著者
趙 善英 松本 芳之 木村 裕
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-12, 2011

The purpose of this study was to investigate the effects of recalled parental childrearing behaviors on self-esteem in Japanese and South Korean undergraduate students from the viewpoints of behavior analysis. The participants were 201 Japanese students and 206 Korean students. The results showed that the more they recalled that their parents spoke positively about their relatives to others and the more they recalled that they were praised by their parents when they spoke positively about their relatives to others of childhood, the more they were likely in both countries to speak positively about their relatives to others. Furthermore, they were more likely to have high self-esteem. The results also showed that the larger the difference between present self-evaluation and self-evaluation spoken to others, the lower the self-esteem in Japan. On the other hand, the more they had experience of being praised and the more they recalled that they were praised by their parents when they spoke positively about their relatives to others of childhood, the higher the self-esteem in Korea.
著者
山神 達也
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2016年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100147, 2016 (Released:2016-11-09)

Ⅰ.はじめに通勤流動は居住地と従業地との間の就業者の移動のことを指し,通勤流動の完結性が高い空間的範域を通勤圏という。この通勤圏では労働力の再生産がほぼ完結するとともに日常の消費需要がほぼ満たされることから,通勤圏は日常生活圏を代表するものとみなされている(成田1995)。また,行政上の各種サービスは住民の日常生活を踏まえて提供されることが多く,行政機関の多くは管轄区域を設定している。この点に関し,成田(1999)は近畿地方を対象として,通勤流動で設定される日常生活圏と各種行政機関の管轄区域との対応関係を検討し,多くの圏境が日常生活圏と一致することを明らかにした。しかし,成田(1999)以降,平成の大合併が実施されたことから,現在でも同様の関係を見いだせるのか,検討の余地がある。以上を踏まえ,本研究では,和歌山県を対象として,通勤圏と各種行政機関の管轄区域との対応関係を検討したい。Ⅱ.通勤流動と通勤圏の設定図1は,和歌山県下の各市町村からの通勤率が5%を超える通勤流動を地図化したものである。この地図をもとに通勤流動の完結性が高いといえる範囲を定めて通勤圏とし,その中心となる市や町の名前を付した。その結果,和歌山県下で7つの通勤圏を抽出することができた。これらの通勤圏のなかで特徴的なものを整理すると,有田圏は自治体間相互の通勤流動が多く,雇用の明確な中心地のない状況で全体的なまとまりを形成する。また,この圏域の全ての市町から和歌山市への通勤流出がみられ,全体として和歌山圏に従属している。次に橋本圏は,橋本市が周辺から就業者を集める一方,橋本市も含めて全体的に大阪府への通勤流出が多い。以上の詳細は山神(2016)を参照されたい。Ⅲ.通勤圏と行政上の管轄区域との関係Ⅱで確認した通勤圏は各種行政機関の管轄区域とどう対応しているのであろうか。ここでは,和歌山県における二次医療圏,およびハローワーク和歌山の管轄区域との対応を検討する。二次医療圏は広域的・専門的な保健医療サービスを提供するための圏域であり,生活圏をはじめとする諸条件を考慮して設定される(和歌山県『和歌山県保健医療計画』2013年)。また,ハローワークは就職支援・雇用促進を目指す機関であり,通勤流動そのものと密接にかかわるものである。図2は,通勤圏(図1)・二次医療圏・ハローワーク管轄区域の境界がどれだけ一致しているのかを示したものである。二次医療圏では,岩出市と紀の川市で那賀保健医療圏が設定される点と新宮保健医療圏に古座川町と串本町が含まれる点に通勤圏との違いが現れる。一方,ハローワーク管轄区域では,海南市と紀美野町で「かいなん」が設定される点と「串本」にすさみ町が含まれる点に通勤圏との違いが現れる。また,北山村は,通勤圏としては三重県とのつながりが強いが,二次医療圏・ハローワーク管轄区域のいずれにおいても新宮の管轄区域に含まれる。このように,通勤圏・二次医療圏・ハローワーク管轄区域の間には若干の違いが認められるものの,基本的に3つの境界が重なる部分が多い。また,境界が重ならない地域として和歌山市周辺が挙げられるが,これは和歌山市の通勤圏を細分する形で管轄区域が設定されていることによるもので,通勤圏の境界をまたぐような管轄区域の設定はなされていない。したがって,通勤圏は,平成の大合併後も日常生活圏を代表するものとして,各種行政機関の管轄区域との対応関係も強いといえる。発表当日は他の行政機関の管轄区域を複数取り上げ,それらも検討の対象とした結果を報告したい。
著者
塚本 學
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.273-295, 1991-11-11

文化財ということばは,文化財保護法の制定(1950)以前にもあったが,その普及は,法の制定後であった。はじめその内容は,芸術的価値を中心に理解され,狭義の文化史への歴史研究者の関心の低さも一因となって,歴史研究者の文化財への関心は,一般的には弱かった。だが,考古・民俗資料を中心に,芸術的価値を離れて,過去の人生の痕跡を保存すべき財とみなす感覚が成長し,一方では,経済成長の過程での開発の進行によって失われるものの大きさに対して,その保存を求める運動も伸びてきた。また,文化を,学問・芸術等の狭義の領域のものとだけみるのではなく,生業や衣食住等をふくめた概念として理解する機運も高まった。このなかで,文献以外の史料への重視の姿勢を強めた歴史学の分野でも,民衆の日常生活の歴史への関心とあいまって,文化財保存運動に大きな努力を傾けるうごきが出ている。文化財保護法での文化財定義も,芸術的価値からだけでなく,こうした広義の文化遺産の方向に動いていっている。文化財の概念と,歴史・考古・民俗等の諸学での研究のための素材,すなわち史料の概念とは次第に接近し,そのことが諸学の共同の場を考える上でも役割を演ずるかにみえる。だが,文化財を,継承さるべき文化の産物とだけみなすなら,反省の学としての歴史学とは両立できない。過去の人生は,現代に,よいものだけを残したわけではない。たとえば戦争の痕跡のように,私たちが継承すべきではないが,忘れるべきでないものは少なくない。すぐれた芸術品と理解される作品のなかにも,ある時代の屈辱の歴史が秘められていたり,新しい芸術創造の試みを抑圧する役割を担った例があること等を思いあわせて,継承さるべきでない文化の所産もまた文化財であるというみかたが必要である。歴史博物館の展示でも,この点が考えられねばならない。
著者
渡邉 英幸
出版者
愛知教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の成果概要は以下の通り。まず里耶秦簡の「更名扁書」(公的用語の改定リスト)を読解することで、戦国秦から統一秦にかけての国制変革を検討し、秦の官職名における「邦」概念の廃止の背後にあった国制上の変革を明らかにし、また始皇帝期の避諱に関する条文が、始皇帝の父母の名である「楚」「生」を避けるものであったと考えられることを発見した。次に、戦国末の秦における国境を越える人の移動と帰属の諸相を解明した。さらに、戦国秦から統一秦にかけての畿内領域の呼称の展開と「邦」概念との関係を論じた。
著者
伊達 聖伸
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.531-554, 2007-12

フランスの政教関係を定めた「ライシテ」の原理は、いわゆる近代社会の基本的原則たる政教分離を最も徹底させたものだとしばしば見なされている。それを裏づけるように、フランスのライシテは、「アメリカの市民宗教」-教会から切り離されたユダヤ=キリスト教の文化的要素が政治の領域に明白に見て取れる-とは構造を異にすると分析されている。だが、この差異から、フランスでは政治の領域に宗教的次元が存在しないという結論が導けるわけではない。事実、研究者のあいだでは、ライシテ(およびこの原理に即した近代的な価値観)を市民宗教などのタームでとらえることの妥当性が問われている。本稿では、彼らの議論の一部を紹介しながら、市民宗教の五類型を提示し、ライシテがいかなる条件において、どのような意味での「市民宗教」に近づきうるのかを、ライシテの歴史の三つの重要な節目-フランス革命期、第三共和政初期、現代-におけるいくつかの具体例を通して検討する。
著者
矢野 裕子
出版者
日本女性学研究会
雑誌
女性学年報 (ISSN:03895203)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.40-56, 2018 (Released:2019-01-22)
参考文献数
34

本稿では、マクロ社会の権力構造とミクロ組織の権力構造との比較を通して、同じ権力構造が発生していないかを検討する。ミクロ組織の中でも、自主的に組織する集団の組織構造に目を向け、マクロ社会の作るヒエラルキー構造とは違う組織構造になっていると自認してきたフェミニズム組織の一つである日本女性学研究会を題材として取り上げる。 分析方法は、目に見える権力は①組織構造に、目に見えない権力は②人間関係に現れるであろうことを仮定し、①組織構造と②人間関係の大きく二つに分けて該当する部分について、日本女性学研究会のニューズレター40年分と、運営のルールから抽出し、マクロ社会の権力構造と比較検討する。 その結果、第1に、代表がいなくとも、組織業務は明細化しているなど、マクロ社会の組織と同じ方法で組織を運営していること、第2に、組織選択をする運営会の会話の仕方において、ディシプリンの権力といえる「割り込み」や「沈黙」「支持作業の欠如」などに対しての議論がないこと、第3に、組織の意思決定の方法についての議論がないこと、個人の意志決定前提を操作できる「権威」に対してルール作りで対処しているが明らかになった。マクロ社会の権力構造がミクロ社会の権力構造の土壌になっているという見方に対して、ミクロ社会を作っている個々人がマクロ社会の権力構造をつくっているという見方もできると考察した。フェミニズムにおいて、組織を作る女性たち個々人が、協調して秩序を作り上げてしまうことに気づき、秩序を作る土台になる自己の権威主義や権力に迎合するイデオロギーに気付くことが、実践面で限界を乗り越えるための第1歩になるかもしれない。
著者
服部茂一 著
出版者
坂本書店
巻号頁・発行日
1925
出版者
労務行政研究所
巻号頁・発行日
vol.48(2), no.565, 1996-02
著者
山口 健太郎
出版者
京都大学文学部科学哲学科学史研究室
雑誌
科学哲学科学史研究 (ISSN:18839177)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.43-59, 2008-01-31

Within the framework of statistics, the goodness of statistical models is evaluated by criteria for model selection, such as the Akaike and Bayesian information criteria. Each information criteria is based on likelihoodist’s or Bayesian conception. Here, I analyse the inferences used in the derivation of these criteria, and argue that the goodness, evaluated by the Akaike or Bayesian information criteria reflects frequentist’s conception, which is not explained by likelihoodist or Bayesian.
著者
松尾 衛
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2008

資料本体の本タイトル (誤植) : Quantum kinetic theory of the chiral condensate and meson exciations
著者
太田 若菜 櫻田 大也 小林 江梨子 平舩 寛彦 千葉 健史 富田 隆 工藤 賢三 佐藤 信範
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.95-102, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
14

後発医薬品への 「変更不可処方箋」 について調査を行った. 2017年1~3月の任意の1週間における, 岩手県薬剤師会に所属する233店舗の薬局で受け付けた処方箋75,513枚のうち, 変更不可処方箋は7,926枚 (10.50%) であった. 変更不可の指示件数は合計17,536件であり, 当該医薬品は1,714品目であった. そのうち後発医薬品のある先発医薬品が52.70%, 後発医薬品の銘柄指定が14.86%であった. 薬効分類別にみると, 循環器官用薬, 中枢神経系用薬, 消化器官用薬が上位を占めた. 変更不可の理由としては, “患者の希望” が最も多く, “医師の意向”, “薬剤変更により疾病コントロール不良・副作用の発現” などが続いた. 後発医薬品のさらなる使用推進には, 変更不可処方箋を減少させていくことが必要である. そのためには, 後発医薬品の品質向上や適切な情報提供だけでなく, 処方箋発行システムや診療報酬の面においても対策が必要である. 今後, 複数の地域で一定期間の処方箋抽出調査などを行い, 変更不可処方箋が後発医薬品の使用推進に与える影響についてさらに検討していく必要があると考えられる.