著者
藤垣 裕子
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究 (ISSN:24340618)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.25-41, 2004-11-30 (Released:2019-01-22)
被引用文献数
1

本稿の目的は,環境社会学に対して科学技術社会論がどのような貢献をすることができるか検討することである。科学技術社会論の論客の一人であるSteven Yearlyは,『STSハンドブック』の環境に関する章のなかで,「科学技術社会論は,環境に関する問題を明らかにしたり,論争を解決したりすることへの科学のあいまいな役割について説明する枠組みを提供する」(Yearly, 1995)と述べている。この科学のあいまいな役割について,本稿では,フレーミング,妥当性境界,状況依存性,変数結節,という概念を使って順に解説する。環境社会学と科学技術社会論の橋渡しは,現在の日本で別々の文脈で語られている市民運動論と社会構成主義,科学と民主主義の議論を,連動した形で再度編成することによって進み,かつ両者の間に豊かな交流をもたらすだろうと考えられる。
著者
矢野 育子
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-8, 2002-02-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
21

Although acetazolamide, a carbonic anhydrase inhibitor, has an effect of lowering the intraocular pressure, a number of side effects have been reported with its use.We therefore investigated the pharmacokinetics and pharmacodynamics of acetazolamide in patients with an intraocular pressure (IOP) elevation. The plasma acetazolamide concentration and IOP in 17 patients with a transient IOP elevation were simultaneously measured after the last acetazolamide administration, and the findings were analyzed by nonlinear mixed effect modeling using the NONMEM software program. The plasma concentration profile of acetazolamide was characterized by a one-compartment model with first-order absorption.The apparent oral clearance (L/hr) showed a correlation with the creatinine clearance (CCR, mL/min), as estimated by the Cockcroft and Gault equation, as follows : 0.0468·CCR. The estimated apparent oral volume of the distribution, first-order absorption rate constant, and absorption lag time were 0.231 L/kg, 0.821 hr-1, and 0.497 hr, respectively. The intraocular pressure after oral acetazolamide administration was characterized by an Emax model. The maximal effect in lowering the IOP (Emax) was 7.2 mmHg, and the concentration corresponding to 50% of Emax (EC50) was 1.64 μg/mL. We next investigated the relationship between the acetazolamide concentration and its side effects in 23 glaucomatous patients who received repeated doses of oral acetazolamide for one week or more. The serum concentration of chloride ion was found to be higher than the normal range, and also showed a significant correlation with the acetazolamide concentration in the erythrocytes. The patients with an erythrocyte acetazolamide concentration of more than 20μg/mL had higher incidents of the side effects. Based on these results, the recommended dosage of acetazolamide was calculated so that the minimum plasma concentration at steady-state exceeded 4μg/ mL. The dosage regimen desired in this study is expected to contribute to the safe and effective pharmacotherapeutic use of acetazolamide.
著者
庄野 義幸 酒見 隆信 馬場 直樹
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.23, no.12, pp.1403-1405, 1990-12-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
7

アセタゾラミドは, 炭酸脱水素酵素を阻害する薬剤で, 現在利尿剤としてよりもむしろ緑内障の治療, あるいは小児のてんかん治療薬として使用されている. 私たちは, 緑内障合併に対してアセタゾラミドの内服をうけ, 数日後に意識障害をきたした慢性腎不全の2例を経験した. 症例1は2年前より維持血液透析をうけている62歳男性で, 緑内障発作に対してアセタゾラミド0.5g/日の内服後3日目に, 意識障害をきたした. 症例2は糖尿病性慢性腎不全 (Cr 6.2mg/dl) の54歳男性で, 緑内障合併のためアセタゾラミド0.75g/日の内服をうけ3日目に意識障害をきたした. いずれの症例も頭部CT検査で異常を認めず, 脳波上代謝性脳症を呈しアセタゾラミド中止により意識が回復したことより, アセタゾラミドが意識障害の原因と考えられた. 意識障害の機序は明らかでないが, 腎不全によるアセタゾラミドの蓄積が起こり, 脳への直接作用による脳内アシドーシスが関与している可能性が推定された.
著者
渡部 洋 松川 節 古松 崇志
出版者
大谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

元代から明代初期までの多言語史料(碑文華夷訳語)を解読分析し、史料の1つ達魯花赤竹公神道碑銘の注釈書(「漢文・モンゴル文対訳「達魯花赤竹君之碑」(1338 年)訳注稿」2012 pp107-238)を『大谷大学真宗総合研究所研究紀要』第29号に掲載した。
著者
久保田 弥生 森山 恵美 前川 昌子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.687-691, 2006 (Released:2007-10-12)
参考文献数
22

In order to clarify anti-deposition effects of mukuroji pericarps, deposition of carbon black onto cotton and polyester fabrics has been studied in aqueous solutions of mukuroji pericarps. The rates of deposition were evaluated from the reflectivity of stained fabrics. It was revealed that the rate of deposition of carbon black onto the fabrics in an aqueous solution of mukuroji pericarps was lower than that in an aqueous solution of sodium dodecyl sulfate as well as in polyvinyl alcohol, which is a known anti-redeposition agent. In addition, it was revealed that theses effects were not introduced by the saponin component alone, but by the whole mukuroji pericarp which contains the non-saponin component.
著者
大釜 信政
出版者
日本医療福祉政策学会
雑誌
医療福祉政策研究 (ISSN:24336858)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.53-74, 2022 (Released:2022-07-22)

目的:日本の大都市圏においてプライマリ・ケアを居宅で提供するために必要な高度実践看護師のコンピテンシーの尺度を開発し、尺度の信頼性と妥当性について検証する。 方法:大都市圏の診療所・病院で訪問診療や往診に携わる医師または看護師、訪問看護師、高齢者施設に勤務する看護師に対して、高度実践看護師に求めるコンピテンシーに関する質問票調査を実施した。 結果:309名からの回答を分析対象とした。最尤法・プロマックス回転による探索的因子分析により、6因子46項目を抽出した。また、尺度の信頼性と妥当性を確認した結果、Cronbachのα係数は.964、モデル適合度は、GFI=.759、AGFI=.732、CFI=.875、RMSEA=.060であった。 結論:本尺度の信頼性と妥当性に関して統計量的に許容範囲であり、プライマリ・ケアに資する高度実践看護師のコンピテンシー尺度として6因子46項目のそれぞれが概念や特性を適切に反映できている点が示唆された。
著者
田村 夢果 内山 智裕 井形 雅代 Yumeka Tamura Tomohiro Uchiyama Masayo Igata
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.81-86, 2022-09-16

新型コロナウイルス感染症は,花き業界にも多大な影響を与えた。特に2020年3~5月の第1波では,業務用需要が大幅に減少した結果,大量の花が廃棄され,「フラワーロス」と称された。しかし,小売店での売れ残りに伴うロスや,出荷規格から外れたことによるロスなど,花の廃棄の問題は以前から存在している。本論は,小売業者による花の廃棄問題への対策の内容を解明し,コロナ禍における状況変化を明らかにすることを目的とした。そして,花の廃棄対策に積極的に取り組む小売業者3社の事例分析により,以下の2点を明らかにした。①発生を抑制・減量化するために,規格外品の販路の開拓,サブスクリプションサービスやオンラインD2C販売など流通の短縮化,販売数の確定や正確な予測などに取り組んでいる。②対策を行ったうえでも発生するロスを活用して,堆肥化などの新たな製品にリサイクル・アップサイクルしている。また,コロナ禍におけるフラワーロスへの関心の高まりが,広い範囲での花の廃棄削減に効果を発揮していることも明らかにした。
著者
杉下 陽子 高木 満里子 西田 ふみ 堀田 明弘 根木 昭
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.173-179, 2000-08-25 (Released:2009-10-29)
参考文献数
6

間歇性外斜視における内田ブルーカラーレンズの装用効果をみるために、装用前後の斜視角、病態の変化、立体視、片眼つぶりや羞明について比較検討を行なった。対象は手術既往のない間歇性外斜視19例、間歇性外斜視術後残余斜視23例。斜視角は間歇性外斜視では近見58.0%、遠見73.7%、術後残余斜視では近見47.8%、遠見21.8%に減少傾向を示した。病態は斜位斜視が正位または斜位に移行しやすかった。立体視は間歇性外斜視の近見にて改善効果が高かった。片眼つぶりや羞明は間歇性外斜視は全症例で、術後残余斜視は50%に改善がみられた。内田ブルーカラーレンズは間歇性外斜視の治療に有用であると考える。

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著者
国立印刷局 編
出版者
国立印刷局
巻号頁・発行日
vol.1928年11月24日(本号), 1928-11-24
著者
沓澤 隆司 竹本 亨 赤井 伸郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.190-212, 2020 (Released:2022-01-19)
参考文献数
22

都市の中心部に人口が集中した都市(コンパクト度の高い都市)においては,住宅地等の地価が上昇する可能性がある。その背景として都市のコンパクト化が行政サービスの効率化および,住民の利便性の向上や経済活動の効率性の上昇をもたらしている可能性が推測される。本稿では,都市のコンパクト度が上昇する(都市がコンパクト化する)ことが公示地価等にどのような影響を与えているかについて,コンパクト度の違い,用途の別,都市の中心点からの距離帯ごとの異なる効果を考慮して,パネルデータによる固定効果分析を行った。この結果,都市のコンパクト度が上昇すると地価が上昇する関係が見られること,その影響はコンパクト度の違い,住宅地や商業地の用途の別によって異なること,距離帯別の分析では,用途全体,あるいは住宅地において,都市の中心点に近接した地域ではコンパクト度が上昇する際の地価の上昇幅は大きくなる傾向があることがわかった。
著者
白石 智宙
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.237-254, 2020 (Released:2022-01-19)
参考文献数
33

本稿は,既存の地域内経済循環概念のなかに,自治体を起点とした再帰的かつ連続的な資金の動きを「財政循環」という概念によって位置づけた。それは,単なる経済効果の一環としての自治体収入増減効果とは異なり,政府間財政関係において自治体の収入や支出のあり方を規定する諸要素を考慮に入れた点に独自性がある。そして,岡山県西粟倉村の「百年の森林事業」をケースとして実証分析を行い,「財政循環」の実態とそれを規定する諸要素との関係を定量的に示すことができた。具体的には,単純な税収と財産収入の増加による収入増よりも,国庫支出金や地方交付税を通じた収入への影響を加味した収入増のほうがより実態を反映しており,地域産業政策を適切に評価できることを示した。
著者
栗田 広暁
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.181-193, 2019 (Released:2021-07-28)
参考文献数
10

本稿では,わが国の所得税制における扶養控除額の変化を利用し,最適課税論の中心的パラメータであるETI(the Elasticity of Taxable Income with respect to the net-of-tax rate)およびEGI(the Elasticity of Gross Income with respect to the net-of-tax rate)を推計した。データには日本家計パネル調査(JHPS)の個票パネルデータを用い,家計の異質性を十分に反映させながら推計を行った。その結果,ETIの推計値は0.7前後,EGIの推計値は0.5前後であるとの結果が得られ,扶養控除額の変化は,家計が直面する限界税率の変化を通じて所得決定に影響を与えていたことが示唆された。
著者
中東 雅樹
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.144-162, 2019 (Released:2021-07-28)
参考文献数
17

本稿は,国土交通省「道路メンテナンス年報」に掲載されている2014年度から2016年度の3年間の点検結果のうち,市町村が管理する橋梁の総合的な健全度を用いて,普通交付税の有無でみた財政要因が橋梁の健全度の差に影響を与えているかを生存時間分析により実証的に明らかにしている。 分析結果からは,積雪の多寡については,積雪が多い地域における橋梁の健全度はそれ以外の地域のそれに比べて平均的に早く低下する。また,財政状況に関しては,交付団体における橋梁の健全度の予防保全段階への到達時間は不交付団体のそれに比べて平均的に長い一方で,交付団体における橋梁の健全度の早期措置段階への到達時間は不交付団体のそれに比べて平均的に短いことがわかった。これは,とくに財政状況の悪い地域や条件不利地域において橋梁の維持補修への資源投入が不十分であったことを示唆しているといえる。
著者
上田 淳二 片野 幹
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.133-151, 2020 (Released:2022-01-19)
参考文献数
15

日本の消費税について,課税ベースの大きさを正確に計測するためには,産業連関表のデータに基づいて,部門ごとの付加価値の産出・使用額に対応した消費税額や,家計消費・非課税部門の中間消費など需要項目に対応した消費税額を適切に推計する必要がある。しかし,総務省政策統括官室(2013)などのこれまでの研究では,産業連関表から推計される消費税の課税ベースの大きさは,実際の消費税収から想定される課税ベースを大きく上回ることが指摘されてきた。本稿では,部門別・需要項目別の消費税課税ベースの大きさを整合的に推計するために,Hutton(2017)で示されている手法を用いて,部門・商品に関して実際の税制を踏まえた推計手法を整理した上で,2011年と2015年の産業連関表から得られるデータを用いた推計結果を示し,推計される消費税の課税ベースが,実際の税収値から想定される課税ベースを大きく上回ることはないことを明らかにした。