著者
土井 啓行 本間 義治 園山 貴之 石橋 敏章 宮澤 正之 米山 洋一 酒井 治己
出版者
水産大学校
雑誌
水産大学校研究報告 (ISSN:03709361)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.87-89, 2014-03

日本沿岸には,フグ目ハリセンボン科は4属7種が生息するとされている。そのうち,メイタイシガキフグ属Cyclichthysは,棘長が眼径より短いこと,棘は不動で棘の断面は三角形から扁平状であること,尾柄部に棘がないこと,尾鰭軟条数が通常9本であること,及び各鰭に斑紋がないことなどで他属と区別されるが,日本沿岸からは世界全3種のうちメイタイシガキフグC. orbiculalis(Bloch)およびイガグリフグC. spilostylus(Leis and Randall)の2種が記録されている。これら2種は,前種が頭部に3根の棘を持つのに対し後種の頭部棘は4根であること,前種では体部背面と側面に黒斑が散在することに対し後種では腹面の棘の根元に瞳孔大の黒点があることで識別される。両種ともおもにインド・西部太平洋の熱帯・温帯の珊瑚礁や岩礁域に生息し,幼魚期には外洋で生活する。なお,最近地中海からも記録されているが,紅海からスエズ運河を通じての侵入者と見なされている。日本での採集例は少なく,メイタイシガキフグが佐渡島並びに伊豆半島以南,イガグリフグが富山湾並びに高知県以南より数例報告されていたのみであった。このたび,そのうちの1種イガグリフグ2個体が新潟県佐渡島地先で採捕され,下関市立しものせき水族館において飼育する機会を得た。これは日本沿岸からの稀な採捕例でもあり,しかも本種の北限記録と考えられるので報告する。
著者
頭金 正博
出版者
一般社団法人 日本臨床化学会
雑誌
臨床化学 (ISSN:03705633)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.136-143, 2006-04-28 (Released:2012-11-27)
参考文献数
34

コレステロールから生合成される胆汁酸は, 胆汁の主な構成成分として小腸での脂質の吸収を促進するなどの界面活性剤として生理機能を発揮していると考えられてきたが, 1999年になって胆汁酸が核内受容体の一種であるファルネソイドX受容体 (FXR) のリガンドとして機能することが明らかになった。この研究を契機として, 胆汁酸の新規機能に関する研究が大きく展開し, 胆汁酸はFXRを介して胆汁酸生合成の律速酵素であるチトクロムP450 7Alの発現を制御しているのみならず, 胆汁酸の腸管循環を制御している胆汁酸トランスポーター等の発現を制御していることが明らかになった。また, 最近ではFXRを活性化することによって, 糖尿病マウスでの高血糖や高脂血症を改善することが報告され, 胆汁酸は胆汁酸生合成や腸管循環の制御のみならず脂質代謝や糖代謝も制御している可能性が指摘されている。
著者
立松 正幹 澤崎 正明 前川 友哉 上田 順一
出版者
一般社団法人 エネルギー・資源学会
雑誌
エネルギー・資源学会論文誌 (ISSN:24330531)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.351-356, 2021 (Released:2021-09-10)
参考文献数
8

Recently, many renewable energy sources are connected to power systems. Renewable energy sources such as PV and wind connected to power systems via inverters are called inverter sources. When the percentage of inverter sources increases, the percentage of synchronous generators such as hydro, thermal and nuclear decreases. When many inverter sources are connected to power systems with small capacity which are not synchronously connected to other power systems, the percentage of synchronous generators significantly decreases. Therefore, influences of power system characteristics such as synchronizing power decrease, power system inertia decrease and short circuit capacity decrease are concerned. And influences of power system stability such as transient stability decrease, frequency and voltage fluctuation increase and distortion level increase are also concerned. Previously, power system inertia estimation and power system stability monitoring were done by off-line. Therefore, on-line power system inertia estimation and power system stability monitoring system is newly developed for the purpose of precise understandings of Japanese Eastern (50Hz) and Western (60Hz) power systems.
著者
高橋 勇夫 間野 静雄
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-12, 2022-07-20 (Released:2022-10-05)
参考文献数
37
被引用文献数
1

天然アユの流程分布,とくに遡上上限がどのように決まるのかを明らかにするために,アユの遡上を阻害するような構造物が無く,かつ,種苗放流を 2013 年から停止した北海道朱太川において,2013 年~2021 年の 7 月下旬~ 8 月上旬に 12 定点で潜水目視による生息密度調査を行った.また,2014 年には下流,中流,上流の 3 区間からアユを採集し,52 個体の Sr/Ca 比から河川への加入時期を推定したうえで,加入時期と定着した位置の関係についても検討した.アユの推定生息個体数は 4.6~132 万尾と 9 年間で 30 倍近い差があった.各年の平均密度は 0.09 尾 /m2 ~2.61 尾 /m2 で,9 年間の平均値は 0.82 尾 /m2 であった.アユの生息範囲の上限は河口から 21~37 km の間で,また,生息密度 0.3 尾 /m2(全個体が十分に摂餌できる密度)の上限は 4 ~37 km の間で変動した.河口から生息範囲の上限までの距離および 0.3 尾 /m2 の上限までの距離ともにその年の生息数に応じて上下した.流程分布の変動は,密度を調整することにより種内競合を緩和することに寄与していると考えられた.耳石の Sr/Ca 比から河川へ加入してからの期間を推定したところ,早期に河川に加入したアユは上流に多いものの,下流部に定着した個体もいた.一方,後期に加入した個体は下流に多いものの,上流まで遡上した個体も認められた.これらのことは,早期に河川に加入した個体が後期に加入した個体に押し出されるように単純に上流へと移動しているのではないことを示唆する.さらに,推定生息数が最も少なかった 2018 年の分布上限は平年よりも 10~15 km も下流側にあった.これらより,遡上中のアユは充分な摂餌条件が整えば,移動にかかるコストを最小限に抑える行動を取っていると推察される.
著者
山本 哲
出版者
富士学会
雑誌
富士学研究 (ISSN:24330310)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.61-68, 2020-03-25 (Released:2022-12-28)
出版者
家族史研究会

特集 高校日本史教科書の女たちII写真・緒方貞代さんと近藤真柄氏貞代さん! 近藤真柄お隣り同志(復刻) 仲曽根貞代ここにも芽が 山村ふさ日本史教科書の女たち 中山みき/光永洋子 平塚らいてう/高木富代子 出口なお/宮山孝子 長沼智恵子/緒方郁 津田梅子/瀬上拡子 伊藤野枝/小柴雅子 岸田俊子/犬童美子 松井須磨子/林葉子 景山英子/伴栄子 奥むめお/立山ちづ子 矢島楫子/緒方和子 山川菊栄/緒方和子 樋口一葉/中山そみ 市川房江/辻照子 与謝野晶子/橘宏子新しい女・より新しい女 中山そみ高校日本史教科書のなかの近代の女たち(一覧表)母たち 6 R・S・ブリフォー、訳・石原通子
著者
椎名 英貴
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.203-208, 2019 (Released:2020-04-28)
参考文献数
13

重症脳性麻痺児の多くは摂食嚥下に何らかの困難さを有している。摂食嚥下機能の到達レベルは児の重症度により規定され,経口摂取が困難な児の割合も多い。また,発達期の障害であることから援助は長期にわたり,年代により焦点となる問題は変化する。摂食嚥下リハビリテーションの基盤は適切な予後予測と医学的管理にある。リハビリテーションの実際では食事姿勢の設定,食物形態の調整,口腔運動機能へのアプローチが柱となる。異常緊張の低減と食事のための姿勢設定は食事援助の中でも大きな領域を占める。口腔運動機能の過敏性,緊張性咬反射,舌突出,などの神経学的な異常性に対しては症状に合わせた対応を行う。療法士が行う姿勢のコントロール,口腔器官への対応方法を家庭の中で実現するための指導が必要である。実現のためには言語聴覚士のみならず理学・作業療法士との協働,さらには座位保持装置など環境整備の必要性も高い。
著者
上地 広昭 島崎 崇史 竹中 晃二
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
Journal of Health Psychology Research (ISSN:21898790)
巻号頁・発行日
pp.190106138, (Released:2020-06-23)
参考文献数
26

This study was designed to examine the effects of threat appeal in preventing obesity and non-communicable disease among university students. Participants were Japanese university students (N=395). An analysis of covariance (ANCOVA) examined differences in cognitive variables (threat appraisal, coping appraisal, protective motivation, usefulness, and acceptability) for protecting against threat appeals under threat information vs. threat & coping information conditions. Also, covariance structure analysis was conducted to identify models in which threat appeals promoted protective motivation by enhancing cognitive variables under each condition. The results indicated that usefulness and acceptability scores were significantly different between the two conditions with significantly higher scores for participants in the threat & coping information condition. Moreover, both threat appraisal and coping appraisal positively influenced the usefulness and acceptability of the message in the threat & coping information condition, whereas coping appraisal influenced only the usefulness and acceptability of the message in the threat information condition. Overall, these results suggest the possibility that both types of threat appeal could promote protective motivation.
著者
大橋 正洋
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.194-199, 2002 (Released:2006-04-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

この数年,高次脳機能障害は,メディアや行政の用語として用いられるようになった。しかしながら,医学領域ではこの語の定義について見解は統一されていない。リハビリテーション医学の分野では,20年以上も以前から,診断や治療についての試みが行われてきた対象である。しかし,主な関心は脳血管障害による失語・失行・失認といった神経学的症候に絞られていた。この数年,救急医療の進歩によって,脳外傷などによるびまん性脳損傷の後,救命された人々がリハビリテーションの現場に来るようになった。これらの人々は,認知,情緒,心理社会的障害などを持つ傾向があり,これらの障害は評価や対応が困難である。高次脳機能障害を持つ人々を支援するためのシステムは,量的にも質的にも十分ではない。1998年,当事者組織が設立され,広報活動を行った結果,この用語が急速に注目をあびるようになった。