著者
林 亮輔
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.140-159, 2011 (Released:2022-07-15)
参考文献数
26

わが国の公共投資政策は,その時々の経済情勢に応じて,地域間・分野間での公共投資の配分を大きく変化させてきた。本稿は,戦後の公共投資政策を総合的に評価することを目的とし,①景気低迷など需要サイドの影響を取り除いた「潜在厚生水準」を推計し,②生活関連型社会資本の直接的な厚生効果と,産業基盤型社会資本の間接的な厚生効果をとらえることで,公共投資が地域の厚生水準に及ぼした影響を検証した。 その結果,①公共投資政策は地域間の厚生水準格差を縮小する方向で作用していたこと,②都市圏では生活関連型社会資本,地方圏では産業基盤型社会資本への公共投資が,厚生水準の上昇に大きく寄与していることが明らかになった。 これらの検証結果は,今後,公共投資という政策手段を講じて地域間の厚生水準を上昇させるとするならば,それぞれの地域の厚生水準を最も高めうる社会資本への公共投資を重点的に行うことが重要であることを示唆している。
著者
小林 庸平 林 正義
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.160-175, 2011 (Released:2022-07-15)
参考文献数
9

本稿では一般財源化と高齢化が就学援助に与える影響について検証を行う。就学援助の認定基準や給付内容の決定は市町村に委ねられているが,2004年度までは国庫補助が行われており,国の補助条件が一定の基準を提供していた。しかし,2005年度に準要保護者への就学援助に対する国庫補助が一般財源化され,就学援助が地方の財政状況に左右されやすくなったと考えられる。また,高齢化については先行研究が示すように,高齢者が多数を占めることを意味するから,高齢化は子ども向けの支出を減少させる可能性がある。本稿では,新入学児童・生徒1人当たり年間援助額や就学援助率,準要保護率については,財政力の多寡が就学援助に影響を与え,とりわけ,新入学児童・生徒1人当たり年間援助額については一般財源化後に財政状況が与える影響が増大したことが示される。さらに高齢化の進展は新入学児童・生徒1人当たり年間援助額や就学援助受給率を減少させることが示される。
著者
平敷 卓
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.335-353, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
9

本稿では,近年の沖縄県市町村財政において,国庫補助負担金改革,公共事業削減の過程で生じつつある財政格差の様相を国庫支出金の交付状況,特に公共事業に係る市町村の普通建設事業費支出金及び歳出面での普通建設事業費の動向から明らかにする。 そして,本分析を通じて,1990年代後半以降の基地移設関連に伴う財政措置は沖縄県北部市町村への普通建設事業費支出金の配分を高める一方で,離島市町村との格差を拡大させつつ展開したことを明らかにする。また2000年度以降,比較的財源に余裕がある基地所在市町村においても,普通建設事業費への国費充当率を一層高めており,基地政策関連の財政措置への依存を深めている。このことは従来,補償的な意味を持つ自治体への基地関連支出が,基地所在市町村において財源保障的な意味を強めつつあること示唆している。そして,県内市町村間の格差の主要因となっていることを明らかにする。
著者
後藤 和子
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.354-371, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
19

本稿は,日本では殆ど研究されたことのない文化税制に関して,その範囲を定め,理論的根拠とそのインパクトについて検討したものである。1980年代以降,文化税制が顕著な発展傾向を見せていることは,2008年1月の海外調査によっても明らかである。かかる調査を踏まえ,環境税における政策課税の議論や,アメリカ,オランダ等の理論研究を踏まえ,政策課税としての文化税制の理論的根拠とインパクトに関して検討する。それは,公共政策における公私分担の変化や,租税支出による社会保障支出の増加という流れの中で,文化政策における租税支出や目的税の,今日的意義を明らかにしようとする試みでもある。
著者
金坂 成通 宮下 量久 赤井 伸郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.118-130, 2010 (Released:2022-07-15)
参考文献数
19

わが国の地方分権改革でしばしば議論の対象となる国から地方への税源移譲に関して,その具体的方法を検討するために,垂直的租税外部効果が経済成長に与える影響について実証分析を行った。 推定結果から,垂直的租税外部効果は,経済成長の障害となっていることが示された。また,課税の裁量性に着目し,課税自主権を考慮した指標を用いた結果においても,垂直的租税外部効果は,経済成長を阻害することが確認された。これまで先行研究において,課税自主権の影響が示されていなかったが,本研究において,租税外部効果を通じた影響が新たに明らかとなった。 今後の地方分権に関する税財政論議でも,国から地方への税源移譲を実現するにあたって,民間の経済活動を妨げないように,課税ベースや税率選択において国と地方で過度の重複を避ける工夫が必要といえる。
著者
高畑 純一郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.200-219, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
25

年金の議論が盛んになってきているが,特に関心がもたれているのは財政方式の問題である。公的年金の財源調達法には比例賃金税方式と消費税方式などがあり,それに依存して資源配分が変化する。本研究では,雇用・年金・債券市場に市場の不完備性を組み込んだ動学的一般均衡モデルで,年金保険料の徴収方法によって資源配分がどのようになるかを観察し,どの程度の年金水準が望ましいのか,どちらの財政方式で厚生が高くなるかについて,日本経済をカリブレートしたパラメーターを設定して,定常状態で評価した。その結果,いずれの方式でも最適な保険料率は0%であることが示された。また,一定の規模で年金を実施する場合,想定するパラメーターの下では,消費税方式の方が比例賃金税方式よりも望ましいことが示された。これは,消費税方式での資本蓄積を妨げない効果等が,比例賃金税方式での雇用リスクを和らげる効果等を上回っているためであると考えられる。
著者
白石 浩介
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.184-199, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
10

年金分析のためのマイクロシミュレーション・モデルの開発に関する研究である。公的年金制度を取り巻く状況は厳しく,改革案を数量面から検証していく計量モデルが求められている。ダイナミック・マイクロシミュレーション技法の年金分野への応用に関する基礎的研究を行い,わが国においてもマイクロシミュレーションを用いた年金分析が可能であることを示した。本研究では新タイプのモデルであるPENMODの開発を構想し,その作成に着手した。PENMODにおけるライフイベント分析においては,個票ごとに生死,婚姻,就業(年金の加入タイプ),賃金,引退,年金裁定に関するシミュレーションを行い,年金推計に必要となる加入記録と受給記録を作成する。これにより個人の就業履歴に応じたきめの細かい年金推計が実現し,基礎年金に対する国庫負担額の傾斜配分やスウェーデン方式として知られる所得比例年金など,これまで分析が困難とされてきた政策シナリオの検討が可能となる。
著者
塩津 ゆりか
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.220-235, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
13

出産選択と就業状態による世帯の多様化は,出生率や資本蓄積に大きく影響する。子どもはまた,賦課方式の社会保障制度をとおして,正の外部性をもつ。そこで,子どもの外部性を内部化する手段として,児童手当拡充政策が考えられる。 本稿の目的は,世帯の多様性を考慮したうえで,児童手当の加給分の財源について,年金課税と労働所得税を想定し,それぞれが経済全体にあたえる影響を出生率内生化モデルのシミュレーションによって,明らかにすることである。 本稿の主な結論は,次のとおりである。児童手当の政策目標が出生率の回復ならば,ある程度以上の増税を実施するほうが,短期間で政策効果が得られる。定額で所得制限のない児童手当は,年金課税を財源とした場合,どのタイプの世帯であっても貯蓄を増加させる。もし,小規模増税ならば,共稼ぎで子どもをもつ世帯にとっては,子どもの外部性が十分内部化されないので,効用水準が低下する結果となった。
著者
松岡 秀明
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.173-183, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
8

本稿では,近年政府による所得税収の見積もりが不確実になっている背景を政府経済見通し,税収予算,決算を用いて分析した。個人所得に占める配当の割合が高まっており,企業収益の影響が家計所得に影響しやすくなっている。このため,所得税収も変動の大きな企業収益の影響を受け不安定になっている。その上,政府経済見通しに注目すると,配当を含む財産所得の予測誤差が大きく,配当などの予測は難しい。政府は予測精度を改善させ大きな予算割れを防ぐために,「人々の税の納め方が変わってくるにつれて,どういった統計を作ればよいのか」ということを年頭に置かなければならない。GDP統計では英国,米国に比べて課税ベースである分配面の情報が不足している。社会保障財源をどのように確保していくのかが課題となっている今,税収見通しの不確実性を認識する必要がある。
著者
中本 淳
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.157-172, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
19

我が国の公共事業関係費は,財政再建の過程で大きく削減されてきた。本稿では,動学的一般均衡モデルを構築し,公共投資削減のマクロ経済効果および最適水準について考察した。また,モデルの中に人口動態の変化を取り入れることで,少子高齢化の進展が,これらの結果にどのような影響を与えるかについても考察した。 先行研究を参考にパラメーターを設定して数値計算を行った結果,公的資本投資の削減は,社会厚生を約1%減少させる。また,少子高齢化の進展を考慮に入れて同様の計算をすると,社会厚生の減少は約2%となった。すなわち,少子高齢化の進展を考えると,余力のあるうちに貯蓄・投資をしておくことがより望ましい。また,少子高齢化がマクロ経済に与える影響としては,少子化による1人当たり資本装備率の上昇よりも,高齢化による相対的な消費者人口の増大の効果が大きく,このことから高齢者を労働市場に参加させる仕組みの構築が必要であろう。
著者
江口 允崇 平賀 一希
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.141-156, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本稿では,政府消費,公共投資,政府雇用のそれぞれが,経済に与える影響の違いについて分析する。そのために,政府支出の項目を政府消費,公共投資,政府雇用の3つに分けた動学的一般均衡モデルによるカリブレーション分析を行うとともに,そこで得られたインパルス・レスポンスを,1969年から2008年までの日本のデータを使ったVARモデルのインパルス・レスポンスと比較した。 カリブレーション分析とVAR分析の結果は概ね整合的であり,次のような結果が得られた。第1に,公共投資は,消費と投資に対してプラスの効果を持つ。第2に,政府消費は,消費に対してはマイナス効果を持つ一方で,投資に対してはプラスの効果を持つ。第3に,政府雇用は,消費と投資に対してともにマイナスの効果を持つ。これにより,政府支出の増大による景気対策,または政府支出の削減による財政再建は,その内容によってまるで違う効果が現れてしまうことが示された。
著者
宮下 量久 中澤 克佳
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.254-275, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
18

「平成の大合併」によって市町村合併が多くの地域で急速に行われてきた。さらなる地方分権の推進や交通網整備に基づく生活圏の拡大によって,既存の行政区域を越えて各地域で検討すべき課題が増えると思われる。そして,広域連合やさらなる合併など,複数自治体が相互に意思決定を行う機会も増加してくると予想される。しかし,これまで先行研究で市町村合併の歳出削減効果についての検証は数多くなされているものの,合併のような市町村間の合意形成過程に関する研究は,筆者らの知りうる限り存在しない。そこで,本稿では市町村間の合意形成過程(期間・コスト)に着目して,それに影響を与えうる要因を定量的に分析した。その結果,合併協議地域内の所得格差が大きいほど,合併不成立,もしくは合併協議の長期化をもたらすことや,協議地域の合併インセンティブは財政状況ではなく,特例市などに昇格し,権限や業務が都道府県などから移譲されることで存在することなどが明らかとなった。
著者
根岸 睦人
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.276-295, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
41

本稿では,戦前期の主要な地方税である家屋税に注目し,1940年税制改革において,地方団体間の評価方法の統一や税率の平準化が図られた背景と改革の意義を,財政調整制度の成立との関わりにおいて明らかにしている。同改革で家屋税は還付税となり,国税として,負担の公正や均衡は国により保証される一方,税収の帰属は地方団体とされた。この背景には,脆弱な財政的基盤の上に成り立つ地方税務行政の問題への対応,財政調整制度の精緻化の要請などがあった。また本格的な財政調整制度の導入に伴い,標準的行政運営を保証する税率として標準率が導入され,政府は各団体の税率を標準率に誘導するようになった。これにより地方団体の歳入を最終的に調整する,従来の地方税の役割が大きく変化した。
著者
西村 宣彦
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.296-314, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
28

2007年3月に財政再建団体に移行した夕張市は,本稿執筆時点で財政再建第2年度目にある。財政再建初年度は当初計画通りの赤字解消を達成したが,今後に目を向けると,夕張市の財政再建計画は,①現実性,②地域の将来ヴィジョンの欠如,③負担配分の公正性という3つの問題点を抱えている。3点目は(a)人口流出に係わる問題と,(b)不適正な赤字隠しへの道・国の関与の問題に区別される。目先の赤字解消に止まらず,地域と自治の再生を図っていくためには,これらの諸点と向き合う必要があり,そのためには夕張市に現在課されている「過剰な自己責任」を是正し,夕張市の責任で解消すべき赤字額の大幅な減額を含めて,計画の抜本変更を行うべきだと考える。こうした主張に対しては,モラル・ハザードの助長や他の地方自治体との不公平といった異論が出ることが予想されるが,夕張市の事例では必ずしもそうした指摘は当てはまらないことを指摘する。
著者
金目 哲郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.315-334, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
11

過去四半世紀にわたる地方財政計画の変遷について,主要な歳出項目別の時系列分析を行い,近年の計画の抑制的見直しについて評価を加える。この分析過程では,各項目の算定根拠として積み上げられた施策・事業の変化に着目する。分析の結果,1990年代前半までの地方財政計画の膨張は単独事業分,なかでも長期計画事業や新規事業の増額計上が顕著である。1990年代後半以降の抑制・減少は単独事業分の圧縮によるが,新規事業の整理縮小のみならず過疎対策事業といった毎年計上事業分の圧縮,給与関係経費といった経常経費の減額にまで及んでいる。単独事業分のなかでもナショナル・ミニマムに関わるものの財源保障の削減は懸念され,マクロの財源保障に幅を持たせておくことは地域的に顕在化する行政需要に応える意味でも重要である。
著者
川崎 一泰
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.236-253, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
14

本研究では,地方再生の1つの手段として期待されるコンパクト・シティを財政的な側面からその効率性を評価し,地域の経済活動指標と合わせて検討することで,効率的都市像の検討を行った。本論文では,概念的な議論の多いコンパクト・シティのコンパクト性を統計的に捉える指標を探り,小地域データを使った実証分析及びシミュレーション分析を試みた。 分析の結果,自治体の社会経済環境に応じて異なるが,平均的に人口集中地区(DID)人口密度が5150人/km2程度の規模で,行政コストが最小になることがわかった。また,この規模では地域の経済活動は高まらず,コンパクト・シティが機能を連携・分担する都市圏を形成することが求められることを示唆する結果も得られた。
著者
林 正義 石田 三成
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.252-267, 2008 (Released:2022-07-15)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本稿では交付税措置が地方単独事業に対する効果を平均処置効果として1990年代の各年に関して推計した。その結果,交付税措置は1996~97年を除き,90年代を通じて地方単独事業に有意な影響を与えていたことが示された。
著者
小林 航 近藤 春生
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.218-232, 2008 (Released:2022-07-15)
参考文献数
11

本稿は,自治体首長の多選禁止問題について検討するために,都道府県知事の在職年数と財政運営の関係について分析する。既存研究では,基礎的財政赤字と知事の在職年数との間にU字型の関係が観察されていたが,本稿ではそのような関係は見られず,むしろ逆U字型か単調な右下がりとなることが示される。また,こうした結果が得られる理由についても検討する。
著者
砂原 庸介 藤井 康平
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.233-251, 2008 (Released:2022-07-15)
参考文献数
15

本稿では,地方政府における産業廃棄物税と森林税という2つの新税導入の意思決定要因について,都道府県レベルの地方政府における知事・地方議会という政治的アクターの選好と両者を選出する選挙制度を結びつけたうえで,その選好が新税の導入にどのような影響をもたらすかについて議論する。 本稿の分析からは,産業廃棄物税・森林税という2つの税が持つ性質が,首長または地方議会という選挙に直面する地方政治のアクターの選好と対応し,各地方政府における首長の再選可能性や地方議会自民党の優位性などの特徴が新税導入の意思決定に影響を与えていることが示される。このような新税導入の実証分析からは,地方分権改革によって地方政府の自律性が向上することで,同時に地方政府における政治的アクターにとっても,自らの利益につながる戦略的行動をとる余地が広がりつつあることが示唆される。