著者
新見 京子 新見 昌一
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.057-066, 2009 (Released:2009-05-11)
参考文献数
80
被引用文献数
5 5

真菌の細胞壁骨格多糖 β – 1,3 – グルカンの合成を阻害するエキノキャンディン(キャディン)系抗真菌薬は,CandidaやAspergillusに対して高い抗菌活性を示し,ヒトに対する副作用も少ないことから深在性真菌症の治療における重要な選択肢となっている.アゾール薬に比べて耐性菌出現の問題は少なく,発売から数年を経ても低感受性菌分離の報告は欧米を中心に散見されるに過ぎない.しかし,その報告例は徐々に増加している.低感受性株のほとんどはC. albicansであるが,C. glabrata,C. krusei,C. tropicalisでも見られ,これらの株はキャンディンに対する感受性が100倍近く低下し,膜画分中の β – 1,3 – グルカン合成酵素もキャンディン耐性を示す.耐性との強い関係が示唆されているのは,この酵素の触媒サブユニットをコードする遺伝子FKSのエキノキャンディン耐性領域(EchR)と呼ばれる部分のアミノ酸置換である.しかし,アミノ酸置換がどのように耐性とかかわっているか,詳細は不明である.一方,キャンディンは真菌のストレス応答を惹起し,それにかかわるネットワーク特にcell wall integrity伝達経路と呼ばれるシグナル経路が働くことによって,薬剤に対して寛容の状態となる.真菌の細胞壁合成酵素はヒトにはないタンパクであり,有望な薬剤の標的分子である.今後より幅広い抗菌スペクトルをもつ細胞壁合成阻害薬を開発するには,耐性機構の解明と標的分子の構造解析が必要であろう.
著者
河野 一通 河西 政次
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.824-833, 1990-09-01 (Released:2010-01-22)
参考文献数
41
被引用文献数
1 5

The studies on the chemistry of mitomycins are described : i) identification and structural elucidation of mitomycins D, E, F, G, I, J, K, L, M, albomitomycin A, and isomitomycin A from the fermentation broth; ii) derivation of mitomycins structurally close to naturally occurring mitomycins; iii) mitomycin rearrangement, the interconversion between mitomycin A, albomitomycin A, and isomitomycin A;iv) chemical con-version of isomitomycin A from mitomycin A; v) 3α-alkoxymitomycins, unexpected by-products in decarbamoylation of mitomycins;vi) the configuration of mitiromycin.
著者
廣岡 卓 石井 英夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.80, no.100th_Anniversary, pp.S172-S178, 2014 (Released:2014-12-27)
参考文献数
28
被引用文献数
1

1 0 0 0 OA 細胞壁多糖類

著者
西沢 隆
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.515, 2008-10-15 (Released:2008-11-30)
参考文献数
1
被引用文献数
1 1

細胞壁は動物細胞以外の細胞生物に見られる細胞外マトリックスである.植物にはセルロース,ヘミセルロース,ペクチン質が,真菌類の多くにはキチンが,細菌類ではペプチドグリカンが含まれる.1)セルロース(cellulose)(C6H10O5)nで表される植物細胞壁の骨格となる多糖で,グルコースがβ-(1→4)結合により直鎖状に連結した高分子である.植物細胞壁では,数十本程度のセルロース分子が束状になった微繊維(ミクロフィブリル ; microfibril)と呼ばれる構造を取る(図1).さらに,微繊維同士はロープ状に会合し,マクロフィブリル(macrofibril)と呼ばれる構造を作り,細胞壁の強度を高めている.セルロースは地球上に最も多く存在する炭水化物で,「繊維素」と呼ばれることもある.2)ヘミセルロース(hemicellulose)ヘミセルロースはセルロース微繊維間を架橋結合できる架橋性多糖(cross-linking glycan)の総称であり,セルロース微繊維間をつなぐことにより網目状構造を作り,細胞壁のマトリックス強度を維持する(図2).“ヘミセルロース”は,多糖の構造と関係なく,細胞壁からアルカリ性水溶液で抽出される多糖の総称を指す言葉であり,実態が分かり難い.現在では,“ヘミセルロース”という総称名ではなく,キシログルカン(多くの植物の一次細胞壁に存在する)やグルコマンナン(コンニャクイモの貯蔵性多糖)など,それぞれの多糖の構造名で呼ばれることが多い.3)ペクチン(pectin)ペクチンは果物などに多く含まれる多糖で,植物組織中では一次細胞壁だけでなく中葉(ミドルラメラ ; middle lamella)にも存在し,隣接する細胞同士を結び付けている.ペクチンは主に負に荷電したガラクツロン酸(galacturonic acid)がα-(1→4)結合した鎖状分子(ポリガラクツロン酸)を基本とする.ガラクツロン酸のカルボキシル基が部分的にメチルエステル化され,メトキシル基(R-OCH3)を含むものをペクチニン酸(pectinic acid),メトキシル基を含まないものをペクチン酸(pectic acid)と呼ぶ.植物細胞壁中では,通常ガラクツロナン分子に部分的にラムノースが結合したラムノガラクツロナン(rhamnogalacturonan)を主鎖に,ガラクトースやアラビノースなどの中性糖を側鎖に持つ分枝性多糖として存在する.ガラクツロナン分子同士は,カルシウムイオンが介在することによるイオン結合により構造を強化することができる.4)キチン(chitin)真菌類の他,節足動物や軟体動物にも含まれる.キチンはβ-(1→4)ポリ-N-アセチルグルコサミンで,しばしばポリグルコースとβ-(1→3)結合している.5)ペプチドグリカン(peptidoglycan)ムレイン(murein)とも呼ばれる.短いペプチドによって多糖鎖が架橋することにより網状の分子を作り,細胞壁の強度を維持している.
著者
松本 慶蔵 岩垣 明隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.675-680, 1991-05-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

近年種々の抗生・抗菌薬が開発されているが,使用する際にはそれぞれの薬物の抗菌力,作用機序,体内動態,副作用,及び宿主側の状態を考慮した上で選択しなければならない.呼吸器感染症において用いられる薬物につき一般的な性質,喀痰内移行濃度などを踏まえて解説する.近年問題となっている多剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や難治性の緑膿菌感染症などは適切な抗生物質の選択・使用が行われず安易に用いたことが一因である.
著者
伊藤 芳雄 寺島 孜郎
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.606-618, 1989-07-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
56
被引用文献数
17 19

The 1β-methylcarbapenem antibiotics represented by 3, 4, and 5, have been the focus of current synthetic endeavor due to prominent antibacterial activities and broad spectra as well as enhanced chemical and metabolic stability. Progress of the syntheses of 1β-methylcarbapenem key intermediates represented by 6, are reviewed based on the synthetic methods of the characteristic 1β-methyl substituent involved in the contiguous four chiral centers of 6.
著者
渡邊 勧
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.46, 2011

【目的】<BR>介護保険サービスにおける通所リハビリテーションは、コミュニティの場としての集団性を活用した参加、活動の向上や、リハ専門職が個別に介入し、ADL維持・向上を目指す場として知られているが、リハ専門職が通所リハビリテーションに従事する通所リハ利用者と実施していない通所介護サービスの利用者とADL推移を比較することで、リハ専門職が従事する意義を検討することとした。<BR>【方法】<BR>調査は通所リハ3施設、通所介護3施設の協力のもと半年間(2010年4月および10月)で行われ、利用者には担当ケアマネージャーを通して研究の趣旨を説明し、同意を得た後、2回の調査を実施した。対象は、調査期間中、健康状態の悪化等により、大幅なADLの低下や入院時の医療リハを受けていない要介護1~5の通所リハ利用者52名(男性23名、女性29名、平均年齢82.6±8.3歳、平均介護度2.3±0.9)及び通所介護利用者30名(男性8名 女性22名 平均年齢88.2±6.1歳、平均介護度2.6±1.1)の計82例を対象とし、2群間におけるFIM得点の推移比較を行った。統計処理は、統計処理ソフトIBM SPSS Statisticsを用い、群間及び6ヶ月後のADL推移をベースライン時と比較した。なお、危険率は5%未満とした。<BR>【結果】<BR>群間おける比較では、年齢(p=0.002)、FIM総合点は通所リハ群97.8±20.5、通所介護群82.4±24.1(p<0.05)、FIMの各項目においては、すべての項目で群間の差が認められた。半年間の変化量については、移乗項目が通所リハ群-0.1±0.9、通所介護群-1.5±2.5(p<0.05)であり、その他の項目には有意差が認められなかった。<BR>【考察】<BR>群間の差は、対象者のニーズからのサービスの振り分けによる差も考えられ、より若く、ADLの高い対象者がリハビリテーションを希望することが一つの要因と推測される。ADLの低下は両群に認められ、より通所リハ群が少ないことから、専門職としての介入効果は関係していると考えられるが、移乗項目以外の項目には有意差が認められなかった。これはセルフケアをはじめとする項目は介護士による介入が多く、実際に在宅のADL向上に結びついていないことで生活の延長である通所介護と差異がなく、リハの特性が生かせていないのではないかと推測する。<BR>【まとめ】<BR>施設リハにおいては、個別リハを対象とした関わりを持てる範囲も限られることから、今後より長期的な調査を実施しながら、ADL全般を他職種と連携したリハビリテーションにつなげる介入の検討に繋げていくリハ専門職の意義が問われると考える。<BR>
著者
日渡 良爾
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.488-492, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

本稿では,核融合炉のトリチウム燃料循環システムにおけるトリチウムバランスの基本的な考え方とモデル化について概説する。また原型炉における評価例を紹介し,トリチウムインベントリの挙動,必要となる初期装荷トリチウム量,トリチウム倍増時間について説明する。その後,原型炉に向けた課題としてトリチウムバランスのモデル化に必要なトリチウム損失係数の重要性,原型炉のトリチウムインベントリ最小化に向けた燃料システム構成の提案例について紹介する。
著者
平 修久 西浦 定継
出版者
公益社団法人 都市住宅学会
雑誌
都市住宅学 (ISSN:13418157)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.94, pp.104-109, 2016 (Released:2017-08-01)
参考文献数
8

Depopulating cities have been yielding vacant properties which negatively influence local community on safety, health, and public welfare. Dayton, Ohio State, enacted local ordinances of property maintenance and vacant properties. The ordinances suggest 1) property maintenance should be enforced to avoid deterioration, vacancy, and public nuisance, 2) how to maintain vacant properties depends upon the degree of problems, 3) judgement criteria regarding danger are numeric, 4) no officer is liable for any damage of property during inspection, 5) omission of advice and recommendation process can shorten the period of vacant property problems, 6) designation of the deadline to abate nuisance makes management of measures’ schedule better, 7) penalties are charged for failure to comply with the ordinances, and 8) owners are ordered to pay cost of abatement of nuisance by the city including inspection and administration.
著者
田村 正文 田村 亨
出版者
日本交通学会
雑誌
交通学研究 (ISSN:03873137)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.105-114, 2010 (Released:2019-05-27)
参考文献数
9

本稿では、コンパクトシティを対象として、従来平面空間のみで分析されることが多かった都市経済モデルを用いて、都市内部の垂直方向への空間構造の分析のモデル構築を提案するものである。特に地方都市においては郊外化が進んでおり市街地周辺のコンパクト化が進展している。しかしながら市街地への住民の集中により、垂直方向への空間構造が住民厚生の低下に繋がる可能性がある。そこで、本稿では、この問題に対する基礎的なモデルの構築を試みるものである。
著者
松枝 秀二
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.2-12, 2008 (Released:2008-05-27)
参考文献数
8

スポーツ栄養を考えるには、 栄養士、 管理栄養士の存在をスポーツを取り巻く関係者に知ってもらわなければなりません。 そこで、 管理栄養士とはいかなるものかを紹介しました。 さて、 栄養素の中でスポーツ選手に必要なものは何でしょうか?私は炭水化物だと思っています。 たんぱく質が最重要ではありません。 最も少なくてよいのは脂質です。 そのように考えると、 従来の日本食でのエネルギー比率に近いものが、 アスリートには適切であると考えられます。 次に、 水分摂取も熱中症予防には重要です。 発汗量を推定するには練習前後の体重と飲水量を把握するとわかります。 それを基準にして水分摂取を考えます。 次に、 女性アスリートには特有の問題があるので、 指導者は気をつけるべきです。