画は市民の生命安全と社会経済活動の継続を目的として策定されていた。時間の経過とともに社会経済活動に大きな影響を与える措置が見送られた。日本では当初、地域全体の集団感染防止を目的とした休校措置等がとられたが、その後は学校単位での学級閉鎖・学年閉鎖といった対応に改められた。イギリスではかかりつけ医(GP)制度があるため、抗インフルエンザ薬投与が有効な48 時間以内の受診が困難である。そのため、「国家新型インフルエンザサービス」を稼働させて医療機関の受診無く抗インフルエンザ薬を入手可能なルートが開設された。ワクチン接種開始は想定通り約6 ヶ月を要しており、それまでに非薬物的な手段での感染防止が重要である。つまり、新型インフルエンザが認知されてからワクチン接種まで感染のピークを遅らせるような対策が求められる。
著者
斉藤 浩一 高橋 郷史 サイトウ コウイチ タカハシ サトシ Koichi Saito Satoshi Takahashi
雑誌
東京情報大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-9, 2005-09-20

本研究は、最近言われる「理科嫌い」について、教育心理学的に原因を追求するものである。さらに、教育方法等に提言を行う。本稿では、実際の高校生に対してアンケート調査を行う。ここではまず「理科志向」という概念を設定し、それに満たない者を「理科離れ」の状態にあると定義する。さらに、これまでの理科教育やこれから志向する理科系への意識がどのように、因果関係を持っているか実態を捉え、モデルを構築する。以上によって、どのような教育施策が有効か、提言を行うものである。
著者
山下 久美 首藤 敏元
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 = Journal of Integrated Center for Clinical and Educational Practice (ISSN:13477420)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.177-188, 2005

1989年に三重県内の保育園の周囲の自然環境を調査した研究がある(河崎1991)。当時の保育園の立地は半数弱が、農業地、漁業地、林業地であり、自然に恵まれた環境であったことが示されている。しかし、住宅地と、商業地の中にある保育園は、自然が「少しはある」または「ほとんどない」と回答している割合が高かったため、将来このような地域が増えることが懸念されていた。その懸念どおり、日本では都市部への人口集中は続いており、幼児たちの周りからはますます自然が奪われている。日常生活の中では身近に自然の中にいる動物と触れ合えなくなってきた今日、乳幼児施設での動物飼育の意義が高まりつつあると考えられるが、近年は駅型保育所の建設も盛んであり、その環境を考えると必ずしもその重要性が理解されているとは言えないように見える。動物の飼育が乳幼児にとって重要であることを今まで以上に意識し、多くの現場で子どもたちが命と触れ合えるようにする必要があるのではないだろうか。そのため動物飼育が乳幼児に与える影響について言及している研究を、本論では取り上げるが、それに先立ち、幼稚園や保育園における動物飼育の現状についても把握する必要があると考える。まず実態を把握し、次に動物飼育の教育効果について検討する。それと同時に飼育経験効果の研究方法について検討を加え、今後の研究のあり方を探ることも本論の目的である。特に保育現場において有効な教材となり得ると思われるムシと子どもの関わりについて重点を置きながら研究を取り上げ、考察を進める。なおムシ類とは生物学上の分類にはこだわらず、子どもたちが日常「ムシ」と呼んでいる、昆虫類や、カタツムリ、ダンゴムシなどを含めた「小さな無脊椎動物(落合,1997)Jをさすものとする。また検討する論文は、N1 1論文情報ナビゲータによって検索されたものを対象とする。
著者
皆川 弘至
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.71-164, 2004-09-30

1790年から今日に至る凡そ200年余の間に、我が国を訪れた外国人音楽家の公演歴を包括した調査資料は無いに等しい。特に、明治時代以前(1868年以前)、明治時代(1868-1912)、大正時代(1912-1926)の記録は、本稿巻末の参考資料に示した通り、わずかに記録として残されている程度であり、現在は絶版で入手不可能でもある。そこで本稿では、外来クラシック演奏家公演に限定し、新聞記事、刊行物、当時の公演プログラム等を渉猟し、調査・整理・分析・統合を加え、(1)明治時代以前 (2)明治時代 (3)大正時代 (4)昭和時代I<第2次世界大戦前> (5)昭和時代II<戦後> (6)平成元年から現在、の6つに分類した。その主脈を時系列的に概観することにより浮き彫りとなる諸点の中から、特に世界的に著名なオーケストラ14団体の来日公演に絞り、入場料金の推移を、厚生労働省調査による「大卒者初任給額及び対前年増減率の推移」及び総務省調査による「消費者物価総合指数」、「持家の帰属家賃を除く消費者物価総合指数(全国)」と対比し、更にアート・マネージメントの視点から考察を加えた。