著者
堀部 豪 荒木 信夫 小内 愛 井畑 真太朗 山口 智
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.34-40, 2023-02-01 (Released:2023-06-01)
参考文献数
25

【目的】神経サルコイドーシスは両側末梢性顔面神経麻痺の原因疾患の一つであるが、 これに対して鍼治療を実施した報告は我々が調査した限り存在しない。 今回、 両側末梢性顔面神経麻痺を発症、 神経サルコイドーシスが強く疑われた患者に対して鍼治療を実施し良好な経過を認めた症例を報告する。 【症例】73歳男性。 主訴:両側顔面神経麻痺。 現病歴:X年7月24日に右顔面神経麻痺発症、 27日に左顔面神経麻痺発症。 8月2日に当院脳神経内科を受診、 翌日に精査加療のため入院。 精査により神経サルコイドーシスが強く疑われステロイドパルス療法を実施。 8月26日に退院するも両側顔面神経麻痺は残存、 9月13日に当科を受診し鍼治療が開始。 身長159cm。 体重48.6kg。 神経学的所見:バレー徴候陰性、 病的反射陰性、 上下肢の深部腱反射や感覚検査は正常。 MMTは左足関節背屈のみ3。 柳原法:右26点、 左10点。 顔面神経を目標とした鍼通電刺激による表情筋収縮反応は、 右は0.04mAで収縮あり、 左は0.30mAで収縮なし。 右は軽度、 左は重度麻痺と考え、 麻痺の改善・後遺症の抑制を目的に鍼治療を実施。 鍼治療方法:右は聴会 (GB2)・下関 (ST7) へ鍼通電療法。 左は前頭筋、 眼輪筋の上・下、 上唇鼻翼挙筋、 鼻筋、 大・小頬骨筋、 口輪筋、 口角下制筋、 広頚筋へ置鍼治療を10分間実施、 106病日からは同部位に非同期鍼通電療法を実施。 治療頻度:週1-2回。 評価:柳原法。 経過:脳神経内科から処方されたステロイド薬に鍼治療を併用し、 右は170病日に38点、 左は204病日目に38点となった。 【考察・結語】本症例への治療効果は薬物治療と鍼治療の併用効果と言える。 神経サルコイドーシスが疑われた両側顔面神経麻痺患者に対して、 顔面神経の障害程度を考慮した鍼治療を実施した結果良好な治療成績を認め、 鍼治療は治療法の選択肢の一つとなり得る可能性が示唆された。
著者
繁森 有紗
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.841-843, 2017-11-20 (Released:2018-11-20)
参考文献数
5

本研究は,日本農芸化学会2017年度大会(開催地:京都女子大学)の「ジュニア農芸化学会」で発表された.菌根菌は植物と共生する菌類で,陸上植物の80%以上と共生関係にある.本研究は,菌従属栄養植物であるラン科のネジバナ(Spiranthes sinensis)の種子が,その発芽に必要な菌根菌と共生するイネ科のオヒシバ(Eleusine indica)の側で発芽して生育したことを植生調査,発芽試験,菌根菌同定といった実験で提示し,菌根菌を介した植物間コミュニケーションを示したものである.
著者
森木 貞信
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.210-215, 1963-08-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
13

The author reported a case of injury by air-rifleshot. The patient was 4 years old female, who was shot through the left eye ball and posterior ethomoid cell. The bullet was found lodging in the anterior portion of the left maxillary sinus. Ten days later it was removed by means of Caldwell-Luc Operation.The literatures were reviewed with reports of 45 cases of foreign body in maxillary sinuses in Japan. Unfortunately the patient lost her left sight.
著者
石川 創
出版者
日本セトロジー研究会
雑誌
日本セトロジー研究 (ISSN:18813445)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-10, 2014 (Released:2019-12-04)

1970年代中旬から1980年代前半にかけて,今ならば魚市場の祭りなどで盛んに行われている「マグロの解体ショー」と類似した「鯨の解体ショー」と呼ばれるイベントが国内各地で行われていた.すなわち4~5 mの鯨を丸のまま会場に持ち込み,観客の前で解説をしながら専門業者が解体し,生肉を即売する形態のイベントである.しかし,日本の近代捕鯨史に関する様々な書物や資料をあたっても,鯨の解体ショーに関する記述は皆無に近い.このため下関海洋科学アカデミー鯨類研究室では,昭和時代に開催された鯨の解体ショーの実態把握と当時の日本人の生活文化に与えた影響を考察することを研究課題とし,調査を続けている.これまでの調査で,当時鯨の解体ショーを専業で行っていた方から聞き取りを行った他,インターネット情報,一般市民から得られた情報等を基に,地方紙記事検索や現地問い合わせを行い,1975年から1983年までの17件で開催場所と時期をほぼ特定した他,少なくとも6件の開催を確認した.地域は東北地方から関東,中部,中国,近畿,四国,九州地方まで多岐にわたり,スーパーマーケットやデパートの特売,商店街のイベント,農業祭など地域の祭り等で多く開催されていた.業者は注文を受けると,2tトラックに生あるいは解凍したゴンドウクジラ(内臓抜き)を積み,解体者および解体助手(兼運転手)の2名で現地へ向かった.基本的に業者は解体のみ請け負い,鯨肉の販売は主催者側が行った.鯨の解体ショーの特徴は,現地で解体販売した鯨肉の売り上げが主催者の収益となることで,主催者側に集客以上の利点があったこと,当時鯨肉は食べていても実物の「鯨」を見る機会がない人々に大きなインパクトがあったことから,解体前に展示会を行っていたりしたこと,都市部のみならず山間部での事例が多い一方で魚市場や港での開催が確認されなかったことなどが挙げられる.
著者
末田 尚之 梅野 悠太 杉山 喜一 上野 哲子 福崎 勉 中川 尚志 福田 健治 東 登志夫
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.463-467, 2016-02-28 (Released:2016-04-06)
参考文献数
12

内視鏡下鼻内副鼻腔手術の合併症での動脈性出血の責任血管として内頸動脈,前・後篩骨動脈や蝶口蓋動脈は良く知られている。今回,非常にまれと考えられる眼動脈の走行異常に伴う出血を経験した。症例は71歳男性。慢性副鼻腔炎に対する手術操作時に篩骨洞内を走行する眼動脈を損傷した。通常の止血術では出血のコントロールがつかず,血管造影下での塞栓術を行った。この時,3D-造影CTと眼動脈3D-DSAを併施することでより的確に出血部位が同定され塞栓処置を行うことが可能であった。術後,一時的に眼窩内出血と眼瞼浮腫により視力低下を来したが,経過とともに視力は術前の状態にまで回復した。現在,術後9か月が経過するが視力障害等は認めていない。
著者
髙村 康之 平田 勝弘 新口 昇 加藤 雅之 大川 明美 東條 威士 髙口 大樹
出版者
The Japan Society of Applied Electromagnetics and Mechanics
雑誌
日本AEM学会誌 (ISSN:09194452)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.87-93, 2020 (Released:2020-10-13)
参考文献数
13

In this paper, we propose a mathematical model for evaluating the performance of an onboard energy harvester. First, the static analysis results using the finite element method and the measurement results using a prototype are compared, and the parameters are supplemented as table data. In addition, the parameters necessary for a mathematical model are identified using a damping vibration. In order to easily evaluate the harvester, we propose a mathematical model that combines the results of using the finite element method with the identified parameters. Finally, a power generation experiment is conducted, and the experimental results are compared with the simulation results to discuss the validity of the proposed mathematical model.
著者
小杉康 [ほか] 編
出版者
同成社
巻号頁・発行日
2007
著者
田村 征洋 黒岩 祥太
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-19, 2009 (Released:2017-06-27)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

2005年9月11日の衆議院総選挙における自民党圧勝の要因は何か.本論文では『人々にとって最も好ましい公共政策とは何か,その傾向はどのように有権者の政党支持や選挙に於ける投票に影響しているのか』を計量的に位置付けることを考え,政策に対する有権者意識に関する基礎的知見を得る為に,政策全般に対する有権者の選好傾向を調査・分析した.具体的には,政策全般へのコンジョイント分析を用いる.従来の5段階評価などは政党(全体)評価と個々の政策(個別)評価の関係を定量化することが困難であり,「軽い負担で手厚いサービス」という安直な結果に陥りやすい.現実は各政策を個別に評価(投票)するのではなく政党単位(政策の組合せ)で評価する.従って,全体評価から部分(要因)価値を定量化するコンジョイント分析は有効な手法であろう.結果は野党が掲げる理想的な政策(公共事業費の大幅な削減や消費税の現状維持,年金の一元化など)の効用値は高くなるものの政党単位で見た場合(各党の掲げる政策に近い水準を当てはめた場合)では有権者の政策に対する選好傾向にバラツキが生じ,今回の選挙結果を裏付ける有効な知見を得た.