著者
野崎 道哉
出版者
龍谷大学
雑誌
龍谷大学経済学論集 (ISSN:09183418)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.165-181, 2005-10-15

本稿は不確実性下における合理的意思決定に関するポストケインジアン・アプローチについて提示する。具体的には,(1)不確実性の下での意思決定において,ケインズにおける流動性選好と投資決意の重要性を『一般理論』第17章の議論を手がかりとして論じ,現代日本経済への示唆を示す。(2)ポスト・ケインジアンの重要な概念装置である「根本的」不確実性について,限定合理性と比較しながら概念的特徴について論じ,根本的不確実性=非エルゴード的経済過程における非自発的失業と貨幣の長期的非中立性の存在を提示する。(3)不確実性下における合理的意思決定の方法として,慣行的判断の重要性を提示し,それが期待形成に果たす役割,および不確実性下において,入手可能を情報が限られている場合に,他者の集団的・平均的行動に従う「集団的動学」の重要性について指摘する。
著者
古谷 佳由理 Furuya Kayuri フルヤ カユリ
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.39-46, 1998-12-30
被引用文献数
2

本研究の目的は,健康な小児ががんや白血病といった病名からどのようなイメージを抱くのか,自分が大きな病気になったとしたら,病名や治療などについて教えて欲しいと思っているのかを明らかにすることである。千葉県内の小中高校に通っている小学校5年生から高校3年生までの児童生徒1964名から得られたアンケートの回答を,統計ソフトSPSSにて分析を行い以下の結果を得た。1.健康な小児が抱くがんのイメージは,「死ぬ・治らない」「重い・危険・苦しい」といった悲観的なのものが多く,全体の約65%を占めていた。「聞いたことがない・わからない」と答えたものもおり全体の約15%であり,どの学年でも同様の傾向であった。2.健康な小児が抱く白血病のイメージは「病態や特徴について」「原因や治療について」といったものが,全体の約38%を占めていた。「聞いたことがない・わからない」と答えたものは全体の約33%を占め,小学生では半数以上が「聞いたことがない・わからない」と答えていた。3.自分が病気になったときにされる説明については小学生の80%,中学生の85%,高校生の91%が真実を伝えられることを求めていた。その理由として自分の知る権利,治療に前向きに取り組めるといった姿勢の向上,知らないことが不安になる,残された命を有意義に悔いのないように過ごしたいといったものがあげられていた。The purposes of this study were to identify the images of healthy children on cancer and leukemia, and the way of thinking of truth telling with disease. The number of subjects were 1964. They belonged to between the fifth grade of primary school and the third year in high school. They answered someitem-questionnaire, and the answers were analyzed using SPSS. The results were as follows: 1. Sixty-five percent of the images of cancer were pessimistic, like " death or incurable" and "serious or painful". About fifteen percent were having no images. 2. Thirty-eight percent of the images of leukemia were "the feature" and "the cause or the treatment". About thirty-three percent were having no images. 3. Truth telling was desired by eighty percent of students of primary schools, eighty-five percent of junior high schools and ninety-one percent of a high school. The reasons were "the rights to know", "to be patient with treatments", "to become more anxious without truth telling", and "to live the remaining days without regrets".
著者
赤堀 正宜
出版者
放送大学
雑誌
メディア教育研究 (ISSN:13441264)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-18, 1998

アメリカにおける公共放送の発達に及ぼしたフォード財団の貢献を否定する人は一人もいないであろう。エングルマン(Ralph Engelman)は「フォード財団はアメリカにおける非商業放送の揺籃期を注意深く育て上げ、カーネギー財団はその後の少年期の育成に努力した。この両財団の連携による貢献なしには、今日の公共放送はありえなかったであろう。」とのべ、2つの巨大篤志財団の貢献を証ししている。さらに、フォード財団成人教育基金の副会長を務め、「アメリカの教育放送」を著したブレイクリー(Robert J. Blakely)は、「1951年、フォード財団は多くの教育テレビ・ラジオ局より補助金の要請をうけ、これらの要求を実現するために成人教育基金と教育革新基金を設立し、公共放送の発展に寄与した。」とのべ、フォード財団の活動を詳述している。事実連邦政府が公的資金を公共放送の発展に支出したのは1962年公共放送設備法成立以後のことであり、それ以前は民間の資金によって公共放送は成長してきた。本論文では、初期の公共TV放送の基礎形成に貢献したフォード財団の活躍に焦点をあて、アメリカ篤志財団の篤志行為(Philanthropy)への理念、公共放送育成の理念を明らかにし、民主社会における公共放送のあり方を追求する。
著者
若林 理恵子 澤田 愛子
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.41-54, 2004-09

看護師と家族が聞いた「臨死患者のことば」の主なものを明らかにし,その内容を分析するために,インタビュー調査を行った.インタビュー内容をnarrative researchの手法で分析した結果,看護師が聞いた「臨死患者のことば」の内容は,【間近に迫った死の意識】【あきらめ】【人生の振り返り】【家族関係への後悔】【家族を遺す不安】【感謝】【心身の苦痛】【死の迎え方の希望】【死後の世界】【墓参りへの希望】【神への祈り】の11のカテゴリーに分類できた.また,家族が聞いた「臨死患者のことば」の内容は,【家族を遺す不安】【配偶者への愛】【感謝】【家族への励まし】【心身の苦痛】【あきらめ】【怒り】【死後の世界】【自然との触れ合い】の9のカテゴリーに分類できた.本研究より,「臨死患者のことば」には,重要なメッセージや要望が内包されていることが明らかになった.看護支援として,看護師は「臨死患者のことば」の重要性を深く認識し,家族へも患者の「ことば」に傾注するように指導する必要がある.そして,看護師と家族が患者の「ことば」を共有し,「ことば」に具体的な要望が含まれている場合は,両者が協力して患者の要望をできる限り満たすことが重要である.
著者
鈴木 博人
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.805-816, 2004-11-30
参考文献数
12
被引用文献数
2

日本における大雨の出現頻度の経年変化を明らかにすることを目的に,日本全国の気象官署18箇所を対象に1950年から2003年の54年間におけるひと雨の1,3,6,12,24時間降水量及び総降水量の再現期間が2,5,10年以上の大雨の出現頻度の経年変化を分析した.暖候季(5月から10月)における大雨の出現頻度には,大雨の時間スケールや基準によらず,全般的に1950年代から1960年代前半にかけて高く,1960年代後半から1980年代にかけて低く,1990年代以降が最も高いという変動傾向がみられる.ただし,3,6時間降水量の再現期間が2年以上の大雨の出現頻度は1990年代以降だけが高い傾向にあり,特に1990年代後半に高い傾向にある.また,1950年から2003年の期間後半の大雨の出現頻度の増加傾向はほとんどの場合に有意な期間があるが,期間前半の減少傾向に有意な期間がみられるのは一部の場合のみである.梅雨季(5月から7月)及び台風季(8月から10月)における再現期間が2年以上の大雨の出現頻度は,大雨の時間スケールによって変動傾向に違いがみられるが,いずれの季節も1990年代以降は高い傾向にある.
著者
吉岡 伸 松野 明子
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.45-51, 1993-11-30

1989年より4回にわたって、精神遅滞児におけるひらがな文字(71字)の読み能力と身近な名詞の音韻抽出及びいくつかの知覚課題の能力を測定した。対象児は精神薄弱養護学校に在籍する児童・生徒であり、1989年においては51名、1990年においては39名、1991年においては32名、1992年においては26名である。読み能力の成績はU字型の分布、すなわち「殆ど読めない」集団と「よく読める」集団に分かれた。読み能力に対してそのほかの三つの諸能力はそれぞれ有意な相関を示し、ひらがな読みの習得に一定の影響を持つことを示唆した。初年度(1989年)と最終年度(1992年)との各テストを比較すると、読み、音節分解、音韻抽出の各能力は3年間にわずかであるが伸びを示したが、知覚関連の成績はあまり変化しなかった。精神遅滞児における読みとその他の能力の関連のしかたについて考察した。
著者
田中 明
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集
巻号頁・発行日
vol.72, no.611, pp.231-236, 2007

The purpose of this paper is to clarify the meaning of the Shugakuin Imperial Villa as the place composed by Retired Emperor Gomizuno-o. Retired Emperor Reigen, who is the son of Gomizuno-o, wrote the itinerary about the experience he had in this villa. In the itinerary, he remembers his father frequently, and sometimes he relives and reproduces the playing his father did there. Through the analysis of the itinerary, the paper considers the intention of his visiting, and the meaning of the place where Gomizuno-o is relived.
著者
清水 裕士 小杉 考司
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.132-148, 2010

本論文の目的は,「人々が対人行動の適切性をいかにして判断しているのか」について,一つの仮説を提案することである。本論文では,人々が対人行動の適切性をある原則に基づいた演繹によって判断しているものと捉え,演算の依拠する原理として,パレート原理を採用する。次に,Kelley & Thibaut(1978)の相互依存性理論に基づいて,パレート解を満たす葛藤解決方略を導出した。さらに,これらの理論的帰結が社会現象においてどのように位置づけられるのかを,Luhmann(1984)のコミュニケーション・メディア論に照合しながら考察した。ここから,葛藤解決方略は,利他的方略・互恵方略・役割方略・受容方略という四つに分類されること,また,方略の選択は他者との関係性に依存することが示された。そして,このような「行動の適切性判断のための論理体系」をソシオロジックとして定式化し,社会的コンピテンス論や社会関係資本論などへの適用について議論した。<br>