著者
鮫島 宗一郎 河南 学 平田 好洋
出版者
The Ceramic Society of Japan
雑誌
Journal of the Ceramic Society of Japan (日本セラミックス協会学術論文誌) (ISSN:09145400)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1283, pp.597-600, 2002-07-01 (Released:2010-08-06)
参考文献数
20
被引用文献数
38 51

The thermal expansion of CeO2 and rare-earth-doped ceria (Ce0.8R0.2O1.9, R: Yb, Y, Gd, Sm, Nd and La) was measured in the temperature range from 298 to 1473 K. The coefficients of thermal expansion (CTE) were determined by differentiating the thermal expansion expressed by a polynominal equation of temperature with respect to temperature. The CTE (α1) for Ce0.8R0.2O1.9 was in the range from 10×10-6 to 14×10-6K-1 and increased nonlinearly with increasing temperature. This result was explained by the asymmetric curve of potential energy based on the lattice energy theory. The kinds of dopant gave small effect on the α1 of rare-earth-doped ceria. On the other hand, the average CTE for CeO2 and rare-earth-doped ceria (12.0-12.5×10-6K-1), determined from a linear approximation of thermal expansion with respect to temperature at 298-1273 K, was lower than the α1 and close to the previously reported values.
著者
大野 佳子 三瓶 舞紀子 長谷川 文香 松隈 誠矢 半谷 まゆみ 森崎 菜穂
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.135-148, 2023-02-15 (Released:2023-03-02)
参考文献数
34

目的 コロナ禍の学校では感染対策に伴い行動が制限されるなか,こどもはどのような意見を持っているのか,そのテキスト(語られた言葉)の構造および保護者の心理・社会経済状況による特徴を明らかにすることを目的とした。方法 2020年9~10月に実施されたWeb調査「コロナ×こどもアンケート第3回調査」の回答者(小・中・高校生相当の男女)2,111人のうち,自由記述による有効回答が得られた1,140人のテキストデータを対象とした。質問内容は「いま気になることや言いたいこと[本音]」および「どのようにすればいいと思いますか?誰がどのようなことをしてくれたらいいと思いますか?[実行案]」であった。保護者の属性には年齢,仕事の有無,心理的苦痛尺度(K6),経済状態等を保護者から情報収集し,分析にはテキストマイニングソフトによる頻度分析,特徴分析,ことばネットワーク(単語関連図)作成を行った。結果 [本音]と[実行案]のテキストは総行数(回答者数)531,1,017であり,平均行長(文字数)21.5,31.5であった。係り受け頻度分析では[実行案]が「話-聞く」等であり,[本音]では「行事-無くなる」「マスク-外す」等が多かった。ことばネットワークでは[実行案]で最もノードの大きい「私」に「動く」「話しかける」等が強く共起のネットワークを形成していた一方,[本音]では「COVID-19」に「終息+?」「無くなる+したい」等が強く共起していた。保護者の属性による特徴的な単語(補完類似度)は,[実行案]では仕事あり群で「話(35.9)」,K6良い群で「話(26.6)」であり,K6不良群で「分かる+ない(23.5)」,経済状況悪群で「分かる+ない(17.3)」であった。一方,[本音]では仕事あり群および精神的健康度の高い群で「COVID-19(28.1,27.5)」であった。結論 こどもの本音ではCOVID-19に対する不快感や怖れを持っている一方で,実行案を問うと「私」が主体となって動き,他者に話しかけると同時に,誰かに話を聞いてもらいたい意思のあることが明らかになった。保護者の心理的苦痛と経済状況が良くないこどもの実行案の特徴として“分からない”が多かった。
著者
古矢 篤史
出版者
日本近代文学会 関西支部
雑誌
関西近代文学 (ISSN:27584097)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.22-42, 2023-03-20 (Released:2023-03-24)

本稿では、日中開戦期の婦人雑誌『主婦之友』と、これに掲載された横光利一の「春園」をとりあげ、この時期に形成された「銃後」の言説のなかで文学がどのように位置づけられるのかを考察する。従来、「春園」は複数の男性登場人物が一人の女性を「教育」していくピグマリオン物語の構造を有することが指摘され、男性に支配され隷属する時局のジェンダー規範に沿うものとして捉えられてきた。しかし、「銃後」は女性が旧来の家族制度から解き放たれうる社会参加の契機ともなったのであり、その複雑な言説構造を読み解かねばならない。「春園」が複数のジェンダー規範が錯綜し衝突しあうテクストであることを明らかにする。
著者
山根 純佳
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.433-449, 2022 (Released:2023-03-31)
参考文献数
47

「女性職」であった施設介護の現場では,男性の参入と並行して男性が上位の職位に就く男性優位が再生産されている.本稿では,従来の「ケア労働=女性に適した労働」が「男性=理想的なケア労働者」というジェンダーに置き換わり男性の社会経済的優位が再生産されるメカニズムを,市場化された介護施設のマネジメントや実践における「長時間労働する身体」という「ヘゲモニックな男性性」の作用をとおして考察する. 介護保険制度下の「個別ケア」では,限られた人手で利用者の生活ニーズを支えるという家庭的ケアの再演が求められているが,そのケア実践は長時間労働する「献身的専門職」に依存している.この「献身的専門職」を前提にしたマネジメントの下では,「長時間労働する身体」というヘゲモニックな男性性を資源に男性が管理的地位を獲得する.一方夜勤専従を配置することで24時間型の献身的専門職モデルの転換を図った施設では,「長時間労働」と介護職の「有能さ」は結びつかず,長時間働かない女性の能力も評価されキャリアアップも保障されている.このようにジェンダーを再生産しないローカルな実践が多くの職場に広がれば社会全体の男性優位は変更されうる.しかし,福祉の市場化は,女性のケアの専門性や能力を活用しつつも,男性よりも低い地位や賃金にとどめる性別分離を促進しており,女性のケア労働の評価というフェミニズムの目標を後退させたといえる.
著者
本間 敏夫
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.263-267, 1957 (Released:2008-04-04)
参考文献数
11
被引用文献数
6 9

The characteristics of Umklapp transformation in Fe-Ni alloy containing 31%Ni were clarified through various experiments. (1) The Umklapp process is characterized by a burst phenomenon. (2) Great kinetic energy accompanied by the umklapp process can make a martensite leaf propagate into a temperature range higher than the usual γ→α transformation temperature in a single crystal with temperature gradient. (3) The 1st burst temperature is scattered statistically in a wide range of temperature. (4) The transformation amounts produced by the 1st burst increases with the degree of supercooling.
著者
Yichen PENG Chunqi ZHAO Haoran XIE Tsukasa FUKUSATO Kazunori MIYATA Takeo IGARASHI
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE Transactions on Information and Systems (ISSN:09168532)
巻号頁・発行日
vol.E106.D, no.4, pp.459-468, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
28
被引用文献数
2

Animating 3D characters using motion capture data requires basic expertise and manual labor. To support the creativity of animation design and make it easier for common users, we present a sketch-based interface DualMotion, with rough sketches as input for designing daily-life animations of characters, such as walking and jumping. Our approach enables to combine global motions of lower limbs and the local motion of the upper limbs in a database by utilizing a two-stage design strategy. Users are allowed to design a motion by starting with drawing a rough trajectory of a body/lower limb movement in the global design stage. The upper limb motions are then designed by drawing several more relative motion trajectories in the local design stage. We conduct a user study and verify the effectiveness and convenience of the proposed system in creative activities.
著者
野村 亮太 石田 聖子 福島 裕人 森田 亜矢子 松阪 崇久 白井 真理子
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.111-114, 2022 (Released:2023-02-27)

笑いに関する研究は世界中でおこなわれています。本欄では、英語で発表された笑い学の最近の研究成果を紹介しています。笑いに関する研究は、医学、心理学、社会学、哲学、文学、言語学、動物行動学など、多様な学問領域の専門雑誌に掲載されています。幅広い分野で展開されている世界の研究動向について共有することで、国内での笑い学の研究がさらに発展することにつながればと考えています。 本号では計6本の研究論文についての紹介記事を掲載することになりました。記事の執筆には、6名の研究者にご協力いただきました。どうもありがとうございました。
著者
葛 承雍 市元 塁
雑誌
美術研究 = The bijutsu kenkyu : the journal of art studies
巻号頁・発行日
no.427, pp.1-14, 2019-03-28

This paper presents an in-depth analysis of three Sui Dynasty camel figurines recently excavated at Xi'an, China. The so called Drunken Fulin motif, previously known only in historical anecdotes, is clearly depicted on the bags carried by these three camels. These images show the figure of Dionysus supported by two attendants, matching the traditional depiction of the god of wine in Greco-Roman mythology. The entire design consisted of an arcade, amphora-rhyton, ivy vining patterns with warrior figures with heads held high appearing next to these designs. All of these elements were new and stand as definite evidence of the introduction of the worship of the god of wine in ancient China, having spanned the tremendous distance from the classical Mediterranean region. Reference to the Greco-Roman and Byzantine art examples discovered in China in the past century further proves the unique route of the introduction and acceptance of these typical symbols of Hellenistic mythology in China, and it is hoped that this new archaeological study will further benefit scholars of the history of the cultural communication between China and the West via the Silk Road.
著者
杉森 和加奈 中川 和彦 福原 哲治 赤本 伸太郎 小西 祐輔
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.1005-1008, 2022 (Released:2022-12-31)
参考文献数
12

症例は91歳,女性.3週間前より右乳房の疼痛・腫脹が出現し,近医を受診.抗菌薬投与にて改善が見られないため,当院を紹介受診となった.右乳房の腫脹と乳輪部発赤を認め,明らかな腫瘤は触知しなかった.マンモグラフィは右乳房の濃度上昇と皮膚肥厚を認め,乳房超音波では皮膚の肥厚と脂肪織の浮腫を認め,乳腺組織は不明瞭であった.炎症性乳癌の鑑別のために針生検を施行したが,悪性所見は認めなかった.心不全を疑う所見がなかったため,利尿剤を使用せず五苓散を開始した.緩徐ではあるが浮腫の改善を認め,投与後12カ月で左右差が見られなくなった.乳房浮腫に対し五苓散を使用し有効であった症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
著者
亀井 美玲 菊池 暢之 中城 正夫 高橋 良彰 秋月 真一郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.950-954, 2015 (Released:2015-11-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例は93歳,女性.呼吸困難感とめまいを主訴に来院し,心不全の診断で入院となった.入院時CTで左乳房腫大を指摘されたため当科紹介となった.視診では著明な左乳房腫大があり,触診では明らかな腫瘤は触知せず,pitting edemaを認めた.圧痛は認めなかった.超音波検査では皮膚皮下組織の肥厚を認め,C領域には良性病変とみられる低エコー域を認めるのみであった.心不全治療開始後6日目には心不全症状は改善したが,乳房腫大は改善なく,さらに発赤も認めた.炎症性乳癌を疑い,針生検と皮膚生検とを施行した.病理学的には悪性所見は認めず,真皮に毛細血管の拡張とリンパ球の軽度浸潤を認めるのみであった.心不全に伴う乳房浮腫と診断し心不全治療を継続したところ,2カ月経過した段階で左乳房浮腫は軽快した.炎症性乳癌との鑑別が困難であった心不全に伴う乳房腫大の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
著者
森島 啓子
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.265-274, 1975-10-31 (Released:2008-05-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1

ダリスグラスはアポミクシスを行う多年草で,わが国には牧草として導入される以前から雑草として定着している。本実験はこの種の持つ雑草性,すなわち撹乱環境に対する適応性の機構を知るために行なったものである。熊本・宮崎・静岡の各県で採集した20の自生集団を用いて,1)各種形質の変異,2)ふみつけ反応性,3)スズメノヒエおよびメヒシバとの競争を調査した。得られた主な結果は次のとおりである。 有性生殖する他の種に比べて遺伝的変異は著しく少なかった。しかし集団間および集団内に遺伝的変異が存在することが確められた。さらに,各地区の分布中心の集団より周辺の集団の方が遺伝的変異を多く含む傾向が見出された。このことはまれに起る有性生殖によって遺伝的変異を増した集団が新しい生育地に移住したことを示唆する。また,ふみつけに対する抵抗性を持つこと,表現型可変性が大きいこと,他種が占有している場所では幼植物は死亡しやすいが,混みあっていない場所では旺盛に生長し他種に勝つことなどが明らかになった。 ダリスグラスの雑草性は,ストレス抵抗性,競争力,大きい表現型可変性,無性的な種子による移住力に基づいているのであろう。その雑草性を発現する遺伝子型はアポミクシスによってそのまま繁殖すると考えれる。
著者
土井 隆一郎 阿部 由督 伊藤 孝 中村 直人 松林 潤 余語 覚匡 鬼頭 祥悟 浦 克明 豊田 英治 平良 薫 大江 秀明 川島 和彦 石上 俊一
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.256-261, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

膵神経内分泌腫瘍(pNET)は神経内分泌組織にある腸クロム親和性細胞由来の腫瘍であるとされる。実際に遭遇する腫瘍の種類は多く,腫瘍ごとに症状が異なるため診断方法もさまざまである。しかしながらpNETと診断された場合はすべて外科切除の適応と考えるべきである。インスリノーマ以外の腫瘍は転移・再発のリスクが極めて高く,リンパ節郭清が必要である。肝転移を伴っている場合は予後不良であるが,一方,切除によるメリットがあると判断される場合は肝切除の適応がある。外科切除のみで根治できない症例が多く,集学的治療を考慮しなければならない。pNETに対する分子標的治療薬を組み込んだ治療体系の整理が必要である。