著者
飯村 慈朗 今野 渉 小泉 さおり 安村 佐都紀 浅井 正嗣 平林 秀樹 春名 眞一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.701-704, 2008 (Released:2010-02-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

サルコイドーシスは, 病理組織学的検査所見から命名された原因不明の多臓器肉芽腫性疾患である. 今回われわれは診断に至るまでに3回の生検を要し, 最終的に喉頭サルコイドーシスと診断した症例を経験したため報告する.サルコイドーシスが喉頭病変のみの場合には検査所見は正常なことが多く, 病理組織学的所見で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の確認が重要となる. 1回目, 2回目の喉頭生検では非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が認められなかったが, 3回目の生検にて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫と巨細胞を認めた. 全身検索を施行し最終的に喉頭サルコイドーシスと診断した.喉頭所見として黄白色のびまん性腫脹病変を認める場合, 喉頭サルコイドーシスの存在も念頭に置く必要があると考える.
著者
四宮 啓
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.44-51, 2020 (Released:2022-11-01)

裁判員制度が施行10年を迎えた現在、制度の生命である「裁判員の主体的・実質的参加」はどこまで実現しているのか、また今後さらに一層実現させていくためには、「法と心理学」には何が期待されるのか。 「裁判員の主体的・実質的意見形成」を可能にする公判審理の在り方は施行10年で大きく改革されたものの、新たな課題も見えてきた。1つは被害者参加制度の裁判員の意見形成に与える影響であり、「感情と判断」に関するテーマは、「法と心理学」の今後の重要な研究分野となるであろう。「裁判員の主体的・実質的意見表明」を可能にする評議については、施行されずに埋もれている裁判員4名・裁判官1名の裁判体の「法と心理学」による研究に期待する。この研究は事件にかかわらず重装備化している裁判員裁判の実務運営と国民の負担にも大きな影響を与えるのではないか。 さらには「評議内容」に関する施行10年の懸念は、事実認定、量刑判断ともに専門家による判断枠組みが支配的になっていないか、すなわち「判断枠組みの専門化」である。この現象は、専門家である裁判官の判断プロセスもまた心理学的研究の対象とすべきであることを示しているのではないか。さらには国民は参加に二の足を踏んでおり、国民に参加を促す情報の内容とその伝達方法もまた10年の課題として浮かび上がっている。 裁判員制度施行10年の経験は、これからも心理学と法律学との協働が一層必要であることを物語っている。
著者
小出 昌秋 渡邊 一正 神崎 智仁 植田 ちひろ 岡本 卓也 古田 晃久 森 善樹 中嶌 八隅 金子 幸栄 井上 奈緒 村上 知隆
雑誌
第51回日本小児循環器学会総会・学術集会
巻号頁・発行日
2015-04-21

【背景】成人先天性心疾患に心房細動(AF)を合併するケースが少なくない。AFは放置すれば脳梗塞のリスクとなるため、可能であれば積極的に治療することが望ましく、当院では以前より積極的にメイズ手術を行っている。【目的】当院におけるメイズ手術の成績について報告する。【対象と方法】2000年1月~2014年12月に経験した成人先天性心疾患手術88例(平均年齢40.5±17.2歳)を対象とし後方視的に検討。メイズ手術はCox Maze IIIに準じてCryoとRFにて行った。【結果】88例中21例(23.9%)に術前AF(慢性または発作性)を合併しており、AF合併例の平均年齢は55.7±15.6歳でAF非合併例の35.7±14.8歳と比較して有意に高齢であった。AFは慢性12例、発作性9例であった。AF合併例の心内病変はASD 6例、ASD+TR±MR4例、VSD1例、術後残存ASD1例、AVSD術後MR3例、VSD術後TR1例、TOF術後PR±MR2例、PPA術後1例、MR1例。全例で右房拡大を認め、左房径も43.9±10.5mmと拡大傾向がみられた。21例中初期の2例とAtrial Standstillであった1例を除く18例に対してメイズ手術を行った。手術死亡なし。メイズ術後観察期間平均36.0ヶ月(1~101ヶ月)で、1例で術直後からATが持続して術後5ヶ月でカテーテルアブレーションを行い洞調律に復帰。1例で術直後洞不全ありAAI PM植込み施行。1例で術後7年目に心房粗動となりカテーテルアブレーションを計画中。残りの15例では洞調律を維持しており発作性AFの出現もなかった。AF症例でメイズ手術を行わなかった3例のうち1例が術後遠隔期に脳梗塞を発症し死亡した。【考察】成人先天性心疾患手術症例の約1/4にAFを合併しており、メイズ手術を行った全例でAFは消失した。術後上室性不整脈に対してはカテーテルアブレーションやペースメーカーで対処することが有効であった。AFを合併した成人先天性心疾患症例に対するメイズ手術の成績は良好であり、積極的に行うべきであると考えられた。
著者
藤田 政博
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.37-43, 2020 (Released:2022-11-01)

本稿では、法と心理学会20周年記念シンポジウムで、裁判員制度に関する心理学的レビューの部分の報告をお届けする。最初にこの報告の目的として最近10年間の日本国内の心理学的裁判員制度研究をレビューすることと設定した。そして、文献検索の方法として CiNii、Google Books、目視その他を用いたことを報告した。重複を取り除き心理学的研究でないものを除いた結果193件が残り、それを6つのカテゴリーに分類した。6つのカテゴリーは(1)総論的論考、(2)裁判員の個人差変数、(3)裁判員の個人単位の判断、(4)法廷技術と法廷戦略、(5)評議、(6)判決文分析である。以上のカテゴリーのうち、本稿では字数の関係で(2)(3)(5)の紹介を行った。(2)についてはパーソナリティ、参加意欲、社会的態度、(3)については量刑判断、呈示情報との関係、目撃者、感情、報道、凄惨な証拠などが取り上げられた。(5)については、人数比、オーガナイザーの存在、素朴交渉と評議デザイン、コーパス言語学の応用研究などの研究が紹介された。
著者
安藤 寿男 田口 翔太 森野 善広
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.475-499, 2022-12-29 (Released:2022-12-29)
参考文献数
55

相馬中村層群中ノ沢層(上部ジュラ系)の館ノ沢砂岩部層は,砂質河川成の栃窪層に波浪ラビンメント面を介して重なる海進残留相から始まり,外洋浅海から内湾-ラグーンに至る上方浅海化を示す,海退性の砂質堆積物であり,数回の小規模な振動を伴う相対海水準の緩やかな上昇期に,珪質砕屑性堆積システムが前進することによってできた.小池石灰岩部層は,珪質砕屑物供給が停止することで成立した炭酸塩バリア-ラグーンシステムとして,東西数 km南北10 km超の炭酸塩プラットフォームを構成していた.分布全域に追跡される5層の上方細粒化堆積相累重(層厚数-10数m)は,バリア浅瀬→浅瀬後背→ラグーンへの変化をもたらした,5回の小規模な相対海水準変動による海退-海進の繰り返しで形成された.中ノ沢層はキンメリッジアンからチトニアン前期の第2オーダー高海水準期に,第3オーダー海水準変動周期に対応して形成された可能性が指摘される.
著者
平木 耕平
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.107-127, 2008-12-15 (Released:2016-11-05)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

What significance did people give to “entering university from local areas” in Japan in the period following the Second World War? And how have their views changed in the time since? To answer these questions, this paper focuses on the “advanced course” of Tottori prefectural senior-high schools, using the methods of political-sociology.The “advanced course” of Tottori prefectural senior-high schools is sometimes called a “publicly funded cram school.” The teachers of the prefectural schools give instruction to students who are preparing for a new chance to enter university after failing the first time. In the period around 1960, there were still no private cram schools in Tottori Pref., but the number of students hoping for a second chance to enter university was rapidly increasing. In response, teachers at one prefectural senior-high school began to give them instruction on a volunteer basis, and a few years later, the Board of Education institutionalized it as the “advanced course.” This system was spread within the prefecture by the Board. Judging from this analysis, it may be said that the Governor, administrators and teachers recognized the disadvantageous condition of the local prefecture, and devised a policy to train talented youth as a means to overcome the backwardness of their home region.However, a debate on whether the “advanced course” of prefectural senior-high schools should be maintained or not began in Tottori Pref. about 2005. Private cram schools asked for the abolition of the “advanced course,” because the social changes since 1990s had hurt their business. As a result, this demand became a focus of public policy in the prefectural assembly. The groups on both sides of the issue disagreed fundamentally on whether the course should be maintained or abolished, but agreed in regarding the “advanced course” as a device for meeting the “needs of individuals.” With the massification of university education, the existence of the “external effect,” meaning the social profit brought about by higher education, has come into question. In addition, the “needs of society,” meaning the survival of the local prefecture, is not recognized within the policy of the modern “non-profit-sharing” model. In comparison with the “supplementary courses” established by PTAs, which perform a similar function in senior high schools of other prefectures, people do not feel a justification to spend public money on Tottori prefecture’s “advanced courses.”This leads to the hypothesis that the significance of “entrance into university from local areas” changes with the movement in perspective from social profit to personal profit. This means that the circuit between “education” and “society/economy” has been severed. Hence, the nurturing and outflow of talented youth from local prefectures is no longer seen as the main issue. However, local prefectures have been seriously affected by recent changes in both the industrial structure and decentralization. Now is the time to rebuild the tripartite affinity between “education,” “society/economy” and “local areas.”
著者
上田 明良 伊東 宏樹 佐藤 重穂
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.309-320, 2022-12-01 (Released:2022-12-13)
参考文献数
59

保残伐と小面積皆伐は伐採インパクトを軽減すると考えられている。これらの施業と全面皆伐後1~3年のトドマツ人工林および非伐採林において,魚肉ベイトのピットフォールトラップを各林分に1~3基約110日間設置して環境指標性が高いとされるオサムシ科甲虫を捕獲した。全伐採地の種構成は非伐採地と異なっていて,伐採が群集を変化させていた。侵入広葉樹の一部を非伐採で残す単木保残施業区の種構成は,皆伐区のそれよりも非伐採林に近く,保残量と森林性種捕獲数の間に有意な正の関係があった。0.36 haの人工林を残した群状保残施業保残区内の森林性種捕獲数と種数は林分によって大きく異なり,明確な傾向はみられなかった。約1 haの皆伐区と6~8 haの皆伐区の間で森林性種捕獲数と種数に違いはなかった。以上から,単木保残施業には伐採インパクト軽減効果があるが,群状保残施業と小面積皆伐についてはさらに検討が必要と考えられた。本研究と同じ試験地で,伐採1年後にベイトなしトラップを各林分20基,のべ21日間設置して行った別調査との比較では,本研究の種数がわずかに少なかったが,トラップ・日当たり捕獲数は同じであった。
著者
今井 雅夫
出版者
北里大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

妊娠正期妊婦から膣頚管粘液を毎週自然陣痛発来まで採取し、各種サイトカイン濃度を測定したところ測定時から4日以内に自然陣痛発来した妊婦の膣頚管粘液中の癌胎児性フィブロネクチン、IL8は有意に高値を示したがIL1,IL1ra,IL6,IL6 soluble receptor,TNF,TNF soluble receptor,IL10には有意な差を認めなかった。このことから癌胎児性フィブロネクチン、IL8測定により、陣痛発来時期の推定が可能と考えられた。また経膣自然分娩例、陣痛開始後の帝王切開例、陣痛発来前の予定帝切例の胎盤組織における、cPLA_2、sPLA_2mRNAの発現量を測定したところ陣痛発来前の予定帝切例では脱落膜側でsPLA_2mRNAの発現を、羊膜側でcPLA_2mRNAの発現を認め、腟側と子宮底部側では膣側に発現を強く認めた。しかし、陣痛発来後時間を経過したものでは、cPLA_2、sPLA_2mRNAともに脱落膜側に非常に強く発現しており、羊膜での発現が減少していた。このことからcPLA_2、sPLA_2mRNA誘導には解剖学的に膣側の因子(炎症の影響)が関与する可能性が強いこと、陣痛発来後には、無血管領野である羊膜では基質の欠乏からかPG産生が低下する可能性が示唆された。帝切の胎盤組織から得た培養細胞にTGFβを添加すると濃度依存性にサイトカイン産生を抑制した。
著者
Tamiki Hara
出版者
Center for Southeast Asian Studies, Kyoto University
雑誌
Southeast Asian Studies (ISSN:21867275)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.413-439, 2019-12-26 (Released:2019-12-26)
参考文献数
38
被引用文献数
1

Despite its much-touted agenda to fight poverty and corruption, the Aquino administration was not able to produce good results during its term at the national level. However, some political forces and policy reforms that emerged with the administration achieved remarkable change at the local level. This paper explores the case of Siquijor Province, where an entrenched political dynasty was defeated in the 2013 and 2016 elections by candidates supported by the Liberal Party and its allied forces, Akbayan, and analyzes factors that brought this change by focusing on activities of People Power Volunteers for Reform, the impact of bottom-up budgeting projects, and the mobilization of powers of the national government through personal relationships. It also notes achievements of the Aquino administration at the local level, provides a critical perspective to the elite democracy discourse that sticks to a static view of Philippine politics, and clarifies local practices by progressive forces that confront oligarchy.
著者
村川 力彦 梅本 一史 鈴木 友啓 加藤 航平 山村 喜之 大野 耕一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.2289-2292, 2015 (Released:2016-03-31)
参考文献数
14

症例は61歳,男性.腹痛にて近医を受診,胆石症と診断された.術前精査で,横行結腸肝弯曲部に早期大腸癌を認めたが,内視鏡的切除が困難なため,手術目的で紹介となった.手術は腹腔鏡下結腸右半切除術および胆嚢摘出術を施行した.術中,胆嚢管内に腫瘤を認めたため,腫瘍を含め切除した.切除標本では胆嚢管に14×10mmの黄色調の亜有茎性腫瘍を認めた.病理組織学的検査で腫瘍細胞は核が円形から卵円形を呈し,好酸性顆粒状胞体を有し,胞巣状・索状・リボン状に増殖していた.免疫染色ではsynaptophysin陽性,chromogranin A陽性,CD56陰性,Ki-67指数は3-4%であった.以上より胆嚢管カルチノイドと診断した.腫瘍は核分裂像・脈管侵襲・神経周囲浸潤を認めなかったが,線維筋層への浸潤を認めた.術後4年6カ月再発なく経過している.
著者
秋澤 紀克
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.52-63, 2022-12-25 (Released:2022-12-25)
参考文献数
85

The oceanic crust is in contact with sea water, and thus water is likely to penetrate downward into the solid earth. Meanwhile, the oceanic crust is a place where water is partitioned from the magma. Water that is incorporated into the oceanic crust as hydrous minerals is mainly 1. water in differentiated magma, 2. water released from subducted oceanic plate and supplied to magma via wedge mantle in the back-arc spreading system, and 3. sea water causing hydrothermal circulation. Here, I give an overview of behavior of the water partitioned from the magma into the lower oceanic crust, which is of particular difficulty to access, and the actual state of water is difficult to grasp. In addition, I present the deep-rooted hydrothermal circulation reaching to the lower oceanic crust.
著者
砂原 悟 金 勇 飯田 勝吉
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.122, no.306, pp.99-100, 2022-12-05

DNS の通信においてプライバシー情報の保護の重要性が高まっている.現在標準化されている DNS over TLS (DoT) や DNS over HTTPS (DoH) の規格では,DNS の通信を暗号化することによって改ざんや直接漏洩を防ぐことは可能であるが,DNS の通信を暗号化したとしても通信ヘッダの送信元 IP アドレスと送信先 IP アドレスまで隠蔽することはできない.そのため,たとえ DNS の通信が暗号化されていたとしても,送信元のクライアントがどのようなサイトに興味を持っているのかを推測できる可能性がある.本研究では,クライアントから権威 DNS サーバ間の DNS 通信の匿名性を維持し,照会されたドメイン名の推測リスクを軽減させるための手法の提案と手法の検証結果について紹介する.
著者
佐々木 玲子
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.73-78, 2012 (Released:2016-04-15)
参考文献数
18
被引用文献数
5 4

我々は自身や他者の動きに伴って何らかの時間,空間的なリズムを感じ取ることができる.発達的にみると,自発的に内 在するリズムやテンポの発現は乳児の段階でも見られ,それが発話やのちの身体運動とも深くかかわっていることが推察される.また成長に伴い,外界からのリズムを読み取り自身の動きを適切に調節していくことも可能となり特に自己の抑制的な調節にその発達をみることができる.神経系機能の発達が著しい乳幼児から児童期にかけては,様々な動きを獲得しさらにそのスキルを高めていく可能性を持っている.動きの発達には,知覚,認知などの機能および環境が相乗的に作用し,そこに時間調整的要素をもつリズムは非常に関わりの深いものとなっている.